著者
小林 伸一
出版者
日本法政学会
雑誌
法政論叢 (ISSN:03865266)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.98-131, 2006-05-15

There is a large academic literature on overall values served by the First Amendment, U.S. Const. Amendment. I is Free Speech and Press Glaus e. The marketplace, self-government and autonomy are most frequently invoked. Principle-based theories on First Amendment theory argue these values as basis for justifications for the special protection afforded freedom of expression. Each of these theories makes some claim to provide a foundational basis for the First Amendment. Recently, The Supreme Court gives some measure of protection to hate speech as cross-burning and organizational forms and activities having expressed their antihomosexual views. Do any of the principle-based theories apply to cross-burning or activity to a discriminate homosexual conduct? Do these activities subserve the values that hold up in those theoies? Taking this opportunity, Non principle-based theories come to the front. This article traces comparatively three representative theorists in the non principle-based theory. The following assertions are presented by them. Stanly Fish exhibits perspectives from literary theory applied to First Amendment jurisprundence. He insists that any theory of free speech must reflect a substantive political content. Thus, the abstraction at the center of First Amendment jurisprudence- marketplace, self-government, autonomy-do not in themselves point us to the appropriate distinctions. Richard Posner has his root in "Law and Economics". And his philosophy is pragmatism. Posner argues that because the legal concept of freedom of speech is plastic, mutable, and contestable it may appropriately take its shape from the practical considerations the instrumental approach bring into view. He employs cost-benefit analysis to explore when government can regulate expression which has a public good. Frederick Schauer relies on analytic philosophy modified by traditional common law theories. He claims the importance of seeing rules as crude probablistic generalizations. And Schauer distinguishes between conversational and entrenchment models of generalization, but he doesn't grasp each models as an exclusional reason. He argues that the legal system takes freedom of speech as a given, devoting little if any attention to the philosophical foundation of the principle it seeks to enforce. Schauer focuses on less various values served by the First Amendment than on the special reason to distruct government in the realm of speech regulation.
著者
小牧 元 小林 伸行 松林 直 玉井 一 野崎 剛弘 瀧井 正人
出版者
九州大学
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1994

近年、ストレスに対する生態防御の観点から、免疫系と視床下部-下垂体-副腎系との関連が注目されてきた。特にサイトカインの一種であるインターロイキン‐1β(IL-1β)がこの免疫系と中枢神経系を仲介する、主要な免疫メディエーターの一つであることが明らかになっている。このIL-1βの同系に対する賦活作用には、視床下部の室傍核(PVN)におけるCRFニューロンの活動が促される必要があるが、血中のIL-1βがいかにして同ニューロンを刺激するのか未だ確定した結論には到っていない。我々は視床下部の終板器官(OVLT)が、その血中のIL-1βが作用する主なゲートの一つである可能性を、同部位にIL-1レセプター・アンタゴニストを前処置することにより確認したところ、血中IL-1β投与によるACTHの上昇は有意に抑制された。一方、一酸化窒素(NO)が脳内でニューロトランスミッターとして働いていることが判明し、特に、NOがアストロサイトからのPGE2産生やCRFやLHRH分泌調節に直接かかわっている可能性がある。そこで、マイクロダイアリシスを用いて、同部位のNO産生との関わりをさぐるために、L‐Arginineをチューブ内に流し、IL-1βによるPGE2産生の変化を見たところ、有意な抑制傾向は認めなかった。しかし、フローベの長さの問題、L‐Arginineの濃度の問題もあり、容量依存生の確認、他の部位との比較まで至っておらず、結論は現在まで至っていない。今後、容量、他のNO産生関連の薬物投与も試みて、確認して行く予定である。
著者
加古 哲也 持田 耕平 郷原 優 中務 明 小林 伸雄
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.467-472, 2022 (Released:2022-12-31)
参考文献数
12

本邦固有の有用な遺伝資源である,トウテイラン(オオバコ科クワガタソウ属)の夏秋期出荷の鉢物生産方法の開発を目的に,摘心時期,摘心節位が開花時期ならびに生育に及ぼす影響について検討した.鉢物用 ‘NG-1’ を用いた実験の結果,摘心時期が遅い区ほど開花は遅くなった.一方,摘心時期が遅くなると到花までの積算温度は少なくなった.出荷期の生育は,摘心時期が遅くなると開花節位は低下し開花枝長は短くなった.高い節位で摘心を行った場合,開花は早く,到花までの積算温度は少なくなり,開花節位は低下し,開花枝長は短くなった.開花枝は,摘心時期や摘心節位にかかわらず増加した.一方,6月末の摘心,また,低節位での摘心では不開花枝も増加した.これらのことから,トウテイランの鉢物利用において,摘心時期ならびに摘心節位により鉢物生産における開花期や生育の制御が可能であることが明らかとなった.なお,5月末前後に基部から2~3節の直上で摘心することで敬老の日を目標とした9月上旬の鉢花出荷が可能であると考えられた.
著者
富山 一 菅田 誠治 森野 悠 早崎 将光 小熊 宏之 井手 玲子 日下 博幸 高見 昭憲 田邊 潔 茶谷 聡 小林 伸治 藤谷 雄二 古山 昭子 佐藤 圭 伏見 暁洋 近藤 美則
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.52, no.4, pp.105-117, 2017

<p>詳細な野焼き頻度分布についての知見を得るために、つくば市において巡回と定点カメラによる観測によって野焼き件数の分布を調査した。2015年秋季 (9~10月) に毎日巡回して燃焼物別の日別野焼き件数を調査し、降雨前に野焼き件数が多くなることが確認されたほか、野焼き件数の57%を占めた稲作残渣は稲の収穫時期から一定期間後に籾殻、稲わらの順で焼却されることが確認された。秋季の巡回調査に続き2016年8月まで4日に1度ほどの頻度で巡回し、月別野焼き件数を比較すると9~11月に多く、1~8月に少ないことが確認された。2016年1~12月にかけて行った筑波山山頂に設置した定点カメラからの観測では、1月、10月~12月に野焼き件数が多く、2~9月に少ないことが確認され、1日の中では午前10~11時および午後2~3時に野焼きが行われやすいことが確認された。2015年秋季の調査結果にもとづいて稲の収穫時期と気象条件から稲作残渣の年間野焼き発生量に対する日別野焼き発生量比を推計する回帰モデルを構築した。回帰係数から、降雨前に野焼き件数が増えること、強風により野焼き件数が減ることが定量的に確認された。構築されたモデルに都道府県別の稲収穫時期と気象データを適用して、従前研究では推計できなかった都道府県別の大気汚染物質排出量の日変動を、2013、2014年の稲収穫時期と気象データを適用して各年の野焼き発生量比の日変動をそれぞれ推計した。</p>
著者
小林 伸聖
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.87, no.1, pp.21-24, 2018

<p>光が透ける磁石があれば,専門家でなくてもさまざまな新しい用途に期待が膨らむだろう.ことさら磁性材料研究者にとって透明な強磁性体の開発は,その応用のみならず物性面において,魅力ある研究テーマの1つであろうと想像する.本稿では,我々が開発した透明かつ強磁性を示すナノグラニュラー材料について紹介する.ナノグラニュラー材料は,フッ化物などの絶縁体から成るマトリクスにナノメータサイズのFeCo合金などの磁性金属から成るグラニュールがほぼ均一に分散した微細構造を有し,フッ化物マトリクスに起因する良好な光透過性と同時に,FeCo合金グラニュールに起因する強磁性を併せもつ.</p>
著者
太田 勝巳 森下 進也 須田 浩平 小林 伸雄 細木 高志
出版者
園藝學會
雑誌
園藝學會雜誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.73, no.1, pp.66-68, 2004-01-15
参考文献数
10
被引用文献数
1 34

8種の花卉(トレニア,エキザカム,ベゴニア,グロキシニア,ロベリア,ミムラス,カルセオラリアおよびカンパニュラ)において1.0%キトサンの土壌混和処理および水溶性無機肥料(1.0%キトサンと同量の窒素量となるよう施用)の施与を行い,栽培試験により成長量と開花について調査した.その結果,定植時(種により播種6週間後から13週間後)において,いずれの花卉においても1.0%キトサン土壌混和処理は対照区(肥料,キトサンとも無施与)および無機肥料区に比べて有意に高い成長量を示した.また,1番花開花日については,トレニア,エキザカム,ベゴニア,グロキシニア,ロベリアおよびミムラスにおいて,1.0%キトサン土壌混和処理は他の処理区に比べ,1番花の開花が有意に促進されたことが認められたが,カルセオラリアおよびカンパニュラにおいては促進効果はみられなかった.これはキトサンによるエリシター効果,土壌中微生物相の変化あるいは有機物として直接植物に吸収利用されることによると推察される.
著者
伴 琢也 小林 伸雄 本谷 宏志 門脇 正行 松本 真悟
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.413-417, 2009 (Released:2009-10-25)
参考文献数
14
被引用文献数
4 6

現在我々は新しい地域特産物としてのハマダイコンの栽培化と育種を進めており,本報では選抜育種の経過と根部の成分や食味に関する調査結果を報告する.島根県の宍道湖畔および島根半島の海岸部のハマダイコン自生集団より根部の肥大形状と晩抽性に注目して個体を採取し,以降,選抜育種を継続した.2006年産の個体では根部の形状と重量が安定した.根部の成分については‘耐病総太り’と比較して還元型アスコルビン酸,イソチオシアネート,ポリフェノールおよび可溶性固形物含量が高く,その値は代表的な辛味ダイコンである‘辛丸’と同等であった.根部にはフルクトース,グルコースおよびスクロースの存在が確認でき,その構成比率は‘辛丸’と類似していた.さらに根部の成分は収穫時期により変化することが明らかになった.以上の結果は,ハマダイコン選抜系統を新たな辛味ダイコンとして位置付けるものである.
著者
小林 伸雄 宮崎 まどか 伴 琢也 中務 明 足立 文彦
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.9, no.1, pp.25-29, 2010 (Released:2010-01-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

3原種および4品種の常緑性ツツジについて挿し木苗の根系発達特性を調査した.雨よけ遮光区,密閉挿し区およびミスト挿し区で管理したすべての系統で80%以上の発根率が得られた.挿し木苗の総根長は,キシツツジや‘大紫’で長く,サツキ‘大盃’やクルメツツジ‘麒麟’で短い傾向がみられた.また,葉数および葉面積はモチツツジの葉面積を除いて,密閉挿し区,雨よけ遮光区の順で大きい値が得られ,ミスト挿し区で最も小さくなる傾向がみられた.挿し穂の発根範囲が切り口から表土付近までと広い,モチツツジ,サツキ‘大盃’および‘白琉球’では,網円筒枠外に伸長した根数の分布範囲も広かった.一方,ヤマツツジおよびクルメツツジ‘麒麟’では発根部位は狭く,網円筒枠外に伸長した根数も少なかった.挿し木苗の根系発達特性は,圃場定植苗の根系発達特性と共通する点が多く,各野生種やそれらをもとに派生した園芸品種における多様な環境への遺伝的な適応性に由来するものと考えられる.また,これらの特性は栽培,増殖および育種に関する研究や利用の現場においては重要な情報となり得る.
著者
庄司 浩一 谷森 文彦 中山 和明 川村 恒夫 小林 伸哉 堀尾 尚志
出版者
Japanese Society of Farm Work Research
雑誌
農作業研究 (ISSN:03891763)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.73-78, 2003-06-19 (Released:2010-02-09)
参考文献数
11
被引用文献数
3 3

The fluctuation of the surface, or relative depth of water within a paddy field, was related to yield and quality of the rice. A 0.5ha-transplanted paddy field having the fluctuation of elevation of about 100mm was used, and the level of water was monitored at several points of observation in the field. Following conclusions were obtained based upon these measurements for two years.1) There was a slight tendency of greater yields at lower elevations, although it was not statistically significant. The yield components varied among the elevations; at the lower elevations, the number of panicles per hill-plant and the number of grains per panicle were greater, and vice versa the weight of kernel and the percentage of ripened grains.2) The protein content in the kernel was significantly greater at lower elevations, which can be related to the smaller weight of the kernel and percentage of ripened grains mentioned above. The greater protein content could be also ascribed to continuous intake of nitrogen, as a result of continuous submergence of water on the soil.3) There was a case that at poorly drained intermediate elevations in the middle of the field, the protein content was as high as at lower elevations. This implied that the management of the water level or drainage was essential as well as the leveling of the paddy field, so as to produce the rice of as uniform and low protein content as possible within the field.
著者
小林 伸行 濱川 文彦 松尾 雄三 高野 正博
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.49, no.11, pp.1201-1207, 2009-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
16

初診時の問診や質問紙が治療中の自傷行為の予測に有用かを検討した.対象と方法:2000〜2005年に初診した1,665名を対象とした.(男性605名,女性1,060名,年齢36.4±18.6歳).カルテ記載から精神科・心療内科受診歴(受診歴),希死念慮,自傷行為の既往(自傷既往),受診直前の自傷行為(直前自傷),治療経過中の自傷行為(治療中自傷)などを調べた.初診時にGHQ28を行った.結果:全対象の22.6%に受診歴,24.7%に希死念慮,5.1%に自傷既往,1.5%に直前自傷を認めた.初診以降も治療を継続した1,132名中,治療中自傷は4.3%にみられ,非自傷者より低年齢で,受診歴,希死念慮,自傷既往が多く,GHQ28の重症抑うつ尺度が高く,診断別では摂食障害,うつ病に多かった.多変量解析では年齢,希死念慮,自傷既往が治療中自傷予測に有意な変数だが,自傷者の正分類率は4%だった.結語:初診時の希死念慮と自傷行為の既往が治療中自傷の予測に最も有用だが,十分ではない.
著者
小林 伸
出版者
日経BP社
雑誌
日経パソコン (ISSN:02879506)
巻号頁・発行日
no.571, pp.109-112, 2009-02-09

全自動とシーンモード/シーンモードを選ぶには/カスタム機能の設定も/撮影画像はすぐに確認
著者
小林 伸二 雲居 秀城 宮下 修 赤尾 幸治 黒澤 つかさ 熊谷 修平 雨宮 雷太 西村 陽介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C0323, 2007

【はじめに】<BR>人間は重力下で姿勢を維持し、安定した動作を遂行するために身体各分節を力学的、機能解剖学的に制御している。これらのバランスが崩れ、ある局所に歪みが生じた場合、病態が発生するといわれる。整形外科疾患理学療法の臨床においては、局所の評価や治療のみではなく、姿勢や動作にアウトカムを設定し、それらを調節することで症状が軽減する症例を経験できることがある。<BR>【目的】<BR>重力下で姿勢を安定させることは、身体各固有受容器からの探索情報を処理、統合した結果である。間違った情報入力の有無を確認し補正するために、臨床において立位や坐位姿勢を観察、評価する場面は多い。しかし、その情報を単なる逃避や関節可動域制限、筋力低下として単純に捉えてしまうことが往々にして行われている。今回われわれは、立位と坐位の重心位置が、既往歴や、日常生活時の特徴的な姿勢(以下日常姿勢)にどのような関係があるか、また左右差についてはどうか、を調査し、これらが姿勢制御に及ぼす影響について検討を行なった。<BR>【対象および方法】<BR>対象は、関節の変形や拘縮が認められず、重心に変化を及ぼすような疾患をもたない当院外来患者、入院患者および職員、31例(男性16例、女性15例)平均年齢47.4歳であった。重心位置の測定は、重心動揺計(MEDICAPTEURS社製 Win-pod)を用い、前方注視で30秒間の静止端坐位と静止立位にて行い、同時に後方からデジタルカメラで撮影を行った。これを、個人の既往歴、日常姿勢と比較検討した。<BR>【結果】<BR>既往歴については、症例ごとに関連がある傾向はあったが、局所の評価や三次元的な姿勢、動作分析を必要とし、全体として明らかな関連性を見ることはできなかった。坐位では、日常姿勢と坐位重心で明らかに同一方向にあったものが20名(64.5%)であり、左右での同一性が認められ、立位では8名(25.8%)であった。重心位置の左右差は左に優位であり、立位23名(74.2%)、坐位23名(74.2%)であった。また、坐位重心での左右の偏りが、体重換算し10%以上のものは15例であり、そのうち立位では重心位置が10%以内に入ったものは13例(86.7%)であった。<BR>【考察】<BR>理学療法によって日常の姿勢をより良い方向へ変化させ、疼痛の除去や予防が可能となる。これには日常生活における習慣が大きく関与しており、特に坐位では重心位置との関係に強い傾向が認められた。重心位置は坐位、立位ともに左側が優位であった。また、坐位で偏りが強いものも立位では補正されている傾向が強く、足、膝、股関節における姿勢制御の重要性が示唆された。今後、前後や回旋との関連性、身体各部位との影響、また疾患や症状別の違いなどもより詳しく調査、検討していきたい。<BR>
著者
小林 伸行
出版者
東京慈恵会医科大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2011

ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)の潜伏感染タンパクSmall protein encoded by the Intermediate stage Transcript of HHV-6(SITH)-1をマウスアストロサイトに発現させることでうつ様行動を引き起こした。その脳で遺伝子発現を調べたところ、炎症性サイトカインの変化はなかった。一方、気分障害患者では血液中炎症性サイトカインmRNA発現とうつ症状は相関を示した。以上より、中枢神経と末梢血での遺伝子発現は必ずしも一致せず、末梢での炎症反応が波及的に中枢神経に影響し、SITH-1発現を誘導することでうつ症状を引き起こす可能性が考えられた。
著者
小林 伸行
出版者
日本社会学会
雑誌
社会学評論 (ISSN:00215414)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.805-820, 2009-03-31 (Released:2010-04-01)
参考文献数
16

本稿の目的は,N. ルーマンの教育システム論を他の機能システム論と比較可能な「特殊でない」機能システム論へと再構築することである.ルーマンの教育システム論が他の機能システム論との比較可能性を損なっている要因は複数ある.包摂がすべての個人に及んでいない,固有メディアや二分コードを欠いたまま機能システムとしての自律性などが説明されてきた,コードとプログラムが明確に区別されない等である.本稿では,その淵源を主に「学校(教育)」に偏向した説明に求めつつ,そうした説明からの脱却を通じて他の機能システム論との比較可能性を教育システム論に付与するとともに,社会システム論全体の一貫した説明力を向上させる可能性を模索する.そのために,教育システムのメディアを「ライフコース」から〈能力〉に,形式を「知識」から「手本/模範」に変更し,二分コードを「有能/無能」とすることを提案する.また,相対評価にも絶対評価にも変更されうるような従来の「選抜コード」を,有能か無能かの判断基準となる可変的なプログラムの一環として位置づけ直し,「有能/無能」コードとともに学習者だけでなく教育者にも向けられるものと見なしたうえで,教育システムの機能を「何かが〈できない〉ために諸人格の参入が不可能であるとの判断を延期させ,いずれ〈できる〉ようになって包摂が可能になると予期を変質させること」すなわち「包摂不可能性の認知的予期化」と規定する.
著者
小林 伸行 高野 正博
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.50, no.11, pp.1045-1050, 2010-11-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
10

術後の機能性慢性疼痛(CPSP)は臨床的にあまり認識されていない問題である.数十年前には開腹術後のCPSPは明らかなイレウスの所見がない場合でも腹膜癒着による閉塞によるものと考えられていた.頻回の手術でより複雑化しポリサージャリーと呼ばれていた.不必要な手術を避けようという努力でこのような患者は減少してきた.CPSPの危険因子が調べられている.その中にはうつや不安などの術前の心理的因子が挙げられるが,報告によって結果はまちまちである.最も確かなのは術後の急性疼痛である.術直後の疼痛管理が慢性化の予防に有効と考えられている.しかし,一度CPSPが出現すると対策が困難で心身医学的配慮が必要となる.そこで,当科で経験した2症例を提示した.1例は心理的ストレスが身体化した典型的症例で,もう1例は器質的疾患を基盤に心理的因子が増悪因子となっていた症例である.しかし,患者がその相互関係を理解するのは困難であった.結論として心理的因子は必ずしもCPSPの危険因子とはされていないが,治療するには心理社会的配慮が必要なときがある.