著者
田久保 早紀 川﨑 康平 長渡 努 松本 正信 景山 貴洋
出版者
公益社団法人 日本放射線技術学会
雑誌
日本放射線技術学会雑誌 (ISSN:03694305)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.177-184, 2020 (Released:2020-02-20)
参考文献数
15
被引用文献数
1 7

The aims of this study were to elucidate signal pattern of cerebral aneurysm clip in brain magnetic resonance angiography (MRA) using non-contrast enhanced ultra-short echo time (UTE) sequence and to explore effective utilization of this novel technique for patients, who underwent cerebral aneurysm clipping. The clip was embedded in homemade phantom and scanned using UTE sequence. We investigated characteristic features of the artifacts derived from the clip. Besides, we compared the volume of signal loss between conventional time-of-flight (TOF) and UTE-MRA in 50 patients with the cerebral aneurysm clip. In phantom study, the clip was delineated as signal void area fully surrounded by high signal on original images. On reconstructed short-axial views for the clip, four-leaf clover pattern of artifact was observed when clip was arranged orthogonal to the static magnetic field. On the other hand, this artifact disappeared when the clip was arranged in parallel with the static magnetic field. The volume of signal loss in clinical cases was significantly reduced in UTE-MRA (P < 0.05): 1.30, 0.52–2.77 cm3 for TOF; 0.84, 0.28–1.74 cm3 for UTE (median, range). The scan time for UTE-MRA was 2 minutes and 52 seconds. To understand the characteristic feature of the artifacts from the clip could contribute to define vascular structure in image interpretation. Adding UTE-MRA to routine protocol is useful approach for follow-up imaging after cerebral aneurysm clipping with clinically acceptable prolongation of the scan time.
著者
荻原 俊男 森本 茂人 中橋 毅 島本 和明 松本 正幸 大内 尉義 松岡 博昭 日和田 邦男 藤島 正敏
出版者
一般社団法人 日本老年医学会
雑誌
日本老年医学会雑誌 (ISSN:03009173)
巻号頁・発行日
vol.31, no.5, pp.396-403, 1994-05-25 (Released:2009-11-24)
参考文献数
24
被引用文献数
9 8

本邦における高血圧専門家が老年者高血圧の治療方針に関していかなる考え方をしているかについてアンケート法によりその実態を把握することを目的とした. 治療対象について50%の専門家は年齢の上限を考慮しないとしたが, 残り50%は80歳まで, あるいは85歳までを上限としている. 治療対象血圧値は収縮期血圧は60歳代160mmHg以上, 70歳代160~170mmHg以上, 80歳代では170~180mmHgと高齢者程治療対象血圧は上昇, 拡張期血圧は90~95mmHg以上とするものが大部分を占めた. 降圧目標は60歳代では150/90mmHg未満, 70~80歳代では160/90mmHg未満とするものが多く, 80歳代では170~180/95~100mmHg未満と高めに設定するものが20数%あった. 用いる降圧薬ではCa拮抗薬を第一次薬とするものが大部分でありACE阻害薬がこれに次いだ. 一方, サイアザイド, β遮断薬, α1遮断薬を第一次薬とするものは少数であった. 合併症を有する場合の降圧目標や選択降圧薬は疾患によりきめ細かく考慮され, 脳梗塞慢性期, 閉塞性動脈硬化症, 腎障害合併症は70歳代, 80歳代で154~159/89~90, 160~164/90~91mmHgとやや高め, 脳出血慢性期, 虚血性心疾患, 糖尿病, 高脂血症では各々152~153/88, 158~159/89mmHgとやや低めに設定している. Ca拮抗薬はいずれの合併症にもよく用いられ, とくに腎障害, 閉塞性動脈硬化症で高頻度に用いられる. 腎障害ではACE阻害薬が用いられる頻度が低い. β遮断薬は虚血性心疾患で用いられる以外は一般的に用いられない. サイアイド, α1遮断薬は一般的に合併症のある場合にあまり用いられていない. 本邦においても長期介入試験によりこれらを正当化する証明が待たれる.
著者
竹村 洋子 持田 裕司 松本 正江 大沼 昭夫
出版者
大日本蚕糸会
巻号頁・発行日
no.59, pp.21-26, 2011 (Released:2013-10-08)

人工受精においては,雌蛾の交尾嚢内に精包が形成されておらず,交尾嚢内で活性化した精子は直接受精嚢に到達する。交尾嚢を破壊した雌蛾に通常の雄蛾を交尾すると,交尾嚢導管に精包が固定され通常交尾と同様の受精卵を産み, 精包は交尾嚢の代替えとなりえるが,人工受精では受精卵は産下されなかった。精巣を除去した無精子精包は,精子以外の全ての分泌液を含んでいる。未活性精子を人工受精した雌蛾にこの無精子精包雄蛾を交尾させると受精卵が産下され,この方法は人工授精法における精子のトリプシン処理の代替えとなり得ることが明きらかになった。
著者
渡井 祥一 松本 正雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SWIM, ソフトウェアインタプライズモデリング (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.101, no.347, pp.33-40, 2001-10-05
参考文献数
6
被引用文献数
1

本稿では, 「IDR framework」を利用して欧米の産業における電子商取引市場の発展段階を分類する.その発展段階に対して金融業界によるRe-intermediation(再価値化)行動のモデル化による視点を提示し, その実例について欧米の金融機関を題材とした比較を示す.
著者
松本 正
出版者
公益社団法人 日本材料学会
雑誌
材料 (ISSN:05145163)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.268-273, 1996-03-15 (Released:2009-06-03)
参考文献数
14
著者
持田 裕司 竹村 洋子 松本 正江 金勝 廉介 木口 憲爾
出版者
社団法人 日本蚕糸学会
雑誌
蚕糸・昆虫バイオテック (ISSN:18810551)
巻号頁・発行日
vol.75, no.1, pp.37-43, 2006 (Released:2007-07-03)
参考文献数
7
被引用文献数
3

実用蚕品種受精卵の2年間保存条件を検討した。清水ら(1994)の2年間保存法における6回の15℃1日間中間手入れのうち,最終の1回を10℃10日間に改めた「改良2年間保存法」を試案した。この方法で2年間保存をした交雑種は実用ふ化歩合65%程度で,飼育成績は対照としての1年間保存卵からふ化した個体と同等であった。原種の場合,改良2年間保存後のふ化率は対照区と比較して著しく低く,ふ化幼虫の雌雄比にも偏りが生じた。しかし,次代卵を再び2年間保存することを繰り返す継代は可能であり,多くの品種において継代のたびにふ化率は向上した。2年間保存により幼虫の飼育成績は低下するが,継代した卵を通常の1年間保存後にふ化させることで飼育成績を回復することが確かめられた。産卵台紙の間にスペーサーを挿入することで積極的に空気の流通空間を確保することは,ふ化率の改善に有効であった。

1 0 0 0 論理学

著者
松本正夫 [著]
出版者
慶應通信
巻号頁・発行日
1952
著者
Fonagy Adrien 松本 正吾 内海 恭一 折笠 千登世 満井 喬
出版者
日本農薬学会
雑誌
日本農薬学会誌 (ISSN:03851559)
巻号頁・発行日
vol.17, no.1, pp.47-54, 1992-02-20
被引用文献数
5

カイコおよびハスモンヨトウを用い, 合成したカイコのPBANのフェロモン腺に対する作用を, in vivoおよびin vitroで検討した.合成PBANを断頭したカイコ雌成虫に注射すると濃度依存的にボンビコールの生産が促され, また, その生産量は注射後90&acd;120分で最大となった.一方, 合成PBANを含むGrace培地でカイコおよびハスモンヨトウのフェロモン腺を培養したところ, 両種とも濃度依存的にフェロモンの生産が促され, その生産量は培養開始後90&acd;120分で最大となった.さらに, 両種におけるフェロモン生産はカルシウムイオノフォアを含むGrace培地でフェロモン腺を培養しても引き起こされることから, カイコおよびハスモンヨトウにおいて, PBANの標的器官がフェロモン腺であること, また, その作用の発現にはカルシウムイオンが介在していることが示唆された.
著者
廣瀬 拓也 田中 満稔 松本 正明 濱田 和俊 尾形 凡生
出版者
一般社団法人 園芸学会
雑誌
園芸学研究 (ISSN:13472658)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.275-282, 2016
被引用文献数
1

軟X線を照射した花粉を受粉してヒュウガナツの無核果形成を誘導する技術の有用性を,慣行法である四倍体の'カンキツ口之津41号'や'西内小夏'花粉の受粉と比較して評価した.ヒュウガナツの慣用受粉樹である'土佐文旦'と,'カンキツ口之津41号'および'西内小夏'の花粉に,500,1,000,2,000 Gyの軟X線照射して実験に用いた.<br>軟X線を照射した花粉の発芽率およびその花粉をネットで花粉遮断した'宿毛小夏'に人工受粉した時の収穫時の着果率は花粉品種にかかわらず照射線量が高くなるにつれ低下する傾向がみられた.完全種子は無照射の'土佐文旦','カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉の受粉果では,それぞれ23.8個,0.4個および1.5個形成されたが,軟X線照射花粉を受粉すると,ほぼ消失した.種子長10 mmを超える大きな不完全種子も,無照射の'土佐文旦','カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉の受粉果では1.5個,3.9個および2.3個形成されたが,500 Gyの軟X線照射花粉の受粉果では0.3個,0.2個および0.1個と減少し,1,000 Gy以上の軟X線照射花粉の受粉果では消失した.顕微鏡観察において,無照射の'カンキツ口之津41号'および'西内小夏'花粉を受粉した'ヒュウガナツ'果実では,一部の胚は受粉8週間後にも生存しているのに対して,軟X線照射'土佐文旦'花粉を受粉した'ヒュウガナツ'果実では健全な胚はまったく認められなかったことから,軟X線照射は種子の発達をより強く阻害するものと考えられた.軟X線照射花粉の受粉によりヒュウガナツ収穫果の果実重は小さくなった.ただし,この小果化は,高知県のヒュウガナツ市場で消費者が少核の小さな果実をより好むことから考えれば,果実の価値を大きく損なうものではない.以上の結果より,軟X線照射した花粉を受粉する方法は大きな不完全種子を残さない点において有用なヒュウガナツ無核化生産技術であり,照射線量は500~1,000 Gyが適当である.
著者
西村 淳 松本 正人 東畠 三洋 郭 睿倩 岡田 龍雄
出版者
一般社団法人 レーザー学会
雑誌
レーザー研究 (ISSN:03870200)
巻号頁・発行日
vol.36, no.8, pp.499-504, 2008-08-15 (Released:2014-03-26)
参考文献数
24

Technique for synthesis of the ZnO nanowires by Nanoparticle-Assisted Pulsed-Laser Deposition (NAPLD) and the characterization of their optical property are described. Vertically-aligned ZnO nanowires were successfully grown on sapphire substrates by NAPLD without any catalyst. The surface density of the nanowires on the substrate was controlled by changing the laser irradiation conditions, such as an energy and a repetition rate. When a nanowire was excited by the third harmonic of a Q-switched Nd: YAG laser, the stimulated emission due to a micro-cavity effect in single nanowire was observed with a lasing threshold of about 400 kW/cm2, indicating high crystalinity of ZnO nanowires.
著者
大村 浩久 高田 正 石田 英雄 松本 正隆
出版者
九州大学
雑誌
九州大學農學部學藝雜誌 (ISSN:03686264)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.69-77, 1978-09

Two types of fish jelly products, "Chikuwa" (rolled fish cake) and "Sumaki-Kamaboko" (fish cake rolled with straw) manufactured in Fukuoka prefecture were examined on respective 10 brands in January of 1975. The following ranges of constituents were indicated by chemical analysis. "Chikuwa" : Water 63. 1~73. 6 (69. 4± 1. 1) % ; protein 11. 7~16. 7 ( 13. 8±0. 5) % ; lipid 0. 3~0.9 (0.6±0.07) %; ash 2.4~4.4 (3.3±0.2) %; starch 2.0~40.2 (6. 1 ±0. 9) %, sugar 8. 3~18. 2 (13. 0±0. 9) %, energy 97~132 (112 ±3. 8) kcal ; sorbic acid, 0. 64~1. 68 (1. 28±0. 13) g/kg except one brand; saccharin sodium 0 in 7 brands and 0. 03, 0. 47 or 0. 16 g/kg in 3 respectively; A F_2 and hydrogen peroxide were not detected, while positive intestinal flora in one brand. "Sumaki -Kamaboko": Water 71.0~77. 3 (73. 5±0.7) %; protein 10. 1-15.8 (11.4±0. 5) %; lipid 0. 3~1. 0 (0. 5±0. 07) %; ash 2. 3~3. 6 (3. 0±0. 1) %; starch 0~7. 4 (5. 0±0. 7) %; sugar 7. 5~14. 7 (11. 5 ± 0. 7) %, energy 54~104 (83 ± 6 ) kcal ; sorbic acid 0. 18~1. 58 (0. 78±0. 2) g/kg in 7 brands and 0 in 3 brands ; saccharin sodium 0 in 7 brands and 0.01, 0.06 or 0.06 g/kg in 3 respectively ; AF_2 and hydrogen peroxide were not detected, while pseudo - positive intestinal flora in 2 brands. Red No. 106 was employed in 7 brands and No. 104 in one brand, but not in others. A strict relationship between evaluation by sensory test and constituent was not estimated. However, it was shown with some exception that the evaluation was generally dependent on higher protein and lower starch content through certain physical properties such as sense of touch. A rough correlation of evaluation to price was also observed. Although t h e distinct feature was not estimated for products in Fukuoka prefecture, they seemed to contain much starch.昭和49年度においても,それぞれ福岡県内10ヵ所の生産者から試料を購入し,官能テストならびに成分分析により,チクワについては3年連続して調査を行なつた.またスマキについてもあわせて調査した.チクワの成分は,水分63.1~73.6(69.4±1.1)%,蛋白質ll.7~16.7(13.8±0.5)%,脂質0.3~0.9(0.6±0.07)%,灰分2.4~4.4(3.3±0.2)%,澱粉2.0~10.2(6.1±0.9)%,糖分8.3~18.2(13.0±0.9)%,エネルギー97~132(112±3.8)キロカロリーであつて,過去2回の調査によるものとほとんど差はなく,対照にくらべて水分含量がやや低く炭水化物含量が高い傾向が認められた.ソルビン酸は1試料を除いて0.64~1.68(1.28±0.13)9/kgの範囲に検出され,一方人工甘味料はサッカリンナトリウムが3試料に認められた.またAF2,過酸化水素のような殺菌料はすべての試料に検出されなかつたが,大腸菌群は1試料にのみ陽性であつた.スマキでは,水分71.0~77.3(73.5±0.7)%,蛋白質10.1~15.8(11.4±0.5)%,脂質0.3~1.0(0.5±00.07)%,灰分2.3~3.6(3.0±0.1)%,澱粉0~7.4(5.0±0.7)%,糖分7.5~i4.7(11.5±0.7)%,エネルギー54~104(83±6)キロカロリーであつて,チクワにくらべて水分含量がやや高いが蛋白質ならびに炭水化物含旦が低く,また含量の範囲も狭かつた.澱粉無添加試料の蛋白質含量は最も高く,これを除くと10~12%の範囲にあつて,対照にくらべてほとんど差はなく,一般に炭水化物含量が高く脂質含量は低かつた.ソルビン酸は7試料に0.18~1.58(0.78±0.2)9/kg,サッカリンナトリウムは3試料に0.Olあるいは0.069/kg検出された.AF2および過酸化水素はすべての試料で陰性,大腸菌群は2試料に凝陽性であつたが,人工着色料は,赤色106号が7試料,赤色104号が1試料に使用されていた.これらチクワやスマキなどの成分あるいは価格と官能テストによる評価との間に厳密な相関関係を見出すことはむつかしかつた.しかし,例外的に一部逆の場合もあるが,こしや触感のような物性を介して蛋白質および澱粉含量が影響する傾向も認められた。
著者
松本 正
出版者
電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B 通信 (ISSN:09135715)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.p33-40, 1988-01
被引用文献数
2

移動通信におけるディジタル信号伝送では,マルチパスフェージングによる符号誤りを改善する方法としてブロック符号による誤り制御が有効である.Chaseは,channel measurement information(CMI)を用いるブロック符号の効率的な軟判定復法を提案している.本論文では,Chaseの第2アルゴリズムについてCMIとして受信波包絡線レベルを用いる方法の,レイリーフェージング下でのワード誤り率特性を検討した.まず,ビット間の受信波包絡線が独立に変動すると仮定し,受信した1フレームで消失としないビットの受信CNRの確率密度関数を導出して符号の代数的構造に依存しない上下界のワード誤り率を求め,計算機シミュレーションにより理論値の妥当性を確認した.次に,ビット間の受信波包絡線の変動に相関がある場合について,Golay符号を例に計算機シミュレーションによりワード誤り率特性を明らかにすると共に,受信CNRの変動を独立にし,誤りをランダム化するのに必要なビットインタリーブのサイズを求めた.
著者
松本 正男
出版者
山口大学
雑誌
山口大学哲学研究 (ISSN:0919357X)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.1-30, 1996

ヘーゲルの体系期「論理学」は、そもそも何であるのか。この総括的解釈の問題には、いくつかの接近路が可能であろう。拙論の眼目は、カントの超越論的論理学との関連という観点から、この「論理学」を、特に「主観的論理学」に重点を置いて、再考することにある。ヘーゲル「論理学」には隅外的な立場から有効に読み替えようという試みが為されることがあるが、その意義はどうであれ、私見によれば、「論理学」は、先ずそれ以前に、まだそれをそれとして適正に理解することが要求されている解釈段階にある。そのためには、それを哲学史的連関の内に、特にひとまずドイツ観念論内部に適切に位置づける必要があり、そしてそのためには、前記の観点からの検討が、決して十分ではないが、しかし不可欠な要件であると思われる。ただし拙論は、単に文献的照合によって、とりわけヘーゲルのカント批評の枠内で、両者の連関を確認しようとするものではない。私見によれば、事柄自身における両者の連関は、主にヘーゲルの側からの部分的に不適切な、或いは少なくとも偏向的な批判と、関心範囲の制限によって、必ずしも十分に明らかになっていない。このことは、カント解釈者のカント解釈によりも(彼らはヘーゲルの批判を殆ど意に介していない)、むしろ跳ね返って、ヘーゲル解釈者のヘーゲル解釈に、看過できない支障をもたらしているように思える。拙論は、こうした事情を踏まえて、カント「超越論的論理学」とヘーゲル「論理学」のあいだの思想内実の継承史の研究に、一灯を投じようと試みる。こうした主題研究は、単にカント、へーゲルの哲学史的解釈にだけでなく、超越論的論理学の可能性に関する体系的研究に大きく資するであろう。しかし本格的な遂行のためには、言うまでもなく、一論文をはるかに超える規模の労力を必要とする。拙論は、むしろ就緒のための一灯として、ひたすら確かな研究プログラムの設定を目指すものである。
著者
久保田 尚 松本 正生 藤井 聡 羽鳥 剛史 高橋 勝美
出版者
埼玉大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究では、交通計画に関わるサイレント層に着目し、計画論の分野では、地区レベルの合意形成において社会実験がサイレント層に及ぼす影響を明らかにするとともに、ナラティブアプローチによりアンケートでは把握しきれない物語の抽出を測り、それに基づく政策提言を行った。さらに調査論の面から、複数の調査手法を組合わせることによる交通調査の回収率向上や調査コスト削減、データ信頼性向上が期待される結果を得た。
著者
池田 博樹 松本 正行 長谷川 晃
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会総合大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.1995, no.1, 1995-03-27

ファイバ中の光ソリントンには、異常分散領域における明るいソリトンと正常分散領域における暗いソリトン(ダークソリトン)の2種類がある。ダークソリトンは(1)明るいソリトンよりもファイバの損失や増幅器雑音、さらに隣接パルス間の相互作用の摂乱に対して安定に振舞う、(2)自己誘導ラマン効果によって振幅が減衰しパルスが消滅する、等の特徴をもつ。明るソリトンの伝送特性は、フィルタによって制御できることが示されているが、背景波を伴うダークソリトンをフィルタによって制御することは困難である。ここでは、ダークソリトンの振幅(くぼみの深さ)と速度がお互いに関連していることに着目し、非線形増幅を用いて振幅を制御することによってダークソリトンの速度をコントロールする方法を提案する。
著者
松本 正智 〓物 久夫 城 一也
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.307-311, 1991
被引用文献数
2

Torsion of the vermiform appendix in a 2 1/3-year-old boy, who appears to be the youngest patient with this disease in the world literature, is reported. He had no previous history of abdominal pain. He began to complain of abdominal pain about 30 minites after standing on his hands for the first time in his life. Two days later, he was admitted to our hospital because of severe intermittent abdominal pain. Tenderness of his right lower abdomen associated with a WBC count of 23100/cmm and an enlarged appendix as seen in the ultrasonogram led us to perform a laparotomy under the diagnosis of acute appendicitis. The vermiform appendix showed clockwise torsion of 360°at its root and a gangrenous appearance. There was no adhension of the appendix to the surrounding tissue, and so release of the torsion and an appendectomy were easily performed. No fecalith or inflammation of the appendix was observed. The postoperative course of the patient was uneventful. Although anatomical or pathological causes of torsion of the appendix are still unknown, STANDING ON HIS HANDS was suggested as an important etiological factor in this case.
著者
渡邉 尚子 岩田 滉一郎 中尾 國明 松本 正廣 松本 裕子 籏原 照昌 太田 裕彦 平林 寧子 高橋 和明 三代 俊治
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.80-84, 2003-02-25
被引用文献数
5 5

従来本邦ではE型肝炎は輸入感染症として軽視されがちであったが, 最近本邦を含む非流行地からの国内発症例の報告が相次いでおり, 我々も1例経験したので報告する. 症例は62歳男性. アルコール歴・ビタミン剤と生薬の服用歴あるも, 海外渡航歴・輸血歴・動物の飼育歴はなく, 特記すべき性交渉歴もなかった. 2000年11月初旬より全身倦怠感・褐色尿・微熱・食思不振を訴え, 職場の健康管理室を受診. 急性肝炎の疑いで同年11月21日に当科外来を紹介され, 同日入院となった. 入院時には全身倦怠感・皮膚及び眼球結膜黄染・軽度肝腫大・肝逸脱酵素上昇を認め, 急性肝炎と診断した. 安静のみで経過観察したが, 劇症化あるいは遷延・慢性化することもなく, 約20日間で軽快退院となった. 入院時より第29病日まで血清HEV-RNAが持続陽性で, 且つ第57病日の回復期血清中にHEV抗体を認めたことより, E型急性肝炎と診断した. 本患者より分離されたHEV株(JRA 1)のゲノム塩基配列の特徴に鑑みて, 本症例は「日本に土着化したHEV株」に感染して発症した急性肝炎であると考えられた.
著者
松本 正 衣斐 信介
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 B (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.J90-B, no.1, pp.1-16, 2007-01-01

本論文の目的は,「ターボ概念」に関する理解を読者に提供することである.そのために,ターボ概念に基づくアルゴリズムの動作を理解する上で不可欠な相互情報量の伝達特性を評価するために便利なツールである,EXtrinsic Information Transfer (EXIT) チャートの概念を解説する.そのための題材としてターボ等化を取り上げ,現実性と柔軟性に富むSoftCanceller followed by Minimum Mean Squared Error filter (SC-MMSE)型ターボ等化アルゴリズムについて概説する.また,その特性を漸近特性と収束特性の両面から解析する.更に,合理的な拡張としてターボ等化の空間多重を行うMIMOシステムに適用する場合には,収束特性は多次元EXITチャートを用いて評価されなければならないことを示す.最後に,今後の課題や研究動向についても述べる.