著者
平川 佳世 岩岡 浩二
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、銅板上に油絵具を用いて絵画を描く「銅板油彩画」の誕生と黎明期の展開について、現存する画像作品および文字資料に基づいて、詳細かつ包括的な考察を行った。その結果、「銅板油彩画」は1530年代のイタリアにおいて「諸芸術の優劣論」および「北方絵画愛好」という二つの異なる文化的文脈において個別的に誕生し、「銅」という素材のもつ永遠性に着目した政治的寓意画の制作などの新奇な試みを経て、やがて、16世紀末には、ジャンルを問わず細密描写を得意とする画家が名声を得るための一つの手段として定着していったことが明らかとなった。
著者
岡田 洋平 福本 貴彦 高取 克彦 梛野 浩司 平岡 浩一
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.38 Suppl. No.2 (第46回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.BeOS3029, 2011 (Released:2011-05-26)

【目的】 パーキンソン病(PD)患者は歩行開始動作に障害を有することが多く,歩幅の減少,振り出し開始前の足圧中心(center of pressure :COP)の後方あるいは振り出し側への移動の異常,COPの移動開始から振り出し開始までの期間の延長などが報告されている。PD患者の歩行障害は歩行開始1歩目と同様,定常歩行においても報告されているが,歩行開始から定常歩行に至る過渡期について定量的に解析した先行研究はない。健常人は歩行開始から定常歩行に至るまで2~3歩要する。本研究では,PD病患者の歩行開始後3歩の異常性を明らかにするため,PD患者と健常高齢者を対象に運動学的指標を評価し比較検討した。【方法】 対象はPD患者10名と年齢を一致させた健常高齢者10名とした。対象者は長さ9mの歩行路において歩行開始動作を実施した。9mの歩行路の最初に2.18mのforce platformを設置し,歩行開始後3歩の足圧分布データをサンプリング周波数100Hzにて記録し,合成COP座標を算出した。対象者はforce platform上において数秒間立位保持し,歩行路の最後端の中央に設置した目標を注視しながら自身のタイミングで至適速度にて歩行開始し,歩行路の最後まで歩行した。歩行開始側は指示せず,いずれかの歩行開始側が10試行に達するまで試行を実施した。 解析項目は,歩行開始後3歩の時空間指標,COP最大移動距離(前後,側方),踵接地位置(前後,側方),踵接地位置とCOPの前額面上の距離とした。時空間指標は歩幅,ステップ速度,ステップ時間,両脚支持期とした。COP 最大移動距離は,歩行開始後のCOP軌跡における4つのpeakにおいて,歩行開始時のCOP座標を0として算出した。1st peakは歩行開始後COPが最も後方かつ振り出し開始側に移動した点とし,2nd Peakは最も初期立脚側に達する点とする。3rd Peakは1歩目の接地後COPが最も外側に移動した点とし,4th Peakは2歩目の接地後COPが最も外側に移動した点とした。踵接地位置は踵中央線の後端とした。踵接地位置とCOPの前額面上の距離は, COPが踵接地位置と同じ前後座標に到達した際の側方の距離とした。 PD患者における評価はON期に統一して行った。統計解析は,2群間における各項目の平均値の差について対応のないt検定を用いて検討した。有意水準は5%とした。【説明と同意】 本研究は大阪府立大学総合リハビリテーション学部研究倫理委員会の承認を受けて実施された。対象者には実験の目的,方法,及び予想される不利益を書面にて説明し同意を得た。【結果】 PD患者における歩行開始後3歩の歩幅,ステップ速度は健常高齢者と比較して有意に低下していた。PD患者の1歩目のステップ時間,1,2歩目の両脚支持期は有意に延長していた。歩行開始後3歩におけるPD患者のCOP軌跡と踵接地位置は振り出し開始側に偏移する傾向が認められた。PD患者の2nd Peakの側方移動距離は減少する傾向にあり,3rd Peakの側方移動距離は有意に大きかった。PD患者の1歩目と3歩目の踵接地位置は振り出し開始側に有意に偏移していた。PD患者は健常高齢者と比較してCOPが踵接地位置のより内側を通過し,1歩目と2歩目の踵接地位置とCOPの前額面距離は有意に大きかった。【考察】 本研究の結果,PD患者の歩行開始後3歩のCOP軌跡は振り出し開始側に偏移し,踵接地位置の内側を通過するという異常性が示唆された。COP軌跡の振り出し開始側への偏移は,踵接地位置が振り出し開始側に偏移した影響を受け,これらは2nd PeakのCOP側方移動距離の減少に起因すると考察する。2nd Peakの側方移動距離の低下は,初期支持脚への荷重移動の低下を反映すると考えられる。先行研究においてPD患者の歩行開始動作における初期支持脚への側方荷重移動能力の低下が報告されている。歩行開始時の支持脚への荷重移動の不十分さとその後3歩目まで続く正常な荷重移動により,振り出し開始側へのCOPの偏移が生じたと考えられる。1,2歩目においてCOP軌跡が踵接地位置の内側を通過するのは,両脚支持期の延長に起因する可能性がある。両脚支持期の延長は踵接地後に対側下肢が接地している時間が長いことを表す。COP軌跡が踵接地位置の内側を通過するのは,先行肢が踵接地した後も対側下肢への荷重が多いことを示唆する可能性がある。【理学療法学研究としての意義】 本研究によってPD患者の歩行開始後3歩における異常性が初めて示された。本研究における知見はPD患者における歩行開始から定常歩行への過渡期に対する介入に寄与すると考えられる。
著者
前岡 浩 冷水 誠 松尾 篤 森岡 周
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1615, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】ヒトが痛みを知覚する場合,加えられた痛みの強度だけでなく,その時の状況や過去の痛み経験,さらに不快,不安の情動面など様々な影響を受ける。つまり,物理的な痛み刺激が強くない場合でも,痛みに対する不安や不快が強い時,主観的な痛みが増強する場合がある。通常,痛みは持続的または頻回に知覚されるが,頸部や肩部などの痛みの強さが軽度の場合でも,痛みが持続的であると不快感を強く感じることはしばしば経験する。先行研究では,反復した痛みには痛みの慣れが起こり,痛みの強度が減少することは報告されているが,不快や不安などの情動的要因については明らかでない。そこで我々は,反復した痛み刺激に対する情動的要因への影響を検証し,痛みの強度は減少するが不快は持続するという結果を得た。また現在,痛み軽減への介入の一つに,非侵襲性に頭皮上の電極から微弱電流を流し,電極直下領域の脳活動を調整する経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が挙げられるが,反復した痛み刺激に対する有効性は十分検討されていない。さらに,痛み関連のtDCS研究では,左背外側前頭前野(DLPFC)領域の刺激による報告が多いが,痛みの強度と不快感に共に関連するとされる右DLPFC領域に関する報告は少ない。そこで今回,反復した痛み刺激に対し右DLPFC領域にtDCSを実施し,痛みの強度,不快,不安への効果について検証したので報告する。【方法】健常大学生20名(女性:10名,男性:10名)を対象とした。反復した痛み刺激強度の決定は,事前に温熱を使用した痛覚計を使用し,左前腕内側部(上腕骨内側上顆から10cm遠位)の疼痛閾値と痛み耐性閾値を測定し,疼痛閾値に1℃加えた温度を痛み刺激強度とした。加えて,左前腕遠位部内側部(上腕骨内側上顆から20cm遠位),右前腕近位内側部も同様に各閾値を測定した。tDCSについて,被験者を陽極(anode)刺激または偽物(sham)刺激から開始する2群に無作為に割り付け,1週間以上間隔を設けた後,刺激条件を入れ替えて再度実施した。tDCSの電極は,陽極を右DLPFC領域,陰極を左眼窩上領域とし,2mAで20分間刺激した。sham条件は,anode条件と同様の電極位置で最初の30秒間のみ通電した。反復した痛み刺激は,左前腕近位内側部に1回6秒間の痛み刺激を60回実施した。評価項目は,tDCS前に痛み閾値,痛み耐性閾値,State-Trait Anxiety Inventory(STAI)を使用し状態不安を測定した。tDCS後の反復した痛み刺激中は,60回の痛み刺激ごとに痛み強度と不快感をVisual Analogue Scale(VAS)にて評価した。痛み刺激終了後に再び痛み閾値,痛み耐性閾値,STAIを測定した。統計学的分析は,痛み閾値,痛み耐性閾値,STAIには反復測定二元配置分散分析(tDCS条件×時間)を使用し,有意差が認められたものにはBonferroniによる多重比較検定を実施した。また,VASによる痛み強度と不快感の刺激条件間での比較にt検定を使用した。統計学的有意水準は5%とした。【結果】tDCSの条件間の比較では,痛み閾値と痛み耐性閾値に有意な変化は認められなかった。痛み強度はanode条件で減少傾向(p=0.09)を示し,不快についてはanode条件で有意な低下(p<0.01)が認められた。STAI(状態不安)については,tDCS条件と時間で交互作用(p<0.05)が認められ,多重比較の結果,sham条件で有意な増加(p<0.01)が認められた。【考察】今回,反復した痛み刺激に対し,右DLPFC領域のtDCSによって不快,不安の低下と増加の抑制が認められた。DLPFCは痛みの情動的側面に深く関与する前帯状回や扁桃体と機能的結合があり,DLPFCの活動がこれらの領域に抑制性に作用した可能性が考えられる。今回,右DLPFC領域を刺激したが,tDCSの鎮痛に関する多くの先行研究は左DLPFC領域を標的部位としている。今後さらに左右DLPFCの機能の違いを含め検証することで,より有効にtDCSを実施するための情報提供が可能になると考える。【理学療法学研究としての意義】今回,健常者を対象に反復した痛み刺激における痛みの不快,不安に対し,右DLPFC領域へのtDCSの有効性が示唆された。本研究結果は,tDCSの適応と限界に関する予備的データとして有益な情報になると考える。
著者
前岡 浩 冷水 誠 松尾 篤 森岡 周
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.41 Suppl. No.2 (第49回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0791, 2014 (Released:2014-05-09)

【はじめに,目的】痛みは「組織の実質的または潜在的な損傷と関連したあるいはこのような傷害と関連して述べられる不快な感覚的・情動体験」と定義(国際疼痛学会)され,感覚的側面,認知的側面,情動的側面から構成される。近年,痛みに対する治療手段の一つとして,選択的に大脳皮質領域を刺激する経頭蓋直流電気刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)が注目されている。これは非侵襲性に頭皮上に設置した電極を介して微弱な電流を適応し,膜電位の変化や大脳皮質を興奮させ,電極直下領域の脳活動を調整するという治療である。実際に,健常者や慢性痛患者に対する鎮痛効果が報告されつつある。しかしながら,これまでの先行研究は疼痛閾値や耐性閾値を指標に一時的な痛み刺激に対する即時効果や持続効果についての報告が大部分である。本来,痛みが発生するとその痛みは持続的に知覚される。さらに,物理的な痛みだけでなく,不快感や不安感などの情動も痛みに大きく影響を与える。このような持続的に加えられた痛みに対し,tDCSの効果を検証した報告は認められない。したがって今回,反復した痛み刺激に対し,tDCSが痛みの感覚的側面および情動的側面に与える影響について検証することを目的とした。【方法】対象は健常大学生7名(女性:4名,男性:3名,平均年齢:20.6±0.5歳)とした。測定手順は,はじめに温熱を使用した痛覚計(ユニークメディカル社製)により,左前腕近位内側部,左前腕遠位内側部,右前腕近位内側部における痛み閾値および痛み耐性閾値を測定した。反復刺激する部位は左前腕近位内側部とし,痛み刺激の強度は測定した痛み閾値に1℃加えた温度とした。その後,tDCS装置(NeuroConn社製)を使用し,参加者7名を陽極刺激(anode)および偽物(sham)刺激から開始する2群に無作為に割り付け,測定2日目に各条件を入れ替えて実施した。各条件間には1週間以上の間隔を設けた。tDCSの刺激部位は国際10/20法に基づき,陽極を右背外側前頭前野領域(F4),陰極を左眼窩上領域に固定し,2mAで20分間刺激した。Sham条件は,同様の電極位置で最初の30秒間のみ通電し,その後通電を停止させ20分間実施した。tDCS実施後,1回の刺激時間が6秒間,刺激回数6回を1ブロックとする反復した痛み刺激を10ブロック連続(合計60回刺激)して実施した。皮膚の感作回避のため刺激部位に近接する3ヶ所で1ブロックごとに刺激部位を移動させた。評価項目は各刺激に対する痛み強度および不快感とし,Visual Analogue Scale(VAS)にて評価した。10ブロック終了後,痛み閾値および痛み耐性閾値を再度測定した。また,tDCS実施前および反復刺激終了後に不安感の尺度であるState-Trait Anxiety Inventory(STAI)を使用し,状態不安の測定もあわせて実施した。分析のため,tDCSにおける刺激条件間での痛み閾値および痛み耐性閾値,そしてVASによる痛み強度および不快感,STAIスコアの平均値を算出した。統計学的分析には,痛み閾値および痛み耐性閾値,STAIについて反復測定二元配置分散分析を使用し,有意差が認められたものにはBonferroniによる多重比較検定を実施した。また,VASによる痛み強度および不快感の刺激条件間での比較にはt検定を使用した。統計学的有意水準は5%とした。【倫理的配慮,説明と同意】全ての被験者に本研究の目的,方法について事前に説明を行い,実験参加の同意を得た。そして,本研究は所属機関の倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号H25-14)。【結果】anode条件とsham条件の比較において,痛み閾値および痛み耐性閾値,痛み強度,STAIに有意な変化は認められなかった。一方,不快感ではsham条件(58.31±11.43)と比較し,anode条件(52.98±11.99)で有意な低下(p<0.05)が認められた。【考察】反復した痛み刺激に対し,anode条件で痛みの情動的側面である不快感に有意な減少が認められた。背外側前頭前野への刺激による鎮痛メカニズムは十分解明されていないが,この領域は主に痛みの情動に関わる情報を伝える内側経路と接続し,痛みの情動的側面に関与するとされる。また背外側前頭前野は前帯状回を介し痛みの下行性疼痛抑制系とも接続する。我々もこれまでに情動喚起画像により起こる痛みに関連した不快感に対し,背外側前頭前野へのtDCSによる軽減効果を報告している。今回の結果により,反復した痛み刺激においても痛みの情動的側面へのtDCSの有効性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】今回,健常者を対象に反復した痛み刺激に対する背外側前頭前野へのtDCSの有効性が示唆された。本研究結果は,実際の有痛者へのtDCSの応用に向けた予備的データとして有益な情報になると考える。
著者
長岡 浩司 韓 太舜 藤原 彰夫
出版者
電気通信大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究では、主として量子推定理論と量子相対エントロピーに注目し、統計学的・情報理論的視点を通して量子系の情報幾何学の深化を図るとともに、幾何学的視点を通して量子系の統計学的・情報理論的諸問題に新しい光を当てることをも目指して研究を行った。主要な研究成果は以下の通りである。1.忠実な量子状態(正則な密度行列)全体の成す多様体上に導入されるFisher計量と(α=±1)-接続の成す双対平坦構造の一連の量子力学的対応物をできる限り統一的な視点のもとに整理するとともに、量子情報幾何構造の一般理論といくつかの個別構造の特徴、物理的・情報理論的意義などについて考察を行った。2.無数に考えられる指数型分布族の量子対応物のうち、推定論的に重要な意義を持つSLD(対称対数微分)にもとづいた量子指数型分布族に注目し、特に純粋状態から成る量子指数型分布族上の双対平坦構造が、複素射影空間(=純粋状態空間)上のFubini-Study計量(=SLD計量)の成すケーラー構造と密接に関係することを示した。また、純粋状態空間上ではRLD (右対数微分)に基づいたリーマン計量(RLD計量)は発散してしまうが、複素化された余接空間上ではこの計量は有限にとどまり、かつ推定論的な意義も保たれることを示した。これらの結果は未だ部分的知見に留まっているが、情報幾何の量子化・複素化への一つの方向性を示したものと言える。3.ボルツマンマシンは確率的ニューラルネットワークの一種であり、その平衡分布の成す集合は指数型分布族を成すことが知られている。我々は量子相対エントロピーおよびBKM計量から導かれる量子情報幾何構造の観点からボルツマンマシンの量子対応物を考え、古典的な場合との類似と相違について明らかにした。4.量子通信路の推定問題についてさまざまな研究を行い、情報幾何構造との関連を明らかにした。5.その他、関連研究として情報理論、量子情報理論、確率過程の情報幾何などに関する研究を行った。
著者
奈良岡 浩
出版者
日本惑星科学会
雑誌
遊・星・人 : 日本惑星科学会誌 (ISSN:0918273X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.94-101, 2013-06-25
被引用文献数
1

小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った粒子の有機化合物分析に関する顛末について記述した。S型小惑星表面上に有機化合物が存在するかはおもしろい問題であるが,今のところ,はやぶさ粒子にイトカワ固有の有機物は発見されていない.これからの「はやぶさ2」やNASA「OSIRIS-REx」計画に期待するとともに,このような惑星物質研究を成功させるためには,長期の視点で積極的な若い研究者を育てることが必須である.
著者
十時 寛典 越智 徳昌 佐藤 昌之 村岡 浩治
出版者
自動制御連合講演会
雑誌
自動制御連合講演会講演論文集 第57回自動制御連合講演会
巻号頁・発行日
pp.1590-1597, 2014 (Released:2016-03-02)

JAXAが実施している公募型研究の一環として,Tilt Wing VTOL無人機の1種である4発ティルト翼無人機(QTW-UAV)の飛行制御則を設計した.本研究では,固有不安定なQTW-UAVを安全に飛行させるための安定増大装置と,パイロットのワークロード軽減のための操縦性増大装置を設計した.これらの設計にはそれぞれLMIおよびコントローラの低次元化に基づくPID制御則設計手法を適用した.本発表ではこれら2つの設計法を紹介し,得られた制御則の有効性を確認するために実施した非線形Human-in-the-loopシミュレーションの結果を報告する.
著者
岡 浩一朗
出版者
日本健康教育学会
雑誌
日本健康教育学会誌 (ISSN:13402560)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.69-70, 2015 (Released:2015-06-05)
参考文献数
10
著者
松岡 浩史
出版者
和光大学現代人間学部
雑誌
和光大学現代人間学部紀要 (ISSN:18827292)
巻号頁・発行日
no.8, pp.85-104, 2015-03

本稿は『ハムレット』に表象される狂気を同時代の一次資料を援用して分析し、作品の悲劇性を論じるものである。第一に、亡霊の表象史を概観し、ハムレットに描かれる亡霊が、セネカの系譜上のプロローグ・ゴーストから、幻覚の可能性を包摂した内在的な存在へと変遷していることを述べ、悪魔と幻覚にかんする言説と作品との関連性を指摘した。第二に、前述の悪魔、そして幻覚の作用因として想定されていたメランコリーについて、四体液学説の観点から論じ、メランコリーという術語の多義性に基づいて概観したうえで、作品に登場する二種類の狂気について分析を加え、同時代の医学理論では説明不可能な領域が開けていたことを指摘した。第三に、同時代の診療記録を分析し、シェイクスピア時代は女性の社会ストレスが圧倒的に高く、また相対的に自殺率の高い時代であったことを指摘し、狂気が『ハムレット』の劇世界において多層的に表象されていると結論した。
著者
松尾 篤 冷水 誠 前岡 浩 森岡 周
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.138-139, 2011
参考文献数
3

我々は,経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が,健常者の上肢の運動機能を向上させるかどうかを検証した。健常若年者20名(平均年齢21.5 ± 1.2歳,男性16名,女性4名)を対象者とし,研究デザインはシングルブラインドクロスオーバーコントロール研究とした。tDCS刺激条件は,陽極tDCS条件と偽性tDCS条件とし,陽極を右運動関連領域(C4)に設置し,1 mAで20分間の刺激を実施した。測定アウトカムは,左上肢での円描画課題による軌跡長とはみ出し面積,左手握力とした。陽極tDCS後に円描画課題のはみ出し面積に有意な減少効果を認めた。他の測定項目,および偽性tDCS条件においては有意な変化を認めなかった。本結果より,陽極tDCSが健常者の非利き手での運動の巧緻性を変化させることが示唆され,tDCSによる運動関連領野の興奮性増大が関係したことが推察された。
著者
岸 磨貴子 久保田 賢一 盛岡 浩
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.251-262, 2010
被引用文献数
1

本研究では,研究プロジェクトをベースとした特徴ある大学院教育を実践している研究室を実践共同体の分析的視座から捉え,院生が研究プロジェクトに十全的に参加していく過程について調査を行った.研究の対象となったX大学大学院A研究室では,地域社会や企業など大学外の組織と連携した研究プロジェクトを継続的に実施している.6名の院生に対して半構造化インタビューを行い,グラウンデッド・セオリー・アプローチに基づいて分析した.分析の結果,院生は,研究プロジェクトにおいて多様な立場の他者,大学外の組織と連携した活動,そして研究室の文化と相互に作用することで,大学外の組織と連携して研究を行うようになり,研究プロジェクトに十全的に参加していたことが明らかになった.このような研究活動は,個々の院生の充実感・達成感により価値付けられ,院生の研究プロジェクトへの十全的参加を方向付け,研究活動の必要な知識・技術を習得させることを促していた.
著者
立岡 浩 林 紘一郎 山崎 茂雄 高 榮洙 梅村 修 福冨 忠和 牛木 理一 大角 玉樹 佐藤 薫 岩瀬 真央美 雑賀 忠宏 杉田 このみ 上田 学 家島 明彦 山口 芳香
出版者
花園大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

本研究は、映像コンテンツ産業におけるNPO(非営利組織)と、NPO・行政・企業・住民の複数利害関係者の参加によるPPP(公民協働事業体)及びその支援機関にかかる、権利・契約管理及び関連する振興政策と協働経営、そしてこれらの評価システムについて、産業ビジネス観・文化芸術観・社会エンパワメント観という3つの世界観及びそれらの調和バランスとを関係づけながら、理論と実証の両面から総合的多角的に解明する国際比較研究として行ったものである。
著者
立岡 浩一
出版者
静岡大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2006

本研究はシリサイド系半導体の総合的な研究であり、結晶成長、物性評価からデバイス応用への応用まで広い範囲をカバーしていている。資源豊富で安全である材料を用い、太陽電池や熱光電池,熱電発電素子など環境保全に寄与するデバイスの開発を行った。得られた結果を総合的にまとめ、ファミリーとしてみたシリサイド半導体の光電デバイス、熱電デバイスへの可能性について纏めた。この研究テーマの最終的目標である資源豊富で安全な材料による半導体発電素子の開発が、将来のエネルギーフローを変える事を期待する。
著者
湯田 智久 大住 倫弘 前岡 浩 森岡 周
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.1328, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】Complex regional pain syndrome(CRPS)患者や脳卒中患者の障害側上肢には浮腫が生じ,浮腫は関節可動域制限や疼痛と関連することが報告されている(Shimada 1994,Isaksson 2014)。浮腫の原因は自律神経障害や静脈欝血とされることが多いが,明確な成因や治療手段は明らかにされていない。Moseley(2008)は,身体所有感が浮腫に関連することを示唆しているが,これらの関連は調査されていない。そこで本研究では,身体所有感の生起プロセスの調査を行う実験手法とされているラバーハンド錯覚(Rubber Hand Illusion:RHI)を用いて,身体所有感の変化が手容積に与える影響について調査することを目的とした。【方法】対象はRHIが未経験の健常成人21名(男性12名,女性9名,平均年齢26±3.85歳)とした。RHIとは隠された本物の手と偽物の手(Rubber Hand:RH)が同時に刺激されると,RHが自己の手のように感じる身体所有感の錯覚現象である。今回は2分間(1Hzの速度)絵筆による触刺激を隠された本物の左手とRHに同時に与える同期条件,交互に刺激を与える非同期条件,RHのみに刺激を与える視覚条件の3条件(各7名)に振り分けた。手容積の測定は,RHI前後で手容積計を用いて行った。客観的な錯覚の評価として,Skin Conductance Response(SCR)と脳波を測定した。SCRはProcomp2(ソートテクノロジー社)を用い,右第2,3指に貼付した電極間の電位差を測定し,RHI後にRHへ針刺激を与える場面を見せ,その直後から5秒間のSCRの最大振幅とした。SCRの振幅が大きい程RHへの錯覚が強く,身体所有感が低下していることを表している(Armel 2003)。脳波は高機能デジタル脳波計Active two system(Bio semi社)を用い,拡張10-20法に準じた電極配置による64電極にて安静座位,RHI時の60秒間を測定した。解析対象chはC3,C4とし,RHI時のα帯の平均パワー値を安静時のα帯の平均パワー値で除し,そのLog値をα帯の変化量とした。なお,Log比が負の値である程身体所有感の低下を表している(Evans 2013)。また,自律神経活動の変化の指標としてRHI前後で皮膚温,情動喚起の指標としてRHI後に不快情動の測定も行った。皮膚温はProcomp2(ソートテクノロジー社)を用いて,左第2指掌側で30秒間5set計測し,その平均値とした。不快情動はNumeral Rating Scaleを用いて測定した。統計解析は,各パラメータの条件比較を一元配置分散分析(多重比較検定法Bonferroni法)を用いて行った。また,手容積変化率との関連要因を検討するために,全被験者の各項目間の相関分析をPerson積率相関係数にて求めた。その後手容積変化率を目的変数に,C4Log比,SCR,皮膚温変化量,不快情動を説明変数として重回帰分析(変数増減法)を行った。有意水準は5%未満とした。【結果】手容積は条件内比較で有意差を認めなかった。手容積の変化率(%)は同期条件で0.31±1.41,非同期条件で-0.42±1.66,視覚条件で0.6±0.6であり,条件間においても有意差を認めなかった。SCR,C3Log比,C4Log比は条件間で有意な差を認めなかったが,同期条件のSCRで最も高値を示した。相関分析において,手容積変化率は皮膚温変化量(r=.44,p<.05),不快情動(r=.55,p<.01),C4Log比(r=.5,p<.05)と正の相関を認めた。また,皮膚温変化量はC4Log比と正の相関(r=-.44,p<.05),SCRと負の相関(r=-.53,p<.05)を認め,C4Log比は不快情動と正の相関(ρ=.61,p<.01),SCRと負の相関(r=-.46,p<.05)を認めた。重回帰分析の結果では,不快情動(標準偏回帰係数:0.47,p<.05)が抽出された。【考察】SCR,脳波で条件間の差を認めなかった。Honma(2009)らは本研究の視覚条件と同様の条件にて身体所有感の錯覚が生じることを報告しており,本研究では同期条件以外の被験者でも錯覚が生じていたことが考えられる。これらは手容積変化率で条件間の差を認めなかった要因として考えられる。しかし,相関分析でC4Log比と手容積の間に関連を認めていることから,本結果はRHIの実施方法の差異ではなく,身体所有感の低下が手容積の減少に関連することを示している。また,C4Log比と不快情動に相関を認め,重回帰分析で不快情動が抽出されたことは,身体の錯覚に関連した不快情動の喚起は手容積の増大に影響することを示唆している。【理学療法学研究としての意義】本研究結果は,浮腫の発生要因として末梢の影響以外にも,自己の手に対する知覚的側面や情動的側面が影響することを示唆しており,浮腫に対する理学療法介入の一助になると考える。
著者
小松澤 均 松尾 美樹 柴 秀樹 岩野 英知 比地岡 浩志
出版者
広島大学
雑誌
挑戦的研究(萌芽)
巻号頁・発行日
2020-07-30

本研究の目的は、う蝕原因菌特異的に抗菌効果を発揮するバクテリオファージ(ファージ)を同定し、ファージセラピーによる新規う蝕予防法を提唱することである。自然界には多くのファージが存在しており、ファージは菌種特異性が高く、ファージが感染した細菌は死滅する。そこで、本研究では、う蝕原因菌を特異的に殺菌できるファージを唾液やデンタルプラークから同定・分離し、性状解析を行う。口腔感染症の予防・治療に新たな治療法を提案することで、これまでの感染症治療への新規治療法の開発という大きなパラダイム・シフトをもたらすのみならず、全身疾患への予防も視野に入れており、挑戦的かつ発展の可能性のある研究である。
著者
荒井 弘和 岡 浩一朗 堤 俊彦 竹中 晃二
出版者
日本行動医学会
雑誌
行動医学研究 (ISSN:13416790)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.1-6, 2005 (Released:2014-07-03)
参考文献数
24
被引用文献数
1

本研究の目的は、中等度の強度の有酸素運動に伴う疲労感の変化を検討することであった。さらに、疲労感の変化と一過性運動に対するセルフ・エフィカシーの変化との関係を検討した。16名の大学生または大学院生が、本研究の被験者として招集された。運動セッションに伴って、1)疲労感を測定する日本語版 Iceberg Profile、2)中等度の強度の運動を継続できるというセルフ・エフィカシーという2つの測定尺度が用いられた。被験者は、自転車エルゴメータで、中等度の強度のサイクリングを20分間行った。さらに、コントロール条件として、被験者は20分間の読書を行った。運動が疲労感に与える影響を検討するために、繰り返しのある分散分析を行った。しかし、分散分析の結果、条件の主効果、時間の主効果、および条件×時間の交互作用は認められなかった。この結果は、中等度の強度の運動が疲労感を増強しないことを示している。相関係数の算出によって、運動に伴う疲労感の変化量とセルフ・エフィカシーの変化量との関係を検討した。疲労感の変化量はセルフ・エフィカシーの変化量と関連していなかった。本研究の結果は、運動に伴う疲労感とセルフ・エフィカシーが、独立して生じる可能性を示唆している。