著者
中村 哲 永尾 翔 田村 裕和 山本 剛史
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.77, no.5, pp.287-292, 2022-05-05 (Released:2022-05-07)
参考文献数
29

陽子と中性子は電荷の有無という大きな違いがあるがほぼ同じ質量をもち,さらに核力に対する振る舞いもほぼ同じである.例えば陽子1個と中性子2個から構成される三重水素(3H)と陽子2個と中性子1個からなるヘリウム3(3He)は鏡映核の関係にあり,ほぼ同じ質量(約2,800 MeV/c2)をもつが,この両者の質量差から,陽子と中性子の質量差およびクーロン相互作用の効果を除外して,核力による3Hと3Heの束縛エネルギー(それぞれ約8 MeV)の差を求めると,わずか0.07 MeV程度しかない.これは陽子・陽子間と中性子・中性子間の核力の強さがほとんど等しいことを示している.このような陽子と中性子の入れ替えに対する核力(そして原子核)の対称性を荷電対称性(Charge Symmetry)という.核子だけで構成される通常の原子核に,最も軽いハイペロンであるラムダ粒子を束縛させたものをラムダハイパー核と呼ぶ.半世紀ほど前に実施された実験結果に基づいて,通常の原子核では良く成り立っている荷電対称性が4ΛH(三重水素にラムダ粒子が束縛した系)と4ΛH(ヘリウム3にラムダ粒子が束縛した系)の間で大きく破れているのではないか,と言われてきたが,その証拠とされる実験結果の一部は統計量,分解能のどちらも不十分であり,ラムダハイパー核における大きな荷電対称性の破れの有無は確定していなかった.この状況を打破すべく,我々は最新の実験技術を駆使した2つの実験をドイツMAMI電子加速器施設と茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設J-PARCで行った.MAMIにおいては薄い9Beフォイルに1.508 GeVの電子ビームを照射した.生成されたハイパー核の破砕反応から生じた4ΛHハイパー核は,その多くが標的中に静止して弱い相互作用により4He+π-に2体崩壊する.このとき放出されるπ-の運動量を精密に測定することにより,親核である4ΛHの基底状態の質量を過去の実験より10倍良い分解能で測定することに成功し,電子ビームを用いて生成したラムダハイパー核の崩壊π中間子分光法という新しい実験手法が確立した.この測定により4ΛH,4ΛHeの基底状態(スピン0)のラムダ束縛エネルギーに対して,その存在が示唆されていた大きな荷電対称性の破れが確かに存在することを明らかにした.一方,J-PARCハドロン施設においては,従来の4ΛHeの励起エネルギー測定で使用されていたNaI(Tl)検出器の25倍の分解能をもつゲルマニウム検出器群Hyperball-Jを用いて4ΛHeのスピン1の励起状態からスピン0の基底状態への脱励起に伴うγ線を精密分光することに成功した.この結果から4ΛHeの励起状態(スピン1)と基底状態(スピン0)のエネルギー間隔は従来信じられていた値と大きく異なり,4ΛHと4ΛHeの励起エネルギーに大きな荷電対称性の破れがあることを示した.さらに,励起状態(スピン1)のラムダ束縛エネルギーでは荷電対称性の破れは小さいことも分かった.これら2つの新測定により,質量数4ラムダハイパー核において確かに荷電対称性が大きく破れていることと,その破れ方がスピンに依存するという新たな知見が得られた.この現象はまだ理論的に説明できず,核力(バリオン間力)の我々の理解が不十分であることをさらけ出した.謎の解明に向けた研究が進められている.
著者
山本 剛
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.75, no.10, pp.610-618, 2020-10-05 (Released:2020-12-10)
参考文献数
44
被引用文献数
1

近年,超伝導体を用いた電気回路で量子計算機を実現しようとする研究が非常に活発に行われている.約20年前にクーパー対箱とよばれるデバイスを用いて1量子ビット動作が実証されて以来,巨視的量子現象とよばれる超伝導の強固な量子コヒーレンスと固体素子であるがゆえの集積技術との相性の良さを併せもつとの期待から,世界中のグループにより精力的な研究が続けられた.その結果,コヒーレンス時間,読出し方法,ビット間結合方法など様々な要素技術が大きく進歩した.昨年2019年にはGoogleらの研究チームが,53個の超伝導量子ビットからなる回路を用いて,ある問題の解を古典計算機よりも高速に求めるという量子超越性の実証実験を報告した.20年間の技術蓄積は確かに膨大であり,特に分野外の方や新たにこの分野に挑戦しようとする方には,どこから手を付けてよいか分からないということもあるかもしれない.しかし,各要素技術において様々な試行錯誤がなされた結果,比較的単純な現在の主流方式というものが存在し,それは上記Googleらの実験にもあてはまる.まず超伝導量子ビットの基本回路構成であるが,これはトランズモンとよばれるもので,その実体は非線形インダクタであるジョセフソン接合とキャパシタの単純な並列共振回路である.インダクタが非線形であるために,通常のLC共振器と異なり,離散準位のエネルギー間隔が一定でなくなる.それらの離散準位のうち最低二準位を量子ビットとして用いるのである.量子ビットの典型的なエネルギー準位間隔は,周波数に換算して5 GHz,温度に換算して~240 mKである.従って,熱揺らぎの影響を十分小さくするために,希釈冷凍機を用いて10 mK程度に素子は冷却される.また量子ビットの1ビットゲート操作は,この準位間隔に共鳴するマイクロ波パルスを照射することによって行われる.一方,量子ビットの読出しについては,分散読出しとよばれる手法が用いられる.分散読出しとは,量子ビットと分散的に結合した共振器の共振周波数が,量子ビットの状態に依存することを利用した読出し方法である.比較的容易に高効率かつ非破壊的な読出しが実現できるが,量子ビットと結合した共振器を微弱なマイクロ波でプローブするため,量子誤り訂正などで必要となる単一試行での読出しを十分な精度で行うためには,非常に低雑音なマイクロ波増幅器が必要となる.そしてそのようなマイクロ波増幅器として,やはりジョセフソン接合を含んだ超伝導回路で実現されるジョセフソンパラメトリック増幅器が用いられる.このような現行方式は,今後もしばらくは主流であり続けると思われる.しかし,例えば分散読出しを行うための現在の実験セットアップは,パラメトリック増幅器以外にも体積のかさばる半導体低温増幅器やアイソレータなども必要で,単純なスケールアップは数100ビット程度の回路規模で破綻すると思われる.また最近ではトランズモンよりもノイズ耐性に優れた改良型量子ビットの研究も盛んに行われている.他にも希釈冷凍機内のマイクロ波ケーブルの配線,量子ビットチップの高密度配線技術,制御エレクトロニクスなど大規模量子計算機実現に向けて,まだいくつものブレークスルーが必要であり,今後ますます分野横断的な研究開発が必要となってくるであろう.

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著者
山本 剛史 平野 勉
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和学士会雑誌 (ISSN:2187719X)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.426-431, 2015 (Released:2016-01-23)
参考文献数
3
著者
中西 秀彦 多賀 敏 山本 剛 服部 直
出版者
一般社団法人 情報科学技術協会
雑誌
情報プロフェッショナルシンポジウム予稿集 第14回情報プロフェッショナルシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.107-112, 2017 (Released:2017-11-01)
参考文献数
5

現在、学術誌の XML オンラインジャーナル化は急速に進展している。その展開は Scientific, Technical, and Medical、いわゆる STM が中心であり、和文人文系学術誌のオンラインジャーナル公開に際しては紙の誌面をそのまま画像もしくは PDF で公開するという方法が主流であった。しかし長く日本のオンラインジャーナルの一翼であった NII-ELS が事業を終了したことにより、多くの NII-ELS 掲載誌が J-STAGE へ移行した。J-STAGE は PDF 掲載も可能とは言え、書誌事項については HTML 公開されており XML 作成が重要である。 本発表では「印度學佛教學研究」という純粋な人文系の学術誌を J-STAGE に掲載した経緯及び技術的諸課題とその克服について報告する。現段階では全文 HTML 公開ではなく、PDF および、書誌 XML のみであるが、注と縦書きにおいて従来のその STM ジャーナルと異なる技術的課題があった。今後の人文系誌の全文 XML に向けてさらに記述規則などを整備する必要がある。
著者
山口 惠三 大野 章 石井 良和 舘田 一博 岩田 守弘 神田 誠 辻尾 芳子 木元 宏弥 方山 揚誠 西村 正治 秋沢 宏次 保嶋 実 葛西 猛 木村 正彦 松田 啓子 林 右 三木 誠 中野渡 進 富永 眞琴 賀来 満夫 金光 敬二 國島 広之 中川 卓夫 櫻井 雅紀 塩谷 譲司 豊嶋 俊光 岡田 淳 杉田 暁大 伊藤 辰美 米山 彰子 諏訪部 章 山端 久美子 熊坂 一成 貝森 光大 中村 敏彦 川村 千鶴子 小池 和彦 木南 英紀 山田 俊幸 小栗 豊子 伊東 紘一 渡邊 清明 小林 芳夫 大竹 皓子 内田 幹 戸塚 恭一 村上 正巳 四方田 幸恵 高橋 綾子 岡本 英行 犬塚 和久 山崎 堅一郎 権田 秀雄 山下 峻徳 山口 育男 岡田 基 五十里 博美 黒澤 直美 藤本 佳則 石郷 潮美 浅野 裕子 森 三樹雄 叶 一乃 永野 栄子 影山 二三男 釋 悦子 菅野 治重 相原 雅典 源馬 均 上村 桂一 前崎 繁文 橋北 義一 堀井 俊伸 宮島 栄治 吉村 平 平岡 稔 住友 みどり 和田 英夫 山根 伸夫 馬場 尚志 家入 蒼生夫 一山 智 藤田 信一 岡 三喜男 二木 芳人 岡部 英俊 立脇 憲一 茂龍 邦彦 草野 展周 三原 栄一郎 能勢 資子 吉田 治義 山下 政宣 桑原 正雄 藤上 良寛 伏脇 猛司 日野田 裕治 田中 伸明 清水 章 田窪 孝行 日下部 正 岡崎 俊朗 高橋 伯夫 平城 均 益田 順一 浅井 浩次 河原 邦光 田港 朝彦 根ケ山 清 佐野 麗子 杉浦 哲朗 松尾 収二 小松 方 村瀬 光春 湯月 洋介 池田 紀男 山根 誠久 仲宗根 勇 相馬 正幸 山本 剛 相澤 久道 本田 順一 木下 承晧 河野 誠司 岡山 昭彦 影岡 武士 本郷 俊治 青木 洋介 宮之原 弘晃 濱崎 直孝 平松 和史 小野 順子 平潟 洋一 河野 茂 岡田 薫
出版者
日本抗生物質学術協議会
雑誌
The Japanese journal of antibiotics (ISSN:03682781)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.428-451, 2006-12-25
参考文献数
17
被引用文献数
37
著者
時田 祐吉 山本 剛
出版者
一般社団法人 日本集中治療医学会
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.28, no.5, pp.419-428, 2021-09-01 (Released:2021-09-01)
参考文献数
44

要約:集中治療領域で行われる心エコー図検査の代表的なものとして,①緊急を要する病態に対し,ベッドサイドでの迅速な診断を目的とし定性的な評価を行うpoint-of-care超音波であるfocused cardiac ultrasound(FoCUS)と,②包括的なプロトコルに基づき定量的評価を含め循環器系の幅広い病態の診断を目的とした包括的心エコー図検査(comprehensive echocardiography),の2つが挙げられる。FoCUSは循環器医に限らず幅広く集中治療医により行われるため,目的や評価すべき内容の理解に加え,誤った診断に至らないようにFoCUSの限界や包括的心エコー図検査でなければ診断できない病態についての理解が必要である。本総説ではFoCUSの概要と限界,また包括的心エコー図検査との関係について述べる。
著者
山本 剛史 山吉 麻子
出版者
日本DDS学会
雑誌
Drug Delivery System (ISSN:09135006)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.131-141, 2022-03-25 (Released:2022-06-25)
参考文献数
55

近年、新たな創薬モダリティとして「核酸医薬」に大きな注目が集まっている。人工核酸技術により、1)標的親和性・選択性、2)生体内安定性、3)免疫応答などの副作用などの課題が次々と克服され、適応疾患の拡大が精力的に進められている。一方で、高度に最適化された核酸医薬においても未だ副作用が認められ、広い普及には至っていない。本稿の目的は、核酸医薬と生体との物理化学的相互作用を分類・整理することで、より有効で安全な核酸医薬を開発する(核酸医薬と物質共生する)ための糸口を見つけることである。
著者
夏木 茜 堀 雅之 松原 康策 太田 悠介 齋藤 良一 磯目 賢一 岩田 あや 池町 真実 竹川 啓史 山本 剛 大楠 美佐子 石和田 稔彦
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.96, no.6, pp.240-244, 2022-11-20 (Released:2022-11-21)
参考文献数
21

Moraxella catarrhalis is a common causative bacterium of otitis media and respiratory tract infection in children. Childhood-onset M. catarrhalis bacteremia is more common in children with underlying conditions, such as immunodeficiency, or those using a nasal device. In children without underlying conditions, the onset is usually at younger than 2 years of age.We encountered a case of M. catarrhalis bacteremia in a previously healthy 3-year-old boy. The patient was hospitalized with a 5-day history of fever. Physical examination on admission showed redness and swelling of the ear drums bilaterally. Blood culture and upper nasopharyngeal swab culture both grew M. catarrhalis, which led to the diagnosis of bacteremia and otitis media caused by this organism. The patient was treated with intravenous cefotaxime for 3 days and sulbactam/ampicillin for the subsequent 3 days, followed by oral clavulanate/amoxicillin for 8 days, with good response. Absence of abnormalities in immunological screening tests and absence of any significant past medical history suggested that the patient was not immunocompromised.
著者
石原 望 纐纈 良 山本 剛史 渡辺 侑一郎 安藤 易輔
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2014, 2015

【はじめに,目的】現在,スポーツ場面や学校,職場などで障害予防を目的に様々なストレッチが行われている。身体の総合的な柔軟性を評価する検査としては,立位にて膝関節を完全伸展させたまま体幹を前屈させ指先と床面との距離を測定する指床間距離(以下,FFD),ハムストリングスの伸張性に着目した検査では背臥位にて膝・股関節を90°屈曲させた状態から他動的に膝関節を伸展させる膝窩角(popliteal angle以下,PA)などがある。近年,柔軟性が低下した者に対する新たなストレッチ法としてジャックナイフストレッチが提案されている。現時点で健常成人を対象にその効果を検証する研究がいくつか行われているが,従来から行われてきた立位にて体幹を前屈させるストレッチとジャックナイフストレッチの効果を比較した報告はない。本研究の目的は,全身的な柔軟性の指標としてFFD,ハムストリングスの伸張性の指標としてPAを用い,ジャックナイフストレッチが柔軟性に及ぼす効果を明らかにすることである。【方法】健常成人22名(男性15名,女性7名,年齢25.3±3.5歳,身長167.5±8.1cm,体重60.1±9.9kg)を対象とした。課題はジャックナイフストレッチを行った群(以下,JS群)と体幹前屈ストレッチを行った群(Trunk Forward Bending以下,TFB群)の2つとし,無作為に割り付けた。課題はそれぞれストレッチ時間10秒×5回とし,JS群はしゃがんだ姿勢から足首を把持し大腿部と胸部を離さないように膝関節を伸展させていくように指示した。TFB群は立位にて膝関節完全伸展位を保持したまま,ハムストリングスの伸張痛が出現する直前まで体幹前屈を行うよう指示した。各ストレッチは朝・夕の1日2回,4週間毎日実施した。FFD,PAの測定は介入開始前,介入終了後の計2回測定した。FFDの測定は被験者は30cmの台上に立位となり,膝関節伸展位で体幹を前屈し上肢を下垂させ,中指と床面との距離をメジャーで計測した。PAの測定は,股・膝関節90°屈曲位からの膝関節伸展の他動運動とし,挙上側の股関節内・外転,内・外旋は中間位,足関節は中間位とした。測定時は,Tilt Table上背臥位にて対側大腿部・骨盤をベルトで固定し代償動作を極力除き,対側股関節・膝関節は伸展位とした。測定により疼痛が出現する直前の角度をPAとし,測定はゴニオメーターを用いて行った。統計解析は介入前の測定値と身体的特性(年齢,身長,体重)において,2群間で統計的に有意差がないことを確認した後,介入の効果判定としてFFD,PAを指標とし,1要因に対応がある二元配置分散分析を用いて比較した。なお,有意水準は5%未満とした。【結果】介入前後での比較では,JS群はFFD 30.2±8.7cmから21.1±6.1cm,PA 155.9±11.3°から165.4±10.3°,TFB群はFFD 35.1±12.0cmから28.1±10.8cm,PA 152.7±11.6°から160.0±14.4°となり,両群においてFFD,PAともに有意差が認められた。ストレッチ間での比較では,FFDではJS群21.1±6.1cmに対し,TFB群28.1±10.8cm,PAではJS群165.4±10.3°に対し,TFB群160.0±14.4°とFFDのみ有意差が認められ,PAでは有意差は認められなかった。【考察】結果より,ジャックナイフストレッチが柔軟性に及ぼす効果として,ハムストリングス以外の要因に対してより大きなストレッチ効果を及ぼす可能性が示唆された。JS群でよりFFDの改善が得られた要因として,ジャックナイフストレッチは自己の股・膝関節伸展筋力によって筋を伸張させるのに対し,体幹前屈ストレッチは自己の体幹重量のみで筋を伸張させる。よって,ジャックナイフストレッチでは筋により高強度な伸張を加えることができると考える。また,ジャックナイフストレッチはその実施方法から,肩峰と足首の距離が規定されるため常に腰椎屈曲位を強制されることになる。一方,体幹前屈ストレッチは,膝関節完全伸展位を規定し体幹前屈を行うためハムストリングスに対してはストレッチが強制されるが,腰椎の屈曲は強制力が働きにくい。そのため,柔軟性低下の原因が腰椎の屈曲制限による被験者ではストレッチの効果が得られにくかった可能性がある。今後の課題として,今回は柔軟性の要素の一つとしてハムストリングスを指標として検討したが,その他にも骨盤や腰椎の可動性などについても検討が必要であると考える。【理学療法学研究としての意義】ジャックナイフストレッチがFFD,PAに及ぼす効果が確認できた。また,ジャックナイフストレッチはハムストリングス以外の関節,筋肉などにより大きな効果を及ぼす可能性が考えられた。本研究が柔軟性向上を目的としたストレッチを行う上での一助になると考えられる。
著者
山本 剛 松本 一郎 満留 昭久 原田 達夫 小田嶋 博
出版者
日本小児呼吸器疾患学会
雑誌
日本小児呼吸器疾患学会雑誌 (ISSN:09183876)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.16-22, 2003-06-01 (Released:2011-01-25)
参考文献数
16
被引用文献数
1

急性間質性肺炎に対しクロロキンを投与し著効した7ヶ月女児例を報告する。発熱・咳噺・多呼吸にて発症し, 胸部X線写真上びまん性スリガラス様陰影を呈し急性1呼吸不全に進行した。3回に及ぶステロイドパルス療法およびステロイド内服による維持療法にて症状の増悪を繰り返したため, 海外においてその効果が報告されているクロロキン療法を行った。10mg/kg/性を分2で6ヶ月間内服投与した。ステロイド内服および酸素投与が中止可能なまでに改善し, 体重増加も認め著効を示した。クロロキンは不可逆性の網膜症の合併が問題となり現在本邦では販売されていない。しかし海外の小児報告例では上記使用法にて網膜症の合併は見られていない。急性問質性肺炎をはじめとする特発性問質性肺炎は予後不良な疾患で肺移植の適応を余儀なくされる場合もある。国内では小児の肺移植は未だ困難な状況であり, 有効な薬物治療としてクロロキン療法を確立すべきである。
著者
山本 剛
出版者
慶應義塾福沢研究センター
雑誌
近代日本研究 (ISSN:09114181)
巻号頁・発行日
no.34, pp.243-271, 2017

はじめに一 慶應義塾大学における大学予科の設置二 慶應義塾大学予科の学科課程おわりに研究ノート
著者
戸倉 規仁 山本 剛 原 邦彦
出版者
The Institute of Electrical Engineers of Japan
雑誌
電気学会論文誌D(産業応用部門誌) (ISSN:09136339)
巻号頁・発行日
vol.112, no.9, pp.799-806, 1992-09-20 (Released:2008-12-19)
参考文献数
10

Current sensing function is indispensable to modern intelligent power semiconductor devices to detect whether or not a load is driven at a predetermined power level and/or an overcurrent at the time of overload, in order to protect the load and the power device.In this paper, a new current sensing device technology is presented firstly, in which the operation principle is based on detecting voltage drop through a field effect resistance (FER) consisting of mainly channel resistance in DMOSFET. Our new current sensing device consists of DMOS, FER & voltage sensing cell, and lateral MOSFET operated as a temperature compensation resistor in a same chip. The FER-cell has the same structure as DMOS cell, and lateral MOSFET is electrically isolated from substrate by p-n junction. The accuracy of current sensing is within ±2% in a temperature range from -40 to 150°C.The new current sensing device technology which can be integrated easily into power MOSFETs realizes intelligent power MOSFETs with high accurate current sensing and control in a wide temperature range.
著者
山本 剛嗣
出版者
日経BP社
雑誌
日経ビジネス (ISSN:00290491)
巻号頁・発行日
no.1535, pp.100-102, 2010-04-05

日本弁護士連合会は政府とともに、弁護士を増やすための司法制度改革を推し進めてきました。その路線を継続するのか、見直すのか。3月10日に実施された日弁連会長選挙は、増員に対する地方や若手弁護士の不満を反映する結果となりました。 副会長だった私は、先輩弁護士たちに推していただき、出馬したものの、路線転換を掲げて立候補した宇都宮健児さんに負けてしまいました。
著者
山本 剛
出版者
学校法人 福島成蹊学園 福島成蹊高等学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

本研究では, 生徒たちに電気伝導度を精密に測定させ, 電気伝導度の低下量とミカヅキモ(Closterium moniliferum)の細胞数との関係, 電気伝導度の低下量とストロンチウムイオン濃度の関係を明らかにする。この結果に基づき, 福島で起きた原発事故後の放射性物質の除染活動を, 生徒たちが採集し, 培養したミカヅキモを利用し, 実現できるかどうかデータ収集を試みる。また, 藻類の種類による電気伝導度の変化を調査し, より電気伝導度を低下させる藻類を発見する。実際の汚染水中には放射性セシウムのような他の金属イオンも存在するので, 他の金属イオンが共存する中でも選択的にストロンチウムイオンを吸収するかどうか, また, より効果的な吸収条件についてもデータ収集を実施する。研究方法は, メトラー社製の電気伝導度計を用いて, 一定量のミカヅキモが投入された塩化ストロンチウム水溶液の電気伝導度を投入後から15分間1分ごとに測定。塩化ストロンチウム水溶液の濃度と電気伝導度の関係を表す検量線よりストロンチウム濃度を求め, 低下前の値と比較し, ミカヅキモのストロンチウム吸収量を求めた。研究成果としては, 一定量の塩化ストロンチウム水溶液であれば, 細胞数が多いほど全体の吸収量が増えると予想していたが, 細胞数が多くても吸収量が少なく, 適正な細胞数があることが明らかとなった。また, 1細胞当たりの吸収量も同じ量になると予想していたが, かなりばらつきがあった。また, ミカヅキモの種類で比較するとClosterium moniliferumよりもClosterium lunulaの方が光学顕微鏡による顆粒の観察により, より多くのストロンチウムを吸収することができる可能性が高まった。採集したアミミドロ(HydrodictyunSp.)も電子顕微鏡観察により, ストロンチウムを吸収していることが明らかとなった。
著者
山本 剛 井上 正文
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会構造系論文集 (ISSN:13404202)
巻号頁・発行日
vol.81, no.724, pp.959-969, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
18

An eruption of Mt. Ontake on September 27, 2014, which was small scale stream eruption with about 500,000 ton volcanic products, caused 47 deaths and 6 missing. Though volcanoes take on serious aspect in actively in Japan, the concern with the effect of falling of volcanic ash in huge eruption to buildings has been growing. A large volume of ash fall can destroy a building or lead to a catastrophe causing tragic loss of human life. It is important to understand of a characteristic of sliding of volcanic ash depositing on the roof to estimate an amount of accumulation of volcanic ash on the roof. The aim of the present work is to observe behavior of volcanic ash on pitched roof and to understand the basic characteristics of the sliding of volcanic ash on the roof using a model testing. The model testing was carried out using a roof model consisted of two components: one was a roof and another was a supporting structure that held up the roof. These two components were jointed each other with a pin-connected which allowed the roof rotate and replace the roof to another type of roofs; an opposite side of the joint was connected to a crane attached on a ceiling in a laboratory. Four types of roof were prepared to investigate an effect of surface roughness of roof materials and shape of a surface of the roofs on the sliding. The types of roof covers were cement tile, plane Galvalume steel plate, plane Galvalume steel plate with straight line roofing and Galvalume steel plate with seven steel plates substituted for snow steps. The sliding of volcanic ash on the roof could be occurred when the crane pulled a free end of the roof upward. The pitch of the roof was increased until the falling of volcanic ash depositing on the roof was observed and a drop amount of the volcanic ash from a roof and a pitch of a roof were measured when the sliding of the volcanic ash stopped. Two kinds of volcanic ash which were spouted from Mt. Sakurajima in 2014 and from Mt. Shinmoedake in 2011 were accumulated on the roofs. Each roof had a unique characteristic of sliding of volcanic ash when a drop amount of the volcanic ash from the roof reached to same value. This result suggested that the sliding of volcanic ash on the roof depended on surface roughness of roof material and shape of a surface of the roof. A trapezoid model which approximated to a cross-section shape of volcanic ash on the roof was developed to calculate an angle of a slope φ of the volcanic ash which was a value of the angle of slope when the sliding was over. The angle of a slope φ was closed to an angle of internal friction when the pitch of roof was small; it gradually decreased close to 70% of an initial value. A pitch of the roof θMAX which was maximal angle that the volcanic ash could accumulate was calculated by extrapolation of the angle of a slope φ. The values were in the range of 21° to 26°. This result suggested that sliding would occur and could cause serious damage to buildings in huge eruption. These results indicated that the sliding of the volcanic ash would be one of issues in volcanic disaster prevention in Japan and the angle of a slope φ could be main factor to understand the sliding. Further research on angle of a slope φ was needed to clarify the characteristics of the sliding.