著者
木村 文輝
出版者
日本生命倫理学会
雑誌
生命倫理 (ISSN:13434063)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.158-165, 2008-09-21 (Released:2017-04-27)
参考文献数
23

仏教は不殺生を基本理念としている。けれども、既に釈尊の時代から、仏教の立場において人が自らの死を選択する行為を是認してきた事例も存在する。それらの例を検討すると、そこには次のような条件が存在することが窺われる。すなわち、自己の死の選択が周囲の人々に承認された上で、以下の3つの事情のいずれかに該当することである。具体的には、(1)死期を目前にした者が、この世で為すべきことを為し終えたと自覚している場合、(2)自らの生命を犠牲にしても他者を救おうとする場合、(3)人生の目標の実現のために、自己の全存在を賭ける場合である。しかも、このような場面における「死」の覚悟と選択は、いずれも仏教的な意味における「人間の尊厳」を具現化するための有効な行為とみなし得るものである。本稿では、仏教が無条件の「生命至上主義」を主張するものではないことを論ずるとともに、そのような立場から、安楽死が是認され得る条件についての提言を行うことにしたい。
著者
木村 文隆 伊丹 千晶 LU Hui-chen HUANG J-y
出版者
大阪大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2011

大麻の有効成分であるカンナビノイドは、逆行性の神経伝達物質として注目を受けたが、近年では、感覚皮質においてのスパイクタイミング依存性可塑性の長期抑圧を導く伝達物質として再度注目されている。一方、長期抑圧が誘導されると、入力線維はしばしば刈り込まれることが知られている。このことは、カンナビノイド投与単独でも入力線維の刈り込がおこる可能性を示している。我々は、視床-皮質投射において、発達期にカンナビノイド受容体依存性の長期抑圧が起こることを見出した。視床-皮質投射の変化を調べたところ、長期抑圧が起こっている時期に一致して軸索の退縮が起こることも見出した。外因性にカンナビノイドを投与することによって退縮が起こるかは現在検討中である。

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著者
木村文三郎 編
出版者
木村文三郎
巻号頁・発行日
vol.ねこの道行, 1882
著者
木村 文治
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.4, pp.241-247, 2016 (Released:2016-04-28)
参考文献数
49
被引用文献数
10 12

筋萎縮性側索硬化症における人工呼吸器装着は最も重要な治療手段選択の一つである.事前意思確認を行なった1990~2013年までの自験例190例の調査結果から,発症から診断までの期間,侵襲的・非侵襲的人工呼吸器装着率,年齢による装着率の変化と推移および予後解析を報告した.その中で,1990~2010年までの160例について,侵襲的人工呼吸器装着による延命効果に影響する因子(年齢,配偶者など)を分析すると共に,侵襲的人工呼吸器装着を決定する因子分析を行い,装着年齢,配偶者の存在,残存運動機能の有無,呼吸器装着までの期間と診断時進行度などが関与することを示した.2010年以後の侵襲的・非侵襲的人工呼吸器装着率の経時的分析結果から,非侵襲的人工呼吸器装着率が年々増加する一方,侵襲的人工呼吸器装着率は減少傾向を示した.世界における人工呼吸器装着率の現況を考察した.
著者
若林 哲史 鶴岡 信治 木村 文隆 三宅 康二
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.73-80, 1997-01-25
参考文献数
19
被引用文献数
6

正準判別分析は分散比 (F比) を最大化する最も代表的な特徴選択手法であるが, クラス数以上の特徴が選択できないため,少クラスの分類問題に対する有効性に限界がある. この問題を解決するために, 新しい特徴選択手法 (FKL法) を提案し, 手書き数字認識実験によりその有効性を評価する. FKL法は, F比を最大化する正準判別分析と, 次元減少による平均2乗誤差を最小化する主成分分析 (K-L展開) を特殊な場合として含む, より一般的な特徴選択手法である. 正準判別分析, 主成分分析, 正規直交判別ベクトル法 (ODV法) などとの比較実験の結果, 少クラスの分類問題ではFKL法により選択された特徴量の識別力が最も高いことを示す.
著者
安藤 玲子 坂元 章 鈴木 佳苗 小林 久美子 橿淵 めぐみ 木村 文香
出版者
日本パーソナリティ心理学会
雑誌
パーソナリティ研究 (ISSN:13488406)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.21-33, 2004 (Released:2004-11-25)
参考文献数
19
被引用文献数
10 5 3

従来の研究は,ネット使用により新たな対人関係が構築されることを示してきたが,このネット上の対人関係が人生満足度や社会的効力感に影響が与える程度の質を有するかについて検討した研究は乏しい.そこで,本研究は男子学生173名を対象にパネル調査を行い,ネット使用がネット上の対人関係数を介して,人生満足度および社会的効力感に影響を及ぼすかを検討した.その結果,(1) 同期・非同期ツールの使用は,共にネット上での対人関係を拡大させる,(2) 同期ツールの使用は,ネット上の異性友人数を介して人生満足度を高める,(3) 同期ツールの使用はネット上の知人や同性友人数を介して,非同期ツールの使用はネット上の知人数を介して,社会的効力感を高めることが示された.また,(4) 同期ツールの使用は人生満足度と社会的効力感に対して負の直接効果を持っていた.
著者
吉村 衛 木村 文則 前田 亮
雑誌
じんもんこん2011論文集
巻号頁・発行日
vol.2011, no.8, pp.261-268, 2011-12-03

現在,日本語の古文に対して汎用的に用いることができる形態素解析器は存在しない.それゆえ日本語の古文に対しては,文章を単語に分割することさえ困難である.単語分割が行えるようになると,古文テキストの解析に役立てることができる.本論文では,日本語の古文の文章を単語に分割する手法を手案する.本手法では,文字Nグラムの単語らしさを評価し,この単語らしさが高い文字Nグラムを単語として文の単語への分割を行う.今回は,「源氏物語」に対し本手法の評価実験を行い,評価・考察を行う.
著者
木村 文則 前田 亮 波多野 賢治 宮崎 純 植村 俊亮
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌データベース(TOD) (ISSN:18827799)
巻号頁・発行日
vol.49, no.7, pp.59-71, 2008-03-15
参考文献数
18
被引用文献数
1

本論文では,Web 文書の言語横断情報検索において,Web ディレクトリの階層構造を利用して問合せの検索対象分野の推定に基づいた検索手法を提案する.提案手法では,Yahoo! カテゴリのような複数の言語版を持つWeb ディレクトリを問合せ翻訳における訳語の曖昧性解消のための言語資源として利用し,Web ディレクトリの下層のカテゴリを上位のカテゴリに統合したうえで,利用者が入力した問合せ語群から検索対象分野の範囲を推定することで,問合せ語群の最適な訳語に翻訳することにより,言語横断情報検索を行う.評価実験では,Web 文書の言語横断情報検索に適切なカテゴリ統合度がどの程度であるのか検証し,提案した検索対象分野の推定の有効性を検証した.In this paper, we propose a cross-language information retrieval (CLIR) method based on an estimate of query domain related with search results using hierarchic structures of Web directories. To get the most appropriate translation of the queries, we utilize the Web directories written in many different languages as multilingual corpus for disambiguating translation of the query and estimate a domain of search results using hierarchical structures of Web directories. Experimental evaluations showed that we could have an advantage in retrieval accuracy using our proposal for disambiguating translation in CLIR system.
著者
岩田 聖也 大山 航 若林 哲史 木村 文隆
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.136, no.12, pp.1668-1676, 2016-12-01 (Released:2016-12-01)
参考文献数
18

The authors have conducted studies on Arabic telop recognition to develop a system for video retrieval by keyword to index and edit Arabic broadcast programs received daily and stored in a big database. This paper describes a dedicated OCR for recognizing low resolution telop in video images. A telop recognition system consisting of text line extraction, word segmentation and segmentation-recognition of words is developed and the performance was experimentally evaluated using datasets of frame images extracted from AlJazeera broadcasting programs. Character recognition of moving telop is difficult due to combing noise caused by the interlacing of scan-lines. A technique to detect and eliminate the combing noise to correctly recognize the moving telop is proposed. This paper also proposes a technique based on insertion operation with minimum edit distance between successive two telops to connect them. The method to connect the moving telops is necessary for automatic language translation. The proposed method using edit distance for bi-gram sequence of telops (Method-B) is shown to be robust to recognition error of characters and successfully connect the telops.
著者
尾木 雄貴 大山 航 若林 哲史 木村 文隆
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. CNR, クラウドネットワークロボット
巻号頁・発行日
vol.113, no.432, pp.95-96, 2014-02-06

本人確認は,個人情報の保護や不正アクセス防止に重要な問題である.そのため,安全性の高いバイオメトリクスへの期待が高まっている.その中でも署名照合はデータ取得に対する社会的受容性が高いため,数多くの研究が行われている.しかし,それらの多くは単一言語に特化している.本研究では,複数の異なる言語の署名に対して同じ手順を適用し異なる言語の署名に対しても性能が安定した署名照合の手法を提案する.提案手法では,1つのオンライン署名データから2パターンの画像を生成する.各画像から濃度こう配特徴を抽出し,それぞれのマハラノビス距離を求める.得られた2つのマハラノビス距離を新たに2次元特徴ベクトルとし,これをあらかじめ真筆,偽筆の2クラス分類を行うように学習させたSVMで識別する.この手法により,中国語8.87%,オランダ語8.90%の等価エラー率が得られた.
著者
渡邊 紳一郎 木村 文宏 喜屋武 淳 鈴木 智史 中島 史雄 早川 正道 中村 宏
出版者
社団法人日本泌尿器科学会
雑誌
日本泌尿器科學會雜誌 (ISSN:00215287)
巻号頁・発行日
vol.86, no.6, pp.1137-1141, 1995-06-20
被引用文献数
11 1

1991年から1994年の間に経験したFournier's gangrene患者5名について, 年齢, 基礎疾患, 誘因, 病変の範囲, 検出された細菌, 治療法及び予後について検討した.患者の平均年齢は47歳で, 基礎疾患として糖尿病2名, 全身性エリテマトーデス1名, 慢性アルコール中毒1名, 末期の多発性骨髄腫1名であった.発症の誘因は創感染が2名, 尿道留置カテーテルが2名であり, 1名では明らかなものはなかった.外科的処置として, 2名に広範囲のデブリードマンを施行し, 後に分割植皮術を要した.3名では, 最小限の壊死組織除去後に罹患部皮下に多数のペンローズ・ドレーンを留置し, 消毒液で洗浄した.このうち2名は病変の発赤, 腫脹が急速に軽減し, 皮膚欠損を残さずに治癒した.1名は末期の多発性骨髄腫患者で全身状態は極めて不良であり, ドレーン留置後, 炎症所見は軽減傾向にあったが, 敗血症, DICを併発して死亡した.外科的処置として広範囲のデブリードマンが一般的に施行されているが, 皮膚欠損を生じることが多く, 皮膚移植の必要性や二次的創感染等の欠点を有する.壊死組織の限局的な除去と皮下への多数のドレーンの留置の組み合わせは, 皮膚欠損も最小限で済み, 治療効果も広範囲のデブリドマンと比べて遜色がなかった.本法は, 広範囲デブリードマンに変えて選択しうる有効な治療法であると思われた.
著者
上平 裕太 大山 航 若林 哲史 木村 文隆
出版者
一般社団法人 電気学会
雑誌
電気学会論文誌C(電子・情報・システム部門誌) (ISSN:03854221)
巻号頁・発行日
vol.134, no.12, pp.1809-1816, 2014 (Released:2014-12-01)
参考文献数
15

This paper proposes a signature verification technique called combined segmentation-verification based on off-line features and on-line features. We use three different off-line feature vectors extracted from full name Japanese signature image and from the sub-images of the first name and the last name. The Mahalanobis distance for each off-line feature vector is calculated for signature verification. The on-line feature based technique employs dynamic programming (DP) matching technique for time series data of the fullname signature and first name and last name. The final decision (verification) is performed by SVM (Support Vector Machine) based on the three Mahalanobis distances and three dissimilarity of the DP matching. In the evaluation test the proposed technique achieved 3.35% EER (Equal Error Rate) with even FRR (False Acceptance Rate) and FAR (False Rejection Rate), which is 3.10% lower than the best EER obtained by the individual technique. This result shows that the proposed combined segmentation-verification approach improves Japanese signature verification accuracy significantly.
著者
坂元 章 桂 瑠以 木村 文香 田島 祥 松尾 由美
出版者
お茶の水女子大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

シャイネスの高さと初対面での行動の関係を調査した結果、顕在的にシャイな人は初対面でのスキルが不足していたり、あがったり落ち着かなくなったりするなどの反応がみられ、それにより質問をしたり会話を広げたりするような能動的な行動がみられないというプロセスがあることが示された。これを踏まえ、初対面場面での円滑なコミュニケーションを促進するスキルとしてSNS上での事前情報収集に着目し、その効果を実験によって検討した。分析の結果、対面前に相手の作成したブログを閲覧し、対面時の会話をシミュレーションしてみることで、初対面場面における緊張や過敏さ、自信のなさといったシャイネスの側面が改善されることが示された。