著者
青木 聡 駒野 雄一 宮永 望 本間 祐介 森田 光 太田 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.743, pp.97-102, 2003-03-19

代表的な小額決済方式として,PayWordとMicroMintがある.PayWordは支払い・清算を計算量の小さいハッシュ演算で行い,コイン(ハッシュ連鎖)の正当性を保証するためにデジタル署名を用いる.MicroMintはデジタル署名の代わりにコインの正当性をハッシュコリジョンで保証し,全ての処理をハッシュ演算で行うが,コインごとにコリジョンが必要となる.本論文では,ハッシュ連鎖つきコリジョンをコインとすることで,コインの正当性をコリジョン計算の困難性で保証し,1つのコリジョンで複数回の支払いが可能となる新たな電子小額決済方式を提案する.また,システム全体でコイン生成に必要な計算量の観点から,提案方式をPayWord,MicroMintと比較する.評価の結果,提案方式はMicroMintに対してコスト面では常に優れており,PayWordに対してはハッシュ関数の値域の大きさによってコスト面の優劣がつくことを確認した.
著者
駒野 雄一 太田 和夫
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ISEC, 情報セキュリティ (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.102, no.744, pp.81-86, 2003-03-20

Coronらは,同一のPadding方式と鍵の組で暗号化と署名生成を実現できるPSS-ESを提案して安全性証明を行った.PSS-ESは,暗号系と署名系に同一のPaddingを用いるのでプログラムサイズが制限された制約された環境での実装に適していることに加え,鍵の管理も容易になるという利点がある.しかしPSS-ESの暗号系としての安全性は,暗号化関数の部分領域一方向性に依存しているため帰着効率が悪い.本論文では,REACTとOAEP++を基にREACT-ESとOAEP++-ESを構成し安全性証明を行った.その結果,REACT-ESやOAEP++-ESは帰着効率の点でOAEP-ESをはるかに上回ることが確認できた.さらに,REACT-ESは通信効率の点で他の方式より優れ,最も実用的な方式であることがわかった.
著者
太田 啓子
出版者
日本中東学会
雑誌
日本中東学会年報 (ISSN:09137858)
巻号頁・発行日
no.17, pp.1-20, 2002-03-31

中近世のイスラム世界において、メッカは巡礼の目的地であったのみならず、ウラマーなどの交流の場として、通商路の中継地点として、政治・経済的にも文化的にも重要な役割を果たしていた。当時メッカの支配勢力は、預言者ムハンマドの子孫であるシャリーフによる政権であった。彼らはメッカのおかれた地理的条件、ヒジャーズ外部の王朝の勢力関係、シャリーフとしての宗教的権威などを巧みに利用しつつ、複雑な国際政治の舞台においてその存在基盤を確かなものとしてきた。しかし従来のメッカ研究は、イスラム教の聖地としての宗教的役割に集中され、その結果、メッカが当時のイスラム世界において果たしていた政治・経済的、そして文化的な役割についての歴史的史料に基づく実証的な研究はきわめて少ない。本稿は、メッカの地方史であるIbn Fahd (812/1409-885/1480)のIthafおよびal-Fasi (775/1373-832/1429)のShifa'と、人名辞典であるal-Fasiのal-'lqdを主史料として用い、シャリーフ政権によるメッカ支配の実態を検証する。メッカのウラマーによって記された史料を用いることにより、メッカ内部からの視点を提供し、その考察を通じて、メッカの支配勢力であったシャリーフ政権の性格を明らかにする。バフリー・マムルーク朝期(1250-1390)には、メッカにはシャリーフ政権としての軍隊は存在せず、個々のシャリーフらが手兵とも呼ぶべき個人的な軍隊を率いて行動していた。シャリーフらは個々の支配領域において分立し、イラクやアフリカ東海岸地域の都市など、ヒジャーズ地方に限定されない広い領域において支配を行っていた。メッカは農業に適さない環境であり、ハラージュ(地租)の税収入に依存することが不可能であったことから、彼らの主要な財源はマクス(雑税)であった。マクスはメッカにおいて売買されていた商品のほとんど全てに課されていただけでなく、巡礼者にも課されていた。メッカにおけるカーディーなどの各種任免権は本来メッカのアミール(統治権保持者)位にあるシャリーフの権限に含まれていた。しかし、外部諸王朝がシャリーフ政権への干渉を行った結果、これらの任免権は外部の諸王朝の権限に含まれるようになった。アイユーブ朝・マムルーク朝、ラスール朝、イル・ハーン朝などの外部諸王朝はシャリーフ政権内の内部抗争を利用して干渉を行った。干渉の目的は、聖地の支配者としての権威の獲得および商業・巡礼ルートの中継地点を支配下におくこと、マクス収入の確保であり、この目的を達成するために軍事遠征、シャリーフらの信奉していたザイド派への宗教的弾圧、徴税権や任免権などへの干渉を行った。シャリーフ政権はこれらの諸王朝の勢力を均衡させることによりアミール権の安定をはかり、一時的には成功を収めたが、その後の度重なる外部からの干渉と各シャリーフへの軍事援助によりシャリーフ間の対立が激化し、シャリーフ政権は弱体化した。以上のような支配実態・国際関係から、シャリーフ政権とは、個々のシャリーフらによる諸都市の分立統治体制であり、これに対して外部諸王朝が、巡礼・商業路の中継地点であったメッカを支配することによって得られる商業利益と、メッカを支配することによってイスラム世界において得られる権威を求めて干渉を行ったことが明らかとなった。このように、政権の内部抗争と外部からの干渉が密接に結びついていたことは、メッカという都市・地域の持つ特殊性と言うことができる。
著者
田中 智夫 太田 光明
出版者
麻布大学
雑誌
麻布大学雑誌 (ISSN:13465880)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.230-234, 2002

平成14年4月より行っている動物介在活動・療法(AAT/AAA)教育プログラムは,行動学者,人と動物の関係学の研究者,動物福祉の研究者,獣医師,心理学者,精神科医,心理療法士,ソーシャルワーカー,教育学者らが集まって,AAT/AAAに関わる人材を育てるための継続的な教育カリキュラムで,2年間で修了する。このプログラムは,Dennis C.Turner博士(institute for applied Ethology and Animal Psychology所長,スイス,本学客員教授)によって開発されたもので, 1998年に行われたプラハでのIAHAIO(international Association of Human and Animal Interaction Organi-zations)国際会議で発表され,1999年の4月に第1期生をスイスで迎え,現在はアメリカはじめ国際的に認知されている。本学では,Turner博士を含む欧米の教育・研究者6名と本学教員からなる講師陣を構成し,獣医学部ならびに獣医学研究科の研究教育カリキュラムヘの導入を図った。講義(英語)は,心理学,人と動物の関係学,人と動物に関する行動学,動物の心理学,AAT/AAAに携わる動物の適切なケア,AAT/AAAに関する倫理や危機管理,患者自身の安全管理,人獣共通感染症,動物のトレーニング方法,産業動物や野生動物を用いた作業療法など多岐にわたる。また,精神科病院や刑務所(アメリカ,カナダなど)の見学,学校への訪問など学外実習も含まれている。2年間の間に,課題レポート(英語)の提出があり,また最終試験は口答試問(英語)によってなされる。このプログラムを修了することによって得た認定書は,日本はもちろん,ヨーロッパ各国および北米でも通用するものであり,2004年3月に修了する第一期生への期待は極めて大きい。この4月より,第二期生に対するプログラムが開始された。
著者
太田 昌孝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会誌 (ISSN:09135693)
巻号頁・発行日
vol.81, no.4, pp.349-354, 1998-04-25
被引用文献数
1

インターネットは爆発的に普及してきたが, その発展を支えたインターネット技術のエボリューションについて解説する.インターネット技術の開発はIETFによって行われ, 結果はRFC等として公開される.インターネット技術の中で最重要なインターネットワーキング層のIPは, より多くのネットワークをサポートできるよう, トランスポート層のTCPはネットワークの混雑に対処できるよう, データリンク層は様々なデータリンク層に対処できるように, それぞれ発展してきた.
著者
酒井 隆道 太田昌克 寺元 光生
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.2002, no.85, pp.127-132, 2002-09-12
参考文献数
9
被引用文献数
2

近年,内容指向のメッセージ配送を行うContent-based network (CBN )がアプリケーション層ネットワークの一形態として着目を浴びている.CBN をグローバル環境において適用する場合,異なるオントロジーを有するエンドユーザ間におけるメッセージ配送を実現するための,オントロジー変換技術の確立が課題となる.本稿では,このようなオントロジー変換を実現するためのアーキテクチャを示し,フレーム形式のオントロジーモデルを対象としたオントロジー自動変換方法を提案する.A content-based network(CBN), that performs a content-based routing, is paid attention as a kind of an application-layer network in recent years. When we lay out the CBN at a global environment, we must establish an ontology transformation technique in order to realize the message routing between end-users of different ontologies. In this paper, we propose an ontology transformation architecture and an automatic ontology transformation method for the frame-based ontology model.
著者
竹内 広宜 杉山 喜昭 太田 千景 山口 高平
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.24, 2010

テキストマイニング分析では、事前に分析観点を設定し辞書を作成する。そして分析ではテキスト中の概念同士の共起関係から有用な知見が得られることが多い。しかし、分析観点の設定やどの分析観点間に注目すればよいかは、分析者の経験やスキルに依存する。本論文では、市場分析におけるセグメント分析に対して、マーケティングミックスを考慮した分析オントロジーとテキストマイニング分析手法を提案し、有効性を検証する。
著者
前田 昌純 中元 賢武 中村 憲二 南城 悟 太田 三徳 谷口 清英 坪田 典之 多田 弘人 成毛 韶夫
出版者
特定非営利活動法人 日本呼吸器内視鏡学会
雑誌
気管支学
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.350-358, 1988

1, 562例の気管・気管支形成例の術型について分析, 追補した。術型数は, 1, 569手術例に57, 施行されていた。12の基幹術式のなかで, BBが974手術(62.1%)と最も多く, 続いてTTの282手術(18.0%), TBの92 (5.9%)の順位となる。Tp18手術(1.1%), CRは32手術(2.0%)施行されていた。CR, TB, BB術式は, 各々10, 10, 28のsub type術型にわかれる。手術数の上位3位を示すと, CRでは_<TI>__-CR, _<MM>__-CR_<TM>, ^^<CR>T-IM, TBでは左右のSP, 左右のWPと_<TI>SL, BBでは左右の上葉スリーブ(_<MI>SL SL_<ML>), 左右上葉のWL, 左右のMU吻合術型となる。術型別の合併症では, Tpの77.8%, TMTの40.0%, Teの37.9%, CRの34.4%が目立つ。7気管軟骨輪以下切除のTT, BBのうち_<MI>SL, SL_<ML>, _<MI>WL, WL_<ML>を標準術型とした。合併症頻度は, 各々, 20.3%と12.1%であった。
著者
太田 垣虔甫
出版者
公益社団法人日本航海学会
雑誌
航海 (ISSN:0450660X)
巻号頁・発行日
no.19, pp.112-126, 1964-03-25

本論文は,海上衝突予防法規が衝突を防止するために定めている各種規定の相互関係を研究し,もつて,いかなる場合においても,船舶が,その履行すべき航法の選択を誤らないような一貫した理論を見つけ出そうとするものである。白昼に金星を見つけようとするものが,あらぬものを金星と見まがうことがある。このようなことがないように十分気をつけたつもりであるが,理論の展開に急なるあまり,法の解釈について独断のそしりを免れないものがあるかも知れない。しかし,本論文のような方法が,衝突予防法規の簡明正確な解釈を得る研究方法として役立つならば望外の喜であり,江湖の批判を期待するものである。
著者
越智 匠作 太田 猛彦 田中 延亮 堀田 紀文
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.75-80, 2008-06-15

幼齢林における樹冠遮断量の測定上の問題点を解決できるような大型雨量計のデザインを提示し,実際に作製した大型雨量計を用いてその実用性を検討した。雨量計の重要な要素である受水面積は,我が国の一般的な幼齢林の植栽密度,植物への影響,メンテナンス性,既往の大型雨量計を用いた樹冠遮断研究における受水面積の決定基準などを参考にして,約5m^2が適当であると決めた。大型雨量計の実用性は,次の各実験により確認した。まず,降雨強度の大きい降雨イベントにおいても雨量計からの排水水量を正確に測定できるようするために,本研究で用いた500mLの転倒マス型量水計を対象に大流量を含めた流量検定を行い,流量と1転倒に要する水量との関係を求めた。次に,大型雨量計の初期損失量を求めたところ0.2mm以下であり,大型雨量計の排水性は良好であった。さらに,大型雨量計の受水面積を厳密に求めるために,自然降雨を対象にした大型雨量計と貯留型雨量計の比較観測を行った。転倒マス型量水計の検定結果を考慮して補正した大型雨量計からの排水水量と,貯留型雨量計が示した雨量の関係は,良好な直線関係を示しており,その直線の傾きから大型雨量計の厳密な受水面積を決めた。また,その直線関係は,通常の降雨イベントだけでなく強度の大きい降雨イベントにおいても成り立っていたため,本研究で提示した大型雨量計は降雨強度の大きいイベントにも耐えうる実用性の高い雨量計であることがわかった。