著者
新川 祐利 梅津 寛 大島 健一 岡崎 祐士
出版者
医学書院
雑誌
精神医学 (ISSN:04881281)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.881-888, 2012-09-15

抄録 大麻乱用後に幻覚妄想状態を呈した2症例を報告した。症例1は大麻精神病,症例2は大麻乱用の経験がある統合失調症と診断し,両者の違いを考察した。急性期症状は類似点が多いが,本症例の大麻精神病は幻覚妄想に対し恐怖や緊張を伴わず,妄想内容が了解可能であることが統合失調症と異なっていた。大麻精神病の経過では,大麻による無動機症候群を認め,意欲減退などが原因で社会機能が低下し,統合失調症の陰性症状と類似した。しかし,対人関係の障害や認知機能障害は認めず,治療により社会機能が病前の状態まで回復したことが異なっていた。大麻乱用が統合失調症を惹起する可能性が推察された。
著者
島 健二 川原 和彦 小松 まち子 川島 周
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.423-427, 2006 (Released:2009-01-19)
参考文献数
33
被引用文献数
5

末期慢性腎不全による維持透析治療中の患者で,2~3日間の絶食後に,血糖値が低血糖域(血糖値50 mg/dl以下)に低下した5症例を経験した.1例を除き血糖降下薬は低血糖発症前2~3日間摂取しておらず,これが原因とは考えられない.また,低血糖発症後4日以内測定の早朝空腹時血中インスリン濃度は異常高値でなく,また,インスリン拮抗ホルモン濃度も低値でなかった.1例のアルコール性肝障害例を除き,本症例の低血糖の要因として,腎での糖新生障害の可能性が推定される.
著者
太田 匡彦 大園 誠一郎 池田 朋博 中農 勇 平尾 佳彦 渡辺 秀次 高島 健次 平尾 和也
出版者
一般社団法人 日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科学会雑誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.95, no.5, pp.705-710, 2004-07-20 (Released:2010-07-23)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

(背景) 最近, 健康ブームで, スポーツ人口が増加しているが, 一部に運動後血尿を認める場合があり, 運動性血尿として注目されている. そこで, 最も一般的な運動であるランニングと血尿の検討を夏季において行った.(対象と方法) 泌尿器科的疾患のないヘルシーボランティア109名に運動前安静時尿採取後, 5kmランニングを行い, 運動後尿を採取した. 評価可能例は90名で運動前後尿につき, 検尿, 尿沈査, フローサイトメトリーにより赤血球数, 赤血球形態について比較した.(結果) 運動後の尿中赤血球数増加例が83名であり, 運動後顕微鏡的血尿例 (赤血球数3個/hpf以上) は32名であった. そのうち赤血球形態学的検討で dysmorphic pattern が23名と最多であった.(結論) ランニングにより血尿が誘起され, 糸球体性血尿が中心と考えられた.
著者
山本 圭吾 松島 健 吉川 慎 井上 寛之 手操 佳子 園田 忠臣 波岸 彩子 堀田 耕平 市村 美沙 森田 花織 小池 碧 古賀 勇輝 渡邉 早姫 大倉 敬宏
雑誌
日本地球惑星科学連合2018年大会
巻号頁・発行日
2018-03-14

平成26年度より開始された「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」における課題「桜島火山におけるマグマ活動発展過程の研究」の一環として,昨年度に引き続き,2017年11月に桜島火山において一等水準測量の繰返し観測を実施した.本講演では,この測量の結果について報告し,2016年11月に実施した前回測量以降の桜島火山の地盤上下変動について議論する. 水準測量を実施した路線は,桜島西部山腹のハルタ山登山路線,北部山腹の北岳路線の2路線である.路線総延長は約24 kmであった.これらの路線を,2017年11月1日~13日の期間において測量に当たった.測量方法は,各水準点間の往復測量で,その往復差は一等水準測量の許容誤差を満たすようにした.近年の水準儀は測量精度も向上しており,これらの器材を用いて注意深く測量を行った結果,測量における誤差は,1 km当りの平均自乗誤差が,ハルタ山登山路線および北岳路線においてともに±0.22 mm/km,水準環閉合差はハルタ山登山路線において時計回りに0.9 mm(許容誤差7.6 mm)となり,高精度の一等水準測量を行うことができた. 桜島西岸の水準点BM.S.17を不動点(基準)とし,各水準点における比高値を,前回の2016年11月に行われた測量結果(山本・他,2017)と比較することで,2016年11月から2017年11月の期間の約1年間における地盤上下変動量を計算した. 計算された地盤上下変動量から,桜島北部付近の水準点において,地盤隆起(最大で4.5 mm)が生じていることが確認された.前々回から前回測量までの2015年8月・9月から2016年11月の期間においては,1年2~3ヶ月間と多少1年間よりも期間が長いものの,北岳路線のこの付近の水準点において15 mm程度の地盤隆起が測定されていた.このことを考えると,2017年11月までの1年間の桜島北部付近の隆起速度は,それ以前の1年間に比べて減少していると考えられる.一方で,桜島中央部付近においては,若干の地盤沈降(最大で-2.6 mm)が認められる. 茂木モデルに基づき,得られた上下変動量データから圧力源の位置を求めた.測量を実施した水準点の空間分布が限られているため試行的な結果であるが,桜島北方の姶良カルデラの地下約10 kmの深さに増圧源が,また南岳地下の浅部に減圧源が推定された.2016年11月~2017年11月の期間,姶良カルデラ地下のマグマ溜まりにおいて引き続きマグマの貯留が進行していることを示していると考えられる.一方で,南岳直下のマグマ溜りにおいては減圧傾向が示唆される.
著者
中井 寿雄 福島 健一郎 西 聡士 松岡 遼太郎 能勢 佳子 中窪 悟 武部 秀人
出版者
一般社団法人 日本災害医学会
雑誌
日本災害医学会雑誌 (ISSN:21894035)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.35-41, 2022-01-28 (Released:2022-01-28)
参考文献数
16

本研究の目的は、K-DiPSアプリを用いて、鹿児島県肝付町における医療機器・処置や薬剤などを要する要支援者を把握し、GISを用いて津波と土砂災害の被災リスクを明らかにすることである。58人の年齢の中央値(範囲)は、86.5(1–100)歳で、女性34人(58.6%)、医療機器を4人が使用していた。内服薬は243、内服以外は51種類だった。津波浸水想定区域に5人、土砂災害警戒区域に6人が居住し1区域は特別警戒区域だった。浸水想定区域の要支援者の避難準備時間を5分、時速1.66 kmで避難した場合に、5人全員が時間内に浸水想定区域外、もしくは近接の津波避難タワーに退避が可能と推定された。タワーへ避難した場合、津波流入方向に向かって移動する者が2人だった。アプリを用いることで詳細かつ最新の状態を把握できる可能性がある。GISによる可視化は、要配慮者と具体的な避難行動を検討する際に有効である。
著者
中島 健介
出版者
九州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1999

積雲による励起の季節変化・日変化についての検討励起源と見られる積雲対流の指標(降水量・雲量)について衛星観測から客観解析されたデータを入手して、検討してみた。残念ながら、日変化については信頼できる直接の観測は得られていないことがわかった。しかし、積雲の活動が活発な地域の季節的変動と、典型的な積雲日変化の特性を組み合わせると、日変化の季節変動が推定できる。これと、常時励起振幅の日変化の季節変動の特性とは、かなり一致していることがわかった。このことは、本研究の核心すなわち積雲が常時励起の主体であることを、強く支持するものである。木星における枇曇対流と自由振動の関係についての考察ガリレオなどによる探査の結果、木星大気でも積雲対流が生じていることが分かっている。この積雲対流が木星全体の自由振動を常時励起することが考えられるので、予備的な考察を行った。地球の場合には、積雲が存在する大気と自由振動する固体部分との間には明確な境界があり、力学的性質も非常に異なるので、両者を区別して取り扱うことが適当であった。しかし、木星の場合には「大気」と「内部」は連続しており、地球の手法をそのまま用いることが出来ない。それでも、過去に行われた木星自由振動の理論をレビューした結果では、常時自由振動は積雲によって比較的高い効率で励起されるように思える。ただし、木星の場合には、観測によって常時励起を検出できるかどうかが大きな問題である。しかし、もし観測出来れぱ惑星内部構造を制約する有力な情報を提供できるので、今後とも検討していく予定である。
著者
小尾 公美子 籠橋 麻紀 波田 野琢 藤島 健次 北田 徹 服部 信孝 大熊 泰之
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.68-72, 2010-02-28 (Released:2014-11-21)
参考文献数
18
被引用文献数
1 1

破傷風は先進国では稀な疾患となったが, ひとたび発症すると致死率が高い神経緊急疾患である. 当科ではこの9年間に7例の破傷風患者を経験したが, 本稿では中高年齢で発症し示唆に富んだ4例について報告した. 開口障害より嚥下障害が目立つと, 脳卒中と誤診されやすく注意を要する. 少しでも開口障害があれば外傷歴がなくとも破傷風を考慮し, 高齢者, 重症者では合併症も多いので, 十分な全身管理が必要であると考えられた.
著者
小島 健太郎 小島 早織 内海 恵利 江成 暁子
出版者
一般社団法人 日本獣医麻酔外科学会
雑誌
日本獣医麻酔外科学雑誌 (ISSN:21896623)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.13-15, 2020 (Released:2020-08-26)
参考文献数
5

肥満細胞腫(MCT)は犬の皮膚悪性腫瘍では最も多いが、筋肉内MCTの情報は極めて少ない。今回、大腿二頭筋に発生したMCTに対して外科的治療を行った症例を経験したので報告する。11歳、避妊雌、ラブラドール・レトリーバーが右大腿二頭筋に発生した最大径5.7 cmの筋肉内腫瘤を主訴に来院した。腫瘤を含む大腿二頭筋の部分切除および同側の膝窩リンパ節の摘出を行った。病理組織学的診断はMCTであったが不完全な外科マージンと評価され、c-kit遺伝子exon9に変異を認めた。術後8日目に拡大再切除を実施したが、摘出組織には組織学的に腫瘍細胞は認められなかった。術後692日に死亡するまで、再発や転移は認めなかった。本症例から筋肉内MCTの治療として筋肉の部分的切除が選択肢の1つとなる可能性が示唆された。
著者
三島 健 櫻井 英俊 野下浩平
雑誌
ゲームプログラミングワークショップ2006論文集
巻号頁・発行日
vol.2006, pp.136-142, 2006-11-10

ゲームHexは、先手必勝手順の存在が証明されているが、具体的な必勝手順を示すことは長年の研究課題である。本稿では、石の連結性を定義するための新しい概念として、δ連結を提案し、それに基づいて、連結に関与する領域を拡張するための新しい技法δ拡張を導入する。この技法の応用として、従来の技法で記述するには複雑すぎるとされていた8×8盤面の初手63 に対する必勝手順を示す。また、この技法の強力さを示す例として、8×8盤面の初手54 に対する野下の必勝手順(2005)を大幅に簡単化する。同様にして、9×9 盤面に対する必勝手順を示すことができるが、本稿ではその証明木を示す(現在細部のチェック中)。
著者
川島 健
出版者
同志社大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2012-04-01

本研究の成果として以下の三点がある。(1)ラジオドラマに描かれる、ウェールズやアイルランドなどのイギリスの境界に位置する国々が、新たに打ち建てられるEnglishnessに収まらない差異を表していることが判明した。(2)モダニズムのエリート主義にとって大衆は忌むべき問題であったが、ラジオが大衆に語りかける新しい言語を模索する手段として、ラジオドラマがあったことが分かった。(3)第一次世界大戦が多くの戦争詩を生んだが、第二次世界大戦に詩的表現を与えた作家は少ない。それに対して、BBCラジオは、戦争にたいする、より複雑な感情を代弁するメディアになったことが分かった。