著者
松尾 真一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.200-202, 2020-01-15

ビットコインは,暗号研究者の夢である「信頼できる第三者の存在がなくてもネットワークを介して支払いを行う」の実現を試みた画期的なプロトコルの提案である.ビットコインを成り立たせるために,暗号,分散コンピューティング,ゲーム理論などさまざまな異なる研究領域が有機的かつ絶妙に組み合わされている.本稿ではこの絶妙な組合せを5分でわかった気にさせるという無茶な要求に対し,その無茶の度合いを説明しつつも,しっかり参考文献を時間を掛けて読めば,その組合せの絶妙さと,ビットコインがいかに暗号プロトコル研究者にとってコロンブスの卵的に素晴らしい提案であるかを理解できる道しるべを得る解説を提供する.
著者
松尾 真一郎
出版者
情報処理学会
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.64, no.10, pp.e1-e7, 2023-09-15

ブロックチェーンと関する研究開発は,Satoshi Nakamotoの未査読の論文から想起される形で,基礎的な研究から幅広い応用の実現までさまざまな形で行われている.一方でその多くは,Satoshi Nakamotoの発明につながる技術史を考えた場合,Satoshi Nakamotoの発明がサイバー空間におけるトラストの実現方法に与えたインパクトを台無しにしているか,それゆえにブロックチェーンそのもののセキュリティを犠牲にする結果になっており,結果として「Why Blockchain(なぜブロックチェーンを使うのか)」というう疑問を生じさせている.本稿では,改めてSatoshi Nakamotoの発明が与えたインパクトを振り返り,ブロックチェーンがもたらしているもの,もたらしていないものを振り返った上で,今後のブロックチェーンの研究開発の方向性を述べる.
著者
松尾 真一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1082-1087, 2015-10-15

暗号技術は情報を守るだけでなく,新たなサービスを実現するためにも利用される.その代表例としてお金を暗号技術を使って表現する電子マネー技術がある.本稿では,1980年代以降の初期の電子マネー技術の検討から,ここ数年話題になっているBitcoinを代表するディジタル通貨について概要を述べると同時に,ディジタル通貨が今後ネットワーク時代の経済を支える新たなインフラストラクチャーになるために,暗号技術をはじめとする諸技術がどのように整備され,発展される必要があるかを述べる.
著者
松尾 真一郎
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.159-164, 2020-01-15

2008年のSatoshi NakamotoのBitcoin論文によって導入されたブロックチェーン技術は,そのセキュリティの仕組みから,暗号通貨のみならず幅広い応用が模索さている.一方で,そのセキュリティ目標について,曖昧な議論がされており,学術的な整理も始まったばかりでである.本稿では,この視点に基づきブロックチェーン技術がもたらす安全性の範囲(セキュリティ目標),ブロックチェーンのセキュリティに関する理論的な議論の現状,現在指摘されている脅威と脆弱性,そしてセキュリティ向上に向けた研究開発の方向性について述べる.
著者
山中 俊夫 甲谷 寿史 松尾 真臣
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会環境系論文集 (ISSN:13480685)
巻号頁・発行日
vol.73, no.623, pp.47-52, 2008-01-30 (Released:2008-10-31)
参考文献数
8

“Smellscape” is a new point of view in evaluating the living environment. This aim of this study is to investigate the smellscape described by residents to evaluate the living environment in respect of odor. In this paper, questionnaire survey on the odor experience and visitor-panel test on perceived odors were conducted in four districts in Hanshin area, and the smell maps were tried to be drawn for each odor kind. As a result, the characteristics of various kind of odors were made clear and the difference between residents' evaluation and visitors' evaluation were shown.
著者
松尾 真一郎 金岡 晃
雑誌
情報処理
巻号頁・発行日
vol.56, no.11, pp.1056-1057, 2015-10-15
著者
佐藤 隼 佐藤 俊秀 仲川 祐司 林 志洋 松本 頌 城山 英明 松尾 真紀子 鎗目 雅
出版者
社会技術研究会
雑誌
社会技術研究論文集 (ISSN:13490184)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.108-118, 2014 (Released:2014-10-17)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

リンの下水からのリサイクルは一部自治体で進められているが,まだ全国的に進んでいるとはいえない.本研究ではステークホルダーに聞き取り調査を行い,各ステークホルダー間の問題認識を分析し,普及を進めるための施策を検討した.下水からのリン回収が進まない理由として,大きく次の3つの問題が考えられる.現状ではリサイクルすれば赤字になるというコストの問題,生産量が十分に確保できないという問題,安定的な取引先が必要という販売のノウハウの問題である.他方,閉鎖海の環境保全や循環型社会の構築といった他の政策目的も重要である.今後の施策としては,コスト削減のための技術開発,環境政策目的との同床異夢や一定の量の確保を可能にするための自治体との連携の強化が重要である.
著者
波多野 元貴 鈴木 重行 松尾 真吾 片浦 聡司 岩田 全広 坂野 裕洋 浅井 友詞
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Aa0134, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 これまで、スタティックストレッチングの即時効果を検討している先行研究において、効果の持続時間はほとんど検討がなされていない。少数の先行研究からは、大半の評価指標において、ストレッチングの効果の持続時間は数十分以内であることが示唆されるが、これらの結果については、ストレッチング時間や強度、対象筋などの設定の違いから、先行研究間の単純な比較は困難であり、多くの指標について同時に、かつ詳細に検討している先行研究はない。そこで、同一条件下で、各指標に及ぼす効果の持続時間を詳細に検討することで、ストレッチングによる正の効果(伸張時の抵抗の減少、ROM増大等)と負の効果(筋力の低下等)がそれぞれどの程度持続していくかが明らかとなれば、より目的に沿った、有効なストレッチングを実践するための一助となると考えられる。そこで、本研究は、ストレッチングが各指標に及ぼす効果の持続時間を明らかにすることを目的とした。【方法】 被験者は健常学生20名(男性9名、女性11名、平均年齢20.5±1.2歳)とし、対象筋は右ハムストリングスとした。被験者は股関節および膝関節をそれぞれ約110°屈曲した座位(以下、測定開始肢位)をとり、等速性運動機器(BTE社製PRIMUS RS)を用いて測定を行った。ストレッチングは300秒間、大腿後面に痛みの出る直前の膝関節伸展角度で保持し、ストレッチング開始時と終了時の静的トルクを比較して、低下していることを確認した。評価指標は、stiffness、最大動的トルク、ROM、筋力の4種類とした。stiffness、最大動的トルクは測定開始肢位から膝関節最大伸展角度(大腿後面に痛みの出る直前)まで5°/秒の角速度で他動的に伸展させた時のトルク-角度曲線より求めた。stiffnessは、ストレッチング前の膝関節最大伸展角度からその50%の角度までの範囲で回帰直線を算出し、その傾きと定義し、最大動的トルクはトルクの最大値とした。ROMは膝関節最大伸展角度とした。筋力は、測定開始肢位での膝関節屈曲の最大等尺性筋力とした。実験はまずstiffness、最大動的トルク、ROM、筋力を測定し、60分の休憩後、ストレッチングを行い、同時に静的トルクを測定した。ストレッチング後は、測定開始肢位にて10分、20分、30分のいずれかの安静を取った(以下、10分群、20分群、30分群)。安静後は、再びストレッチング前と同じ手順でstiffness、最大動的トルク、ROM、筋力を求め、ストレッチング前後の値を比較した。被験者は異なる安静時間を含めた全ての実験を24時間以上の間隔を設け行った。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験は名古屋大学医学部生命倫理審査委員会(承認番号:11-510)および日本福祉大学「人を対象とする研究」に関する倫理審査委員会(承認番号:11-07)の承認を得て行った。実験を行う前に、被験者に実験内容について文書及び口頭で説明し、同意が得られた場合にのみ研究を行った。尚、被験者が実験の中止を希望した場合は、速やかに実験を中止した。【結果】 静的トルクは全ての群で、ストレッチング後に有意に低下した。stiffnessは、ストレッチング後に20分群のみ有意に低下した。最大動的トルクおよびROMは、全ての群で有意に増加した。筋力は、全ての群で有意に低下した。【考察】 静的トルクの低下から、ストレッチングは全ての群で同様に行えたと考えられ、筋が伸張され、Ib抑制が関与したと推察する。stiffnessは先行研究より、筋腱複合体の粘弾性を反映すると報告されている。stiffnessの結果より、筋腱複合体の粘弾性など、力学的特性の変化は20分から30分後までには消失する可能性がうかがえた。最大動的トルクは先行研究より、痛み閾値に関連するstretching toleranceを反映すると報告されている。本実験では最大動的トルクおよびROMにおいて効果が30分以上持続することが示唆された。したがって、筋腱複合体の力学的特性の変化が持続していない場合にも、ROMの増加が保たれており、これは主に痛み閾値の上昇とともにstretching toleranceが増加したことが要因であると推察する。また、筋力はストレッチング後30分以上低下した状態が持続することが示唆された。但し、この筋力低下は統計学的に有意な差ではあるが、その割合は5%に満たないものであり、目的によって重要性が異なると考える。【理学療法学研究としての意義】 本研究から、評価指標ごとに効果の持続時間が異なることや、効果の主たる要因が経時的に変化することが示された。このことから、理学療法士がストレッチングを目的に沿った、より有効なストレッチングを施行するには、各指標に対する効果の持続時間への考慮が必要となると考える。
著者
高橋公海 佐藤進也 松尾真人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
研究報告データベースシステム(DBS)
巻号頁・発行日
vol.2013, no.24, pp.1-6, 2013-07-15

Web 上の blog 記事や Twitter などのテキストには,日常生活における人々の行動や出来事と,その繋がり (行動パターン) が記述されている.それらのテキストデータを元に行動パターンをモデル化することが出来れば,人間の行動や思考の予測が可能となり,ユーザに対して状況に即した行動提示 (ナビゲーション) や推薦,といったコンテキストアウェアサービスへの応用が見込まれる.とり得る行動は状況により異なるため,モデル化する際にはどのような状況において成立する行動パターンであるかを考慮することが望ましい.そこで本稿では,blog 記事集合を対象として,キーワードに関連する状況毎に文書集合をクラスタリングし,文書集合全体から推定した行動パターンの頻度と,クラスタ内の文書集合から観測される頻度の差を利用して重み付けすることにより,状況に依存した行動パターンを抽出する手法について検討を行った.実験では,本手法を用いて blog 記事集合から抽出した状況ごとの行動パターン例についても報告する.The ability to understand our daily behaviors has long been regarded as enabling a variety of useful applications(e.g. activity-based actuation, recommendation). In this paper, we present an approach to extract context-dependent human behavior models from weblogs. At first, we apply clustering method to weblogs, and then extract important behavior patterns from each cluster using word frequency. We estimated our method by experiment and made sure the effect of it.
著者
高橋公海 佐藤進也 松尾真人
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. 情報学基礎研究会報告
巻号頁・発行日
vol.2013, no.24, pp.1-6, 2013-07-15

Web 上の blog 記事や Twitter などのテキストには,日常生活における人々の行動や出来事と,その繋がり (行動パターン) が記述されている.それらのテキストデータを元に行動パターンをモデル化することが出来れば,人間の行動や思考の予測が可能となり,ユーザに対して状況に即した行動提示 (ナビゲーション) や推薦,といったコンテキストアウェアサービスへの応用が見込まれる.とり得る行動は状況により異なるため,モデル化する際にはどのような状況において成立する行動パターンであるかを考慮することが望ましい.そこで本稿では,blog 記事集合を対象として,キーワードに関連する状況毎に文書集合をクラスタリングし,文書集合全体から推定した行動パターンの頻度と,クラスタ内の文書集合から観測される頻度の差を利用して重み付けすることにより,状況に依存した行動パターンを抽出する手法について検討を行った.実験では,本手法を用いて blog 記事集合から抽出した状況ごとの行動パターン例についても報告する.
著者
立川 雅司 加藤 直子 前田 忠彦 稲垣 佑典 松尾 真紀子
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.283-288, 2020 (Released:2020-04-10)
参考文献数
11
被引用文献数
3 2

Genome editing is being applied in various fields of life sciences, such as medicine, agriculture, food and energy. Regarding the regulatory status of genome editing in Japan, policies are being issued by the Ministry of Health, Labor and Welfare and the Ministry of the Environment, and applications to the fields of agriculture and food are being widely considered. However, there has hardly been any explicit discussion on the differences between applications for plants and animals. We argue there are several points that should be taken into account. In this paper, we clarify the unique regulatory issues that separate genome edited animals from plants, in particular, safety assessment, consumer perception, and animal welfare.
著者
松尾 真人 久保田 稔 板生 知子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SSE, 交換システム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.97, no.131, pp.31-36, 1997-06-23
被引用文献数
1

ユーザのネットワーク利用を積極的に支援する, 気が利くネットワークを提案する. 気が利くネットワークは, ネットワーク内の情報を活用し, ネットワーク側からユーザに積極的に働き掛けることにより, ユーザの目的・状況に応じて, 最高の条件で, ユーザが求めるものを提供する. これにより, ユーザは, ネットワークのオープン化や多様化に伴う選択肢の増大に悩まされることなく, 要求に応じたネットワークサービスが利用できるようになる. また気が利くネットワークの実現例として, 適応型ネットワーキングサービス環境DANSEを提案する. DANSEは, 個々のユーザにポータブルなユーザ環境を提供すると共に, プロバイダ〜ユーザ間のリソースの流通を活性化する.
著者
松尾 真理
出版者
東京女子医科大学学会
雑誌
東京女子医科大学雑誌 (ISSN:00409022)
巻号頁・発行日
vol.93, no.6, pp.113-118, 2023-12-25 (Released:2023-12-25)
参考文献数
7

As medical science advances, the implementation of medical genetics is required in all areas of medicine. Genetic information has the following characteristics: 1) it does not change throughout a person's life, 2) it can predict the incidence of diseases, 3) it can affect blood relatives, and 4) it has inherent ambiguity. Therefore, care must be taken in handling this information. The Department of Medical Genetics specializes in handling genetic information. The Institute of Medical Genetics was established at Tokyo Women's Medical University in 2004. The important roles of our institute can be summarized as 1) providing genetic counseling; 2) providing accurate diagnosis and appropriate testing for hereditary diseases and congenital syndromes, including cancer; and 3) serving as a hub for routine management and medical care for people with hereditary diseases or congenital syndromes. Secondary findings may be found as a result of comprehensive genomic analyses, such as whole-genome sequencing and whole-exon sequencing. Genetic counseling is the process of helping people understand and adjust to the medical, psychological, and familial implications of a disease with genetic involvement. Thus, it is necessary for all physicians to have genetic counseling as part of their standard knowledge. Furthermore, medical geneticists and genetic counselors provide appropriate genetic counseling in a team setting for clients in the Department of Medical Genetics.
著者
波多野 元貴 鈴木 重行 松尾 真吾 後藤 慎 岩田 全広 坂野 裕洋 浅井 友詞
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.40 Suppl. No.2 (第48回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.48100755, 2013 (Released:2013-06-20)

【はじめに、目的】 スタティック・ストレッチング(static stretching:SST)は、柔軟性の改善をもたらすとされ、臨床場面やスポーツ現場などで広く用いられる。他方、SST後は最大発揮筋力や単位時間あたりの筋力発揮率であるrate of force development(RFD)などに代表される筋パフォーマンスの低下が生じるため、最大限の筋力発揮を要するパフォーマンスの前にはSST実施を避けるべきであるとする報告が多い。また、SST後の筋パフォーマンス低下の要因のひとつとして、筋電図振幅の減少など神経生理学的な変化が報告されている。SST後の発揮筋力や瞬発的なパフォーマンスの変化を検討した先行研究を渉猟すると、少数ながらSST後に動的な運動や低強度・短時間の等尺性収縮を負荷することで、筋パフォーマンスの低下を抑制できる可能性が示唆されている。しかし、SST後の運動負荷による筋パフォーマンス低下抑制と神経生理学的変化の関連性について比較検討した報告はない。よって、本研究はSSTおよびその後に行う低強度・短時間の等尺性収縮が最大等尺性筋力、RFDおよび筋電図振幅に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】 被験者は健常学生7名(男性4名、女性3名、平均年齢21.4±1.0歳)とし、対象筋は右ハムストリングスとした。被験者は股関節および膝関節をそれぞれ約110°屈曲した座位をとり、等速性運動機器(BTE社製PRIMUS RS)と表面筋電計(Mega Electronics社製ME6000)を用いて測定を行った。評価指標は6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮時の最大等尺性筋力、筋収縮開始時から200 msec間の時間-トルク関係の回帰直線の傾きであるRFD、等尺性収縮中の内・外側ハムストリングスの筋電図平均振幅(root mean square:RMS)とした。実験は、まず6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行い、15分間の休憩の後、膝関節を痛みの出る直前の角度まで伸展し、300秒間保持することでハムストリングスに対するSSTを行った。その後は、直ぐに6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行う場合(SST群)、または30%maximum voluntary contraction(MVC)の強度で6秒間の等尺性収縮を行った後に6秒間の膝関節屈曲最大等尺性収縮を行う場合(SST-30%MVC群)のいずれかを行い、被験者はこの2種類の実験をランダムな順番に行った。統計処理は反復測定2元配置分散分析および対応のあるt検定を行い、有意水準は5% とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本実験は本学医学部生命倫理審査委員会および共同研究施設倫理審査委員会の承認を得て行った。被験者には実験の前に実験内容について文書及び口頭で説明し、同意が得られた場合のみ研究を行った。【結果】 最大等尺性筋力は、SST群では介入後に有意に低下し(介入前:64.5±19.7 Nm、介入後:57.0±18.7 Nm)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:63.9±20.3 Nm、介入後:65.70±19.8 Nm)。また、介入方法と介入前後との間に交互作用を認め、両群の介入後の値に有意な差を認めた。RFDはSST群で介入後に有意に低下し(介入前:238.5±61.6 Nm/msec、介入後:160.0±63.8 Nm/msec)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:215.0±88.5 Nm/msec、介入後:194.7±67.3 Nm/msec)。また、外側ハムストリングスのRMSは、SST群で介入後に有意に低下し(介入前:280.0±92.3 μV、介入後:253.9±97.0 μV)、SST-30%MVC群では介入前後に有意な差を認めなかった(介入前:270.6±62.3 μV、介入後:258.9±67.1 μV)。内側ハムストリングスのRMSは、両群とも介入前後の値に有意な差を認めなかった。【考察】 本研究結果より、SST後には最大等尺性筋力、RFD、外側ハムストリングスのRMSの低下が生じるが、SST後に低強度・短時間の等尺性収縮を負荷することで、これらの低下を抑制できることがわかった。先行研究にて、筋活動が低下した状態で30%MVCの等尺性収縮を負荷すると、筋紡錘の自発放電頻度が増加することが示されている。本研究では外側ハムストリングスのRMSの変化が最大等尺性筋力およびRFDの変化に同期していることから、SST後に低下した神経生理学的な興奮性が等尺性収縮の負荷によって高まり、筋パフォーマンス低下が抑制されたものと推察する。【理学療法学研究としての意義】 本研究から、理学療法士がスポーツ現場でウォームアップとしてSSTを行う際に危惧してきた筋パフォーマンス低下が、低強度・短時間の等尺性収縮により抑制できる可能性が示唆された。理学療法士が頻繁に行うSST効果に関する基礎的データの集積は、理学療法介入の科学的根拠に基づく理学療法介入の確立・進展につながるとともに、有効なSST実践に向けた方法論構築に寄与するものと考える。
著者
陳 奕均 城山 英明 杉山 昌広 青木 一益 木村 宰 森 晶寿 太田 響子 松浦 正浩 松尾 真紀子
出版者
環境経済・政策学会
雑誌
環境経済・政策研究 (ISSN:18823742)
巻号頁・発行日
vol.15, no.2, pp.1-11, 2022-09-30 (Released:2022-11-04)
参考文献数
49

本稿では,近年,海外で急速に発展してきた持続可能性移行(サステナビリティ・トランジション)という研究分野に着眼し,当該分野における主な理論的枠組みである戦略的ニッチ・マネジメント論(SNM),重層的視座(MLP),トランジション・マネジメント論(TM)とその研究動向をまとめた.関連した概念を明確にしたうえ,日本の研究機関による事例研究への応用例を紹介し,日本の文脈を踏まえた今後の研究課題を提示する.
著者
立川 雅司 加藤 直子 前田 忠彦 稲垣 佑典 松尾 真紀子
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.28, no.4, pp.268-273, 2022 (Released:2022-03-31)
参考文献数
11

Agricultural genome editing is now entering a practical application stage. However, hitherto, there has been little research into or comparisons of international consumer understanding of these genome editing innovations. Therefore, a comparative Japanese, American, and German study was conducted using the same web-based questionnaire to elucidate the issues surrounding genome editing governance, the current state of regulations, and personal opinions about the use of agricultural genome editing technology. It was found that the Japanese felt that there should be strict regulations, and the Germans had the greatest concern about the use of the technology.
著者
松尾 真一郎
出版者
情報処理学会 ; 1960-
雑誌
情報処理 (ISSN:04478053)
巻号頁・発行日
vol.61, no.2, pp.200-202, 2020-01-15

ビットコインは,暗号研究者の夢である「信頼できる第三者の存在がなくてもネットワークを介して支払いを行う」の実現を試みた画期的なプロトコルの提案である.ビットコインを成り立たせるために,暗号,分散コンピューティング,ゲーム理論などさまざまな異なる研究領域が有機的かつ絶妙に組み合わされている.本稿ではこの絶妙な組合せを5分でわかった気にさせるという無茶な要求に対し,その無茶の度合いを説明しつつも,しっかり参考文献を時間を掛けて読めば,その組合せの絶妙さと,ビットコインがいかに暗号プロトコル研究者にとってコロンブスの卵的に素晴らしい提案であるかを理解できる道しるべを得る解説を提供する.
著者
松尾 真樹 川田 純平 作山 秀
出版者
日本化粧品技術者会
雑誌
日本化粧品技術者会誌 (ISSN:03875253)
巻号頁・発行日
vol.54, no.1, pp.15-25, 2020
被引用文献数
1

<p>女性の社会進出に伴いメイク落としにも簡便性が求められ,アウトバスで使用できるクレンジングローションが普及してきている。一方,ローション剤型はコットン使用による摩擦感を感じやすく,耐水性化粧料に対するクレンジング機能は他剤型ほど期待できなかった。本特性は界面活性剤の性能によるところが大きいため,クレンジング機能向上と摩擦低減を両立できる界面活性剤の設計が望まれた。そこでわれわれはポリグリセリン脂肪酸エステル(PGFE)類に着目し,表面張力を指標としたPGFE 類のスクリーニング,製剤への安定配合およびその機能評価を行った。その結果,市場品で想定される配合量域において,PGFE の一種は従来の洗浄成分よりも低い表面張力を示し,さらに興味深いことに,スクリーニングにより得られた2 種のPGFE を特定の配合比率で併用した混合系は,単一成分系よりも低い表面張力を示した。また,PGFE の製剤安定化には,多価アルコールおよび補助界面活性剤の併用が有効であることがわかった。得られた製剤は従来製剤と比べてクレンジング機能が高く,摩擦感を低減でき,かつ保湿効果も高いことが確認された。</p>