著者
宮地 秀樹 山本 剛
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.449-455, 2023-11-01 (Released:2023-11-01)
参考文献数
51

COVID-19によるパンデミックは医療体制に大きな影響を与えた。COVID-19陽性期間の急性心筋梗塞発症率は陰性患者に比べ増加したが,実臨床では受診控えなどによってパンデミック期間の急性心筋梗塞の入院患者数は減少した。CCUでは各施設が診療の質を維持するために様々な対応を行ったが,パンデミックにより急性心筋梗塞患者の治療までの時間は延長し,院内死亡率が世界各国で上昇した。一方,日本では,院内死亡率は上昇しなかった。 本稿では,COVID-19と急性心筋梗塞の関連性およびパンデミック期間の急性心筋梗塞診療の実情について解説する。
著者
日置 和昭 藤原 照幸 本郷 隆夫 山本 剛一 中岡 明
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会論文誌 (ISSN:18835856)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.15-22, 2023 (Released:2023-03-25)
参考文献数
8

本研究では,廃棄物資源循環という観点から,廃ガラスカレット (GC) を圧密促進工法の一つであるサンドドレーン (SD) 工法の中詰め材料として有効利用するため,GC や SD 材として適用実績のある海砂,さらには SD 材としては不適応な山砂 (まさ土) に GC を混ぜた GC 混合砂を対象に,1/10 モデルの圧密土槽試験を考案・実施し,GC の SD 材としての適用性について実験的考察を行なった。その結果,① GC を用いた SD と海砂を用いた SD の圧密促進効果 (圧密速度) は,ほぼ同等と評価できること,② 山砂 (まさ土) も GC と混合させ粒度改良を施すことにより,海砂とほぼ同等の圧密促進効果 (圧密速度) を期待できること,③ 透水係数 ks が 5.5 × 10−5 ~ 1.7 × 10− 3 m/s の範囲にある SD 材では,圧密促進効果 (圧密速度) に大きな差異は現れないことが明らかとなった。
著者
田坂 佳資 松原 康策 仁紙 宏之 岩田 あや 磯目 賢一 山本 剛
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.89, no.6, pp.727-732, 2015-11-20 (Released:2017-07-28)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

小児期の非チフス性サルモネラ属菌による侵襲性感染症の臨床像や,長期間に亘る発症頻度の解析報告は少ない.これらを明らかにするため,地域中核病院において1994~2014 年に無菌検体から同菌が分離された小児を対象に,診療録を後方視的に検討した.研究期間を第1 期(1994~1999 年),第2 期(2000~2004 年),第3 期(2005~2009 年),第4 期(2010~2014 年)に分けた.該当症例は17 例(日齢2~13 歳)であった.腸炎に菌血症合併例が13 例,菌血症・敗血症のみが2 例,骨髄炎,髄膜炎が各1 例であった.発症時期は,第1 期から第4 期の順に各々10 例,5 例,2 例,0 例と経時的に有意(trend p<0.001)に減少し,入院数で補正しても有意(trend p=0.009)な減少であった.新生児期発症2 例と骨髄炎1 例を除く,菌血症を呈した14 例では,入院時WBC は13 例(93%)が15,000/μL 未満で,CRP は0.8~20.4mg/dL と幅広く分布した.これらの菌血症の診断は,血液検査から推定することは困難で,高熱,全身状態不良,低年齢等の危険因子を考慮する必要があった.分離菌のO 血清群はO9,O7,O4 群が各々11 株,5 株,1 株であった.抗菌薬の感受性は評価した15 株中,ampicillin 耐性が2 株,fosfomycin 耐性と中等度耐性が各1 株であった.cefotaxime,ofloxacin またはlevofloxacin,trimethoprim-sulfamethoxazole は全て感性であった.日齢2 の敗血症例は下痢を伴う母からの垂直感染が,日齢14 の髄膜炎例は3 週間の治療後に再発を認めたことがそれぞれの特徴であった.本研究は,小児期侵襲性非チフス性サルモネラ感染症の臨床的特徴を明らかにし,20 年に亘って有意に減少していることを示した本邦初の報告である.
著者
山本 剛
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.5, pp.370-374, 2018 (Released:2018-05-25)
参考文献数
12

近年, 本邦においても静脈血栓塞栓症 (venous thromboembolism : VTE) の治療に直接作用型経口抗凝固薬 (direct oral anticoagulant : DOAC) が選択可能となった. VTEの初期治療方針は早期の予後リスクに基づいて決定する. 肺塞栓症によるショック例には血栓溶解療法を行う. 非ショック例には抗凝固療法を行うが, その方法として, (1) 未分画ヘパリンやフォンダパリヌクスの非経口薬からワルファリンへ橋渡しする従来法, (2) 非経口薬投与後にDOACの1つであるエドキサバンへ切り替える方法, (3) DOACのリバーロキサバンあるいはアピキサバンを初期強化用量にて開始し, その後維持量にて投与する単剤治療法がある. DOACを用いた抗凝固療法は, 従来治療の欠点を補い, 投与レジメンの標準化, 初期からの外来治療が可能になるなど, VTE管理の適正化をもたらした.
著者
山本 剛優 伊藤 政喜 奈良 一寛
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集 2021年度大会(一社)日本調理科学会
巻号頁・発行日
pp.26, 2021 (Released:2021-09-07)

【目的】不溶性食物繊維を多く含む全粒穀物の摂取が、冠状動脈疾患のリスク低減に有効であることが報告されている。スナック菓子の原材料としても多く利用されているトウモロコシも食物繊維の豊富な全粒穀物の一つであることから、その利用が期待される。一方でトウモロコシでは、多糖類にフェルラ酸がエステル結合して存在することが明らとなっているが、穀粒の形や性質による差異については十分に明らかではない。そこで本研究では、トウモロコシ多糖類の微細構造の差異について明らかにするため、トウモロコシの種類さらにはそれらの加工品におけるフェルラ酸量の差異について調査した。【方法】トウモロコシ(ポップ種、デント種、ワキシー種)およびトウモロコシ加工品(ポップコーン、コーングリッツ、フライ製品)を材料とした。粉砕した試料を一定量はかりとり、1M水酸化ナトリウムを加えアルカリ処理することでフェルラ酸を遊離させ、遊離したフェルラ酸をHPLCにて測定した。【結果・考察】デント種とワキシー種においては差が認められなかったが、ポップ種においては顕著に多かった。ポップ種はバタフライ型とマッシュルーム型に分類されるが、バタフライ型において、よりフェルラ酸が多いことが明らかとなった。コーングリッツおよびコーングリッツを使用したフライ製品では原料に比べ顕著に減少していた。一方で、ポップコーンは加工後も原料と同程度のフェルラ酸が残存していることが明らかとなった。 以上のことから、トウモロコシ及びその加工品では、種類や加工法によってフェルラ酸に差異が見られることが明らかとなった。中でもポップコーンは、フェルラ酸が多いことから、その摂取源としては有用な素材であることが示唆された。
著者
樫田 陽子 町田 登 山本 剛 桐生 啓治
出版者
日本獣医循環器学会
雑誌
動物の循環器 (ISSN:09106537)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.6-11, 1999 (Released:2005-11-11)
参考文献数
18

レースにおいて突然1着馬から大差で遅れて入線し,その直後の心電図(ECG)検査で発作性心房細動(AF)が認められた2例の所見について報告した。症例1ではレース終了10分後にAFが確認され,頻発性多源性心室性期外収縮(VPC)を伴っていた。本例は24時間後には正常洞調律に復帰していたが,その後の調教で状態不良のため競走馬から除籍された。症例2ではAF発症時にVPCは認められず,洞調律復帰後の成績は良好であった。運動直後に発作性AFが起こりVPCが併発した場合,予後は不良となる可能性が示唆された。
著者
飛田 勇輝 山本 剛 工藤 俊明 湯本 貴文
出版者
国立保健医療科学院
雑誌
保健医療科学 (ISSN:13476459)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2, pp.140-146, 2022-05-16 (Released:2022-05-20)
参考文献数
12

令和 2 年12月,小林化工株式会社が製造販売する経口抗真菌薬イトラコナゾール錠50mgに睡眠薬原料が混入し,多数の健康被害が発生した.本件を皮切りに,多数の医薬品製造業者において医薬品,医療機器等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律からの違反が発覚.我が国における医薬品の品質に対する信頼を大きく損なうこととなった.厚生労働省は,このような状況を踏まえ,多角的な観点から再発防止策を講じている.
著者
生嶋 佳子 坂下 竜也 山本 剛 久保田 啓一
出版者
九州理学療法士・作業療法士合同学会
雑誌
九州理学療法士・作業療法士合同学会誌 (ISSN:09152032)
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.141, 2009

【はじめに】<BR> 不慮の事故により心身に重度な障害を持った児に急性期から在宅復帰まで関わる機会を得た。在宅に帰すにあたり、両親の不安要素となる状態悪化時の対応が重要な課題であった。そのため両親への指導、訪問サービス等の社会資源の準備を行うとともに、症例の移動手段として人工呼吸器・酸素ボンベ搭載型のバギーを作製した。これらの取り組みを通じ、在宅生活での両親の不安解消の一助となり得たため報告する。<BR>【症例】<BR> 0歳2ヶ月、男児、低酸素脳症。自宅にて心肺停止状態となり当院救急搬入。諸検査より臨床的脳死状態と診断。リハビリテーション開始時よりJCS300、人工呼吸器管理、弛緩性四肢麻痺を認めた。経過中、肺炎、感染症等を併発し全身状態の悪化が度々みられた。両親の自宅退院への強い希望があり、主治医の判断のもと入院14ヶ月目に自宅退院への方向性が決定される。<BR>【退院前準備】<BR> 両親への指導として吸引、気切カニュラ交換等を医師や看護師が行い、理学療法士、作業療法士により姿勢管理や排痰の指導を行った。また身体障害者手帳を申請し訪問看護等の準備をすすめた。退院後の状態悪化時には速やかな病院搬送が必要であり、その移動手段として人工呼吸器・酸素ボンベ搭載型バギーを考案。退院前訪問にて居室間取り・段差の確認を行い、介護タクシーの車内寸法を測定し、配置場所やサイズ調整等を行った。両親の要望をふまえ、各々のスタッフの意見を取り入れながら仮合せを数回行い納品に至った。その後、外出や外泊訓練を行い、入院22ヶ月目に自宅退院となった。<BR>【在宅での生活】<BR> 退院後は訪問看護・リハビリや医師による訪問診療を実施し、定期的に症例の状態を確認している。バギーは居室内に入れ、常時架台に人工呼吸器や酸素ボンベを搭載したまま寝台の横に設置し、機器類を使用している。一度急変にて当院へ搬入されたが、予め機器類を搭載していたことで余分な取り付け作業等が省け、迅速な対応にて搬送が可能であった。<BR>【まとめ】<BR> 症例は入院中に肺炎、感染症を併発し何度も生命的危機に直面した。そのため在宅へ帰すにあたり最も危惧されたことは全身状態悪化時の対応であり、両親の最も大きな不安要素でもあった。そのため移動手段として人工呼吸器・酸素ボンベ搭載型バギーを作製し、常時機器類を搭載し使用する環境設定を行なった。実際に退院後に急変にみまわれたが、それらの事前準備にて両親共に落ち着いた対応できていた。そのことが現在では在宅生活での自信にも繋がっている。また、症例の体調や気候が良い時には近所の公園にバギーで外出するなど家族で余暇活動を行う余裕も出来てきている。「一緒にいることで充実した日々を過ごしている」と退院後に母親は語っており、当初抱えていた不安の解消と充実した生活への支援へとなり得たものと考える。
著者
山本 剛 坂根 裕 竹林 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. HI, ヒューマンインタフェース研究会報告 (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.105, pp.13-20, 2003-09-26
参考文献数
17
被引用文献数
5

カメラ,マイク,モーションセンサを搭載したマルチモーダルヘッドセットを装着することで,話者が会話中に行う非意図的な「うなずき」動作を検出し,会話中の重要箇所をマルチモーダルセンサデータから知識コンテンツとして抽出するシステムを実装した.本稿では,会話の重要箇所を把握する手段としてのうなずきの有効性を実験を通して述べ,状況や個人差を考慮したうなずきの検出方法とその応用について論じる.
著者
山本 剛史
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.30, pp.52-62, 2012-09-30 (Released:2018-02-01)

In this article, I show the significance of Hans Jonas' ethics of responsibility in the situation wherein the ethical problems of technology extend from the present to the future generations. Jonas used his consideration of the problem of bioethics of experiments on a human body as his opportunity to begin his study of ethics in earnest. At the same time, he criticizes the re-definition of death as this enables and promotes the practice of organ transplants from an irreversibly comatose donor. Both human body experiments and the re-definition of death are considered from the viewpoint of the defenseless victim who is sacrificed in the name of medical progress to save lives and conquer disease. Jonas insists on the "-descending order of permissibility-" as a general principle to prevent sacrificing the defenseless victim. According to Jonas' philosophy of life, it is not appropriate to understand the human mind and body as separate entities. Life itself is not lost even if it is assumed that consciousness does not recover if the body lives. Extraction of organs from such a person who is incapable of putting up a defense constitutes a sacrifice of the defenseless victim. Jonas positions future generations as the ultimate victim in "the principle of responsibility" and advocates a new ethic to forbid the act that offers them in a one-sided sacrifice. He reforms ethics from a form that assumes the individual and autonomous subject to a form that considers the relationship between the subject and object of the responsibility. Jonas shows that the fundamental human character, that is, two paradigms of the responsible subject, "parent" and "politician" enables one to make a self-sacrifice through one's identification with his/her problem. The ethics of Hans Jonas is imbued with the idea of prevention of sacrifice of the victim.
著者
山本 剛史 松成 宏之 奥 宏海 村下 幸司 吉永 葉月 古板 博文
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.67, no.4, pp.367-375, 2019

<p>ヒスチジン(His)含量の低いイワシ魚粉と His 含量の高いアジ魚粉を50%配合した飼料(FM1,FM2),FM2 の含量に合わせて FM1 に His を添加した飼料(FM1H),イワシ魚粉の配合を15%に削減して大豆タンパク質とコーングルテンに置き換えた低魚粉飼料(LFM)および FM1 と FM2 の含量に合わせて LFM に His を添加した飼料(LFMH1,LFMH2)を平均体重4.7 g のブリに45日間給餌した。最も成長の良かった FM2 区に比べ,FM1 区では若干劣り,低魚粉飼料の3 区の成長はいずれも FM1 より劣った。一方,His を FM2 のレベルに添加した FM1 と LFMH2 を与えたブリでは摂餌が増加し,成長が改善する傾向がみられた。肝臓の遊離アミノ酸組成には飼料の影響はほとんどなかったものの,普通筋では飼料中の含量を反映して His が蓄積する一方で,タウリンやほかのアミノ酸が減少した。以上の結果から,ブリ稚魚において飼料への His の添加効果は限定的であり,特に低魚粉飼料の栄養価を根本的に改善するものではないことが示された。</p>
著者
松井 利仁 平松 幸三 長田 泰公 山本 剛夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.80-85, 2003-02-01
被引用文献数
3

沖縄県は1997年に県内の飛行場周辺に航空機騒音のモニタリングシステムを設置した。本報告では,モニタリングシステムによって集積された測定資料を用い,嘉手納,普天間飛行場周辺の騒音曝露の現状を示している。両飛行場周辺では,昼夜を分かたず広範囲で高レベルの騒音が観測されており,特に嘉手納飛行場近傍では,夜間においても110dBを超える騒音レベルが記録されていた。また,防衛施設庁の定める騒音に基づく地域区分との関連を検討したところ,嘉手納飛行場周辺では,離着陸コース直下を除いて,今回算出したWECPNLが防衛施設庁の地域区分より低い値となったが,普天間飛行場周辺では両者がほぼ一致した。