著者
山口 晃人
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.2_161-2_184, 2021 (Released:2022-12-15)
参考文献数
33

民主政論者は、知識や能力に応じて意思決定への影響力を不平等に分配する 「智者政 (epistocracy)」 を否定し、意思決定への影響力を平等に分配する 「普通参政権 (universal suffrage)」 を擁護している。その一方で、ほとんどの民主政論者は、子どもには有権者として必要な能力が欠けていることを理由に、参政権を大人に限定することを容認している。 本稿では、民主政論者が智者政による能力に基づく政治的影響力の不平等分配を批判しながら、能力に基づいて子どもの参政権を否定することは、一貫性を欠いていると論じる。子どもの参政権剝奪を正当化可能な理由は能力以外にないと考えられるため、民主政論者は、以下の2つの道のいずれかを選ばなければならない。1つは、あらゆる能力による区別に反対し、子どもを含めた真の普通参政権を支持する道である。もう1つは、民主政の理念型から逸脱することを受け入れた上で、大人のみの普通参政権を支持する道である。本稿は更に、前者の道を選び、子どもに参政権を認めることが民主政論者にとって大きな負担にはならないことを示すとともに、後者の道を選んで、大人のみの普通参政権を支持する場合の難点を指摘する。
著者
山口 晃史 久野 道 堀谷 まどか 渡邉 典芳 久保 隆彦 加藤 達夫 村島 温子
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.84, no.4, pp.449-453, 2010-07-20 (Released:2017-08-18)
参考文献数
17

米国疾病予防管理センター(Center for Disease Control;CDC)やアメリカ産婦人科学会(American College of Obstetricians and Gynecologists;ACOG)は過去の世界的大流行における調査から,妊婦はインフルエンザ感染症に対しハイリスクグループとし,1999 年より妊娠初期を除く妊婦に対してのインフルエンザワクチン接種の推奨を開始,2004 年には妊娠初期を含む全期間での妊婦に対する接種へ対象を拡大している.本邦でも妊娠中のインフルエンザワクチン接種は少しずつ推奨されてきており,その安全性を評価した.2007 年~2009 年に季節性インフルエンザワクチン接種を行った182 症例に対し,妊娠初期,中期,後期の接種時期別に調査を行い,各時期での安全性を妊婦への副反応,胎児への影響を評価した結果,ワクチン接種時の妊娠週数にかかわらず,接種に関連する有意な母体の副反応,児の流・早産,奇形は認められず,ワクチン接種の安全性が確認された.
著者
山口 晃人
出版者
日本政治学会
雑誌
年報政治学 (ISSN:05494192)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.2_100-2_124, 2020 (Released:2021-12-15)
参考文献数
32

政治哲学において、政党は長らく注目されてこなかった。政党が民主主義論の研究対象として前景化されたのは、ここ十年ほどのことである。本稿では、近年の政治哲学における政党研究の主要な議論を再検討することで、立法過程における議会政党の存在意義を明らかにすることを試みる。その結果明らかになるのは、政党は情報提供者として立法過程に不可欠であるが、最終的な意思決定者であるべき積極的な理由を持たず、むしろ政党が最終的な意思決定者になるべきではない一応の理由が存在するということである。その上で、既存の選挙制議院 (選挙院) に加え、無作為抽出された一般市民からなる抽選制議院 (籤院) を設置する選挙院・籤院構想を提示し、それによって政党が意思決定者となることに伴う問題を回避できることを示す。
著者
大塚 麻衣 山口 晃巨 数井 優子 西田 響 大森 毅 宮口 一
出版者
日本法科学技術学会
雑誌
日本法科学技術学会誌 (ISSN:18801323)
巻号頁・発行日
vol.28, no.2, pp.169-176, 2023 (Released:2023-07-31)
参考文献数
14

Cyanide is a gaseous poison which is liberated from cyanide compounds such as potassium cyanide. In spite of high toxicity, cyanide compounds are easily accessible for industrial use, and some contamination cases of cyanide into beverages have occurred. For analysis of cyanide, various analytical methods such as colorimetric methods have been reported. Among those, headspace-gas chromatography-nitrogen phosphorus detection (HS-GC-NPD) is known for its easy pretreatment method and high quantitation ability. The application of HS-GC-NPD analysis to cyanide in blood specimens have been reported by many groups. However, comparison results of some experimental manipulations, such as addition of acid, syringes used for introduction of samples to the GC, and amount of sample introduced into the GC are not clear. In addition, there is no detailed description about application to beverage samples. In this work, we have investigated some experimental manipulation of manual HS-GC-NPD and applied the optimized method to beverage samples. After the optimization, the addition of acid with micropipette in open system and introduction of 100 μL of headspace gas into GC with gastight syringe are recommended. For beverage samples, although variations were larger than standard samples, those variations could be compensated by use of acetonitrile as an internal standard.
著者
小林 和博 山口 晃一郎
出版者
一般社団法人 日本応用数理学会
雑誌
日本応用数理学会論文誌 (ISSN:24240982)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.11-35, 2023 (Released:2023-03-25)
参考文献数
11

概要. 電欠予防配送計画問題では,電気自動車を用いた配送計画を作成する. 電気自動車を用いる場合は,ルートの途中で電欠を起こさないよう充電場で充電を行う必要がある.このような配送計画を作成するための局所探索に基づくメタヒューリスティックを述べるとともに,実運用環境を模擬した数値検証により性能を評価する.近傍探索は配送計画でよく用いられるものとShaw removalヒューリスティックとを組合せたものである.
著者
竹内 洋 稲垣 恭子 細辻 恵子 目黒 強 末冨 芳 佐藤 八寿子 細辻 恵子 目黒 強 末冨 芳 佐藤 八寿子 冨岡 勝 高山 育子 井上 好人 石井 素子 野口 剛 山口 晃子
出版者
関西大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2006

学生生活調査や校友会誌、新聞記事、書簡集、小説などを資料として1930年代、1960年代の学生文化の転換点を明らかにした。これらの作業にもとづいて、明治期から現在にいたる学生小説の流れを確認し、代表となる学生小説を選定して各時代の特性についてまとめるとともに、学生文化の構造的変容を明らかにした。これらから、戦後日本社会における知識人界と「学問」の変容についてそのダイナミズムを描き出し、現在の社会における大学と大学界のゆらぎについて検討した。
著者
山口 晃志
出版者
埼玉県警察科学捜査研究所
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2007

催眠薬の尿中代謝物をスクリーニングする簡便な方法としてイムノアッセイを利用した「トライエージ」がある。しかし、「トライエージ」で検出されない催眠薬もある。特に、ゾルピデム及びゾピクロンは広く普及している催眠薬であるにもかかわらず、これらの代謝物は「トライエージ」では検出できない。そこで本研究では、ゾルピデム及びゾピクロンの尿中代謝物の分析を目指した。ゾピクロン代謝物(デスメチルゾピクロン)は文献に従い本研究で合成し、ゾルピデム代謝物はサノフィアベンティス社からの譲渡品を用いた。代謝物を添加した尿を固相抽出カートリッジ(OASIS MCX)で固相抽出し、LC/MS/MS(SRMモード)分析したところ、濃度1ng/mlでも検出可能であることが分かった。本研究で確立した分析方法を用いて実際に起こった強姦事件の被害者の尿を分析し、ゾルピデム代謝物を検出した。催眠薬の多くは、体内で水酸化されグルクロン酸抱合体の形で尿中に排泄される。そのため、尿中催眠薬代謝物を微量分析するにはこれらグルクロン酸抱合体の性質を明らかにすることが重要である。そこで、代表的な催眠薬であるトリアゾラムの尿中主代謝物であるヒドロキシトリアゾラムのグルクロン酸抱合体の合成を目指した。文献に従いヒドロキシトリアゾラムを合成した後、水酸基をアセチル基で保護したグルクロン酸との反応を試みた。反応生成物のマススペクトル(ESI)を分析したところ、ヒドロキシトリアゾラムにグルクロン酸部分が導入された化合物と思われるm/z値を与えた。しかし、NMR分析をしたところ、複数の生成物の混合物であることを示唆する結果を得た。今後、合成条件を変え、収率の向上を目指す予定である。
著者
山口 晃弘
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.66, no.11, pp.540-541, 2018-11-20 (Released:2019-11-01)
参考文献数
6
著者
島村 忠勝 胡 志青 大久保 幸枝 趙 維華 柳川 容子 山口 晃史
出版者
昭和大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

カテキンの抗微生物活性のメカニズムおよびカテキンの抗微生物薬との併用効果について研究を行った。1.エピガロカテキンガレート(EGCg)は細菌細胞膜や細胞壁傷害作用および細胞壁合成阻害作用を有し、β-ラクタム剤と併用すると、MRSAに対するβ-ラクタム剤の抗菌活性を復活させ、強い相乗効果が発現した。タンパク合成阻害剤、核酸合成阻害剤との併用では相乗効果は見られず、ペプチド系抗生物質では拮抗作用が見られた。この拮抗作用はEGCgとペプチドの結合によると考えられた。また、EGCgはβ-ラクタマーゼ活性を直接阻害することができ、β-ラクタマーゼ産生黄色ブドウ球菌およびMRSAに対して、EGCgとβ-ラクタム剤の併用は相乗効果を発揮した。β-ラクタマーゼが分泌されないグラム陰性桿菌に対して、効果は弱かった。2.ヘリコバクター・ピロリに対しては、EGCg単独で殺菌作用を示した。クラリスロマイシン高度耐性株に対してEGCgとクラリスロマイシンまたはプロトンポンプ阻害剤を併用すると相加効果が見られた。3.細胞内寄生菌サルモネラに関しては、EGCgはサルモネラ食食マウスマクロファージの細胞内殺菌能を亢進した。EGCg投与マウスのマクロファージはサルモネラ貧食能と細胞内殺菌能がともに増強した。4.HIVに関しては、HIVの細胞への吸着後から宿主細胞遺伝子への挿入までの過程においてEGCgの阻害作用が見られ、逆転写酵素やプロテアーゼの阻害が示唆された。また、EGCgは持続感染細胞からのHIV粒子の産生を抑制した。この抑制効果はリボソームに包埋したEGCgやLPSを併用すると増強した。しかし、このEGCgの効果は単球細胞系で特異的におこり、リンパ球では見られなかった。また、EGCgとAZTを併用すると弱いながら相乗効果が見られた。
著者
山口 晃史 島村 忠勝
出版者
医学書院
巻号頁・発行日
pp.173-178, 2001-02-15

はじめに 重症感染症ならびに慢性化した感染症に対し抗生剤の多剤連用を強いられる場面に遭遇することはしばしば経験するものである.多くの場合,耐性菌に対する医師の意識の向上により十分なモニタリングのもとに適切な抗生剤の選択,投与,中止が行われているが,一部では不適切な選択,無計画な投与期間によって薬剤耐性菌が出現し病棟内に蔓延している場合も少なくない.薬剤耐性菌の存在が治療を困難にしているのは,呼吸器感染症においても例外ではなく,特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(methicillin resistant Staphylp—coccus aureus:MRSA),ペニシリン耐性肺炎球菌(penicillin resistant Streptococcus pneumoniae:PRSP)や薬剤抵抗性緑膿菌(Pseudomonasaeruginosa)による感染症は難治性となる場合が多い. 最近話題の植物由来生体機能物質であるフラボノイドの一種である茶カテキンが,これらの薬剤耐性菌をも殺菌することが明らかにされている.われわれは,このカテキンの殺菌活性を臨床応用し,MRSA呼吸器感染症に対し除菌を目的としてのカテキン吸入療法を提唱している1).本稿では,カテキンの抗菌活性とそのメカニズムならびに,難治性呼吸器感染症であるMRSA呼吸器感染症に対するカテキン吸入療法の実際とその可能性について述べてみたい.
著者
山口 晃人
出版者
東京大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2019-04-25

代表制民主主義の危機が叫ばれる現在、より良い立法システムを探究することは急務である。本研究では、選挙デモクラシーに代わりうる二つの代表者任命手続きを検討することで、立法システムの改善を目指す。第一の代替案は選挙ではなくくじ引きで代表者を選ぶロトクラシーであり、第二の代替案は優れた知識・能力を持つ人々のみが統治するエピストクラシー(知者の統治)である。実社会においても学問上においても選挙デモクラシーは自明視され、ごく最近までこれら二つの代替案の可能性は真剣に検討されてこなかった。本研究ではこれら二つの代替案との比較を通じて、優れた意思決定手続きの条件を明らかにする。
著者
真矢 滋 山口 晃広 稲木 達哉 植野 研
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 第33回全国大会(2019)
巻号頁・発行日
pp.1I4J205, 2019 (Released:2019-06-01)

IoTの発展に伴い、大量の時系列データが取得可能になりつつある。このような時系列データから有用な知見を発見するために、多変量時系列データを特徴的なパターンに分割するセグメンテーション方法が注目を集めている。しかしながら、既存手法では分割位置が変数に関わらず同一であり、変数間の特徴を捉えることが困難であった。この問題に対応するために、各変数で適切な分割位置を求める手法を提案する。そして、人工データと実データを用いて提案手法の有効性を検証する。
著者
山口 晃
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.52, no.11, pp.642-649, 1979-11-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
3
被引用文献数
2
著者
清弘 晃史 山口 晃平 高 赫 中村 啓之 峯 恒憲
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.89, pp.37-42, 2014-06-19

近年では,デバイスの履歴を用い,マーケティングにおいて重要なキーとなる顧客の購買行動の傾向をつかむ事ができるようになった.これまでの研究ではPOS(Points Of Sales)データを用いてCRM(Customer Relationship Management)への応用を目的として購買行動の解析がなされてきた.また,交通系ICカードや携帯電話などのセンサーデバイスも普及し,GPSデータによる歩行者の回遊行動の解析もなされてきた.しかしながら,交通系ICカードの履歴を用いた乗降行動と購買行動を関連づけた解析の研究はほとんど行われていない.本研究では交通系ICカードの利用履歴から乗車前の購買行動と降車後の購買行動に焦点をあてて解析した結果について報告する.