著者
中川 将司 堀江 健生
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.101-109, 2009 (Released:2009-11-06)
参考文献数
50

動物の眼は多種多様である。しかし,脊椎動物内ではその器官の構造,視細胞の形態,そして視細胞内信号伝達系等の性質は,最も下等な円口類からヒトまで殆ど同じである。脊椎動物の眼の体制が進化の過程でどのように確立されてきたのか,まだ殆ど分かっていない。ホヤは脊椎動物の最も近縁な現生動物で,その幼生は脊索をもち,神経管から神経系が発生する等,脊椎動物の基本的特徴を備えている。ホヤは脊椎動物型眼の進化を解く鍵になると期待される。筆者らは,ホヤ幼生から視細胞特異的遺伝子を単離し,それらの遺伝子産物に対する抗体によってホヤ幼生の視細胞の形態を明らかにしてきた。本稿では,ホヤ幼生の光に対する行動とその視細胞の形態を基に,脊椎動物の原始的な眼と,脊椎動物の眼や松果体との関連性について考察する。
著者
豊田 一恵 谷本 光生 松本 昌和 合田 朋仁 堀越 哲 富野 康日己
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.387-394, 2011-08-31 (Released:2014-11-11)
参考文献数
31
被引用文献数
1 1

目的: オウギ (黄蓍;astragali radix) は, マメ科のギバナオウギ, ナイモウオウギの根から調製される生薬で, 血圧低下・利尿・肝保護・免疫増強・抗菌・強壮・鎮静作用などを有し, 種々の漢方薬に調合されている. 慢性腎不全患者において, オウギ投与により血清クレアチニン値の低下することが報告がされている. しかし, そのメカニズムは十分には解明されていない. また, 腎不全では, 酸化ストレスマーカーの一つである一酸化窒素合成酵素 (NOS) が腎組織で過剰発現しており, 腎不全の進展・増悪因子の一つとして知られている. 今回, 腎不全モデルである5/6腎摘ラットを用い, オウギ投与による腎機能ならびに腎組織におけるNOSの発現抑制効果について検討した. 方法: 8週齢で5/6腎摘出術を施行した雄性SDラットを, 12週齢から12週間 (1) オウギ10g/kg体重/日を混餌投与したオウギ投与群 (n=5), (2) 未治療群 (n=5) の2群に分け, (3) 非腎摘出群 (n=5) を対照とした. それぞれの群に対して, 尿中アルブミン/クレアチニン比 (ACR), 血清クレアチニン, 血中尿素窒素 (BUN), クレアチニンクリアランス (CCr), 尿中8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG) を測定した. また, 24週齢で腎組織の糸球体硬化指数 (Sclerosis Index) をPAS染色により算出し, 血管内皮型NOS (eNOS), 誘導型NOS (iNOS) および酸化ストレスマーカーであるニトロチロシンの発現を腎免疫組織染色により検索した. 結果: CCrは, オウギ投与群で有意な改善が認められた (p<0.05). 血清クレアチニン, BUNは, オウギ投与群で未治療群と比較し低下傾向がみられた. しかし, ACRや尿中8-OHdGには有意な差はみられなかった. オウギ投与群の腎糸球体硬化指数 (Sclerosis Index) は, 未治療群に比べ有意な低下が認められた (p<0.0001). また, オウギ投与群におけるeNOS, iNOSおよびニトロチロシンの発現は, 未治療群に比べ有意な低下が認められた (p<0.0001). 結論: オウギは, 腎におけるNOS (eNOS, iNOS) およびニトロチロシンの発現抑制を伴って, 腎糸球体硬化病変の進展を抑制する可能性が示された.
著者
堀口 進
出版者
The Japan Institute of Electronics Packaging
雑誌
HYBRIDS (ISSN:09142568)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.16-21, 1990-01-01 (Released:2010-03-18)
参考文献数
32
被引用文献数
1 3
著者
山崎 貴子 伊藤 直子 大島 一郎 岩森 大 堀田 康雄 村山 篤子
出版者
一般社団法人日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会誌 (ISSN:13411535)
巻号頁・発行日
vol.41, no.3, pp.176-183, 2008-06-20

マイタケに含まれるプロテアーゼの作用と低温スチーミング調理の併用による牛肉軟化について検討した。マイタケ抽出液は50-70℃で最もカゼイン分解活性が高く,70℃で8h反応させたあとでも30-40%の活性が残っており,熱安定性が高かった。マイタケ抽出液とともに牛モモ肉を低温スチーミングすると,茹でた場合や,水またはしょうが抽出液を使った場合に比べて,溶出するタンパク量が多かった。しかしうま味に関係するグルタミン酸は特に溶出は増えておらず,むしろマイタケとともにスチーミングした肉で有意に増加していた。組織観察の結果,マイタケ抽出液で処理したものはタンパクが分解されている様子が観察された。破断測定および官能評価では,マイタケ抽出液とともにスチーミングしたものは有意に散らかく,噛み切りやすいという結果となった。マイタケと低温スチーミング調理を併用すると,効果的に食肉を軟化できることが示唆された。
著者
稲垣 美幸 堀井 祐介 吉永 契一郎
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2019-04-01

近年,大学には教員でも職員でもない位置付けとして「専門職」と呼ばれる様々な職種の導入が進んでいる。この各職の業務内容や組織に関する実証研究は進んでいるが,その一方で,当事者やその周囲では課題の声が聞かれる。しかし,こうした課題は現場レベルの感覚的なものとして聞かれるのみで,客観的に明らかにされてはいない。で,本研究は,専門職として報告されている新たな職種全体を対象に,専門職が抱える課題を客観的かつ実証的に明らかにし,専門職を取り巻く共通課題と職種による特色を見出す。
著者
程 岩松 堀内 孝次 大場 伸哉
出版者
日本雑草学会
雑誌
雑草研究 (ISSN:0372798X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.153-160, 2002-09-30
参考文献数
14
被引用文献数
1

植物の他感作用を活用して,イネ科強害草のメヒシバの生育を抑制する目的で,42種類のハーブの抽出液を用いた発芽実験を行い,さらに発芽抑制効果の大きかった数種ハーブについて,植物体砕片を土壌に混入し,それをポットに充填してメヒシバを育成し,その生育抑制効果を調査した。その結果,発芽実験ではバルサムギク,ローマンカミツレ,メボウキ,ミドリハッカ,ラベンダーの蒸留水抽出液とバルサムギク,スイカズラ,メボウキ,アマドコロ(地下茎)のメタノール抽出液が発芽を強く抑制した(第1表)。発芽後初期生育は,スイカズラ,ラベンダー,イチョウ(果皮)の蒸留水抽出液とバルサムギク,スイカズラ,キツネノボタン,ウコン,アマドコロ(地下茎)とイチョウのメタノール抽出液によって顕著に抑制された(第1表)。また,スイカズラとラベンダー砕片を土壌に混入したところ,メヒシバの乾物重と分げつ数は対照区に比べて大きく減少した(第3表)。これらの実験結果は,ハーブ類数種がメヒシバの生育を強く抑制し,他感作用を有する可能性を示した。
著者
吉田 信也 松崎 太郎 大下 美奈 坂下 茉以 堀 健太郎 森 和浩 細 正博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0775, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに】関節可動域制限の原因の一つとして神経系の可動性や柔軟性の低下が関与していることが考えられており,我々は先行研究においてラット膝関節拘縮モデルにおける坐骨神経周膜の肥厚および坐骨神経束と神経周膜の密着(神経周囲腔の消失)を報告し,これが神経の滑走を妨げている可能性を示した。また膝関節不動化期間中に拘縮予防目的に関節可動域運動(以下,ROM-ex)を行った結果,神経周膜と神経束の間に神経周囲腔が観察され,神経の滑走が神経周膜と神経束との間で生じている可能性を報告した。そこで今回,ラット膝関節拘縮モデルに拘縮治療目的でROM-exを施行し,それが坐骨神経周囲組織に与える影響について病理組織学的に検討することを目的に実験を行った。【方法】対象には9週齢のWistar系雄ラット28匹を用い,それを無作為にコントロール群(n=7),拘縮群(n=14),実験群(n=7)の3群に分けた。拘縮群および実験群は麻酔後,右膝関節をキルシュナー鋼線と長ねじを使用した創外固定を用いて膝関節屈曲120°にて不動化した。この際,股関節,足関節に影響が及ばないように留意し,ラットはケージ内を自由に移動でき,水,餌は自由に摂取可能とした。コントロール群は自由飼育とした。実験群は不動化処置の2週間後より腹腔内にペントバルビタールナトリウム溶液(40mg/kg)を注射して深麻酔下で膝関節に対しROM-exを2週間行い,ROM-ex時以外の期間は不動化を維持した。ROM-exはラットの体幹を固定した状態で行い,まず膝関節屈曲位を5秒間保持し,次にバネばかりを使用して右後肢を坐骨神経に伸張ストレスが加わるように体幹より120°腹頭側方向へ約1Nで牽引し5秒間保持する運動を3分間繰り返した。ROM-exは1日1回,週6回,2週間施行した。拘縮群の半数(n=7)は不動化2週間後にジエチルエーテルにて安楽死させ,可及的速やかに右後肢を股関節より離断し標本を採取した。実験期間終了後,同様に残りのラットを安楽死させ,右後肢を標本として採取した。採取した右後肢は10%中性緩衝ホルマリン溶液にて組織固定を行い,次いで脱灰液を用いて脱灰を4℃にて72時間行った。その後,大腿骨の中間部にて大腿骨に垂直に切断し大腿部断面標本を採取した。5%硫酸ナトリウム溶液で72時間の中和後,パラフィン包埋して組織標本を作製した。作製したパラフィンブロックをミクロトームにて約3μmにて薄切した。薄切した組織切片はスライドガラスに貼付し,乾燥後にヘマトキシリン・エオジン染色を行い封入した。観察部位は大腿中央部の坐骨神経周囲組織とし,光学顕微鏡下に病理組織学的に観察した。【倫理的配慮】本実験は所属機関の動物実験委員会の承認を受けて行われたものである。【結果】コントロール群は全例で坐骨神経束は神経周膜と遊離しており,神経周囲腔が観察された。実験群においては7例中6例で神経周囲腔を認めた。一方,拘縮群では全例で坐骨神経内の各神経束は神経周膜と密着しており,神経周囲腔の消失が観察された。また拘縮群および実験群では神経周膜の線維性肥厚が全例で観察された。【考察】今回,ラット膝関節拘縮に対してROM-exを行った結果,坐骨神経の神経束と神経周膜の間に神経周囲腔が観察された。これは神経の滑走が神経周膜と神経束との間で生じている可能性を示唆するものであると考えられる。また,一度拘縮を生じた膝関節にROM-exを行うことで,坐骨神経の神経周囲腔に関しては可逆的な組織学的変化が生じ,コントロール群に類似した組織像が観察されたと考えられる。一方で,神経周膜の線維性肥厚は拘縮群と同様に実験群全例で観察されており,ROM-exは神経周膜には影響を及ぼさないものと思われた。【理学療法学研究としての意義】臨床場面において使用頻度の高い治療手段であると思われるROM-exが坐骨神経周囲組織に与える影響について病理組織学的に観察・検討することにより,神経滑走性に対するROM-exの治療効果やその運動方法などの妥当性に対して示唆を与えうると考えられる。
著者
堀江 竜弥
出版者
仙台大学
雑誌
仙台大学紀要 = Bulletin of Sendai University
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.31-36, 2018-09-30
著者
渡辺 研一 高橋 誠 中川 雅弘 太田 健吾 佐藤 純 堀田 卓朗
出版者
水産増殖談話会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.54, no.3, pp.255-263, 2006-09-20
被引用文献数
1

2-フェノキシエタノールの麻酔剤としての効果を、9種の主要な増養殖対象種(ブリ、マダイ、マアジ、カンパチ、シマアジ、ヒラメ、トラフグ、メバル、クロソイ)について、水産用医薬品であるFA100と比較、検討した。網で掬っても魚が暴れない程度に麻酔が罹り、麻酔後清水に移して一晩経過後に死亡個体が認められない2-フェノキシエタノール濃度は、おおむね200~1,000μl/l であった。一方、FA100の効果的で安全な濃度はおおむね100~500μl/l であり、2-フェノキシエタノールの場合と比較して範囲が狭かった。2-フェノキシエタノールで麻酔すると、FA100の場合より麻酔からの覚醒時間が短く、麻酔翌日の生残状況が優れた。さらに、2-フェノキシエタノールでは観察されなかった麻酔液表面の泡立ちがFA100で観察された。以上のことから、2-フェノキシエタノールは増養殖における麻酔剤として優れていることが示唆された。