著者
安廣 重伸 佐藤 俊彦 田中 啓充 上野 亜紀 鶴岡 浩司 西江 謙一郎 柚上 千春 江戸 優裕
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2011, pp.Ab0709, 2012

【はじめに、目的】 臨床場面において、足底板やテーピング等を用いて腓骨の操作をすることで、下肢の前額面上の運動をコントロールする場面を経験する。これに関する先行研究では、上島ら(2007)は入谷式足底板での外果挙上が、歩行時の骨盤の外方加速度を減少させたと報告し、腓骨の挙上が近位脛腓関節を介して脛骨を内上方に向って押し上げる力になった事をその要因として挙げている。このことから、腓骨の挙上または下制は、脛骨を介して膝関節の内外反運動に影響を及ぼす事が考えられる。そこで本研究では、膝の内反ストレスによって進行する(Andriacchi ら2004)とされる変形性膝関節症(以下膝OA)の症例を対象に、レントゲン画像を用いて脛骨に対する腓骨の高位と膝関節のアライメントの関係性について検討を行ったので報告する。【方法】 対象は2009年8月から2011年10月に当院で内側型膝OAに対し、片側人工膝関全置換術(以下TKA)を施行した症例のうち、レントゲン画像の使用に同意を得る事の出来た20名(40肢、男性5名、女性15名、平均年齢75±7.1歳)とした。対象者のTKA施行に際して医師の処方の下、術前検査の目的で放射線技師により撮影されたレントゲン画像(膝関節正面像・側面像・下肢全長の正面像)を用いて、以下の項目を計測した。計測項目は、腓骨下制量・腓骨長・Femoro-Tibial Angle(以下FTA)・Femoral Condyle-Femoral Shaft angle(以下FC-FS)・Tibial Plateau-Tibial Shaft angle(以下TP-TS)・Femoral Condyle-Tibial Plateau angle(以下FC-TP)・Posterior Proximar Tibial Angle(以下PPTA)とし、1mm及び1度単位で計測した。尚、腓骨下制量は、腓骨長軸に対して腓骨頭の外側隆起部及び脛骨高原最外側部からの垂直線をひき、成された2つの交点の距離として定義し計測した。そして、体格の影響を排除する目的で、腓骨下制量を腓骨長で除し、更に百分率で表すことで、腓骨下制率を算出して分析に使用した。統計学的分析にはFTA・FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの各々における左右差と腓骨下制率に関係があるかを対応のあるt検定を用いて検討した。尚、各項目において左右差がなかった対象者は群間比較からは排除して分析した。また、各膝関節アライメントと腓骨下制率に関係があるかをPearsonの積率相関係数を用いて検討した。有意水準は危険率5%(p<0.05)で判定した。【説明と同意】 対象者には本研究の主旨を説明し、レントゲン画像の使用に書面にて同意を得た。【結果】 計測の結果、腓骨下制量は28.1±4.2mm・腓骨下制率は8.7±1.2%であった。膝関節アライメントの指標として挙げた、FTAは181.4±3.9度・FC-FSは83.6±3.2度・TP-TSは94.5±3.5度・FC-TPは3.9±2.1度・PPTAは81.3±4.8度であった。膝関節アライメントの左右差と腓骨下制率の関係については、FTAの左右差による分類において有意な群間差を認め、FTAの大きい側の腓骨下制率は大きいことが分かった(p<0.01・n=19:1名は左右差なし)。FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの左右差による分類ではと腓骨下制率に群間差は認められなかった。膝関節アライメントと腓骨下制率との関係については、FC-FS・TP-TS・FC-TP・PPTAの全項目において有意な相関を認めなかった。【考察】 本研究の結果、左右の比較においてはFTAと腓骨の高位に関係が認められた。上島ら(2007)の研究を踏まえると、FTAの増大により腓骨が下制させられるのではなく、腓骨を上位で維持できなくなる事で、歩行時の膝関節外方化の是正が困難となり、内反ストレスが増大することで、FTAが増大すると考える。即ち、腓骨の挙上によって膝関節の内方化、腓骨の下制によって膝関節の外方化を促せる可能性があると考える。このことから、FTAなどの骨形態の変化がない場合でも、膝関節の内外反ストレスをコントロールする目的で腓骨の高位を操作することは効果が期待できると考えている。【理学療法学研究としての意義】 本研究により腓骨の高位とFTAに関係が認められ、腓骨の挙上は歩行時の膝関節の外反運動を生じさせ、下制は内反運動を生じさせると推察された。膝関節のアライメントを評価・治療する際、腓骨の高位を把握する事は重要であり、特に今回対象とした膝OAにおいては臨床的に有用と考える。
著者
前岡 浩 松尾 篤 冷水 誠 岡田 洋平 大住 倫弘 信迫 悟志 森岡 周
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.43 Suppl. No.2 (第51回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0395, 2016 (Released:2016-04-28)

【はじめに,目的】痛みは不快を伴う情動体験であり,感覚的,認知的,情動的側面から構成される。したがって,知覚される痛みは刺激強度だけでなく,不快感などの心理的状態にも大きく影響を受ける。特に,慢性痛では認知的および情動的側面が大きく影響することが報告され(Apkarian, 2011),運動イメージ,ミラーセラピー,バーチャルリアリティなどの治療法が提案されている(Simons 2014, Kortekass 2013)。しかしながら,これらの治療は主に痛みの認知的側面の改善に焦点を当てており,情動的側面からのアプローチは検討が遅れている。そこで今回,痛みの情動的側面からのアプローチを目的に,情動喚起画像を利用した対象者へのアプローチの違いが痛み知覚に与える影響について検証した。【方法】健常大学生30名を対象とし,無作為に10名ずつ3群に割り付けた。痛み刺激部位は左前腕内側部とし,痛み閾値と耐性を熱刺激による痛覚計にて測定し,同部位への痛み刺激強度を痛み閾値に1℃加えた温度とした。情動喚起画像は,痛み刺激部位に近い左前腕で傷口を縫合した画像10枚を使用し,痛み刺激と同時に情動喚起画像を1枚に付き10秒間提示した。その際のアプローチは,加工のない画像観察群(コントロール群),縫合部などの痛み部位が自動的に消去される画像観察群(自動消去群),対象者の右示指で画像内の痛み部位を擦り消去する群(自己消去群)の3条件とした。画像提示中はコントロール群および自動消去群ともに自己消去群と類似の右示指の運動を実施させた。評価項目は,課題実施前後の刺激部位の痛み閾値と耐性を測定し,Visual Analogue Scaleにより情動喚起画像および痛み刺激の強度と不快感,画像提示中の痛み刺激部位の強度と不快感について評価した。統計学的分析は,全ての評価項目について課題前後および課題中の変化率を算出した。そして,課題間での各変化率を一元配置分散分析にて比較し,有意差が認められた場合,Tukey法による多重比較を実施した。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】痛み閾値は,自己消去群が他の2群と比較し有意な増加を示し(p<0.01),痛み耐性は,自己消去群がコントロール群と比較し有意な増加を示した(p<0.05)。また,課題実施前後の痛み刺激に対する不快感では,自己消去群がコントロール群と比較し有意な減少を示した(p<0.05)。【結論】痛み治療の大半は投薬や物理療法など受動的治療である。最近になり,認知行動療法など対象者が能動的に痛み治療に参加する方法が提案されている。本アプローチにおいても,自身の手で「痛み場面」を消去するという積極的行為を実施しており,痛みの情動的側面を操作する治療としての可能性が示唆された。
著者
前岡 浩
出版者
畿央大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

本研究は不快感や不安感といった痛みの情動的側面について、特に非特異的慢性腰痛者を対象に脳機能および自律神経機能の側面から明らかにし,さらに,痛みの情動的側面に対する有効な治療手段についても検討することである.平成29年度は,まず平成28年度に実施した痛みの情動的側面に対する有効な治療手段についてさらに詳細に検証した.内容は,情動喚起画像を使用し,受動的に画像内の痛みの部位が消去されるのを観察する条件と被験者自らが積極的に画像内の痛みの部位を消去する条件を比較した.その際,心拍変動を測定することで自律神経系の変化も評価した.その結果,痛み閾値と耐性の増加,強度と不快感の減少,さらに交感神経活動の減少も認められ,痛みの情動的側面に対する有効なアプローチとして可能性を示すことができた.次に,非特異的腰痛者に対する経頭蓋直流電気刺激の痛みの情動的側面における有効性と鎮痛効果について検証した.腰痛を有する50名を無作為に5群に割り付け,左右一次運動野,左右背外側前頭前野への陽極刺激および左背外側前頭前野へのsham刺激の5条件を設定した.評価項目は圧痛の閾値と耐性,腰痛における日常生活の影響,破局的思考,特性および状態不安,痛みの強度および質,不快感の強度とした.その結果,圧痛閾値では左背外側前頭前野への刺激によりsham群と比較して有意な増加が認められた.刺激1週間後における破局的思考では,右一次運動野への刺激により左背外側前頭前野と比較し有意に減少した.腰痛の強度は,左一次運動野において,刺激直後と比較して24時間後に有意な減少を認めた.今回の結果から,有効な刺激部位の特定には至っていないが,一次運動野は痛みの感覚的側面,背外側前頭前野が痛みの感覚的側面および情動的側面の鎮痛に関与している可能性が示唆された.
著者
末岡 浩
出版者
日本産科婦人科学会
雑誌
日本産科婦人科學會雜誌 (ISSN:03009165)
巻号頁・発行日
vol.53, no.9, pp.N204-N208, 2001-09-01
参考文献数
3
被引用文献数
1
著者
三浦 健人 北舘 健太郎 西岡 浩
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-7, 2009 (Released:2009-03-12)
参考文献数
28
被引用文献数
1 1

AHCC は Active Hexose Correlated Compound の頭文字をとってつけられた名称で,シイタケ (Lentinula edodes) 属に属する担子菌の菌糸体を大型タンクで液体培養したものから抽出される物質である.現在ではがん患者による利用頻度の高い健康食品として医療現場でも用いられている他,最近の研究で感染症や炎症性疾患にも有効であることが明らかとなってきている.各種安全性試験によって食品としての安全性が確認されている他,薬物との相互作用についても基礎の研究がなされている.健常人を対象とした第一相安全性試験も実施されており,臨床現場で使用される食品として安全であると結論されている. 本報では AHCC の抗癌剤の副作用軽減効果,免疫調節作用,感染防御作用,抗炎症作用など最近の研究成果について概説する.
著者
岡 浩一朗
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.76-82, 2015 (Released:2015-11-19)
参考文献数
27

心理的要因(たとえば、痛み対処方略)が高齢者における運動器疼痛管理に重要な役割を果たすというエビデンスは増加している。それ故に、運動器疼痛管理のために認知行動療法(たとえば、痛み対処スキルトレーニング)を利用することへの興味・関心が高まっている。本稿では、まず初めに運動器疼痛管理における認知行動療法の必要性に関する背景について概観した。次に、痛み対処スキルトレーニングで使用される5つの主な技法(認知再構成、リラクセーション、ディストラクション、快活動の計画、活動ペース配分)に焦点を当てて解説した。さらに、日本人の膝痛高齢者に対する痛み対処スキルトレーニングおよび運動療法に活用するために新しく開発した2つの印刷教材を紹介した。最後に、この領域における研究の今後の方向性について議論した。本総説より、運動器疼痛管理に認知行動療法(痛み対処スキルトレーニング)を応用することの重要性が示された。
著者
川上 諒子 澤田 亨 岡 浩一朗 坂本 静男 樋口 満
出版者
一般社団法人 日本体育学会
雑誌
日本体育学会大会予稿集 第68回(2017) (ISSN:24241946)
巻号頁・発行日
pp.310_3, 2017 (Released:2018-02-15)

本研究は、野球場におけるプロ野球観戦が特定の応援チームを持たない高齢者の感情や主観的幸福感にどのような影響を及ぼすかについて検討を行った。参加者は65歳以上の男女16人であった。プロ野球観戦の日を3日間設け、野球場でプロ野球を1日観戦するよう依頼した。質問紙を用いて、平常時および観戦直前、観戦直後の感情と主観的幸福感を調査した。感情の調査には一般感情尺度を、主観的幸福感の調査には日本版Subjective Happiness Scaleを用いた。解析の結果、観戦直前では平常時よりも安静状態を示す「ゆったりした」(P<0.01)や「平穏な」(P=0.04)という感情が有意に高まった。一方、観戦直後には主観的幸福感が平常時よりも有意に高値を示した(P=0.02)。また、試合結果の違いによる感情や主観的幸福感への影響についても検討したが、試合の勝敗と感情や主観的幸福感の変化との間に関連は示されなかった。以上の結果より、高齢者が野球場まで出掛けて行きプロ野球を観戦することによって、観戦直前には安静状態が高まり、観戦直後には主観的幸福感が高まる可能性が示唆された。
著者
松岡 浩史 マツオカ ヒロシ Matsuoka Hiroshi
出版者
熊本大学
雑誌
文学部論叢 (ISSN:03887073)
巻号頁・発行日
vol.108, pp.57-70, 2017-03-17

Sexual allusions and puns rampant in the text of Macbeth cannot be pretermitted just as the dramatist's word games considering their quality and quantity. The plot of the play furnishes the portrait of a man whose end is only to satisfy his political/sexual desires, lying outside the circle of generation. With the reference to the sources of social history, anatomy and demonology, this paper reveals the double-structure of the play, where political ambitions are always replaced by sexual metaphors. As Macbeth's political sterility parallels his sexual dysfunction, the king's political body, which was supposed to be invisible, is relentlessly visualized by the embarrassed body of the protagonist.
著者
松岡 浩司 阿部 浩通 今井 幸三
出版者
徳島赤十字病院
雑誌
徳島赤十字病院医学雑誌 = Tokushima Red Cross Hospital Medical Journal (ISSN:13469878)
巻号頁・発行日
vol.7, no.1, pp.69-74, 2002-03-01

その病歴において両親から軟禁されるという体験があり、失立、失声等で発症した転換性障害の22歳女性症例を報告する。母親は一級身体障害者。幼少時より両親に交友関係や門限など厳しく制限されて生育した。中学生時過換気症候群を発症、高校入学後失立・失歩が出没するようになった。21歳時、恋人との交際を両親に狙反対され、自宅二階に軟禁状態となり、無断外出すると体制を与えられるようになった。この頃から失声も出現したため、近医より紹介入院(任意入院)となった。治療は①環境調整②両親への感情を患者に言語化させること、を目標とし、入院期間を限定した上で両親を含めた三者面談を頻回に行い、家族療法的アプローチを試みた。入院2ヶ月目、電話をきっかけに失声が消失したことから両親と会話が出来るようになり、その後の歩み寄りの過程で家族構造の歪みを双方が認識したことで症状が劇的に消失し退院となった。
著者
只野 快 末岡 浩治
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集 (ISSN:21879761)
巻号頁・発行日
vol.84, no.858, pp.17-00542-17-00542, 2018 (Released:2018-02-25)
参考文献数
24

To apply the germanium (Ge) thin film for various electronic devices, energy band structure should be controlled by carbon (C) and/or Tin (Sn) doping. It is important to understand the stable atomic configurations of C and Sn atoms near the (001) surface of a Ge thin film. In this study, first principles calculation based on density functional theory was performed to obtain the formation energies and the thermal equilibrium concentrations of C and Sn atoms near the surface of Ge thin film. The results of the analysis are threefold. First, C and Sn atoms are most stable at the first atomic layer of the Ge thin film, and the surface does not affect the stability of C or Sn atoms deeper than the fifth layer. Second, C and Sn atoms at the second to fourth layer increase the thermal equilibrium concentration of newly arrived C and Sn atoms at the surface during film growth. Third, in the case of mono-doping, formation energy of C (Sn) at the (001) surface increases with increasing concentration of surface C (Sn). In the case of co-doping at C/Sn concentration ratio of 1:1, the increases of formation energies are suppressed in comparison to the case of mono-doping. It is concluded from these results that co-doping enhances the incorporation of C and Sn atoms in the Ge thin film. Furthermore, the doped atom near Si surface becomes more stable than that in the Si bulk, and it is more remarkable in comparison to Ge.
著者
望岡 亮介 山口 雅篤 堀内 昭作 松井 弘之 黒岡 浩
出版者
THE JAPANESE SOCIETY FOR HORTICULTURAL SCIENCE
雑誌
園芸学会雑誌 (ISSN:00137626)
巻号頁・発行日
vol.64, no.3, pp.463-470, 1995 (Released:2008-05-15)
参考文献数
38
被引用文献数
7 7

日本原産野生ブドウを中心に, 5種, 5変種, 3未同定の東アジア原産野生種と, 対照として三つの栽培品種の果皮からアントシアニン色素を抽出し, HPLCを用いて色素分析した.色素の種類は, 得られたクロマトグラムと各ピークの積分値から5%以上を含有するもののみに限定した場合19種類の色素を認め, 種により3~15種類のアントシァニンが確認された. 特に, 北方系の野生種より南方系の野生種に含有色素の種類の多い傾向が認められた. また, ピークNo. 6は栽培品種では認められなかったが, 野生種では供試したすべてで確認された.アントシアニン組成の一致率によりクラスター分析を行ったところ, 形態的分類と比較的似通った結果となり, 本法は従来の形態的分類と併用すれば分類の精度をさらに高めることができるものと思われる. この方法で, チョウセンヤマブドウは他の野生種と明らかに区別できた. また, 本種およびその変種とされているシラガブドウのアントシアニン組成には大きな差異が認められ, 形態的•生理的観点と同様, 別種である可能性の高いことが確認された.
著者
横田 隆史 松岡 浩司 岡本 一晃 廣野 英雄 坂井 修一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:03875806)
巻号頁・発行日
vol.36, no.7, pp.1600-1609, 1995-07-15
参考文献数
12
被引用文献数
4

超並列計算機の実現,特に,通信レイテンシンの隠蔽や並列性の自然な抽出において優位性を持つマルチスレッド・アーキテクチャでの超並列計算機を考える場合,細粒度・高頻度で非整列なパターンの通信に対する耐性や,通信レイテンシンの短縮について相互結合方式を検討しなければならない.また一方でOSなどの運用面での検討も必要である.本論文では,まずこのような超並列向けの相互結合網の要件を整理し,次に,間接多段網のスイッチを演算ノードに置き換えて得られるサーキュラ・オメガ網の特質に着目し,その定義を一般化することにより直接網のクラスDCE(Directed Cycles Ensemble)を定義する.そして,任意のDCE網の直積を考えることで多次元に拡張できることを示し,これによって得られる結合網のクラスMDCE(Multidimensional DCE extension)を提案する.代表的なDCE網,MDCE網について直径ならびに平均距離の解析を行い,さらに,シュミレーションにより5種類の通信パターンについて動的な転送特性の測定を行った結果,本稿で想定している超並列計算機に適用する場合のMDCE網の優位性が示される.
著者
松岡 浩 伊藤 明子 佐藤 未怜
出版者
帝京科学大学
雑誌
帝京科学大学紀要 (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.87-91, 2012-03-31

Our aim is to produce ethanol efficiently by enzymatic saccharification coupled with ethanol fermentation using bamboo plant as a biomass. For this purpose, we examined pretreatment conditions of biomass for saccharification. At first bamboo plants were made into chips and then powders. When a distilled water with bamboo powder was 60-min autoclaved at 121 ℃, 0.75 M NaOH-alkalization treatment was performed at 80 ℃ , and saccharification was carried out by 0.33 g/ ℓ Acremonium cellulose at 45 ℃ , glucose was released at 5.7 g/ℓ after 96-h saccharification, which corresponded to 22.8 % on the basis of the the bamboo plant. When fermentation was carried out at 30 ℃ following 96-h saccharification of the pretreated bamboo plant using Acremonium cellulase, the inhibitory effect of glucose was considered to be reduced and ethanol was produced at 4.2 g/ℓ after 72-h fermentation, which corresponded to 50.8 % yield on the basis of the total amount of bamboo.
著者
佐藤 寛子 青木 淳 浅岡 浩子
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
情報化学討論会講演要旨集
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.J02-J02, 2005

基盤ソフトウェアのオープンソース化は共通技術の共有化によるソフトウェア技術の発展と次世代の育成と継承のために重要である.しかし,化学ソフトウェアの市場は圧倒的に欧米製のもので占められており,かつ共通技術であっても公開されているソースコードは極めて少ないのが現状である.そこで我々は,基盤技術の一つである化学グラフィックソフトウェアのオープンソース化に向けてライブラリの構築を進めてきた.今回,本ライブラリの公開に向けて,その機能と特色について,考え方と合わせて報告する.
著者
佐藤 寛子 青木 淳 浅岡 浩子
出版者
Division of Chemical Information and Computer Sciences The Chemical Society of Japan
雑誌
Journal of Computer Aided Chemistry (ISSN:13458647)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.141-149, 2006
被引用文献数
1

基盤ソフトウェアのオープンソース化は共通技術の共有化によるソフトウェア技術の発展と次世代の育成と継承のために重要である。しかし、化学ソフトウェアの市場は圧倒的に欧米製のもので占められており、かつ共通技術であっても公開されているソースコードは極めて少ないのが現状である。そこで我々は、基盤技術の1つである化学用グラフィックスソフトウェアのオープンソース化に向けてライブラリの構築を進めてきた。2005年12月26日に、本ライブラリを「ケモじゅん」と命名し、公開を開始した。本稿では、2006年8月10日リリースしたケモじゅんの最新版050の機能と特色について,ケモじゅんプロジェクトの考え方と合わせて報告する.
著者
岡崎 勘造 柴田 愛 石井 香織 助友 裕子 河村 洋子 今井 (武田) 富士美 守屋 希伊子 岡 浩一朗
出版者
日本スポーツ産業学会
雑誌
スポーツ産業学研究 (ISSN:13430688)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.235-244, 2011 (Released:2011-11-23)
参考文献数
24

The present case study evaluated an environment-focused project for promoting walking, which included the development of walking courses (using public spaces, parks, roads) with stations for smart cards in the community and an interfaced internet-based self-monitoring system. The project was started in 2008 in Misato City of Saitama Prefecture. In this project, individuals can participate by paying a registration fee (500 yen) and obtaining their own cards. If registrants walk the course, holding their cards over a scanner at 3-4 stations, the smart card records their data (e.g. distance and time spent in walking) from one to the other station and transfers these to a self-monitoring system. As a result, registrants could check their data online. From June 2008 to November 2009, a total of 631 individuals (62% female) who obtained the information from newspaper, magazines, website, or some local events, registered for this project. From walking data collected automatically in the database through the self-monitoring system, it was found that 445 registrants (63% female) used this system at least once, and most of the registrants were 40 years old or more. This suggests that the project in this study might have been effective in promoting walking only among older people. Also, most of the registrants lived around the courses. In particular, the courses in the area surrounded by beautiful nature and residential areas were often used. To expand this idea to other age groups, new attempts, including a point supplying system based on the distance of walking are under development.