著者
山口 徹也 森川 雄貴 盛岡 通 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.68, no.6, pp.II_229-II_236, 2012 (Released:2013-02-13)
参考文献数
12

本研究では,電力負荷平準化による需要家の経済的便益という側面に着目して,電力負荷とPV出力の2つの変動を表すモデルを適用し,PV・BTシステムを設置・稼働した場合の費用効果を算定するモデルを構築した.産業工場の屋根にPVを設置し,BTからの放電をピークカットに用いた場合のパフォーマンスを表すモデルを用い,確率分布を推計し,分析評価を行った.現在のPV,BT価格を前提とした費用効果算定では,総支払額の削減には程遠いという結果となった.PVは現在価格の0.50倍になってもそれを導入することの費用効果がプラスに転じることはないが,BTの現在価格の0.8倍より下がると費用効果がプラスに転じる点が初めて現れた.PVとBTを組み合わせて導入する場合,価格低下が進むにつれて,需要家に費用効果がマイナスになることなく導入できるPVの容量が大きくなることがわかった.また,契約電力超過確率10%程度まで許容すれば,超過による罰則金を支払い,契約電力を削減した利得を多く得られなくとも,PV・BT容量を抑えて,導入費用を低減させる方が費用効果が大きくなることがわかった.
著者
森川 雄貴 野田 圭祐 盛岡 通 尾崎 平
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集G(環境) (ISSN:21856648)
巻号頁・発行日
vol.69, no.6, pp.II_239-II_246, 2013 (Released:2014-03-05)
参考文献数
19
被引用文献数
1

本研究では,街区・地区レベルでのPV-BTシステム導入による費用効果を算定するモデルを構築し,街区・地区レベルの電力需給マネジメントの単位(空間と用途)を変えることによる負荷平準化効果の違いを定量化することを目的とした.神戸市旧居留地区を対象に検討した結果,以下の4点の結論を得た.1)PV-BTを0.17[kW/100m2]導入し,地区全体で電力マネジメントを実施することによる最大電力負荷の低減効果は,導入前に対して1.2%程度であった.この低減効果はPV-BT導入量に関わるため,評価尺度をPV-BT導入量に対する削減率で表現すると70%程度と大きな効果が見られた.2)PV-BT導入量を変化させた場合の年間純便益は,地区へのPV-BT合計導入量が単位面積当たり0.25[kW/100m2]程度で最大となり,それ以上は低下する.3)用途混合度が異なる街区別のピーク負荷低減効果を明らかにしたとこら,住居系の混合割合が高い場合,住居系のピーク生起時刻が事務所系・商業系と離れているためにPV-BTによるピーク負荷低減効果が相対的に小さくなる.4)事務所系と商業系のみが混合している街区では,電力需要が標準偏差分だけ大きくなる方に変移した場合,BTによるピーク負荷低減効果は相対的に高くなる.
著者
古川 康一 植野 研 五十嵐 創 森田 想平 尾崎 知伸 玉川 直世
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第17回全国大会(2003)
巻号頁・発行日
pp.217, 2003 (Released:2004-02-03)

楽器の演奏を例として、暗黙的な身体知を言語化するために、熟達者の演奏をモーションキャプチャリングシステム、筋電図などで測定し、データから法則性を抽出するための方法論を展開してきたが、その過程で、幾つかの有用な知見が明らかになり、今後の発展の可能性が見えてきた。具体的には、運動学と運動力学の両面からのアプローチにより、見かけはほぼ同じでも異なる筋肉の使い方によって、技巧的な動きとそうでない動きが区別できることが明らかとなった。また、スキルを競合する動きでの制約充足問題として捉えることにより、その解明の可能性が示された。その過程で、たとえば弓の返しや弓の弦移動をスムーズに行う方法、左手のポジションチェンジをすばやく正確に行う方法などを発見できた。これまでに得られた新たな発見は、必ずしもデータマイニングによる自動発見ではないが、その枠組み、実験手法、モデル化手法、制約充足による形式化、筋骨格系の役割、筋肉の利用の種々のモードの重要性の発見、柔軟な運動を実現するための視点、重心の役割、メンタルモデルの重要性などが明らかになった結果として、われわれ自身の洞察によって得られたものである。しかし、その過程を通して得られた知見は、今後のスキルの自動発見につながる、背景知識の整備を行ったことになると考えられる。本テーマは、認知科学、人工知能、生体力学、脳科学などが深く関わったテーマであり、それ自体興味深いが、さらに時系列データマイニングなどの技術を使うことによって、身体知の解明が進むものと期待できる。本テーマは、楽器の演奏に限らず、ゴルフなどのスポーツにも広く応用できると期待される。身体知の解明は、今後の新たなビジネスの創造にも貢献できると期待される。
著者
尾崎 千佳
出版者
日本近世文学会
雑誌
近世文藝 (ISSN:03873412)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.17-36, 2018 (Released:2019-01-31)

It is often said that Nishiyama-Sōin, the master of renga linked verse, had started rendering haiku poems as a hobby since he became a Buddhist priest. This article will point out the falsehood of this view to review what it was to make renga and haiku poems in his literary and religious career. He actually started haiku not as a hobby but for a more practical purpose; he became so much engaged in social intercourse after entering the priesthood that he exploited haiku to facilitate his public life. This is why he used a different poetical pseudonym according to whom he entertained. Taking advantage of the rise of Ōbaku, the third sect of Zen Buddhism, Sōin gained a good reputation as a haiku poet with his songs of the culture of western Japan. Meanwhile he also continued to play a leading role in the renga circle of Ise Shrine. In short, he shrewdly adopted a double persona as a renga master and as a haiku poet to attain secular popularity.
著者
小川 雄司 川上 博士 鈴木 実平 尾崎 仁志 沓名 宗春 井上 裕喜 齋藤 清隆
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
生産加工・工作機械部門講演会 : 生産と加工に関する学術講演会
巻号頁・発行日
vol.2014, pp.265-266, 2014

Indirect laser peening is a new laser peening technique and modifies the mechanical properties of the surface of the substrate. Metal sheet protects the substrate surface from heat affect by a plasma with laser irradiation. Because the metal sheet absorbs laser energy and reduces the peening efficiency, the features of indirect laser peening for several aluminum alloys were investigated in this study. The changes of mechanical properties by indirect laser peening were discussed by the comparison to the mechanical properties of as-received state.
著者
小川 一仁 渡邊 直樹 田口 聡志 高橋 広雅 尾崎 祐介
出版者
関西大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2017-06-30

2017年度の研究実績については2点ある。1:各大学が実験参加者プールを構築すること研究グループで何度か打ち合わせを行い、実験参加者プールの構築と収集データの統一を図ることで合意した。関西大学と同志社大学についてはすでに実験参加者プールが完成している(関西大学)か、すでに構築を始めていた(同志社大学)。広島市立大学では研究分担社が過去に実験を実施した経験があるので、その時の経験を基に実験参加者プールの再構築に着手した。大阪産業大学はコンピュータ室の使用許可や、謝金の支払い方に関するルールの策定など実験実施環境の構築を終え、被験者プールの構築に着手した。これらは大学をまたいだ共通実験環境の構築の第一歩として必要である。2:複数の大学で共通して実施する実験の選定各大学で共通に実施する実験として、参加者募集など実験の実施が容易(1人で意思決定を行うタイプ)であり、なおかつ学問的価値も高いものとしてGuerci et al.(2017)のWeighted voting gameを利用することとした。現在、Guerci et al.(2017)の基本枠組みで実験を実施し、なおかつ多地点での実験実施による効果の違いを検討できる実験計画を選定中である。なお、実験参加者プールがすでに確立されている関西大学についてはGuerci et al.(2017)の基本枠組みに従った実験を17年度中に4セッション実施できた。さらに、Guerci et al.(2017)のデータも利用できることになった。
著者
尾崎 幸紘
出版者
公益社団法人日本薬学会
雑誌
Biological & pharmaceutical bulletin (ISSN:09186158)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.559-562, 1995-04-15
参考文献数
23
被引用文献数
5 40

This study was carried out to examine the antiinflammatory effect of aqueous extracts of Kakkon-to (K), Kakkon-oren-ogon-to (KO), Kikyo-to (KK), Haino-to (H), Haino-san (HS), Mao-to (M) and Senkinkeimei-san (SK), which have been used for the treatment of stomatitis, tonsillitis, cold and chronic inflammatory diseases, and to elucidate the mode of their effects. Oral administration of K, KO, KK, H, HS, M and SK inhibited dose-dependently the increase of dye leakage induced by acetic acid in mice. Further antiinflammatory study was carried out on KK, H and HS which showed potent inhibition. All three extracts significantly inhibited the carrageenin-induced edema and the cotton pellet-induced granuloma formation. From these results, it is suggested that KK, H and HS may inhibit both the early exudative stage and the late proliferative stage in inflammatory processes. These extracts are comprised of Platycodon root as do other crude drugs, and the root may be partly responsible for the antiinflammatory effects induced.
著者
岡田 仁志 甲斐 司 前田 温子 瀬尾 明裕 尾崎 賢 坂上 貴光 横井 宏佳 宮原 茂
出版者
一般社団法人 日本フットケア学会
雑誌
日本フットケア学会雑誌 (ISSN:21877505)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.124-129, 2017-09-30 (Released:2017-09-30)
参考文献数
23

【要旨】血液透析(HD)患者は動脈硬化症のリスクが健常人に比して高いとされている.足関節上腕血圧比 (ankle brachial pressure index:ABI) は動脈硬化症のスクリーニング検査として重要であるが,その 0.9 未満の症例において栄養障害と動脈硬化の関連した病態を有する症例の多いことが報告された.HD 患者 29 名を対象に ABI を測定し,geriatric nutritional risk index (GNRI) を含めた種々のパラメータとの関連について検討した.ABI は栄養指標の GNRI,Alb,body mass index (BMI)(τ=0.39,0.31,0.25)や糖尿病,WBC,CRP,LDL-C(τ=0.27,0.27,0.24,0.21)と相関を認めた.HD 患者において ABI は各種栄養指標との関連性を認め,特に GNRI と密接な関連があることが示唆された.各種栄養指標の中で,GNRI は ABI と最も強い相関を認め,GNRI が動脈硬化症の病態を反映する 1 つの指標となりうると考えられた.
著者
古明地 正俊 佐々木 繁 尾崎 暢 佐藤 龍哉 太田 善之
雑誌
情報処理学会研究報告コンピュータビジョンとイメージメディア(CVIM)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.50, pp.1-8, 1987-07-23

本報告は,カラー画像をビデレートで処理できる画像処理システム『韋駄天/カラー』に関するものである。このシステムは,筆者らが提案した『構造可変型パイプラインアーキテクチャ』に基づいた3組の処理ユニットを並列に動作させることにより,高速性を実現した。さらに,カラーを構成するRGBの各画像を相互に演算できるカラー処理モジュール,動的に任意領域の抽出ができるマスクモジュール,画像の特徴量を算出できるモジュールを開発したことにより,カラー動画像特有の処理にも柔軟に対応できる構成になっている。また,実際にカラー動画像を処理することで,本システムの有効性を確認した。We have already developed an image processing system "IDATEN", which can process time-varying monochrome images at video rate, based on a reconfigurable pipeline architecture that we proposed. This paper describes the improvements of this architecture and the protorype for time-varying color images. To realize this, we have newly developed three kinds of processing modules: color coordinate transforming modules, dynamic masking modules for extracting specified regions, and feature extraction modules. To keep the same processing rate for color images, the system was designed with three processing units which operate in parallel. The experimental results verify that the system is effective for time-varying color image processing.
著者
濱脇 諒 尾崎 順一 和泉 潔 島田 尚 松島 裕康 坂地 泰紀
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.2O3J1302, 2019 (Released:2019-06-01)

近年経済のグローバル化によりある金融機関の破綻の影響がその業界や国を超えて国際的なものとなっている。 関連する分野の先行研究は、銀行単体もしくは企業単体でのエージェントシミュレーションを行うものがほとんどである。 そこで、本研究では銀行と企業の相互作用に焦点を当てた多層ネットワークのモデルを提案し、銀行から企業への投資の有無が企業の成長率に与える影響を調べる。 具体的には、投資を受けているかどうかによって成長率の変動幅を変化させ、最終的な企業の規模の分布の変化について議論する。 銀行が持つ貸借対照表は全国銀行協会が公表している全国銀行財務諸表分析に基づいて作成した。 シミュレーションの結果として、投資は企業の成長の平均には影響を与えなかったが、企業間の格差が広がった。 これは投資を受けた企業のうち、投資を活かして成長することができたものと失敗したものに別れてしまったことが原因だと考えられる。
著者
仲村 昇 千田 万里子 尾崎 清明
出版者
公益財団法人 山階鳥類研究所
雑誌
山階鳥類学雑誌 (ISSN:13485032)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.97-108, 2018-02-28 (Released:2019-02-28)
参考文献数
15

In 2017 we continued the Monitoring Avian Productivity and Survivorship (MAPS) program in Fukushima, Japan, using constant-effort mist netting and banding. Preliminary results from six years of data, including adult abundance index, productivity index, and apparent adult survival rate, were analyzed. Adult abundance of the Japanese Bush Warbler Cettia diphone in Fukushima City gradually increased from 2013 to 2017, while that in Minami-Soma City was relatively stable. In Iitate Village, adult abundance of this species fluctuated greatly, with a low in 2016. Adult abundance of the Oriental Reed Warbler Acrocephalus orientalis in Minami-Soma City was higher in 2015–2017 compared to 2012–2014, while that in Fukushima City was low in 2015 and 2016. Adult survival of the Oriental Reed Warbler from 2012–2013 to 2015–2016 in Minami-Soma City was 0.23–0.34 (Ave=0.27), while that in Fukushima City was 0.12–0.22 (Ave=0.16).
著者
尾崎 愛美
出版者
慶應義塾大学大学院法学研究科内『法学政治学論究』刊行会
雑誌
法学政治学論究 : 法律・政治・社会 (ISSN:0916278X)
巻号頁・発行日
no.111, pp.39-69, 2016

一 はじめに二 ビッグデータ時代におけるプライバシー侵害 (一) プライバシーを取り巻く状況の変化 (二) 従来の学説とプライバシーの社会的側面 (三) 新しい情報プライバシー権説三 情報プライバシー侵害の段階的分析 (一) 情報の収集段階 (二) データマイニング段階 : 目標設定からパターン発見まで (三) プロファイリング段階 1 データ解釈と評価 2 具体例 (1) 犯罪の発生する場所・時間帯の予測 (2) 個々の犯罪者・犯罪集団を対象とした予測 3 プロファイリングに関する国際的動向 (1) EU一般データ保護規則 (2) EU捜査等データ保護指令四 わが国における装着型GPS捜査 (一) 現行法上の対応 : 移動追跡装置運用要領 (二) 下級審裁判例の状況 (三) 装着型GPS捜査の段階的分類の必要性 1 尾行補助手段型のGPS捜査 2 情報集約型のGPS捜査 3 捜査終了後の犯罪予測を目的とした保有位置情報の利用五 おわりに
著者
藤永 太一郎 桑本 融 尾崎 豊子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌 (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1976, no.12, pp.1852-1855, 1976
被引用文献数
2

N,N'-ビス(o-ヒドロキシフェニル)エチレンジィミン(HPEI=H<sub>2</sub>hpei)がウランと反応して生成する錯体を種々の条件下において検討した。水溶液中で生成するhpei-U錯体は波長565nmに最大吸収をもち,連続変化法で求めた組成比はhpei:U=1:1であった。しかし,第四級アモニウム塩であるゼブィラミンの多量存在下ではレッドシフトし,最大吸収は645nlnに移るるゼフィラミン添加によってとくに吸光度が増大するわけではないが,錯体の組成比は変化し,hpei:U=2:1となる。1:1の組成比を有する錯体は,通常の有機溶媒には抽出されないが,2:1錯体は1,1,22-テトラクロロエタン(TCE),1,2-ジク誓ロエタンなど有機溶媒に抽出される。モル吸光係数はTCE中で1.41x10<sup>4</sup>,水中で1.44x10<sup>4</sup>であった。抽出法によるウランの分光光度定量では0~50μg,水溶液中の定量では0~120μgの間のウランについてBeerの法則が成立する。