著者
曽根 淳
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
pp.cn-001417, (Released:2020-09-05)
参考文献数
47
被引用文献数
7

神経核内封入体病(neuronal intranuclear inclusion disease; NIID)は,進行性の神経変性疾患であり,近年まで剖検により診断されていたが,2011年に皮膚生検が診断に有効と報告された後,症例数が増加している.2019年にはNOTCH2NLC遺伝子上のGGCリピート配列の延長が原因であると同定され,遺伝子診断も可能となった.NIIDでは,認知機能障害で発症し,頭部MRIでの白質脳症およびDWIでの皮髄境界の高信号が認められる群と,四肢筋力低下から発症する群の2群が認められる.今後,白質脳症およびニューロパチーの鑑別診断にNIIDを含める必要があり,皮膚生検と遺伝子検査を組み合わせ,NIIDを的確に診断し,病態解明を推進する必要がある.
著者
中林 誠一郎 曽越 宣仁
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.8-11, 2006
参考文献数
3
被引用文献数
1

液体の水は我々にとってなじみの深い物質であると同時に,地球環境の維持に大切な役割をもっている。水の興味深い物性を決める最も大きな要因は水素結合である。磁性の観点から水を見ると,水は磁場とほとんど相互作用しない平凡な物質である。しかし10Tまでの非常に強い磁場中に水をおいて,精密にその性質を調べると,興味深い磁場への応答性がうかがえた。従来の水の研究について概観しつつ,筆者らの新しい知見について解説する。

1 0 0 0 OA 東西喫煙史

著者
曽我重郎 著
出版者
雄山閣
巻号頁・発行日
1933
著者
木曽 昭典 川嶋 善仁 大戸 信明 周 艶陽 屋敷(土肥) 圭子 村上 敏之 新穂 大介 神原 敏光 水谷 健二
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.267-273, 2009-12-20 (Released:2011-12-21)
参考文献数
22
被引用文献数
2

皮膚の潤いを保つには,表皮の角層における水分保持機能およびバリア機能が不可欠である。これらの機能を発揮するため,セラミド,コレステロールおよび遊離脂肪酸から構成される角層細胞間脂質が重要な役割を果たしている。本研究では,セラミドの産生促進作用を指標にして,皮膚の潤いを保つのに有効な植物抽出物の検索を行った結果,甘草葉抽出物に表皮角化細胞においてセラミドの合成に関与する酵素であるセリンパルミトイルトランスフェラーゼおよびスフィンゴミエリナーゼの遺伝子発現を促進する作用,3次元培養皮膚モデルおよびヒト皮膚においてセラミド産生促進作用を見出した。さらに他の角層細胞間脂質であるコレステロール合成の律速酵素として知られるHMG-CoA還元酵素の遺伝子発現促進作用や表皮ヒアルロン酸の合成を促進する作用も認めた。また,甘草葉から単離した活性成分についても検討したところ,6-prenyl-naringeninが活性成分の一つであることが示唆された。これらの結果から甘草葉抽出物は,角層細胞間脂質や表皮ヒアルロン酸の合成を高め,多角的に皮膚機能を維持・改善するスキンケア素材である可能性が示唆された。
著者
曽我部 哲人 牧 紀男
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.1107-1112, 2020

<p>兵庫県神戸市は1995年、阪神・淡路大震災により甚大な被害を受けた。その一方で、1990年代後半に日本の都心区では「都心回帰」と呼ばれる人口増加が起こり、その人口増加には高層集合住宅の建設が影響を与えた。このことから、1995年以降の神戸市の人口動態はそれら2つの出来事が影響を与えていると考えられる。以上の背景のもと、本研究では1) 被災後の神戸市被害甚大地域の長期的人口動態の概略、2) 住宅被害と超高層集合住宅開発の関係性、3) 超高層マンション開発による被災後の都心区である中央区の人口動態への影響を示す。本研究は、1km×1kmメッシュ単位で、住宅被害と人口増減、人口構造変化を集計し、それらと超高層マンション立地との相関を評価する。本研究は都心区における長期的な人口増加と人口更新があること、地域の震災被害や超高層マンション建設はそれらの傾向を促進したことを示した。このことは、震災復興と都心回帰は相互に影響を与えたと考えられ、震災復興は地域の社会的状況を踏まえ、計画を行う必要があると示唆された。</p>
著者
大曽 基宣
出版者
名古屋女子大学
雑誌
名古屋女子大学紀要. 家政・自然編, 人文・社会編 = Journal of Nagoya Women's University. Home economics・natural science humanities・social science (ISSN:21857962)
巻号頁・発行日
no.66, pp.43-53, 2020-03

朝食摂取や規則正しい睡眠習慣の確立は思春期の子どもにとって重要な課題である.本研究は,夕食の共食機会が少ない環境で生活する中学生の食・睡眠に関する行動変容に繋がりやすい行動目標を明らかにすることを目的とした.愛知県内M中学校全学年の生徒353人を対象に朝食内容と規則的な睡眠習慣に関する学習活動を行った.学習後に生徒が行動目標を設定し,1ヶ月後に目標達成状況を確認した.得られた結果を夕食の共食行動の有無別で分析した.その結果,目標達成者の割合は,食事量,食事バランス,野菜摂取,果物摂取の項目において,共食群の方が高かった.達成者割合が高かった目標は,共食群では果物摂取,野菜摂取,間食の量の順であったのに対し,非共食群では間食の量,睡眠習慣,乳・乳製品摂取の順であり,共食状況により達成に繋がりやすい目標に相違があった.本研究により,夕食の共食機会が少ない環境で生活する中学生の食・睡眠においては,乳・乳製品摂取,間食の量,睡眠習慣など,比較的生徒自身の心がけでコントロール可能な目標が達成されやすいことが示唆された.共食機会の少ない環境で生活する中学生の野菜・果物摂取量の増加に繋がる学習内容の検討が今後の課題である.
著者
曽 丹 馮 雪梅 厳 清華
出版者
嘉悦大学研究論集編集委員会
雑誌
嘉悦大学研究論集 = Kaetsu University research review (ISSN:24322946)
巻号頁・発行日
vol.59, no.1, pp.61-74, 2016-10

東アジアの近代化にとって、西洋文明の導入が大きな役割を果たしたことはよく知られているが、中国と日本は近代化の初頭、西洋文明の圧倒的軍事力の下で、富国強兵のために、西洋に対抗する手段として、内容的に極めて似通ったスローガン「中体西用」と「和魂洋才」を提唱したにもかかわらず、その結果から見れば、日本は東アジアの諸国に先駆けて近代化を遂げたのにひきかえ、中国の近代化は著しく遅れていた。そこで、その深層にある原因について改めて検討し直す必要が生じていると思われる。 本稿では、まず「中体西用」と「和魂洋才」思想形成の原因分析の上に、その思想形成の過程と発展軌跡を浮き彫りにした。そして「中体西用」と「和魂洋才」思想の生まれた背景、具体的な内容、本質など幾つかの面から、両思想を比較しながら、両者の共通点と相違点について検討を行った上、近代化の過程において「中体西用」と「和魂洋才」の実際に果たされた効果の差異が生じた原因を探求してみた。
著者
田島 惇 大見 嘉郎 阿曽 佳郎 太田 信隆 牛山 知己 畑 昌宏 藤井 一彦 増田 宏昭
出版者
泌尿器科紀要刊行会
雑誌
泌尿器科紀要 (ISSN:00181994)
巻号頁・発行日
vol.29, no.3, pp.p365-369, 1983-03

Moristerol was orally administered in 20 cases of benign prostatic hypertrophy. One capsule of Moristerol contained 200 mg of soysterol . In all the cases, 9 capsules of Moristerol were given per day in three divided doses for 6 weeks. Clinical improvement was observed in 11 of the 20 cases (55%). It consisted mainly of subjective complaints such as improvement of dysuria, narrow and weak urinary stream and feeling of incomplete voiding. As objective findings, a statistically significant decrease of residual urine volume was noted after treatment, although shrinkage of the enlarged prostate was not clear upon palpation or roentgenography. In addition to the improvement of symptoms, serum lipid peroxide which might be considered to be a provocative cause of benign prostatic hypertrophy, was also significantly decreased by Moristerol administration. No marked side effects were seen in this study.
著者
中澤 弥子 吉岡 由美 髙﨑 禎子 小木曽 加奈 小川 晶子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.30, 2018

【目的】長野県の家庭料理の特徴を探ることを目的として、主菜について分析した。本発表では、その特徴を表し、昭和30年頃から長野県各地で大切に作り継がれている主菜について報告する。<br>【方法】平成25~28年にかけて全県的な現地調査を実施した。調査方法は、主に聞き取り法で行い、可能な場合は、食材や料理、加工品の実物を撮影し、試食を行った。<br>【結果】「海なし県」である長野県の伝統的な主菜に用いる食材には、海水魚、淡水魚や貝、凍み豆腐、鶏肉、馬肉、山肉、昆虫など、種々の食材が利用されてきた。主菜に用いる食材の多くは、単品ではなく、季節の畑作野菜や山菜、茸などと共に煮物にして多く利用された。例えば、身欠き鰊と寒干し大根などの野菜の煮物は、田植えや人寄せ(人が集まる機会)などのご馳走として利用された。海水魚では、年取り魚(大晦日、年越しの食事につける魚)には鮭と鰤が多く利用され、鰯や秋刀魚等がご馳走や日常食で食されてきた。淡水魚では、鯉がうま煮、あらい、鯉こく、から揚げ、すずめ焼きなど様々な料理で利用され、年取り魚をはじめ、行事食としても多く利用されてきた。鮒の甘露煮、わかさぎの甘辛揚げ、たにしの味噌汁なども、季節の日常食として食されてきた。凍み豆腐は、寒冷な気候を利用した保存食として煮物や味噌汁をはじめ、いろいろな料理で食されてきた。家で飼っている鶏をつぶして鶏肉を行事食などに利用した。馬肉は、伊那・飯田で多く食され、馬刺しをはじめ伊那・飯田では馬のモツを醤油や味噌などで煮込んだ「おたぐり」と呼ばれる煮物などで食してきた。猪や鹿、熊などの山肉は、焼き肉や煮物などで利用した。また、魚肉ソーセージや竹輪が煮物やサラダなどに多く利用された。
著者
中澤 弥子 佐藤 晶子 小木曽 加奈 吉岡 由美 鈴木 和江 高崎 禎子
出版者
日本調理科学会
雑誌
日本調理科学会大会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.23, pp.113, 2011

【<B>目的</B>】長野県では、一年を通じて家の最大の節目を年取りの行事とする傾向が強く、年神棚にご馳走をお供えし、一年の無事の感謝と新しい年の豊作を祈り、家族揃ってご馳走で祝う習慣<SUP>1)</SUP>がある。本研究では長野県の大晦日と正月の行事食の継承の実態と現在の特徴について、平成21~22年度調理科学会特別研究「調理文化の地域性と調理科学 行事食・儀礼食」で行った調査結果を基に明らかにすることを目的とした。<BR>【<B>方法</B>】アンケート回答者のうち、長野県内に10年以上住み、現在も住んでいる人および現在長野県内に住み、他県に10年以上住んだ経験はあるが、行事食に長野県の影響を受けている人の正月と大晦日のデータ(計686人)を集計し分析を行った。<BR>【<B>結果</B>】回答者の年齢層は、10~20代50%、30~40代33%、50代13%、60~80代4%であった。大晦日の認知度は99%、行事食の経験が98%と高く、年取りの祝い料理については、喫食経験ありが67%で、毎年食べるが53%を占めた。年越しそばは喫食経験ありが90%と高く、毎年食べるが57%、毎年ではないが食べるが19%と高率であった。鮭料理の喫食経験ありは62%で毎年食べるが35%、鰤料理の喫食経験ありは54%、毎年食べるが23%であり、現在も鮭や鰤などの年取り魚が年取りの祝い料理として食されていた。その他、海なし県である長野県において肉料理の回答は少なく、刺身、数の子、握り寿司などの海産物がご馳走として好まれ食されている様子がうかがわれた。<BR><SUP>1)</SUP>「聞き書 長野の食事」、p348、農山漁村文化協会 (1986)
著者
安原 智久 串畑 太郎 上田 昌宏 栗尾 和佐子 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2020-058, (Released:2021-01-29)
参考文献数
4

新入生は,単に学力的な教育をうけるだけではない.高校生から大学生への転換を自覚し,自律的な学習活動姿勢を身に着けていく過程である.ディスカッションやプレゼンテーションなどの能動型学習へ挑戦し,成功体験を得ることで積極的な学習習慣を育んでいく期間である.この期間の教育は,新入生の大学への印象を大きく左右する.自らの大学への帰属意識や満足感を持つかどうかは,この時期に提供される教育の質に大きな影響を受けると考えられる.入学直後に学生が持つ学部への印象は,学習への取り組みを高次学年に及ぶまで左右する要因になり得る.以上,新入生へ入学後に提供する教育は,単なる基礎学力の養成だけではなく,薬剤師を目指す学習意欲を育むうえで極めて重要となる.COVID-19の影響により,新入生が経験するはずであった学習面以外での大学からの支援が,基本的にすべてオンラインとなった環境でどのように展開していったかを記していく.
著者
近藤 英治 曽根 正勝 山原 研一 千草 義継
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

妊娠高血圧腎症や胎児発育不全は主に胎盤形成不全に起因する。病的胎盤からの放出因子が母体血管内皮を障害して高血圧や様々な臓器を障害する。一方、胎児では発育不全や胎児機能不全をきたす。この母児の生命を脅かす疾患の根源は胎盤にあり、胎盤形成不全の原因を明らかにし、胎盤機能再生療法を開発することは、周産期医学にとって喫緊の課題である。しかし、未だ胎盤形成のin vitroモデルはなく、まずは胎盤形成不全の機序を解明するため、胎盤を構成する絨毛細胞、血管内皮細胞、間葉細胞の代用として、ヒトiPS細胞由来絨毛様細胞、臍帯由来の血管内皮細胞、羊膜由来の間葉系幹細胞を共培養することで、胎盤の立体的器官芽(ミニ胎盤)を作成することに成功した。絨毛は2層構造であり、内側のCytotrophoblast(以下CT)と外側の(Syncytiotrophoblast(以下ST)から構成され、CTの融合により形成されるSTは母体血に面しており、母体と胎児の栄養・ガス交換を担っている。また、CTは絨毛外栄養膜細胞(EVT)にも分化し、脱落膜に付着したcell columnのCTから分化したEVTは子宮や子宮動脈内に浸潤する。ミニ胎盤ではこの3種の絨毛(CT, ST, EVT)が局在しており、より生体に近いモデルであると考えられた。ミニ胎盤は免疫不全マウスの子宮内でも生着するため、今後我々が開発したミニ胎盤はin vitroのみならずin vivoにおいても胎盤形成期の研究材料モデルとして用いることができる可能性がある、
著者
金谷 光子 尾曽 直美
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.93-102, 2004-10-18 (Released:2018-02-01)

Because there may be limitations in the scientific method of discovering and treating patients' "problems," the narrative approach has become increasingly important. These limitations have been pointed out by scholars from various fields. Hermeneutic view point has it that clinical knowledge is mostly based on the doctor's assumption and differs greatly from the world in which the patients live their lives. What should those in the nursing profession choose as a means of understanding patients? There is a Social Constructionist view that understanding is obtained through "language." When the sick patient tells about the world in which he/she lives in certain words, he/she has decided not to tell in other words. Then the patient's world appears before us as he/she tells. The patient organizes his/her world through telling as well. After over three years of interviewing with Ms. K, who was stuck with her mal-treating mother, we verified what telling brought to her, and how it was connected with understanding herself. Listening to Ms. K's narrative was linked to understanding her world in which she lived her life. It also brought a certain order to her confused history. As a result, her regrettable past came to have possibility for the future, altering her mentality so much as to make it possible for her to say "I have done my best" and "I have been living so well."
著者
曽我 英彦
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.174-177, 1995-10-01 (Released:2018-02-01)

The notion of "informed consent" appeared recently as an ethico-medical term. But the concept is not new. Where people want to live peacefully with others consent has always been indispensable, and there could be no consent without information. Why is the term "informed consent" now the topic of discussion" ? This term suggests that modern medicine based natural science has lost humanism and regard recuperation. In spite of infestation of Paternalism, professional arrogance, pursuit of commercial benefit etc., not a few medical professionals live still in the illusion that the medicine were the representative system of humanism. There is another illusion that a patient could give consent as a free and independent individual. From the illusion comes the self-determination right of patient in his health care. If a individual were realy independent, is'nt "informed" consent self-contradictory? The informations given from doctors are often onesided and patients can be biased or even forced to give agreement. This kind of agreement can not be real and ethical consent. So long an individual were absolute independent there can be no consent but antagonism. Modern western philosophy established by Descartes stands on individualism or egoism. As an idea or a symbol of liberation of people from dictators, it had historical significance. But is any one realy absolutely independent and free? This question was already possible British empiricists. Hegle and Marx asserted that the free individual, thought to be a independent, self determining substance, cannot release himself from the contradiction of self-alienation. Husserl's Intersubjektiv and Watuji's Ningen (human relation in itself) suggest that a person can only be himself in a community of mutual dependence. This thought to one of the fundamental principles of Buddhism. The subject of the consent is not an individual, neither physician nor patient, but a community of physician-patient relation based on mutual trust and information. So the consent in this meaning or, in other word, accord is the principle of not only medical but universal ethics.