著者
山本 圭彦 坂光 徹彦 堀内 賢 中川 朋美 林下 知惠 福原 千史 浦辺 幸夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.33 Suppl. No.2 (第41回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.A0796, 2006 (Released:2006-04-29)

【目的】 骨粗鬆症などによる高齢者の円背姿勢に対し、運動療法の効果を確かめることは重要である。本研究の目的は運動療法介入により円背姿勢が変化するかを明らかにすることである。【方法】 対象は、65歳以上の高齢者20名とした。安静立位にて明らかに円背姿勢を呈しているものをエクササイズ群(Ex群)、円背姿勢を呈していない高齢者をコントロール群(C群)として10名ずつ2群に分けた。年齢はEx群(男性2名、女性8名)で80.9±5.2歳、C群(男性4名、女性6名)で79.4±5.5歳であった。Ex群は20分の運動療法を週に2回の頻度で6ヶ月間、筋力増強エクササイズと脊椎の可動性を向上するエクササイズを行った。筋力増強エクササイズは腹臥位での上体反らし運動、脊椎の可動性を向上するエクササイズは腹臥位でのOn hands push upによる上体反らし運動を実施した。胸椎と腰椎の彎曲角度の測定にはSpinal Mouse(Idiag AG,Switzerland)を用いた。測定肢位は立位と腹臥位での安静位および最大体幹伸展位の3肢位とした。胸椎と腰椎の彎曲角度はそれぞれの各椎体間がなす角度の和を胸椎角と腰椎角として求めた。さらに前傾姿勢の指標としてTh1とS1を結ぶ線と床からの垂線がなす角度(全体傾斜角)を求めた。脊椎の可動性は腹臥位での安静位からのOn hands push upによる最大体幹伸展位で求めた。体幹伸展筋力の測定はGT-350(OG技研)を用いて体重比で求めた。統計学的分析にはEx群とC群の比較とエクササイズ前後の比較にはwilcoxon順位符号検定を用いた。エクササイズによる立位姿勢の角度変化と脊椎の可動性および体幹伸展筋力の変化量をそれぞれPearsonの相関係数を用いた。【結果】 6ヵ月後C群では胸椎角で1.5°、腰椎角で1.7°、全体傾斜角で0.5°屈曲方向へ変化した。Ex群は胸椎角で11.4°腰椎角で10.4°、全体傾斜角で1.6°伸展方向へ変化した(p<0.05)。Ex群はすべての角度でC群と比べ有意に角度変化を認めた(p<0.05)。エクササイズ前の脊椎の可動性が大きい対象ほどエクササイズにより立位姿勢は大きく変化した(r=0.55、p<0.05)。体幹伸展筋力はC群で0.32N/kg減少し、Ex群で0.84N/kg増加した(p<0.05)。エクササイズによる体幹伸展筋力が増加するほど立位姿勢は大きく変化した。(r=0.61、p<0.05)。【考察】 6ヶ月間の運動療法において脊椎の伸展は促され、前傾姿勢も改善された。視診および本人の自覚から十分に円背姿勢の改善を認め運動療法の効果を確かめることができた。安静立位の脊椎を伸展させるには脊椎の可動性を向上させ、体幹伸展筋力を増加させることが重要であると考えられた。【まとめ】 今回、運動療法介入により円背姿勢が改善するかを検討した。6ヶ月間のエクササイズにより脊椎は伸展し、円背姿勢が改善された。
著者
多田 邦尚 西川 哲也 樽谷 賢治 山本 圭吾 一見 和彦 山口 一岩 本城 凡夫
出版者
日本海洋学会 沿岸海洋研究会
雑誌
沿岸海洋研究 (ISSN:13422758)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.39-47, 2014 (Released:2020-02-12)
参考文献数
24
被引用文献数
6

瀬戸内海東部海域における過去40年間の海水中の栄養塩濃度減少の検証とその低次生物生産過程への影響について,著者らのグループが得た知見を総合して考察した.瀬戸内海では過去,高度経済成長期には著しく富栄養化が進行していたが,1973年に施行された瀬戸内法により,P の発生負荷量は1980年以降,N は1990年後半以降削減された.しかし,播磨灘東部海域の海水中のTN,TP 濃度には直接反映されていない.一方,栄養塩濃度は1970年以降確実に低下しており,特にDIN 濃度は1990年以降も減少傾向にある.これは,主には瀬戸内法の効果と考えられるが,それだけでは説明できない.おそらく,海底堆積物からの栄養塩の溶出量の減少が大きく関与している可能性が考えられた.この栄養塩濃度減少に対する植物プランクトン群集の応答については,その生物量の低下傾向は認められないが,その種組成の変化が認められた.
著者
山本 圭一郎 伊吹 友秀
出版者
医学書院
雑誌
臨床婦人科産科 (ISSN:03869865)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.471-475, 2017-05-10

●ヒト受精胚を対象とするゲノム編集技術利用には,基礎研究,治療を目的とする臨床応用,エンハンスメント的な臨床応用の各段階で倫理的な課題がありうる. ●基礎研究の段階では,ゲノム編集研究に用いるヒト受精胚の入手のあり方,余剰胚利用の是非,ヒト受精胚への人為的操作などが倫理的課題となる. ●治療およびエンハンスメントの段階においては,安全性や有効性,責任の所在,優生思想ないし優生学,諸々の格差や差別の助長,世代や地域を越えた不可逆的な影響などに関する倫理的課題がありうると予想される.
著者
山本 圭
出版者
情報文化学会
雑誌
情報文化学会誌 (ISSN:13406531)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.37-44, 2008-08-01

本稿が目指すのは,今日「ヴァーチャル・コミュニティ」と名指されるオンライン上での人々の集まりを政治理論的観点から分析することである。そもそも人々の共生のあり方である「コミュニティ」はこれまで,政治学や社会科学の領野で議論されできたものであるが,そこで論じられてきたコミュニティは果たして,今日の「ヴァーチャル・コミュニティ」とどのような関連性を持つのであろうか。ヴァーチャル・コミュニティをそのような連関のなかで分析するとき,われわれはそれをめぐる言説の変化に気付かざるを得ない。すなわち,ヴァーチャル・コミュニティの登場ははじめ,理想のコミュニティを実現するものとして歓迎されたが,次第にそれが抱える限界が明らかになるにつれて,その期待は萎みつつあるということである。このようにヴァーチャル・コミュニティが変容するなかで,コミュニティとしてのどのような特質が失われたのかを政治哲学,特にハンナ・アーレントの権力概念に依拠しながら明らかにしたい。ヴァーチャル・コミュニティへの政治哲学からの眼差しは,これまで十分には検討されてこなかった問題を浮き彫りに出来ると考える。
著者
山本 圭三
出版者
経済社会学会
雑誌
経済社会学会年報 (ISSN:09183116)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.60-71, 2016 (Released:2021-04-01)

This study aims to examine the factors which influence the attitudes to Labor Unions Activity in Japanese workers. Preceding studies about participation to Labor Union can be classified roughly into two: one argues structural factors, and the other discusses factors which affect to workers' attitudes. In the latter, many studies have mainly put importance on dissatisfaction (e.g. about labor environment or treatment). In contrast, this study considers the situation of one's recognition about work and of their daily work. Specifically, it confirms that variables about Cooperativity or about Understanding of Organization’s Objective have effect on attitudes to Labor Unions activity. In those analyses, the possibility of the participation which is not based on instrumental purpose is examined. The salient findings from quantitative analyses can be seen as the following : (1) Understanding about Social Meaning of Labor Union is affected by Recognition of Objectives of Company, and Sense of Pleasure about Group Activity is affected by Sense of Cooperation with others. (2) Not only Understanding about Social Meaning of Labor Union but also Sense of Pleasure about Group Activity have positive effects on attitudes to Labor Union. Especially, the latter relation is stronger than the former relation. (3) About above-referenced relations --i.e. (1) and (2) --, there are hardly differences which are due to gender or generations. Based on these result, I insist that it is also necessary for Cooperativity--which has seldom been considered very much until now -- to be discussed in the study of Labor Union.
著者
山本 圭三 樋口 友紀
雑誌
摂南大学教育学研究 = Bulletin of Educational Research of Setsunan University (ISSN:13498118)
巻号頁・発行日
no.18, pp.37-58, 2022-03

コロナ禍での生活が人々にとって苦しいものであるのは言うまでもないが、その中でも問題なく学習を進められている学生もいれば、学びを十分に進められない学生がいるのも事実である。本稿では、主として学生の生活状況や意識のありように注目し、コロナ禍に対する学生のかような適応形態の違いを探ることを目的とする。具体的には、学生の遠隔授業に対する適応度、およびコロナ禍により大きく変化した学生生活への受容度の2 つからなる類型を作成し、各類型の生活態度や意識についての特徴の違いが検討される。本稿の分析によって、遠隔授業への適応度とコロナ禍生活の受容度からなる類型が一定程度有効であり、各類型はそれぞれ独自の特徴をもつことが示された。ただ、確認された傾向の違いは類型の優劣を示すものではなく、むしろそれぞれがもちうる特性を示すものだと筆者らは考える。昨今の状況下で学生たちが困難を抱え支援を要する事態に至った場合、本稿の分析によって把握された特徴の違いを前提としたうえでのアプローチが試みられる必要のあることを筆者らは主張する。
著者
山本 圭介 松岡 庸洋 高尾 徹也 辻村 晃 奥山 明彦 久保 盾貴 細川 亙 角田 洋一 山口 誓司
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.500-503, 2009 (Released:2012-02-01)
参考文献数
13

41歳, 男性.家族歴・往歴に特記すべきことなし.以前より陰茎腫大を自覚し, 排尿時痛も出現したため前医受診.陰茎の著明な腫大を認めた.MRIにて, 陰茎皮膚および皮下組織の著明な肥厚を認めた.自排尿困難のため, 尿道カテーテル留置の上, 当科紹介.病的な皮膚・皮下組織を切除し, 左大腿部より採取した分層皮弁を陰茎に巻きつけて植皮を行った.病理診断では悪性所見を認めず, 非特異的炎症性変化であった.植皮の生着は良好で, 痛みは減少し尿道カテーテル抜去後も排尿可能であった.術後6カ月現在, 明らかな再発を認めず, 排尿・性機能についても特に問題ない.象皮病はリンパ浮腫の終末像であり, フィラリア感染や外傷・治療・腫瘍・液状異物自己注入などが原因で生じる.自験例ではフィラリア感染は否定的であり, 特発性と考えられた.
著者
杉浦 令人 和田 邦孝 荒井 友章 山本 圭一 前田 則弘 田村 亮介 土屋 裕規 杉浦 徹 和田 弘
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.584-588, 2017-10-25 (Released:2017-12-07)
参考文献数
5

当法人では“介護の標準化”を図る事を目的に介護士育成のための客観的介護技術評価ツールの開発に着手した.今回,介護部役職者に研修および試験を実施し,評価シートの信頼性を分析した.検者間の相対信頼性は,食事でICC:0.797,排泄でICC:0.952であった.また,より詳細な検証が可能になる一般化可能性理論を用いた結果として,一般化可能性係数は,食事:0.466,排泄:0.743であり,食事よりも排泄で高い信頼性が示された.