著者
松本 英之 宇川 義一
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.4, pp.1076-1083, 2011 (Released:2013-04-10)
参考文献数
10

脳脊髄液減少症は,従来,低髄液圧症候群と呼ばれていた疾患とほぼ同一の病態の疾患である.その病態が脳脊髄液の減少に起因すると考えられるため,脳脊髄液減少症がより適切な疾患名となっている.脳脊髄液の減少により,頭痛,頸部痛,めまい,耳鳴,視機能障害,倦怠・易疲労感など様々な症状を呈する疾患と定義される.本疾患の診断に有用な画像診断法には,頭部MRI(magnetic resonance imaging)やRI脳槽・脊髄液腔シンチグラムが挙げられ,治療は安静臥床,輸液による保存的治療と硬膜外自家血注入療法が一般的である.脳脊髄液減少症は未だ医療関係者の間でも十分に認識されているとは言い難く,しばしば誤った診断,治療がなされている.現在,厚生労働省の班会議「脳脊髄液減少症の診断・治療の確立に関する調査研究」で,脳脊髄液減少症の診断・治療指針(ガイドライン)の作成を目標とした研究が進行中であり,その調査結果が待たれるところである.
著者
松本 聡子 野村 俊明 奥村 雄介
出版者
東京大学大学院人文社会系研究科グローバルCOEプログラム「死生学の展開と組織化」
雑誌
死生学研究 (ISSN:18826024)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, 2010-12-15

Mental disorders are common among prison inmates. Article 26 of Japan's Mental Health and Welfare Law requires prison governors to report the impending release of inmates with mental disorders to the Prefectural governor; at the same time, documentary evidence of such inmates'psychiatric status must be submitted if they are assessed as likely to exhibit violent behavior. However, no research has been done on the implementation of this law. The goal of this study was to clarify the extent to which documentary evidence is actually included in reports issued by correctional institutions. It was found that documentary evidence is included high rates when inmates fall into 1 or more of the following 3 categories: the prison psychiatrist stated in the release report that hospitalization was necessary for psychiatric treatment; the risk of the inmate's inflicting harm on others is recognized; a violent nature and/or impulsiveness are recognized.
著者
松本 哲一 宇都 浩三 柴田 賢
出版者
日本質量分析学会
雑誌
Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan (ISSN:13408097)
巻号頁・発行日
vol.37, no.6, pp.353-363, 1989 (Released:2007-05-01)
被引用文献数
11 8

Precise determination of argon isotopic ratios was made on twenty-seven historic lavas from Japan. Their isotopic ratios were mostly mass fractionated from that of the atmospheric argon toward the enrichment in lighter isotopes. This suggests that the correction for the mass fractionated initial 40Ar/36Ar ratio is very important for the K-Ar dating of volcanic rocks younger than 0.1 Ma. The limit of measurable K-Ar age is estimated to be 0.03 Ma for a normal andesitic lava having a fractionated initial argon.
著者
松本 宗矢
出版者
日本教育情報学会
雑誌
年会論文集
巻号頁・発行日
no.30, pp.198-199, 2014-08-09

ICTインフラの進展により静止画や動画のディジタルでの取り扱いが簡単になった。今回の発表ではイラストレーションを学ぼうとしている場合を例に,自ら学ぼうとする意欲のある者にとって,従来より容易に学習のための情報取得や制作者との交流が可能になった時代が到来したことをいくつかの事例をふまえつつ現状を考察する。
著者
荒木 厚 福島 豊 松本 光弘 佐古 伊康 北 徹
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.111-115, 1990-04-25 (Released:2009-09-03)
参考文献数
20
被引用文献数
2 1

先天性代謝異常症のホモシスチン尿症では, 若年性に動脈硬化, および脳梗塞をきたしやすい。また, 血中ホモシステインの蓄積は, 動脈硬化を惹起するという仮説が提唱されている.ホモシステインの成人における脳梗塞発症に対する関与の可能性を検討する目的で, 慢性期脳梗塞患者42例の血漿総ホモシステイン濃度を測定し, 年齢, 性, および高血圧をマッチさせた対照84例と比較した.両群間のBody mass index, 空腹時血糖値, 血清コレステロール, 中性脂肪, クレアチニン, 尿酸濃度, および喫煙者の割合には, 有意差がなかった.血漿総ホモシステイン濃度 (nmol/ml) は, 脳梗塞群13.2±5.8, 対照群8.5±3.7であり, 脳梗塞群が対照群に比して有意に高かった (p<0.000001).以上の成績は, ホモシステイン仮説を支持し, 血漿ホモシステインの高値が, 脳梗塞の独立な危険因子の一つとなりうることを示唆する。
著者
工藤 信樹 清水 孝一 松本 伍良
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
医用電子と生体工学 (ISSN:00213292)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.194-198, 1985-06-30 (Released:2011-10-14)
参考文献数
12
被引用文献数
3

A new method of biotelemetry is proposed, which realizes nonrestrained acquisition of biological signals using the infrared light diffused out from animal skin. This technique is fundamentally different from conventional telemetry techniques which use radio-frequency electromagnetic waves.An optical transmitter which consists of some LED's is implanted beneath the skin. Biological information such as ECG signal is collected in vivo and the light emitted from the LED's is modulated by the signal. The light transmitted through the skin is strongly diffused and spread out in a wide angle. The light is collected by the remotely located optical receivers and the biological information is obtained by demodulating the signal. Thus, the biological information in vivo is obtained without restraining the object with cables or optical fibers.In order to verify the possibility of the above technique, a system, which obtains an ECG from laboratory animals, has been developed. An infrared light was chosen due to its invisibility and high transmittance through the skin. Considering the stability of the communication link and the power consumption of the implanted transmitter, PFM (Pulse Frequency Modulation) technique was used. Using the system, the transcutaneous ECG telemetry was performed successfully.In the experiment, the indirect light reflected and scattered by the walls, the ceiling and the floor was shown to be useful in the optical telemetry. Light transmission patterns through the skin of a mouse were measured. The results suggest the possibility of telemetry even from the deep part of the body cavity.It is concluded that recent progress of optical and electronic technologies have reached the point, where transcutaneous optical telemetry of biological signals has become practically possible.
著者
後藤 真孝 日高 伊佐夫 松本 英明 黒田 洋介 村岡 洋一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1996, no.19, pp.21-28, 1996-02-24
被引用文献数
15

本稿では,すべてのプレーヤーが対等な立場でインタラクションし,即興演奏するジャズセッションシステムについて述べる.従来の多くのシステムでは,人間のソロ演奏に対して計算機が他のプレーヤー全員の演奏を伴奏としてまとめて生成していたため,ソロに追従する域を出なかった.我々は,計算機内のプレーヤー同士も人間同様にお互いの演奏を聞き合い反応することができ,さらにジェスチャーも視覚的に交換することができるシステムを提案する.対象はジャズのピアノトリオとし,人間がピアニスト,計算機がベーシストとドラマーを担当する.両計算機プレーヤーは独立したプロセスとして複数の計算機上に実装され,実際にプレーヤーが対等な立場で演奏できた.This paper presents a jazz session system where each player is independent and can interplay with other players. Most previous systems reacted to only human player's performance with the fixed master-and-servant relationship. Our system enables computer players to listen to other computer player's performance as well as human performance, and to interact each other. Moreover, all players can communicate not only by listening other's performance, but by looking at other's bodies and gestures. In our current implementation, the system deals with jazz piano trio consisting of a human pianist, a computer bassist and a computer drummer. These computer players have been implemented as independent processes on several distributed workstations.
著者
東 藍 浅原 正幸 松本 裕治
雑誌
情報処理学会研究報告自然言語処理(NL)
巻号頁・発行日
vol.2006, no.53(2006-NL-173), pp.67-74, 2006-05-19

本稿では,日本語形態素解析において問題となる未知語処理に対して条件付確率場(ConditionalRandomFields CRF)を適用する手法を提案する.提案手法では,形態素解析と同時に入力文中の部分文字列に対して未知語候補を追加することにより,形態素解析と未知語処理を同時に行う.また,従来最大エントロピーマルコフモデル(MaximumEntropyMarkovModelMEMM)などを適用した手法で指摘されてい0たlabelbiasあるいはlengthbiasの影響は,単に既知語の解析において問題になるだけではなく,未知語処理においても重要な問題となることを示し,CRFを適用することによりこれらの問題が解決されることを示す.そして大規模な正解タグ付コーパスを用いて実験し,本稿の提案手法の有効性を検証した

1 0 0 0 OA 英和俗語正解

著者
松本茂雄 編
出版者
修学堂
巻号頁・発行日
1908
著者
松本 充郎 マツモト ミツオ
出版者
大阪大学中国文化フォーラム
雑誌
OUFCブックレット (ISSN:21876487)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.63-77, 2015-03-10

東アジア"生命健康園"構築に向けて : 大気汚染と健康問題を考える日中国際会議の記録
著者
松本 孚
出版者
順天堂大学
雑誌
順天堂医療短期大学紀要 (ISSN:09156933)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.83-92, 1996-03-29

幸福という概念を総合的,網羅的に分類しようと試みた結果,結論として次のような分類体系が考案された。1.内からの幸福:1)身体的幸福,2)行動的幸福,3)心理的幸福:(1)自ら、幸福と思う場合,(2)自ら幸福と思わない場合,(3)欲求満足,(4)欲望からの解放,(5)理性や徳への準拠,4)自己実現,5)全人的調和,6)自己超越。2.外からの幸福:1)外部環境としての幸福:(1)他者環境の幸福,(2)家庭環境の幸福,(3)組織やコミュニティの幸福,(4)社会の幸福,(5)人為的自然環境の幸福,(6)自然環境の幸福,2)外部環境と個人の相互作用としての幸福:(1)対人関係の幸福,(2)個人と組織の関係の幸福,(3)個人と社会の関係の幸福,(4)個人と人工物との関係の幸福,(5)人間と自然の関係の幸福。
著者
太田 浩良 羽山 正義 金子 靖典 松本 竹久 川上 由行 熊谷 俊子 久保田 聖子 勝山 努
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.37-47, 2006-01-31 (Released:2012-11-27)
参考文献数
50
被引用文献数
1

Helicobacter pylori (H. pylori) は、1983年にWarrenとMarshallにより慢性胃炎患者の胃粘膜より分離培養されたグラム陰性菌である。H. pyloriの発見は、胃疾患をめぐる状況に劇的な変化をもたらした。慢性胃炎がH. pyloriという起炎菌による感染症として理解されるようになり、さらに, H. pyloriが胃十二指腸潰瘍、さらには胃癌、胃悪性リンパ腫に関連する重要な因子であることが明らかにされてきた。H. pylori感染胃粘膜にみられる病理組織学的変化は, 細菌側の因子とこれに対する宿主側の反応が絡み合って形成される。胃炎惹起や胃発ガンのメカニズムの解明が分子レベルで急速に進んでいる。H. pyloriの感染診断法には, 内視鏡検査を必要としない非侵襲的検査法 (尿素呼気試験、抗体測定法、便中抗原測定法) と, 内視鏡検査を必要をとする侵襲的検査法 (迅速ウレアーゼ試験、鏡検法、培養法) がある。それぞれの検査法には長所や短所があるのでその特徴を理解した上で選択することが肝要である。
著者
松本 欣三 Guidotti Alessandro Costa Erminio
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 : FOLIA PHARMACOLOGICA JAPONICA (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.126, no.2, pp.107-112, 2005-08-01

精神的緊張をはじめ,様々な心理的ストレスがうつや不安などの情動障害や,不眠などの睡眠障害の要因にもなるが,ストレスによりそれらが発症するメカニズムはまだ十分には解明されていない.近年,多くの臨床および前臨床研究から,神経ステロイドと呼ばれる一連のステロイドのうち,特にallopregnanolone(ALLO)等のγ-アミノ酪酸<sub>A</sub>(GABA<sub>A</sub>)受容体作動性神経ステロイドの量的変動と種々の精神障害の病態生理やその改善との関連性が明らかになりつつある.我々は雄性マウスを長期間隔離飼育し,一種の社会心理的ストレス(隔離飼育ストレス)を負荷したときの行動変化を指標に,ストレスで誘導される脳機能変化を薬理学的に研究している.隔離飼育マウスでは対照となる群居飼育動物と比較して鎮静催眠薬ペントバルビタール(PB)誘発の睡眠時間が短くなっており,この原因の一つに脳内ALLO量の減少によるGABA<sub>A</sub>受容体機能の低下があることを示した.また脳内ALLO量の低下は隔離飼育雄性マウスに特徴的に現れる攻撃性亢進にも関与し,選択的セロトニン再取り込み阻害薬フルオキセチンは脳内ALLOレベルを回復させることにより攻撃性を抑制することを示唆した.PB誘発睡眠を指標に検討したALLOをはじめとする脳内物質の多くは睡眠調節にも関わることから,脳内ALLO系のダウンレギュレーションを介したGABA<sub>A</sub>受容体機能の低下もストレス誘発の睡眠障害の一因であろうと推察された.また攻撃性のような情動行動変化にも脳内ALLOの量的変動が関与する可能性が高いことから,今後,脳内ALLO系を標的とした向精神薬の開発も期待される.<br>