著者
小林 哲郎 一藤 裕 曽根原 登
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 D (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.J95-D, no.4, pp.834-845, 2012-04-01

提供されたライフログの管理や匿名化に関する情報セキュリティ的研究が進む一方,ライフログ提供者の心理的抵抗や提供を促進するインセンティブや制度に関する研究は不足している.そこで本研究は,ライフログ提供を促進する有効な制度設計のための基礎的な知見を提供することを目的に,ライフログ調査研究への参加依頼を実験刺激として,収集するライフログの種類,金銭的謝礼の金額,対価として提供されるライフログ活用サービスを要因操作した無作為配置被験者実験を行った.その結果,コミュニケーション履歴を提供することへの心理的抵抗が最も強く,GPS位置情報を提供することへの心理的抵抗は比較的弱いことが明らかになった.また,金銭的謝礼はライフログ提供を促進するがその効果は非線形であることが示唆された.一方で,レコメンデーションサービスやライフログ可視化サービスはライフログの提供を促進するインセンティブとしての効果が見られなかった.これらの知見を総合することで,できるだけ潜在的提供者の心理的抵抗を緩和しながらライフログの提供を促進する方法について考察を行った.
著者
川崎 英二 丸山 太郎 今川 彰久 粟田 卓也 池上 博司 内潟 安子 大澤 春彦 川畑 由美子 小林 哲郎 島田 朗 清水 一紀 高橋 和眞 永田 正男 牧野 英一 花房 俊昭
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.8, pp.584-589, 2013 (Released:2013-09-07)
参考文献数
13
被引用文献数
14

1型糖尿病は膵β細胞の破壊性病変によりインスリンの欠乏が生じて発症する糖尿病であり,発症・進行の様式によって,劇症,急性,緩徐進行性に分類される.今回,本委員会において急性発症1型糖尿病の診断基準を策定した.劇症1型糖尿病の診断基準を満たさず,口渇,多飲,多尿,体重減少などの糖尿病(高血糖)症状の出現後,おおむね3か月以内にケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥り,糖尿病の診断早期より継続してインスリン治療を必要とする患者のうち,経過中に膵島関連自己抗体の陽性が確認されたものを「急性発症1型糖尿病(自己免疫性)」と診断し,同患者のうち膵島関連自己抗体が証明できないが内因性インスリン分泌が欠乏(空腹時CPR<0.6 ng/ml)しているものを単に「急性発症1型糖尿病」とする.しかし,内因性インスリン分泌欠乏が証明されない場合,あるいは膵島関連自己抗体が不明の場合には診断保留として期間をおいて再評価することが重要である.
著者
馬殿 恵 今川 彰久 阿比留 教生 粟田 卓也 池上 博司 内潟 安子 及川 洋一 大澤 春彦 梶尾 裕 川﨑 英二 川畑 由美子 小澤 純二 島田 朗 高橋 和眞 田中 昌一郎 中條 大輔 福井 智康 三浦 順之助 安田 和基 安田 尚史 小林 哲郎 花房 俊昭 日本人1型糖尿病の成因診断病態治療に関する調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.62, no.1, pp.37-46, 2019-01-30 (Released:2019-01-30)
参考文献数
34
被引用文献数
5

抗PD-1抗体投与後に発症する1型糖尿病について,日本糖尿病学会員への調査と文献検索を行い22症例を検討した.初回の薬剤投与日から発症までの平均期間は155日,発症時の平均年齢63歳,平均血糖値617 mg/dL,平均HbA1c8.1 %,尿中C-ペプチド4.1 μg/日(中央値),空腹時血中C-ペプチド0.46 ng/mL(中央値)であった.31.6 %に消化器症状,27.8 %に感冒様症状,16.7 %に意識障害を認め,85.0 %でケトーシス,38.9 %で糖尿病性ケトアシドーシスを発症した.50.0 %が劇症1型糖尿病,50.0 %が急性発症1型糖尿病と診断された.膵外分泌酵素は52.6 %で発症時に,28.6 %で発症前に上昇した.1例でGAD抗体陽性であった.抗PD-1抗体投与後に発症する1型糖尿病は,劇症1型糖尿病から急性発症1型糖尿病まで幅広い臨床病型を呈し,高頻度に糖尿病性ケトアシドーシスを発症するため,適切な診断と治療が不可欠である.
著者
三浦 麻子 小林 哲郎 清水 裕士
出版者
大阪大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2022-04-01

本研究の目的は,様々な社会的行動・態度の個人差を説明する新たな価値観概念として「常民性」―民主主義やキリスト教といった現代欧米社会に深く根ざす思想の呪縛を受けない,システム正当化,生活保守主義,個人幸福志向などが複合した概念―を探究し,妥当性と信頼性の高い測定尺度を開発することである.(a)質的面接調査,(b)Web調査,(c)尺度開発の3プロジェクトが遂行される.一般的な質問紙調査ではリーチできない層を対象とする丹念な質的データ収集にもとづいて概念の精緻化を試みる点,尺度開発に統計モデリングを活用する点に学術的独自性と創造性がある.
著者
河村 和徳 三船 毅 篠澤 和久 堤 英敬 小川 芳樹 窪 俊一 善教 将大 湯淺 墾道 菊地 朗 和田 裕一 坂田 邦子 長野 明子 岡田 陽介 小林 哲郎
出版者
東北大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

東日本大震災では多くの被災者が生じ、彼らの多くは政治弱者となった。本研究は、彼らの視点から電子民主主義の可能性について検討を行った。とりわけ、彼らの投票参加を容易にする電子投票・インターネット投票について注目した。福島県民意識調査の結果から、回答者の多くは電子投票・インターネット投票に肯定的であることが明らかとなった。しかし、選管事務局職員は、こうしたICTを活用した取り組みに難色を示す傾向が見られた。ICTを利用した投票参加システムを整備するにあたっては、彼らが持つ懸念を払拭する必要があることが肝要であり、財源の担保に加えシステムの信頼を高める努力が必要であることが明らかになった。
著者
小林 哲郎 松井 勇佑 佐藤 真一
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的研究(開拓)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究は深層学習の技術をテレビニュースの内容分析に応用し、大量の映像情報を目視に頼ることな、自動的に分析する方法論を確立する。深層学習は、分析対象の分類に有効となる特徴を自ら学び取っていくため、様々な角度や表情で人物が映されるテレビ映像の分析に有効である。本研究の文脈では、事前に特定することが困難な政治家の顔の特徴をアルゴリズムが自律的に学習していくことで、ニュース内における特定の政治家の出現を高い精度で検出することが可能になる。こうした深層学習に基づいた計算アルゴリズムと網羅性の高いニュースアーカイブを組み合わせることで、従来の内容分析では回答できなかった社会科学的問いに答えることを目指す。
著者
徳永 あゆみ 今川 彰久 西尾 博 早田 敏 下村 伊一郎 阿比留 教生 粟田 卓也 池上 博司 内潟 安子 及川 洋一 大澤 春彦 梶尾 裕 川﨑 英二 川畑 由美子 小澤 純二 島田 朗 高橋 和眞 田中 昌一郎 中條 大輔 福井 智康 三浦 順之助 安田 和基 安田 尚史 小林 哲郎 花房 俊昭 日本人1型糖尿病の成因診断病態治療に関する調査研究委員会
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.61, no.12, pp.840-849, 2018-12-30 (Released:2018-12-30)
参考文献数
29
被引用文献数
2

劇症1型糖尿病は急激な発症と重症代謝異常が特徴である.本委員会では膵臓MRIのうち水分子の拡散制限を反映する拡散強調画像に注目し,劇症1型糖尿病発症早期における診断への有用性を検討した.画像データが存在する劇症1型糖尿病症例14例について,拡散の定量化指標であるADC(Apparent Diffusion Coefficient)値を算出し,非糖尿病対照例21例と比較した.劇症1型糖尿病症例では膵臓の全領域でADC値が有意に低下し,膵全体にわたる単核球浸潤による細胞密度上昇が示唆された.ADC値の最良のカットオフ値を用いると,診断感度86 %,特異度71 %であり,非典型例2例の診断にも有用であった.また,劇症1型糖尿病症例におけるADC値は血糖値および動脈血pHと有意に相関し,発症後経過とともに上昇傾向であった.以上より,膵臓MRI拡散強調画像は劇症1型糖尿病の効率的な診断の一助となることが示唆された.
著者
三浦 麻子 小林 哲郎
出版者
日本行動計量学会
雑誌
行動計量学 (ISSN:03855481)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-11, 2018
被引用文献数
11

<p>This study investigated the influence of satisficing on response behavior in online surveys. We compared online response data to psychological scales and logical thinking tasks conducted by an online survey company and a crowd sourcing service. In previous studies, satisficing was found to be more likely to occur among online survey monitors than among crowd sourcing service contributors. Results of the present study replicated it and showed that satisficing in terms of inattentively reading items significantly damages the integrity of psychological scales. On the other hand, it was also found that the influence of satisficing in terms of inattentively reading instructions carefully can be reduced by raising respondents' awareness. Those conducting online surveys should discuss taking active measures to minimize satisficing. </p>
著者
堀内 正子 相良 篤信 吉田 梨紗 小林 百代 竹ノ谷 文子 琉子 友男 小林 哲郎 仲間 若菜 黄 仁官 里 史明 湯本 哲郎
出版者
日本社会薬学会
雑誌
社会薬学 (ISSN:09110585)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.27-35, 2021-06-10 (Released:2021-06-29)
参考文献数
19

Introduction: Recently, doping among athletes has been on the rise, and pharmacists have an important role in both the promotion of anti-doping (AD) and in providing accurate information and effective support. In this study, we examined various fact-finding surveys that targeted physical education university (PEU) students, and we focused on their use of pharmacies/drugstores, their involvement with pharmacists, and knowledge about AD. We also examined the necessary AD-related professional competencies of pharmacists. Method: Questionnaire surveys were prepared, and the responses of 1,249 students were analyzed. Results : From a survey on what students buy at pharmacies/drug stores it showed that medicines for flu common colds sell the most. Most of the students did not receive any drug consultations at pharmacies/drug stores before purchasing, because they preferred to make their own decisions about drug use. Also, many students were wary of doping with supplements. Although the students who participated in international sports competitions and events possessed a wealth of doping-related knowledge and awareness, PEU students lacked them. Discussion : We determined that it was necessary to gather relevant patient information and explore methods so that intentions could be discussed when purchasing medications from pharmacies/drug stores. We also recognized the need for early doping education programs in light of the inadequate AD-related knowledge and awareness among university student-athletes. Therefore, all pharmacists should strive to acquire a wide range of knowledge to support athletes in this effort. Furthermore, we believe that expanding the professional functions of pharmacists would increase the awareness of AD among athletes.
著者
横井 愼一 関口 麻衣子 加納 塁 小林 哲郎
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.211-215, 2010
被引用文献数
2

7歳6カ月齢の雄のヨークシャーテリアの顔面,右後肢から臀部にかけて,丘疹,鱗屑および痂皮を伴う脱毛が認められた。病変部の皮膚押捺塗抹検査では棘融解細胞を疑わせる円形の細胞が見られ,皮膚掻爬検査では鱗屑中に糸状菌の菌糸を認めた。病理組織学的には液状変性を伴う表皮内および毛包壁へのリンパ球浸潤からなる境界部皮膚炎の像を示し,角層中にはPAS陽性の菌糸様構造物を認めた。角層の真菌培養および遺伝子検査の結果, <i>Trichophyton rubrum</i>が検出されたことから,本症を<i>T. rubrum</i>による皮膚糸状菌症と診断した。<br>
著者
安東 孝久 増谷 健 竹本 賢史 東野 政弘 濱岸 五郎 小林 哲郎
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.26, pp.33-36, 2002
参考文献数
2

高解像度LCDパネルを用いてメガネなし3Dディスプレイを開発した.左右の視差画像を発生させるパララックスバリアに,これまで我々が開発してきたイメージスプリッタ方式の代わりにピンホールアレイを使用した.ピンホールアレイが片眼に対してVGA解像度の視差画像を垂直方向と水平方向に発生させるので,多人数が同時に広い範囲で立体映像を観察できる.本3Dディスプレイは,構造が簡単で低コスト化が可能であり,将来の3Dテレビに適用できると考えられる.本研究は,NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の平成11年度委託研究を受け,その後発展させた研究である.
著者
小林 哲郎 池田 謙一
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.120-130, 2008-11-30 (Released:2017-02-10)
被引用文献数
2

The effect of PC e-mail usage on social tolerance was investigated by analyzing representative survey data collected from electorates in Yamanashi Prefecture, Japan. The results showed that PC e-mail usage had a positive effect on social tolerance because it allows for mediating communications with heterogeneous others. These results are a clear-cut contrast to previous research, which showed that mobile-phone e-mail usage had a negative effect on social tolerance because of the increasing homogeneity of personal networks. The results indicated that while the technological limitations of mobile phone e-mail usage selectively strengthen communications with homogeneous others through the exchange of short messages, PC e-mail usage facilitates communications between heterogeneous people, because it is suitable for the exchange of the longer messages necessary for sharing the assumptions made during correspondence. From the viewpoint of nourishing "bridging" social capital, it is suggested that the promotion of PC e-mail should be encouraged by establishing appropriate policies and that the functional development of the use of the Internet on mobile phones should be empirically investigated.