著者
曽我部 真裕
雑誌
研究報告電子化知的財産・社会基盤(EIP)
巻号頁・発行日
vol.2012-EIP-55, no.5, pp.1-6, 2012-02-03

本稿は,2011 年に開始されたプロバイダ等による児童ポルノのブロッキングの仕組みを概観し,この仕組みがもたらしうる,通信の秘密や表現の自由の侵害といった法的問題について検討する.
著者
金谷 光子 尾曽 直美
出版者
日本医学哲学・倫理学会
雑誌
医学哲学 医学倫理 (ISSN:02896427)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.93-102, 2004

Because there may be limitations in the scientific method of discovering and treating patients' "problems," the narrative approach has become increasingly important. These limitations have been pointed out by scholars from various fields. Hermeneutic view point has it that clinical knowledge is mostly based on the doctor's assumption and differs greatly from the world in which the patients live their lives. What should those in the nursing profession choose as a means of understanding patients? There is a Social Constructionist view that understanding is obtained through "language." When the sick patient tells about the world in which he/she lives in certain words, he/she has decided not to tell in other words. Then the patient's world appears before us as he/she tells. The patient organizes his/her world through telling as well. After over three years of interviewing with Ms. K, who was stuck with her mal-treating mother, we verified what telling brought to her, and how it was connected with understanding herself. Listening to Ms. K's narrative was linked to understanding her world in which she lived her life. It also brought a certain order to her confused history. As a result, her regrettable past came to have possibility for the future, altering her mentality so much as to make it possible for her to say "I have done my best" and "I have been living so well."

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著者
和達 清夫 中曽根 康弘
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.1, no.1, 1960-07-30
著者
若曽根 了太 若曽根 了太
出版者
国立民族学博物館
雑誌
国立民族学博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Ethnology (ISSN:0385180X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-69, 2021

仏教的王権観念の地域への浸透は,中心から周縁への不可逆的な力の作用の結果として議論されることが多い。本稿では 19 世紀後半から 20 世紀初頭シャム東北地方ラオ社会(周縁)における仏教的王権観念の展開を,ラオス山地社会(外縁)を含む地域の視点で見直し,史料に依拠して描く。明示されたのはラオの聖者が,山地の先住民カーに支えられる神話的王権の力を宗教運動で取り込み,仏教的王権の神聖性を支える力へ転換させた点である。これは頭陀行僧による仏法をピーの上位におく信仰の序列化と並行し,結果シャム王権の仏教国教化を担うタンマユット派の地域進出を支えた。つまり仏教的王権観念の地域への浸透は,周縁と外縁のカリスマ宗教者の活動に依拠したと考えるのが妥当である。中心―周縁―外縁の枠組みは,中心を受容しうる周縁の動態性やロジックを可視化させ,中心史観の相対化をはかる点で有効である。Penetration of the Buddhist concept of kingship in a region is understood to be the result of an action with irreversible force, extending from the center to the periphery. The examination described in this paper draws on the history of kingship in the Buddhist conception of northeastern Lao society, which existed on the periphery of Siam during the late nineteenth and early twentieth centuries, with a perspective from the regional context of Lao mountain society (outer edge) using historical documents. Results indicate that the power of mythical kingship of the indigenous Kha people in these mountains was usurped by Lao saints in a religious movement and was transformed by them into a force of Buddhist kingship. This usurpation accompanied the growth of a pecking order in faith among head ascetic monks, who positioned the Buddha-dharma above and the spirits below. Consequently, they supported regional penetration of the Thammayut group, which was responsible for Buddhist thought on Siamese kingship. It is reasonable to assume that penetration of the Buddhist concept of kingship into the area was based on the activity of charismatic religious leaders of the periphery, including mountainous areas. The center – periphery – outer edge framework is useful for visualizing the dynamics and logic of a periphery that can accept the center and which can relativize the view of central history.
著者
池田 和隆 小林 徹 曽良 一郎
出版者
公益財団法人 日本醸造協会
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.97, no.2, pp.124-130, 2002-02-15 (Released:2011-09-20)
参考文献数
10
被引用文献数
1

アルコールが脳に与える影響は, 酔いをはじめとして様々あり興味ぶかくかつ重要である。ここではアルコールの鎮痛作用とイオンチャネルの一つであるGIRKチャネルとの関係を中心に紹介していただいた。また, アルコールは, 人の情動などを脳機能として調べる上でも重要な糸口を与えてくれる物質であるようだ。
著者
上田 昌宏 安原 智久 串畑 太郎 栗尾 和佐子 曽根 知道
出版者
一般社団法人 日本薬学教育学会
雑誌
薬学教育 (ISSN:24324124)
巻号頁・発行日
pp.2020-059, (Released:2021-01-29)
参考文献数
6

COVID-19の影響により対面授業が大きく制限され,すべての科目において学習方略の変更を余儀なくされた.本学は,コミュニケーションを育む上で特に重要な時期である1年次,4年次に,small group discussion(SGD)を伴う科目を多く設定している.そのためSGDを実施しない選択は,コミュニケーション能力を醸成する機会を失い,教育効果に大きな影響を与えると考えられる.そこで,複数の科目において,オンラインSGDを試みたので,その運用方法や方略を記す.さらに,ピア評価から得られた結果から,評価基準が発言頻度に大きく依存し,非言語コミュニケーションは評価の対象になる程には発揮されなかったものと推測される.SGDの本質的な役割は,非言語を含んだコミュニケーションを通じての問題解決能力を養うものである.詳細な検証を行えていないことに留意しつつも,本質的な意味でのオンラインSGDがもたらす教育効果は,対面でのSGDと同等なものになりえないものと考えられる.
著者
岡 照晃 小町 守 小木曽 智信 松本 裕治
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.1641-1654, 2013-04-15

生の歴史的資料の中には,濁点が期待されるのに濁点の付いていない,濁点無表記の文字が多く含まれている.濁点無表記文字は可読性・検索性を下げるため,歴史コーパス整備の際には濁点付与が行われる.しかし,濁点付与は専門家にしか行えないため,作業人員の確保が大きな課題となっている.また,作業対象が膨大であるため,作業を完了するまでにも時間がかかる.そこで本論文では,濁点付与の自動化について述べる.我々は濁点付与を文字単位のクラス分類問題として定式化した.提案手法は分類を周辺文字列の情報のみで行うため,分類器の学習には形態素解析済みコーパスを必要としない.大規模な近代語のコーパスを学習に使用し,近代の雑誌「国民之友」に適合率96%,再現率98%の濁点付与を達成した.Raw historical texts often include mark-lacking characters, which lack compulsory voiced consonant mark. Since mark-lacking characters degrade readability and retrievability, voiced consonant marks are annotated when creating historical corpus. However, since only experts can perform the labeling procedure for historical texts, getting annotators is a large challenge. Also, it is time-consuming to conduct annotation for large-scale historical texts. In this paper, we propose an approach to automatic labeling of voiced consonant marks for mark-lacking characters. We formulate the task into a character-based classification problem. Since our method uses as its feature set only surface information about the surrounding characters, we do not require corpus annotated with word boundaries and POS-tags for training. We exploited large data sets and achieved 96% precision and 98% recall on a near-modern Japanese magazine, Kokumin-no-Tomo.
著者
曽田 修司
出版者
跡見学園女子大学
雑誌
跡見学園女子大学マネジメント学部紀要 (ISSN:13481118)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.75-90, 2009-09-15

本論考では、2008年春に立て続けに生起した「びわ湖ホールのオペラ制作費削減問題」や橋下徹大阪府知事の行財政改革「大阪維新」にともなう文化予算の削減問題を入り口として、地方自治体の文化政策のあり方について考察を加えた。財政難を理由として自治体の文化予算を削減しようとする考え方が今日の大勢であるのに対して、文化的価値の重要さを正面から訴え、文化が公共財であると強く主張するやり方では、多くの場合、双方の主張が平行線をたどるだけで最終的な説得力に欠ける。本稿では、文化人類学における所有のあり方を論じた松村圭一郎著「所有と分配の人類学」の成果を応用し、文化は市場財か公共財かという従来からの対立的な議論の構図から脱却するために、現代社会における「共同財としての文化/アート」という視点を導入した。さらに、アートの公共性を考えるための補助線として、従前から文化経済学において指摘されてきた正の外部性の存在に加え、アートによる複数の参照系の保障、文化圏が形成されることによる経済圏の視覚化などについての概念を提起し、これらを活用した注目すべき文化政策の事例を全国各地の取り組みの中からいくつか紹介した。このことにより、今後、地方自治体の文化政策において「共同財としてのアート」に注目し、これを積極的に活用することで「文化の自己決定性」を高め、文化振興とまちづくりのための施策とが持続的な好循環を作り出す可能性が高まることを示した。
著者
中川 美緒 樋口 智子 寺岡 由貴 曽我 賢彦
出版者
一般社団法人 日本造血細胞移植学会
雑誌
日本造血細胞移植学会雑誌 (ISSN:21865612)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.36-42, 2019 (Released:2019-01-15)
参考文献数
6
被引用文献数
3

口腔粘膜障害の創部保護を行い,疼痛を緩和する医療機器 「エピシル® 口腔用液」(ソレイジア・ファーマ株式会社,東京)が2018年4月に保険適用された。しかし,本邦で本機器の疼痛緩和効果および使用感等についての報告はない。そこで本院で造血細胞移植を受け,口腔粘膜障害の疼痛を訴えた4名の患者を対象とし,症例研究を行った。使用後5分において,4人のうち3人でペインスコアが減少し,その後30分から120分にかけて口腔内疼痛は概ね同等で推移した。2名が味覚の変化および刺激感について,1名が不快感について 「少し気になる」 と回答したが,使用後2時間の評価時間の後,全員が継続使用を希望した。有害事象および機器としての不具合の発生はなかった。エピシル® 口腔用液は,造血細胞移植患者を対象として,疼痛をはじめとする口腔粘膜障害による不快感を緩和することを示唆した。
著者
小木曽 由佳
出版者
京都大学大学院教育学研究科
雑誌
京都大学大学院教育学研究科紀要 (ISSN:13452142)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.225-238, 2011-04-25

The life and theory of Carl Gustav Jung have been interpreted from the "Freudcentric" view, because of the uncritical acceptance of his autobiography. In recent years, Sonu Shamdasani has discovered some omissions from its manuscript, and the relationships between Jung and essential people other than Freud have been revealed. One of the most important persons is William James, the American philosopher of pragmatism. Jung had met James only once, but he confessed that he had always regarded James as his "model." In this paper, we focus on the early works of Jung, especially his typology, and make it clear the closeness of these works with James' pragmatism in giving consideration to Jung's idea of "personal equation," which later characterizes his views on treatment, such as countertransference.
著者
曽我部 真裕
出版者
KDDI総研
雑誌
Nextcom
巻号頁・発行日
no.16, pp.15-23, 2013-12-01

本稿は、従来の学説と近年の批判論を踏まえ、通信の秘密条項(憲法21条2項)の解釈論を試みる。従来の解釈論は通信事業が国営であることを前提としたものであるが、民営化・自由化後の今日では、民間事業者に憲法の拘束は及ばず、民間事業者の義務は憲法の趣旨等を踏まえた法律によって創設されたものと位置づけられる。他方、国家に対する憲法的な要請としては、通信の秘密を侵害しないという不作為義務が中心であり、近時主張されている通信制度の設営義務といった広汎な作為義務を憲法から引き出すことには慎重であるべきである。
著者
曽根 智之 野中 一晴 佐々木 紀樹 山口 大美
出版者
JAEA
雑誌
JAEA-Technology 2007-063
巻号頁・発行日
pp.1-42, 2008-01

二次廃棄物が多量に発生する等の理由により焼却処理が適さない有機系廃棄物(リン酸トリブチル廃溶媒,フッ素油を含む廃油等)の処理技術として、水蒸気改質処理法の開発を実施している。本試験では、模擬廃溶媒(TBP/n-ドデカン混合物)及び模擬廃油(フッ素油/鉱物油混合物)に対する実証規模水蒸気改質処理試験装置の処理性能の確認及び運転条件の最適化等を行った。試験の結果、次の成果が得られた。(1)水蒸気改質処理による模擬廃溶媒及び模擬廃油のガス化率は98wt%以上であった。また、二次廃棄物として回収された残渣は十分に無機化されていた。(2)模擬廃油の処理において、放射性物質除去用フィルタの閉塞が確認されたが、水蒸気供給量を1.5kg/hから3.0kg/hに増加させることで閉塞の原因となっている無機炭素が生成しにくくなり、フィルタの閉塞を抑制できることが明らかになった。(3)模擬廃溶媒の処理において、ガス化プロセスにおける加熱温度を600sim650circCに設定することでTBPの分解で生成したリン酸の大部分が蒸発した。この条件で廃溶媒を処理することにより放射性二次廃棄物になる残渣の発生量低減の可能性が示された。 著者所属: 日本原子力研究開発機構(JAEA)