著者
角田 優子 斉川 邦和 松下 信之 原田 憲一 中沼 安二
出版者
一般社団法人 日本肝臓学会
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.54, no.10, pp.716-719, 2013-10-20 (Released:2013-11-11)
参考文献数
4

Copper deposition of periportal hepatocytes indicates chronic cholestasis and it is regarded as a very important histological finding to diagnose primary biliary cirrhosis (PBC) and define its stage. Orcein stain makes copper-binding protein visible clearly and sensitively. However, there are variations in orcein staining results every institutions. In order to generalize and standardize staining method, we surveyed the methods of orcein stain at 11 institutions including our laboratory. Consequently, there were differences in staining result according to the kinds of orcein reagents and reducers. As for staining of copper-binding protein, combination of orcein reagent manufactured by Merck or Tokyo Chemical Industry and 1.5 to 3%oxalic acid as reducer is recommended.
著者
宮﨑 達郎 松下 秀介 氏家 清和
出版者
農業情報学会
雑誌
農業情報研究 (ISSN:09169482)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.42-49, 2012
被引用文献数
1

東海地震は発生が予想される国内有数の震災であるが,その家庭対策の1つとして食料品備蓄が挙げられている.本研究は家庭による食料品備蓄の普及のために,食料品備蓄の便益と費用に対する家庭の評価の形成要因を明らかにすることを目的とした.分析に用いたデータは2011年5月に静岡県静岡市において実施した調査より収集した.分析結果より,食料品備蓄が実施されない理由として,食料品備蓄の必要性が十分に家庭に認識されていないこと,備蓄の計画を立てる能力が不足していることが考えられた.また,食料品備蓄を実施しても継続を断念してしまう家庭が存在するが,その理由として,食料品の買い出しの手間や備蓄食料品の消費の問題,備蓄スペース等の負担が,食料品備蓄を実施した経験により増幅され,顕在化した可能性が考えられた.他方,食料品備蓄の知識が豊富な家庭ほど,食料品備蓄の必要性を認識し,食料品備蓄実施に伴う様々な負担も感じにくい傾向があることが指摘された.さらに,各家庭が持つ備蓄食料品の食味や消費期限に関するイメージが,食料品備蓄の費用に対する評価に大きく影響することが分かった.以上より,地方公共団体や農林水産省等関係機関による情報提供や,備蓄食料品の食味の改良等,高品質化による食料品備蓄の普及の可能性が指摘された.<br>
著者
金城 衣良 脇田 夏鈴 植田 真一郎 松下(武藤) 明子
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.3-P-V-1, 2021

<p>【目的】現在世界中で感染拡大しているCOVID-19は呼吸器症状のみならず、血栓症を合併し臓器障害を引き起こす.血栓の形成には様々な要因が存在するが、COVID-19での血栓の原因の一つに、活性化した白血球が細胞外に自身のDNAを放出する細胞外トラップ生成がある.我々は過剰な細胞外トラップ生成の抑制が、血栓による臓器不全を防止できると考え、白血球活性化を抑制するコルヒチンの白血球細胞外トラップ生成に対する効果を検討した.</p><p>【方法】単球系細胞株THP-1をホルボールエステルによりマクロファージ様細胞(Diff.THP-1)に、またはリンパ球様細胞株HL-60をDMSOで好中球様細胞(Diff.HL-60)に分化させたものを使用した.刺激としてTLR9リガンド作用を有するウイルス由来DNAモチーフ、LPSまたはTNFαを用い、刺激4時間での核酸染色試薬Sytox Greenの蛍光により細胞外トラップ生成を、刺激1時間でのwestern blottingによりNFκB p65リン酸化とIκB-α発現をみることで細胞内炎症シグナルを、コルヒチン前処置(1x10<sup>-8</sup>M, 1x10<sup>-6</sup>M)の有無で評価した.</p><p>【結果】Diff.THP-1においてコルヒチン1x10<sup>-8</sup>M前処置はTLR9リガンド、TNFa刺激による細胞外トラップ生成を抑制する傾向がみられ、TLR9リガンド、LPS刺激による炎症シグナル亢進を抑制した.Diff.HL-60においてTLR9リガンド刺激で同様の結果だった.また、コルヒチン1x10<sup>-6</sup>M前処置にはこれらの抑制効果がなかった.</p><p>【結論】コルヒチンは適切な濃度でNFκB経路活性化および細胞外トラップ生成を抑制する.これはCOVID-19の血栓形成による重症化予防にコルヒチンが有効であることを示唆する.</p>
著者
脇田 夏鈴 金城 衣良 植田 真一郎 松下(武藤) 明子
出版者
一般社団法人 日本臨床薬理学会
雑誌
日本臨床薬理学会学術総会抄録集
巻号頁・発行日
vol.42, pp.3-P-V-5, 2021

<p>【目的】COVID-19が世界的規模で蔓延している現在、その治療薬や重症化予防法の開発は喫緊の課題である.コロナウイルスを含む病原体の多くはエンドサイトーシス(Edcs)で細胞内に侵入し、感染・増殖する.ヒトコロナウイルスはカベオラEdcsで取り込まれることが報告されているが、COVID-19原因ウイルスSARS-CoV-2に関しての知見は少ない.我々はSARS-CoV-2の細胞内侵入経路と、それに対する微小管阻害薬コルヒチン(Col)の効果について細胞を用い検討したので報告する.</p><p>【方法】ヒト単球系細胞株THP-1をマクロファージ様細胞に分化したものをガラス上に播種し、Col (1x10<sup>-8</sup>M, 1x10<sup>-6</sup>M)または溶媒を一晩処置し、カベオラEdcsを生じるコレラトキシンb (CTb)、またはリコンビナントSARS-CoV-2スパイクエンベロープ(Cv2SE)を1時間暴露後固定し、caveolin-1(cav1)またはゴルジ体マーカー(GM130 or Golgin97)と免疫染色し共焦点顕微鏡にて観察した.</p><p>【結果】[CTb 暴露] 溶媒処置では細胞内でcav1および ゴルジと共局在していたことからカベオラEncsを確認した.Col 1x10<sup>-8</sup>M処置は細胞膜上cav1発現部位にCTbは共局在しゴルジとは重ならずEdcs減少を認めた.Col 1x10<sup>-6</sup>M処置もCTbは主に細胞膜上に分布しcav1と共局在したが、ゴルジの細胞内局在が細胞内全体に分散し劇的に変化しており、高濃度Col処置では様々な細胞内シグナル経路の崩壊が起きていることが示唆された.[Cv2SE 暴露] 溶媒処置でゴルジと共局在を認めEdcsを確認した.Col1x10<sup>-8</sup>M処置は共局在が減少しておりEdcsが抑制されていた.ただしcav1とは局在せず、カベオラ以外でのEdcsが示唆された.</p><p>【結論】 SARS-CoV-2は非カベオラ経由Edcsで細胞内に侵入し、臨床用量ColのEdcs減少作用はCOVID-19感染抑制を期待できる.</p>
著者
松下 洋 MATSUSHITA Hiroshi
出版者
京都女子大学
雑誌
現代社会研究科論集 (ISSN:18820921)
巻号頁・発行日
no.4, pp.1-23, 2010-03

小論は、ペロニズム形成期(1943-46)における労働者のペロン支持をめぐって今日まで存在してきた二つの主要な解釈に対抗して第三の解釈を提示することを目的としている。すなわち、ひとつの解釈は、ペロンの主たる支持者が農村から都市に移動して間もない新しい労働者であり、彼らはペロンの親労働者政策に魅了され、操作されたのであり、従って彼らの支持は非合理的なものであったとする。第二の解釈は、ペロニズムの形成期においては労働運動の経験をもつ旧来の労働者の少なからぬ部分(反対派がいたことを認めつつも)がペロンを支持したとの事実に注目し、彼らはペロンの政策が自分たちの利益に直結すると判断した結果としてペロンを支持したのであり、その支持は操作されたものでなく、自発的で合理的であったとする。これに対して、小論は旧労働者の支持を重視する点では第二の説と同じだが、旧労働者のペロン支持の中に、単なる合理性では捉え切れない心理的な要因が介在したことを強調する。なかでも、軍部の圧力で逮捕されたペロンを、旧労働者を含めた多数の労働者が大デモを敢行して彼の釈放に成功した事件(1945年10月17日事件)を取り上げ、デモのきっかけとなったともいわれるCGT (労働総同盟)のゼネスト戦術が、単に旧労働者の合理的判断の結果としではなく、むしろ、プロスペクト理論で言う損失局面における危険受容型行動の一例として解釈できることを主張する。こうした作業を通して、ペロニズムさらにはラテンアメリカのポピュリズム研究において、心理的側面を無視すべきでないことを提言したい。This article intends to challenge the two main interpretations on labor's support to Peronism duringits initial period (1943-46). One stresses the support given by new workers who came from rural areas to the metropolitan areas around Buenos Aires during the 1930s and 1940s. They were not accustomed to urban life and industrial works so they were manipulated by Perón's pro-labor policies. In short, their support was irrational- The other stresses the support offered by old workers with much experience in the labor movement. They were so dissatisfied with the conservative regime (1930-43) that they supported Perón as a rational choice to improve their labor conditions. This article pays attention to the fact that the old workers sometimes showed a psychological support to Perón, especially during the incident of 17 October 1945. Their national labor center called the CGT(Confederación General del Trabajo) approved on october 16 to launch a risky general strike in protest against the arrest of Perón. This aggressiveness of the CGT was considered irrelevant by the first interpretation, because according to it, the October 17 incident was carried out chiefly by new workers spontaneously and independently from all the labor organizations. The second interpretation considered that the CGT played an inportant role in mobilizing the mass demonstration for the next day and one author arguments that the CGT decided the general strike to maintain its prestige as a national center by accepting demands for general strike claimed from below. On the other hand, this article analyzes the decision of the CGT applying prospect theory, arguing that the old workers' attitude demonstrated risk acceptance under the loss domain in which they had fallen because of Perón's detention. In short, it is an effort to insert a psychological analysis to understand the origen of Peronism in a different way from the previous stuadies.
著者
熊澤 一将 赤塚 肇 平井 力 尾崎 尚也 石突 光隆 加藤 怜 中村 竜 鈴木 大輔 松下 将士
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
交通・物流部門大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

We report on the results from a survey which aimed to perceive the state of achievement of one - man operation implementation by railway operators. We conducted a questionnaire survey on railway operators carrying out one-man operation. At the questionnaire survey, we investigated things concerning operation handling, response to abnormalities, reasons for setting up various facilities, etc. We calculated the rate of the installation of facilities and the conduction of various kind of operation handling considered to be related to one-man operation, and extracted facilities with a high installation rate at the time of one-man operation. In addition, through hearing surveys, we confirmed that there are differences in the safety confirmation method at door closing and departure, according to the situation of each railway operator, such as transport volume and length of train.
著者
江島 清 長谷川 悦雄 松下 洋一 西出 宏之 土田 英俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.11, pp.1836-1845, 1988-11-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
14
被引用文献数
1

3種類の 2-位置側鎖にイミダゾリル置換基をもつ 5, 10, 15, 20-tetrakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrinatoiron(II) 誘導体 [12], [14] および [15] を合成した。5, 10, 15, 20-tetrakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrin[1] の銅(II) 錯体 [2] は, Vilsmeier 試薬と反応して 2-ホルミルポルフィリナト銅(II) 誘導体 [3] を与えた。[3] を濃硫酸で処理して銅が脱離した [4] を得た。これは, Knoevenagel 反応で 2-(trans-カルボキシエテニル)ポルフィリン誘導体 [7] を, 水素化ホウ素ナトリウム還元で 2-(ヒドロキシメチル)ポルフィリン誘導体 [5] を与えた。[5] にホスゲン, 1-(3-アミノブロピル)イミダゾール, および臭化鉄(II) を順次反応させて [12] を得た。[7] の鉄(III) 錯体 [13] に2種のイミダゾール誘導体をアミド縮合させて, [14] および [15] を得た。[5] と比較して [14] と [15] は, 鉄(II) フリーの状態で不安定であり, 置換基の種類によってイミダゾリル基をもつ 5, 10, 15, 20-terakis(α, α, α, α-o-pivalamidophenyl)porphyrin の安定性に差が見られた。
著者
江島 清 長谷川 悦雄 松下 洋一 西出 宏之 土田 英俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.10, pp.1713-1718, 1988-10-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
10

5,10,15-tris(α,α,α-o-pivalamidophenyl)-20-[α-o-[4-[[12-(1-imidazelyl)dodecyl]carbamoyl]-2,2-dimethylbutanamido]pheny1]porphyrinatoiron(II) [9] を合成した。5,10,15,20-テトラキス(α,α,α,α-o-アミノフェニル)ポルフィリン [4] に 1.2当量の4-エトキシカルボニル-2,2-ジメチルブタノイルクロリド [3] および過剰量のピバロイルクロリドを順次反応させたのちエステルを加水分解し, 5,10,15-tris(α,α,α-o-pivalamidophenyl)-20-[α-o-(4-carboxy-2,2-dimethylbutanamido)phenyl]porphyrin [7] を得た。これに 1-(12-アミノドデシル)イミダゾール [7'] を縮合させて, 5,10,15-tris(α,α,α-o-pivalamidophenyl)-20-[α-o-[4-[[12-(1-imidazolyl)dodecyl]carbamonl]-2,2-dimethylbutanamido]Pheny1]Porphyrin [8] を得た。この化合物は化学的に安定であり, 対応する既報の 5,10,15-tris(α,α,α-o-pivalamidophenyl)-20-[β-o-[5-(1-imidazolyl)pentanaido]phenyl]porphyrin が光と酸素の共存下で迅速に分解するのと対比される。[9]のとり得る立体配座をあわせ議論した。
著者
内田 恵一 井上 幹大 小池 勇樹 松下 航平 近藤 哲 大北 喜基 藤川 裕之 廣 純一郎 問山 裕二 荒木 俊光 楠 正人
出版者
日本大腸肛門病学会
雑誌
日本大腸肛門病学会雑誌 (ISSN:00471801)
巻号頁・発行日
vol.70, no.10, pp.633-644, 2017 (Released:2017-10-23)
参考文献数
81
被引用文献数
1

小児の炎症性腸疾患に対する治療のゴールは患児に正常発育と優れたQuality of Lifeをもたらすことであり,すべての領域の医療従事者が協力しながら,小児特有の問題に留意して治療を進めなければならない.診断においては,おおよそ10歳以下の超早期発症の症例や成人と比して非典型的な経過の症例では,原発性免疫不全症が鑑別疾患に入るため専門家にコンサルトすべきである.治療においては,成長障害と学校生活の障害に常に注意し,内科的治療内容,内科的治療の限界の見極めと外科手術適応,外科治療方法と時期,ワクチン接種などを考慮に入れて治療計画を立てるべきである.また,小児IBD患者が増加し優れた内科的治療が発展する現代では,小児期から成人期へシームレスで適切なトランジションが行われることが重要な課題の1つである.本稿では,本邦の現状と最新の文献をもとにこれらの課題について述べる.
著者
江島 清 松下 洋一 長谷川 悦雄 西出 宏之 土田 英俊
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1988, no.4, pp.518-521, 1988-04-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
18
被引用文献数
1

シクロデキストリンをかぶせた構造のヘム誘導体(以下CD結合ヘムと略記する)を,鉄(II)プロのなトポルフィリンIX(ヘム)の6-,7-位プロピオン酸とα-シクロデキストリン(以下CDと略記する)の第一級ヒドロキシル基をエステル結合またはウレタン結合により結び付ける反応から合成した。CD結合ヘムへ軸配位したイミダゾールの配位平衡定数はヘムの約1/100に低下,,CD結合側からの軸配位がCDの立体障害によって妨げられることを観測した。高分子2一メチルイミダゾールが配位したCD結合ヘムは,-30℃ の水中で寿命の長い酸素錯体を生成した。これらの結果は,CDがヘム面上にかぶさった立体構造を支持する。CD結合ヘムを生体内酸素輸送の目的でラットに静脈内投与した場合,急性毒性はヘムに比較していちじるしく低下する。
著者
松下 吉樹 本多 直人 藤田 薫 渡部 俊広
出版者
水産総合研究センター
巻号頁・発行日
no.10, pp.15-17, 2004 (Released:2011-03-05)

3種類の刺網を千葉県館山湾奥部の水域に20~37日間設置した。その後潜水観察を行い、羅網した生物と網成りの変化を記録した。刺網には27個体の魚類と甲殻類が設置後14日以内に羅網し、その後は観察されなかった。網目が展開している網の面積は、いずれの刺網も時間経過とともに減少して0となった。これは刺網が持つ漁獲機能のうち、特定の層を遊泳する生物の通路を遮断する機能と、生物を網目に刺させる機能が無くなったことを意味する。
著者
松下 光司
出版者
日本消費者行動研究学会
雑誌
消費者行動研究 (ISSN:13469851)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1_2, pp.1_2_1-1_2_18, 2009-03-31 (Released:2012-01-12)
参考文献数
50

本研究の目的は、セールス・プロモーションによって、ブランド・エクイティ(ブランドに対する態度評価の確信度)が向上するプロセスを説明するモデルを提示することである。実験の結果、セールス・プロモーション・スキーマとブランド・スキーマとの一致度、およびセールス・プロモーションに関する精緻化が先行要因であることが明らかにされ、モデルの経験的妥当性が示された。最後に、ブランディングやセールス・プロモーションの意思決定に対する示唆が提示された。
著者
伊藤 綾子 五十嵐 清治 倉重 多栄 佐藤 夕紀 藤本 正幸 西平 守昭 松下 標 青山 有子 平 博彦 丹下 貴司
出版者
The Japanese Society of Pediatric Dentistry
雑誌
小児歯科学雑誌 (ISSN:05831199)
巻号頁・発行日
vol.44, no.4, pp.591-597, 2006

含歯性嚢胞は歯原性嚢胞では歯根嚢胞に次いで多く見られる。一般的には未萌出または埋伏永久歯の歯冠に由来して発生するが,原因埋伏歯は正常歯胚であることがほとんどで,過剰歯に由来する含歯性嚢胞は比較的少ない。今回,我々は全身的問題から抜去を行わず経過観察していた上顎正中部の逆性埋伏過剰歯が嚢胞化し,定期検診の中断期間に急速に増大し,顔貌の腫脹まで来した含歯性嚢胞の症例を経験したので報告する。<BR>症例は13歳の男児で,既往歴として生後間もなくWilson-Mikity症候群の診断にて入院加療を受け,その後にてんかん,脳性麻痺,および精神発達遅滞と診断された。患児の埋伏過剰歯は当科で10歳時に発見されたが,全身状態が不良のため抜去を行わず経過観察を行っていた。その後,定期検診受診が途絶え1年3か月後に,過去数か月間で徐々に上顎右側前歯唇側歯槽部が腫脹してきたことを主訴に再来初診となった。口腔内診査では上顎左側前歯部歯槽部に青紫色の腫脹を認め羊皮紙様感を触知した。エックス線診査では上顎前歯部に1本の逆性埋伏過剰歯を含む単房性の境界明瞭な透過像を認めた。局所麻酔下に嚢胞と埋伏過剰歯の摘出術を施行したが,術後17日目に術部感染を来したため抗菌薬投与と局部の洗浄を継続し消炎・治癒に至った。術後2か月の経過は良好である。<BR>本例のように何らかの理由により埋伏過剰歯抜去が困難な場合は,その変化を早期に発見するために定期的,かつ確実な画像診断を含む精査が必須であると考えられた。
著者
松下 義弘
出版者
社団法人 繊維学会
雑誌
繊維学会誌 (ISSN:00379875)
巻号頁・発行日
vol.77, no.9, pp.P-496-P-507, 2021-09-15 (Released:2021-10-01)
著者
長尾 香奈 平澤 小百合 尾﨑 充代 高木 賢一 平島 光子 仁田 裕也 松下 真由美 西村 麗華 鶯 春夫
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2005, pp.E1092, 2006

【はじめに】<BR> 高齢者が多く入所している施設においては、「できるADL」と「しているADL」の差が問題になることが多い。当介護老人保健施設(以下:当施設)においてもこの差が生じていたので、これらの問題を改善するために「できるADL」と「しているADL」の実態調査を行い、どのADLに差が生じているのか、どのような入所者に差が生じているのかなどを検討した。<BR>【対象・方法】<BR> 当施設の入所者48名(男性10名、女性38名、年齢69~99歳、平均84.5歳)を対象とした。要介護度別にみると、1が8名(16.7%)、2が7名(14.6%)、3が20名(41.7%)、4が10名(20.8%)、5が3名(6.3%)であった。主疾患は脳神経疾患23名(47.9%)、骨関節疾患9名(18.8%)、認知症8名(16.7%)、その他8名(16.7%)であった。方法は、担当理学療法士が直接介護場面を観察したり、介護スタッフに聞き取り調査することにより、機能的自立度評価表(以下:FIM)にて「しているADL」を評価するとともに、FIMの評価表を基に担当理学療法士が「できるADL」を評価し、その差を比較検討した。なお、FIMの18項目のうち、セルフケア6項目、移乗2項目、移動1項目の計9項目を評価した。<BR>【結果】<BR> 「できるADL」と「しているADL」の評価がFIMの9項目全て一致した者は6名(12.5%)で、各項目において「完全自立もしくは修正自立」と採点された者が5名、「最大介助もしくは全介助」と採点された者が1名であった。逆に、一致した項目数が最も少なかったのは1項目で、2名(4.2%)存在し、それは過剰な介助が原因であった。項目別にみた場合、一致率が高かった項目は、食事41名(85.4%)、移乗37名(77.1%)、トイレ動作36名(75.0%)であった。逆に一致率が低かった項目は、清拭17名(35.4%)、更衣・上半身27名(56.3%)、整容28名(58.3%)であった。最も一致率が高かった食事においては、1段階異なった者が5名(10.4%)、2段階以上異なった者が2名(4.2%)であり、最も一致率が低かった清拭動作においては、1段階異なった者が13名(27.1%)、2段階以上異なった者が18名(37.5%)であった。<BR>【考察】<BR> 清拭や更衣の一致率が低かった理由としては、当施設の入浴介助が介護者のペースで行われたり、安全性を重視するあまりに過剰な介助が行われていることなどが考えられた。これらの点の改善ためには、特に、監視~中等度介助レベルの入所者への対応が重要で、安全性の確保や入所者のペースで介助を行う工夫、リハスタッフが生活場面に出向き、介護者とのコミュニケーションを密に取る必要性などが示唆された。