著者
尾崎 尚代 千葉 慎一 嘉陽 拓 大野 範夫 鈴木 一秀 牧内 大輔 筒井 廣明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.C0889, 2007

【はじめに】腱板完全断裂症例に対する理学療法の目的は、疼痛の除去および残存腱板や上腕二頭筋長頭腱での代償作用を引き出し、肩関節の運動能力を改善することにある。しかし、広範囲断裂や長頭腱断裂を伴う症例の中には、これらの代償作用を得られずとも上肢挙上が可能となり、ADL上の支障がなくなる症例を経験する。そこで、理学療法を実施した腱板完全断裂症例について追跡調査し、若干の知見が得られたので報告する。<BR>【方法】対象は、当院にてMRIまたはMRAで腱板完全断裂と診断を受けて理学療法を行い6ヶ月以上の経過観察が可能であった20例20肩(男性11肩、女性9肩)であり、外傷歴は有11例・無9例、断裂部の大きさは3.5mm未満6例・3.5mm以上14例、単独断裂11例・複数腱断裂9例である。これらの症例に対しJOA scoreの推移とレ線的検討を行った。尚、治療開始時年齢は平均67.35歳、発症から当院初診までの期間は平均17.07ヶ月、経過観察期間は平均15.90ヶ月であり、手術療法に移行した症例は除外している。<BR> JOA scoreの推移は、疼痛、機能、可動域について、初診時、1ヵ月後・3ヵ月後・6ヵ月後・9ヵ月後・1年後・最終診察時の推移を調査した。また、X線的検討はScapula45撮影法での45゜無負荷保持を用い、最終診察時の自動屈曲可動域が120度以上尚且つ30度以上の改善を良好群、それ以外を不良群に分類して、腱板機能および肩甲骨機能について検討した。<BR>【結果】X線所見・関節不安定性を除いたJOA score(80点満点)の推移は、初診時41.93点±14.68から最終診察時67.83点±8.61と有意に改善した(p<0.001)が、初診時と比較して疼痛は理学療法開始1ヶ月後(p<0.01)、機能は3ヵ月後(p<0.02)、可動域は6ヵ月後(p<0.02)以降で有意に改善したものの、外傷歴や断裂腱の数、大きさとの関係には有意差は認められなかった。<BR>またX線的検討の結果、良好群13例(屈曲148.85度±19.49)・不良群7例(屈曲104.29度±22.81)共に肩甲骨関節窩に対して骨頭の上昇が著明であるが、胸郭上の肩甲骨の上方回旋角度は正常値(12.30±4.1)に比して良好群では小さく(2.02±7.01)なり、不良群では大きく(25.53±17.82)なっていた(p<0.001)。<BR>【考察】今回の結果、腱板断裂症例に対しては、疼痛を理学療法開始後1ヶ月以内に、機能を3ヶ月以内に理学療法の効果を出す必要があることがわかった。また、腱板断裂症例の可動域改善には残存腱等での代償動作のみならず、上腕骨に対して肩甲骨関節窩をあわせるような肩甲骨の下方回旋運動が可能である必要性が示唆され、肩甲骨の可動性と共に、いわゆるouter musclesの機能により肩甲上腕関節の適合性を得ることで上肢挙上が可能になり、ADL拡大につながると考える。
著者
野田 知之 尾崎 敏文
出版者
岡山医学会
雑誌
岡山医学会雑誌 (ISSN:00301558)
巻号頁・発行日
vol.122, no.3, pp.253-257, 2010-12-01 (Released:2011-01-04)
参考文献数
6
被引用文献数
2
著者
細川 義隆 細川 育子 尾崎 和美 松尾 敬志
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.61, no.1, pp.10-16, 2018 (Released:2018-02-28)
参考文献数
15

目的 : テアフラビンは紅茶に含まれる渋味成分の一つであり, ポリフェノールに分類される色素成分である. テアフラビンは, 抗酸化作用・抗炎症作用などさまざまな生理活性作用が報告されているが, 口腔上皮細胞に対する作用に関しては不明な点が多く, 十分に明らかにされていない. 本研究では口腔上皮細胞に対するテアフラビンの抗炎症作用について調べることを目的とし, 炎症性サイトカインの一つであるインターロイキン (IL)-27が誘導するケモカイン産生に与えるテアフラビンの影響を明らかとするため検討を行った. 本研究では, Th1細胞浸潤に関与するケモカインであるCXC chemokine ligand (CXCL) 9, CXCL10およびCXCL11産生に着目した. 材料と方法 : 口腔上皮細胞としてTR146細胞を用いた. TR146細胞のケモカイン産生は市販のELISAキットを用いて, テアフラビンにて1時間前処理後にIL-27で24時間刺激を行い, 上清中のCXCL9, CXCL10およびCXCL11産生を測定して検討した. また, IL-27が活性化するシグナル伝達経路に与えるテアフラビンの影響についてWestern blot法を用いて検討した. シグナル伝達経路としては, IL-27が活性化することが知られているprotein kinase B (Akt), extracellular signal-regulated kinase (ERK), signal transduction and activator of transcription (STAT) 1およびSTAT3に着目した. 結果 : テアフラビンの前処理によりIL-27で誘導されたTR146細胞のCXCL9, CXCL10およびCXCL11産生は, 濃度依存的に抑制された. また, IL-27が誘導したAkt, ERK, STAT1およびSTAT3のリン酸化は, テアフラビン処理により抑制された. 結論 : テアフラビンは口腔上皮細胞においてIL-27誘導ケモカイン産生を抑制することにより, 歯周炎組織の炎症を軽減できる可能性が示唆された.
著者
劉 春艶 尾崎 未空 小暮 駿太 鈴木 玲雄 宮田 侑季 角 英樹 浅野 早苗 梶川 博 高橋 慶
出版者
公益社団法人 日本畜産学会
雑誌
日本畜産学会第125回大会
巻号頁・発行日
2019-03-12

【目的】食品加工の過程で発生するダイコンとパイナップルの残渣は,高利用性飼料としての特性が期待される.本試験では両残渣の消化・発酵特性をイビトロ法により評価した.【方法】両残渣(ダイコン,パインと表記)の化学成分と併せて抗酸化能(FRAP)や硝酸Nを分析した.フィステル装着牛のルーメン内で経時的に培養するインシチュ法により消化パラメータを求めた.また嫌気的バッチ培養により経時的な発酵特性を測定した.対照飼料としてイタリアンライグラス(IRG)とコーンを用いた.【結果】飼料成分(OM,CP,NDP,%DM)ダイコンが89,9,34で,パインが95,7,60であり,FRAPがそれぞれIRGの0.7倍と3.4倍であった.DMのインシチュパラメータ(aとb%DM,kd%/hr)はダイコンで94,6,7.0,パイン20,68,4であり,ダイコンで溶解性が高く,パインでコーンと類似の反応を示した.発酵特性(総ガスとVFA)はコーンと比べてダイコンが同等の,パインが多少低い傾向を示した.ダイコンはメタン産生を強く抑制し,培養初期に乳酸産生を示した.
著者
朱宮 哲明 山田 千夏 和嶋 真由 伊藤 美香利 西村 直子 尾崎 隆男
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.65, no.2, pp.291-294, 2016-07-31 (Released:2016-09-24)
参考文献数
6
被引用文献数
1

食物アレルギー児に給食を提供する病院では誤食防止対策が求められている。これまで当院栄養科では,アレルゲンを除去した料理(アレルゲン除去食)を専用区域において担当調理師が調理し,その料理内容を食札に明記することにより誤食防止に努めてきた。平成26年1月~12月の1年間に,当院に入院した食物アレルギー児258例にアレルゲン除去食を提供したが,アレルゲンを含有する料理の誤配膳が3件発生し,内2件で患児の誤食があった。誤配膳が発生した原因として,アレルゲン除去食とアレルゲンを含む料理が同色の食器に盛り付けられていたことが考えられた。対策として誤食防止対策を改定し,アレルゲン除去食の食器とお膳を全て黄色に統一して他の料理と明確に区別した。さらに,アレルゲン除去食専用の棚を設け,配膳前の最終確認には調理担当者2人によるダブルチェックを義務づけた。今後も誤食防止対策の改良に努めていきたい。
著者
河内 誠 尾崎 隆男 西村 直子 大岩 加奈 岩田 泰 野田 由美子 中根 一匡 舟橋 恵二
出版者
一般社団法人 日本臨床衛生検査技師会
雑誌
医学検査 (ISSN:09158669)
巻号頁・発行日
vol.64, no.5, pp.569-575, 2015-09-25 (Released:2015-11-10)
参考文献数
14
被引用文献数
1

2012年10月~2014年3月の1年6カ月間に,激しい咳や長引く咳などにより百日咳の鑑別を要した168例を対象に,百日咳の実験室診断法を後方視的に検討した。病原体診断法として全例から後鼻腔ぬぐい液を採取し,百日咳菌分離とloop-mediated isothermal amplification(LAMP)法による百日咳菌DNA検出を行った。126例については,血清診断法としてPT-IgG抗体価を測定した(ペア血清67例,単血清59例)。実験室診断基準は,菌分離またはDNA検出または血清診断基準に該当したものとした。168例中34例(20%)が百日咳と実験室診断され,初診時年齢の中央値は0.9歳(日齢17~12.3歳)であった。DNA検出は16例(47%),菌分離は9例(26%)であり,菌分離例は全てDNA検出例であった。血清診断基準該当例は31例(91%)であり,18例(53%)が血清診断基準のみに該当した。その中の7例のワクチン未接種幼若乳児(日齢17~3カ月)では,6例がペア血清で抗体価の低下を認め,1例は幽門狭窄症による咳込み嘔吐であった。これら7例は母体の経胎盤移行抗体による血清診断基準偽該当例と考えられた。百日咳の実験室診断法として病原体診断がより確実であり,特に簡便・迅速で感度の高いLAMP法は有用と思われた。
著者
尾崎 博明 山田 修 菅原 正孝 濱崎 竜英 林 新太郎
出版者
大阪産業大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究では、新機能を有するナノセラミックスを微量有害有機物の処理に適用するための新規水処理技術の開発を行った。まず、TiCあるいはTiCにイリジウム(Ir)を分散させた粉末を原料として、燃焼合成法により透水性を有する多孔質セラミックスを合成した。同セラミックスは導電性と溶質吸着能を有することから、これを電極として微量有害有機物の分離(吸着)と分解を同時に行う処理法について検討した。医薬品類18種類の混合溶液について試験したところ、12種類については5分から120分の処理時間で分解し、本法が医薬品類のような難分解性物質の分解に有効であることが明らかになった。超難分解な有機フッ素化合物(PFOA:Perfluorooctanoic AcidとPFOS:Perflu-orooctane Sulfonate)に対して同法を適用したところ、各々84%と99%の除去率が得られた。排水中のこれらの物質について既報分解例はほとんど無く、本法がPFOAおよびPFOSの除去に有力な新手法となりうる重要な知見を得た。また、同セラミック多孔体をフィルター状に加工し、微量有害有機物の分離・分解同時処理を行う「ろ過型電気分解装置」を初めて開発し、医薬品類について処理試験を行った。その結果、溶質の約20%がセラミックスに吸着しながら電気分解が進行し、多くの医薬品類について高除去率が得られことがわかった。さらに、ナノセラミックスが有する光触媒機能に着目し、高強度光触媒繊維による微量有害有機物分解特性について考究し、2,4-ジクロロフェノキシ酢酸(2,4-D)についてCO_2までにいたる分解機序を明らかにするとともに、医薬品類の分解にも適用可能であることを明らかにした。上述した成果の内、とくにろ過型電気分解装置に関する研究は特許申請にもつながり、新しい水処理技術の開発に道を拓くものとして特筆できる。
著者
尾崎 裕之
出版者
慶應義塾経済学会
雑誌
三田学会雑誌 (ISSN:00266760)
巻号頁・発行日
vol.108, no.1, pp.201-233, 2015-04

1 はじめに2 線形代数の基礎3 固有値と固有ベクトル4 経済学への応用5 まとめと文献案内解説
著者
尾崎 敏司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.60, no.12, pp.2196-2210, 2019-12-15

2012年に独立法人情報処理推進機構により提示された「情報セキュリティ人材の育成に関する基礎調査」と2014年のその追加調査によると,約8.1万人の情報セキュリティ人材の不足が指摘されており,現在もその育成は課題となり続けている.自己学習や実業務の補助になると考えられるガイドラインは多く公開されているが,これらのガイドラインがセキュリティ業務のどの部分に該当するのかを学習者が把握することは難しい.そこで本研究では,学習者の体制化方略を補助する文書評価の枠組みを検討することを目的として,米国国立標準技術研究所の公開しているCybersecurity Frameworkをもとに,tf-idfによる特徴語のベクトルを用いてガイドラインの内容の可視化を行う手法の提案を行い,提案手法の妥当性と有利性の観点で評価を行った.情報セキュリティに関する4つのガイドラインに対して提案手法を適用して得た結果と,質的データ分析のテンプレートコーディングを実施して得た結果をコサイン類似度とピアソンの積率相関係数で比較したところ,フレームワークコアの機能で見た場合コサイン類似度の平均0.907,カテゴリで見た場合平均0.761となり,相関係数も機能では強い正の相関を示し,カテゴリでも正の相関を示した.これにより提案手法の分析結果の妥当性について確認できた.また,4つのガイドラインに対してtf-idfとk平均法によるクラスタリングとトピック分析を行った結果とCybersecurity Frameworkのテキストマイニングの結果を比較することで,体制化方略に求められる要求を満たすという観点で,枠組みを用いることに有利性があることを確認した.
著者
栗原 良平 尾崎 純 嵩下 敏文 脇元 幸一 富樫 秀彰 内田 繕博
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0170, 2017 (Released:2017-04-24)

【はじめに,目的】近年,腰痛症患者の腰部多裂筋(以降:LM)に横断面積の非対称性や筋厚減少など機能不全が生じるという報告が散見され,LM機能不全と腰痛の関連は強い。NorrisはLMの作用は腰椎伸展より,腰椎椎間関節の適合と腰椎屈曲に抗した活動が強いとされ,腰椎安定性に寄与していると述べており,LM機能向上は腰椎・脊柱屈曲機能に影響を与えることが推察される。また,柿崎らは,下位胸郭側方変位に伴い腰部多裂筋横断面積に変化を与えると述べており,LMに対する理学療法として胸郭へのアプローチが有効となる可能性を示唆している。本研究は,下部胸郭に対する運動療法がLMおよび脊柱屈曲可動性に与える影響について検証し,若干の知見を得たのでここに報告する。【方法】対象は健常成人男性12名(平均身長173.2±6.0cm,体重65.4±6.5Kg,年齢26.3±3.9歳)とした。下部胸郭への運動療法は刺激量の定量化にミナト医科学社製ストレッチングスティックを用い,スティック上での安静背臥位を7分間実施した。胸郭柔軟性評価には胸郭拡張差を用い,端坐位(股関節・膝関節90°屈曲,骨盤後傾位:ASIS-PSIS結ぶ線が床面に対して水平な状態)にて剣状突起,第10肋骨レベルをテープメジャーにて0.1cm単位で計測した。LM測定には超音波診断装置(Super Sonic Imagine社Aixplorerリニアプローブ7.5MHz)を用い,測定肢位はHidesらの方法を参考に,腹臥位でのL4レベルの左右LM筋厚を0.1mm単位で測定し,体重と身長で除し正規化した(以降LM値)。LM左右バランス(以降LMB)は左右LM値の高値側と低値側の差で算出した。脊柱屈曲可動性評価は指床間距離(以降FFD)を用い0.1cm単位で計測した。実施前後の比較には対応のあるt検定,運動後の各項目間の関係性の検定にはSpearmanの順位相関係数を用い,全て有意水準5%未満とした。【結果】運動実施前後で,剣状突起,第10肋骨,FFD,左右LM値,LMBで有意な差が認められた。運動後の胸郭柔軟性とLMBに中等度の負の相関(剣状突起:r-0.581,第10肋骨:r=-0.647),FFDとLMBに中等度の負の相関(r=-0.651)が認められた。【結論】下部胸郭に対する運動療法は左右LMとLMBに変化を与え,FFDを向上させることが認められた。胸郭は胸椎・肋骨・胸骨から構成され,一つのユニットとしての機能を有しているが,胸椎は腰椎と解剖・機能的に連結している。胸郭柔軟性向上は,間接的に腰椎機能が向上し,LM筋厚増加や左右バランスの均一化などの変化を生じさせ,FFDを改善させたと推察する。本研究の結果は,脊柱屈曲可動性に対する理学療法展開で,下部胸郭柔軟性への評価・介入も重要であることを示唆している。
著者
大林 民典 杉本 篤 瀧川 千絵 関谷 紀貴 長澤 准一 尾崎 喜一
出版者
日本医真菌学会
雑誌
Medical Mycology Journal (ISSN:21856486)
巻号頁・発行日
vol.56, no.2, pp.J73-J79, 2015 (Released:2015-06-15)
参考文献数
25
被引用文献数
1 6

血中 (1→3)-β-D-グルカンの測定依頼があった 415 件の残余試料を用いて,新製品ファンギテック® Gテスト MK II 「ニッスイ」と,生産中止となったファンギテック® Gテスト MK を比較・検討した.両者の最大の違いは,旧製品では東アジア原産のカブトガニ Tachypleus tridentatus の血球由来の原料が使われていたのに対し,新製品では北米原産のカブトガニ Limulus polyphemus が使われている点である.両試薬の測定範囲 (いずれも4.0 pg/ml~500 pg/ml ) において,新試薬の旧試薬に対する Passing-Bablok 回帰係数は 1.065 (95%信頼区間 : 1.015~1.111),y 切片は-0.287 (95%信頼区間 : -0.667~0.118) と,ほぼ 1 対 1 の対応がみられた.一方,個々の検体についてみると,乖離を示すものも少なくなく,β-グルカンの側鎖の多様性に対するカブトガニの種による反応性の違いが原因の一つと推測された.しかし,深在性真菌感染の関与が疑われた 40 検体についても回帰直線の両側に偏りなく分布していたこと ( χ2 =0.9,φ=1,p=0.34),また両試薬ともカットオフ値 20 pg/ml を切るとそのような検体の出現が激減することから,ファンギテック® Gテスト MK II 「ニッスイ」は MK と概ね同等であり,後継試薬として問題ないものと考えられる.
著者
尾崎 哲 森田 仁 下村 泰樹
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.45, no.4, pp.957-968, 1995-04-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
43

東洋医学では心身一如という概念があり, 身体と精神が相互に影響を及ぼしうるとされる。この観点から, 我々は身体疾患に適応される漢方方剤について向精神作用を検討した。そして, 速効性で著明な作用を認めた。しかし, 漢方方剤が〈一定の身体臓器〉に有効であるのと同様, 有効な精神症状は各方剤ごと固有の〈一定の精神症状〉に限られていた。その一環として我々は八味地黄丸に関して向精神作用を検討した。その結果, 意欲賦活作用と抗焦燥作用という, 相反する向精神作用を指摘した。その結果を含めた, 種々の漢方方剤の検討から, 向精神作用の把握には〈五行論, およびその相尅理論〉が有用である事を推測した。しかし, 八味地黄丸の向精神作用には附子が関与している可能性があった。このため今回, 桂皮, 附子を除去した六味丸の向精神作用を検討した。2週後の時点で有効な精神症状は意欲低下, 焦燥感のみで2週後 (4週後) の有効率は66.7% (91.7%), 66.7% (83.3%) と非常に有効であった。その反面, 抑うつ気分の軽度悪化を4週後の時点で41.7%認めた。我々は補剤の長期投与時に, 二次的な精神症状の改善を伴うことを指摘した。そして, これらの知見と今回の結果を総括するためには, 2~4週後以降の時点で〈五行論およびその相生理論〉が有用であると考えられた。また, 附子の向精神作用について種々の方剤との検討から, 火 (か) の補剤である可能性が推測された。また, 陰陽虚実図と五行論の相互関係についても若干の考察を行った。
著者
高橋 保 尾崎 毅
出版者
創価大学法学会
雑誌
創価法学 (ISSN:03883019)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.37-106, 1999-08
著者
尾崎 タイヨ
巻号頁・発行日
no.8, pp.27-53, 2019-03-10

本分析は所得格差を中心に、各種政策がどのような特徴を持ち、影響をもたらすか、マクロモデルを構築して実証的に明らかにする。格差を対象とする分析では、家計における消費、収入等の構造が所得階級によって異なることをモデルに内生化する必要があり、「家計調査」の所得階級別データに依拠しながら、世帯を単位として階級別世帯収入、有業者数などを推計し、消費支出や労働供給を定式化する。一方、企業の分析では「法人企業統計調査」に依拠しながら、生産・販売、賃金や雇用の決定、投資等を製造業、非製造業に区分して定式化する。これらは、家計、マクロ経済と相互にリンクし、雇用、消費、GDPなどを決定する。このモデルを使って、最低賃金の引き上げ、教育費無償化、女性の労働参画、医療費負担軽減、従来型の公共投資政策という5つの政策を検証し、これらの政策が世帯収入、賃金、消費支出、GDP、雇用、格差にどう関わるかを評価する。
著者
石川 耕平 佐藤 憲市 伊東 民雄 尾崎 義丸 浅野目 卓 山口 陽平 石田 裕樹 石塚 智明 岡村 尚泰 渕崎 智紀 谷川 聖 田中 伸哉 中村 博彦
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.9, pp.688-693, 2017 (Released:2017-09-26)
参考文献数
13
被引用文献数
1 2

Tumefactive multiple sclerosis (MS) は広範な浮腫や巨大な病変を形成することから, 脳腫瘍と鑑別が困難な例が多い. 本症例は66歳男性で右上下肢の単純部分痙攣発作で発症した. 左前頭葉の病変は画像上悪性グリオーマが疑われ摘出術が行われたが, 病理検査で脱髄性の所見や広範な出血および壊死像, Creutzfeldt cellを認めたことからtumefactive MSの診断に至った. 診断には病理検査が決定的となるが, 画像上病変部の血流上昇を認めないことが悪性グリオーマとの鑑別点と考えられた.
著者
治田 匡平 市田 裕之 石樋 康浩 宇髙 歩 日笠 真一 尾崎 淳子 大槻 真央 矢倉 裕輝 吉野 宗宏 古西 満 杉山 幸正
出版者
一般社団法人日本医療薬学会
雑誌
医療薬学 (ISSN:1346342X)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.44-53, 2019-01-10 (Released:2020-01-10)
参考文献数
18

Pharmacists' interventions are considered to be important at the time of starting anti-HIV therapy or changing treatment in outpatient care for HIV infection. We conducted a questionnaire survey to clarify patients' assessments of pharmacists' interventions in outpatient care for HIV infection. The survey was conducted at seven AIDS treatment center hospitals in the Kinki region, and the analysis was performed on 112 patients receiving the initial treatment and 79 patients experiencing treatment change. Pharmacists' interventions were found to be helpful by 97.3% of the initial treatment patients and 96.2% of the treatment change patients; the former often found it helpful in understanding the “necessity of receiving drugs” and “failure in taking drugs and acquisition of resistance”, while the latter often found it helpful in understanding the “difference of the new drug from the previous one” and “side effects”. Pharmacists' interventions relieved anxiety in 89.3% of the initial treatment patients and 89.9% of the treatment change patients, and produced good overall effects such as “relieving anxiety as regards receiving drugs”, “facilitating communication with doctors”, and “reducing questions for doctors”. The survey results showed that pharmacists' interventions at the time of starting anti-HIV therapy or changing treatment met patients' needs and contributed to improving the quality of medical care, such as reducing patient anxiety and the burden on doctors.
著者
中村 正和 田淵 貴大 尾崎 米厚 大和 浩 欅田 尚樹 吉見 逸郎 片野田 耕太 加治 正行 揚松 龍治
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.3-14, 2020-01-15 (Released:2020-02-04)
参考文献数
45

目的 本報告の目的は,加熱式たばこの使用実態,健康影響,ニコチン供給装置としての製品特性に関わるエビデンスをもとに,本製品の流行がたばこ規制の主要政策に与える影響を検討し,今後の規制のあり方について政策提言を行うことである。方法 加熱式たばこの使用実態,有害化学物質の成分分析,ニコチン供給装置としての製品特性に関する文献検索には医学中央雑誌とPubMedを用い,11編を収集した。そのほか,国内の公的研究班の報告書と海外の公的機関の報告書から8編を収集した。 本製品の流行がたばこ規制に与える影響については,WHOがMPOWERとして提唱する6つの主要政策を取り上げた。本検討にあたっては,上述の19文献に加えて,たばこ規制の現状に関わる計26編の文献や資料を収集して用いた。結果 わが国では2013年12月から加熱式たばこの販売が開始され,2016年から流行が顕著となっている。2016年10月の時点で,日本は国際的に販売されている加熱式たばこ製品の90%以上を消費している。加熱式たばこは,紙巻たばこに比べるとニコチン以外の主要な有害物質の曝露量を減らせる可能性がある。しかし,病気のリスクが減るかどうかについては明らかでなく,紙巻たばこを併用した場合には有害物質の曝露の低減も期待できない。また,ニコチンの曝露ならびに吸収動態は紙巻たばこと類似しており,ニコチン依存症が継続して,その使用中止が困難になる。 加熱式たばこの流行は,WHOが提唱する6つの主要政策のいずれにおいても,現状の日本のたばこ規制の下では悪影響を与える可能性が考えられた。結論 加熱式たばこの流行に対して公衆衛生上の懸念が指摘されているが,その規制のあり方を検討するためのエビデンスが不足している。今後,加熱式たばこの健康影響のほか,紙巻たばこ使用への影響,たばこ政策に与える影響について研究を進める必要がある。健康影響が解明されるまでは,公衆衛生の予防原則の観点から紙巻たばこと同様の規制を行うべきである。