著者
吉本 暁文 新保 仁 原 一夫 松本 裕治
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. SLP, 音声言語情報処理
巻号頁・発行日
vol.2015, no.5, pp.1-6, 2015-05-18

一般的に依存構造解析のアルゴリズムでは,句構造を扱わないために並列構造を考慮することが難しい.そこで,依存構造解析のための Eisner アルゴリズムを,並列構造解析ができるように拡張した.その規則の導出木は,既存の依存構造のアノテーションから導出することができる.
著者
松本 元
出版者
一般社団法人日本物理学会
雑誌
日本物理學會誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.48, no.7, pp.535-542, 1993-07-05
被引用文献数
1

科学技術文明をきづく礎は「人とは何か」を明らかにすることである.脳神経科学の立場からの人の理解の鍵は,脳の情動系と学習・記憶機能の解明にある.まず,脳の学習・記憶の特異性が人の個性を決定する.また,人は自分の存在が他の人から意義深いと思われているかどうか,の精神的判断規凖を進化の過程で遺伝的に獲得し強化されている動物と定義づけられる.この精神規凖をもとに,人は外界からの情報を情動系で快・不快と判断し,それに基づいて快・不快の行動を行う.快情報を得たと判断すると快行動出力を運動・自律・中枢の各神経系に出す.この為,愛は人にとって最大の快情報であるので,愛は脳を活性化するのである.こうして,従来科学と宗教は互いに相容れないものと考えられてきたが,融合し得るものと考えられる.脳科学研究を通して,「人とは何か」,「心とは何か」を明らかにする.
著者
岩井 啓一郎 松本 主之 江崎 幹宏 八尾 隆史 鎌田 正博 飯田 三雄
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.2493-2498, 2006-10-20 (Released:2011-05-09)
参考文献数
20

症例は71歳,男性.山で採取したツキヨダケを摂取したところ,その8時間後より激しい腹痛,嘔吐,下痢が出現し来院した.第4病日の内視鏡検査では,十二指腸下行部に浮腫とびらん形成を伴った粗槌粘膜をびまん性に認め,第7病日に施行したX線検査では,十二指腸下行部から水平部にかけてKerckring皺襞の腫大,線状ないし不整形バリウム斑の多発,および亀甲様粘膜面を認めた.保存的治療のみで臨床症状は速やかに改善し,2カ月後の内視鏡検査では十二指腸病変の治癒が確認された.患者血清中にツキヨダケの毒素であるイルージンSは証明できなかったが,臨床経過から自験例はツキヨダケの誤摂取により生じた急性十二指腸炎と考えられた.ツキヨダケによる食中毒は発生件数が多いものの,その消化管病変に関する記載は少なく,自験例は貴重と考えられた.
著者
張替 泰子 松本 仲子
出版者
THE JAPAN ASSOCIATION FOR THE INTEGRATED STUDY OF DIETARY HABITS
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.80-88, 2000
被引用文献数
1 1 1

20-30歳代女性の既婚者と未婚者の調理技能および栄養摂取に関する意識調査結果は, 次のように要約された.<BR>(1) 調理技能習得の機会とその効果については, 「家庭」での習得が最も効果的であったとする回答が48%と高く, 以下「料理本」, 「雑誌」, 「テレビ」と続き, それぞれ約10%を占めた. 一方, 「学校教育」は3%以下と低かった.<BR>調理技能習得に「新聞」, 「雑誌」, 「テレビ」などが有効であったとした回答を具体的に見ると, 雑誌では若年女性向け一般雑誌が23-39%と高率を占めていた. テレビでは, 短時間のうちに要点のみを要領よくまとめた番組があげられ30%と高い率であった.<BR>(2) 日常の調理において「切る」, 「剥く」に使用する調理器具を質問した結果は, 「切る」については包丁使用の割合が85%以上と高く, スライサーの使用は少なかった.「剥く」については皮剥き器を使用する人が63%を占め, スライサー-に比べ皮剥き器の使用が高く, 21-25歳において特にその傾向がみられた.<BR>(3) 日常よく食べられている料理約100品目については「本を見なくても作れる」割合は未婚者では35%であるが, 結婚1年は65%で, 未婚者と既婚者との間で大差がみられた. 未婚者が「本を見なくても作れる」とした料理には洋風料理が占める割合が高かった.<BR>(4)「1日に何をどれだけ食べればよいか」を知っているかについて質問した結果は, 「少しは知っている」が45%と多く, 知っていると意識している人の割合が70%を占めた. その知識の習得に最も効果があったとして一番目にあげたのは, 高校13%, テレビ12%, 家庭および雑誌10%, 中学校9%などで学校, 家庭, マスコミに分散した. また, 学習する効果的な時期については, 一番目が結婚前33%, 中学校, 高校19%, 小学校10.8%であり, また, 二番目にあげたものを含めると出産前が多く, 学校教育と家庭を構えて食事づくりの主体者となる時とに二分された.<BR>(5)「1日に何をどれだけ食べたらよいか」を高校の家庭科においていくつの食品群で学習したかの質問の結果は, 「覚えていない」が最も多く55%, 「6群」が32%, 「4群」「3群」がそれぞれ5%であった.<BR>(6)「1日に何をどれだけ食べたらよいか」どの程度理解しているかを知るために, 各食品群の量を変えて実際の料理で図示し, 適当と思われる分量を選択させた. 選択の基準は生活活動強度・中等度の成人女性と説明し, 回答してもらった.正答率が最も高いのは「卵」の91%で, 以下「ご飯・パン」72%, 「果物」59%, 「牛乳」52%, 「いも」44%, 「淡色野菜」37%, 「緑黄色野菜」28%, 「豆・豆製品」25%, 「肉・魚」11%, の順であった.「いも」「野菜類」「豆・豆製品」の必要量を知っている人は, 25-45%に止まった.「豆・豆製品」「緑黄色野菜」「いも」など一般に健康に良いと考えられているものは, 必要とされている量よりも多い量を選択する傾向がみられた.
著者
花田 収悦 佐藤匡正 松本 匡通 長野 宏宣
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.22, no.1, pp.44-50, 1981-01-15

本論文は プログラムに与えられた命題を情報とその操作とからなる機能に基づいて論理的な構造を確定した上で処理手順を規定する 二段階から成るプログラム設計方法および 各設計段階に適合するように工夫された新たなドキュメンテーション方法(機能分析図 コンパクト・チャート)を提唱する.本設計方法は処理効率の向上を 処理手順の規定の段階で 主に いくつかの機能で共通な情報へのアクセスを削減するとの観点からはかり 大規模ソフトウェアの適用性を高めた.本設計方法の適用例では 従来手法のプログラム開発データに比べ (1)開発工数を30%削減できた (2)信頼性の尺度であるバグの発生率が 開発段階では約50% 商用開始後は約30?40%減少した (3)ドキュメント量が1/3に削減できたーなどの効果がみられた.
著者
北尾 直也 八幡 剛浩 松本 孝朗 岡松(小倉) 優子 大町 麻子 木村 和弘 斉藤 昌之
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.69, no.10, pp.1065-1068, 2007-10-25

脱共役蛋白質UCP1は熱産生組織である褐色脂肪に特異的に発現し,寒冷下における体温調節に寄与している.高原性ナキウサギ(Ochotona dauurica)はモンゴルや中国北方の寒冷高地帯に生息する小型の非冬眠動物であり,同環境への適応にUCP1の関与が示唆されている.本研究では,高原性ナキウサギのUCP1 cDNAをクローニングし,ヌクレオチド配列を決定した.予想されるアミノ酸配列は他の動物種のUCP1と高い相同性を示し,UCPファミリーに共通するいくつかの配列が確認された.また,様々な組織におけるUCP1 mRNAおよび蛋白質を調べたところ,肩甲骨間の皮下脂肪組織に発現が認められたが,他の部位の脂肪組織や心臓,骨格筋,脳などには発現が認められなかった.これらの結果は,高原性ナキウサギのUCP1が褐色脂肪組織での熱産生に貢献していることを示唆する.
著者
櫻木 耕史 松本 直司
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.590, pp.57-63, 2005
被引用文献数
5

This study aims to grasp the situation and the application to the Twilight school. It is one of the children's outside school clubs. We made an questionnaire to the present activities, using conditions of the facilities. Then as a result, we get following: (1) The Twilight school is effective and is excellent as the children's outside school clubs. (2) The effective activity depends on the management of the person in charge and the responsibility of him is important. (3) The application to another government becomes possible by that the factor of the person and the factor at the facilities are serviced.
著者
荒木 天外 竹村 憲太郎 怡土 順一 松本 吉央 高松 淳 小笠原 司
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.106-111, 2010 (Released:2012-01-25)
参考文献数
13
被引用文献数
2 2

In this research, a Universal map, which can be converted to individual maps for heterogeneous mobile robots, is proposed. A Universal map can be generated using our developed measurement robot, and it is composed of a textured 3D environment model. Therefore, every robot can use a Universal map as a common map, and it is utilized for various localization technologies such as view-based and LRF-based methods. In LRF-based localization, accurate localization is achieved using a specific map, which is generated from a Universal map. In a view-based approach, localization and navigation are achieved using rendered images. The use of a Universal map enables generation of these maps automatically. The effectiveness of this approach is confirmed through experiments.
著者
新小田 春美 姜 旻廷 松本 一弥 野口 ゆかり
出版者
九州大学
雑誌
九州大学医療技術短期大学部紀要 (ISSN:02862484)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.97-108, 2002-03
被引用文献数
2

本研究は, 産前7週から産後15週間にわたって連続した26名の母親と出生から14週齢の乳児12名および年齢・産歴をマッチングした12名の非妊産婦(対照群)の睡眠日誌の解析から, 産後の母親の睡眠・覚醒行動の変化や夜間における母親と乳児の覚醒行動の同期性および母親の夜間覚醒と疲労感との関連性などについて検討した。母親の夜間中途覚醒は, 乳児の授乳・排泄などの世話に殆どが費やされていた。出産後の早い週ほど夜間睡眠の乱れが大きく, 乳児の睡眠・覚醒リズムの発達に伴って母親の中途覚醒時間も暫時減少した。母親の頻回の中途覚醒は, 産後9週ないし10週頃まで持続するが, 産後14週に至っても対照群に比し有意に増大していた。入眠状態, 熟眠感, および起床気分の不調の訴え率は, 妊娠末期から産後7週ないし8週頃まで有意に高かった。疲労感の訴え率は, 産後10週頃まで高いレベルを維持しその後やや減少したが, 産後15週にいたっても対照群に比して有意に高かった。「頭が重い」, 「眠い」, 「目が疲れる」, 「肩がこる」の訴えスコアーは, 産後どの週にあっても有意に高かった。以上の結果から, 母親の夜間陸眠の乱れは, 産後の早い週ほど大きく, 乳児の睡眠・覚醒リズムの発達にともなって, 暫時改善されていくとは言え, 疲労は産後15週に至っても残存するものと推測された。
著者
松本 浩司
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.33, no.1, pp.42-47, 2009-02-01
被引用文献数
1

折りたたみ式ベビーカーで開閉時に乳幼児が手指を挟みあわや切断という事故が2件相次いで寄せられた.一方,現在販売されているベビーカーの多くはフレームが交差する構造などを有した折りたたみ式のものがほとんどであるが,その折りたたみ可動部分は手指挟み等の危害を招きやすい部分でもある.しかし,危険を回避できない乳幼児が手指をあわや切断するなどの重篤な事故が発生していることから,可能な限り製品自体の安全対策が必要と考えられた.そこで,構造を工夫することで手指挟みを防止できるのか,また,万が一挟まれても傷害の程度を軽減させることができるのかなどを調べ防止策を提案し公表した.なお,本報は,公表資料をもとに挟んだときの力に応じて変形する模擬指を用いて検討した部分を抜粋したものである.
著者
松本 明善
出版者
独立行政法人物質・材料研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2007

二ホウ化マグネシウム(MgB_2)は金属系超伝導体として高い超伝導転移温度や上部臨界磁界等のポテンシャルを有しているにもかかわらず、十分な臨界電流密度(J_c)特性が得られていなことについて粒間における電流経路有効断面積(コネクティビティ)を含めた観点から研究を行ってきた。MgB_2超伝導線材において高いJ_c特性を得るためには、線材内部にある空隙を極力少なくすることが重要である。このために我々は不純物添加等を行ってきた。不純物の中には芳香族化合物などのように、結晶粒界の結合性を改善し、コネクティビティーを向上させ、J_c特性を向上させるものが存在することがこれまでの研究でわかった。
著者
浜名 外喜男 松本 昌弘
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
実験社会心理学研究 (ISSN:03877973)
巻号頁・発行日
vol.33, no.2, pp.101-110, 1993
被引用文献数
2

The purpose of this action research was to examine the effects of experimentally induced changes of teaching behavior on students' classroom adjustment. Sixteen teachers ranging from fourth to sixth grades and their students served as subjects. In a preexperimental session, all of these students were asked to rate the teaching behavior of their teachers toward them, and their own classroom adjustment. Thereafter, 9 classes were selected as an experimental group, and 7 classes as a control. At the beginning of the experimental session, each teacher in an experimental class was asked to increase his/her interactive teaching behavior toward those students who had rated their teachers' behavior toward them poorly. These induced attempts were continued for three weeks. Teachers in the control classes received no such experimental manipulation. In the post-experimental session, all of the students in the 16 classes were again asked to rate teaching behavior of their teachers toward them, and their own classroom adjustment. The results showed that the classroom adjustment scores of target students in the experimental group became more favorable due to the changes in teaching behavior.
著者
磯崎 豊 鈴木 建太朗 松山 竜三 松本 尚之 長尾 泰考 石川 剛 原田 明子 松本 貴弘 谷 知子 辰巳 嘉英 今本 栄子 安藤 貴志 小山田 裕一
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.51, no.8, pp.1707-1713, 2009 (Released:2012-07-26)
参考文献数
13

クラミジア直腸炎を3例経験した.全例無症状で,便潜血反応陽性の精査の際に直腸の均一な半球状小隆起の集簇像という特徴的な内視鏡所見と直腸擦過診のChlamydia trachomatis抗原検索によって診断された.治療としてazithromycin hydrateを投与した.クラミジア直腸炎は自覚症状の乏しい症例も多く,画像所見から本疾患を疑い,適切な検査で診断・治療することが必要である.
著者
河合 淳子 松井 琴世 小原 依子 松本 和雄
出版者
関西学院大学
雑誌
臨床教育心理学研究
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.53-64, 2004-03-25
被引用文献数
2

本研究は,心臓音と笑い声という2つの音刺激を被験者に呈示することにより,音刺激聴取時における心身の変化を観察するものであった。それぞれの刺激による,生理反応と心理指標を用いて評定を行うことにより,生理的・心理的影響の変化を検討し,音刺激の精神生理学的研究を行うことを目的とした。本実験は,関西学院大学の学生28名,音楽系大学の学生5名(平均年齢21.4歳)を対象とした。実験では,効果音を集めたCDより選択した心臓音と,数人の人間が実際に笑っている声を録音した笑い声を呈示し,それぞれの音刺激聴取時と,安静(無音状態)時における生理反応を測定した。実験で測定されたのは脳波・筋電図・心拍・呼吸・皮膚電気反射・血圧であり,本研究では脳波・筋電図・心拍・呼吸・皮膚電気反射の指標を用いた。また,各音刺激呈示後に,音を聞いている時の気分について12項目,音を聞いている時の心身の自覚について10項目,音の印象について7項目の評定を求めた。各音刺激による生理反応について,中枢神経系である脳波においては,いずれの刺激においても,安静時と刺激呈示時の間でのα波の出現比率に有意な増加は認められなかったもの,β波には有意な増加が,θ波には有意な減少が認められた。呼吸は,安静時と心臓音呈示に有意な増加傾向が認められ,安静時と笑い声呈示には,有意な増加が認められた。皮膚電気反射では,安静と心臓音呈示に有意な減少が認められ,安静時と笑い声呈示には有意な増加が認められた。心拍では,安静時と心臓音呈示に有意な減少が,認められ,安静時と笑い声呈示にも有意な減少が認められた。頤筋においては,心臓音と安静時には有意な差は認められず,安静時と笑い声呈示に有意な増加が認められた。各音刺激においての心理評定では,音を聞いている時の気分においては,心臓音では,「気持ちがくつろぐ」の項目に最も高い値が得られ,笑い声では,「落ち着かない」「集中できない」の項目に高い値が得られた。音を聞いたときの心身の自覚においては,心臓音聴取時の自覚が快の自覚を表す項目に偏り,笑い声聴取時の自覚が不快の自覚を表す項目に偏った。また,心臓音呈示では,「眠くなる」の項目に最も高い値が得られ,笑い声呈示では,「目がさえる」の項目に最も高い値が得られた。音の印象においては,心臓音が,力強い,重々しい音であるという結果が得られ,笑い声が,騒々しく,鮮やかな音であるという結果が得られた。以上の生理指標と心理評定の結果により,心臓音は,α波の出現による「癒し」の効果は認められなかったものの,皮膚電気反射や頤筋の反応回数の減少による緊張感の減少や,音を聞いている時の気分で「気持ちがくつろぐ」という項目に高い値を示し,心身の自覚では快の項目に偏りを見せ,音の印象も肯定的なものであったことから,心身の安定を促し,気持ち落ち着かせる効果のある刺激であることが推察された。また,笑い声は,β波の増加やθ波の減少での覚醒水準の上昇や大脳の興奮性の高まりが顕著であり,頤筋や皮膚電気反射の反応回数増加で緊張感が増していることや,音を聞いている時の気分において「落ち着かない」「集中できない」に高い値をしめし,心身の自覚において不快の項目に偏りを見せ,音の印象においては,「騒々しい」に高い値を示していることから,緊張感を高める不快な刺激であったと推察される。本研究は,胎児が母親の胎内で聞く心臓の拍動音が,幼い子どもに対しても,「癒し」の効果が認められるのに対し,成人したものに対しても同様の効果が得られるのかを示唆したものであったが,今回の実験では,聴覚刺激のみでの実験であり,「癒し」の効果は認められなかった。しかし,心臓音には,心身の安定を促す効果が示唆されたことから,今後の研究において,実験の環境や,心臓音と共に何らかの刺激を与えることなどで,「癒し」の効果は認められると推察される。また,笑い声については,笑うことでの「癒し」の効果が報告されているが,笑い声という聴覚刺激のみでの効果に「癒し」の効果が認められるのかどうかを示唆したものであったが,笑い声刺激は被験者に不快感を与える結果となり,「癒し」の効果は得られなかった。また,笑い声を聞くことだけでは,被験者自身が笑うという効果は得られず,笑うことでの「癒し」の効果も得られなかった。以上のことより,「癒し」の効果は,単一の刺激のみで得られるものではなく,さまざまな要因が重なり合って得られるものであることが推察された。
著者
神谷 康雄 松本 武司 上原 有恒 小宮山 博
出版者
養賢堂
雑誌
畜産の研究 (ISSN:00093874)
巻号頁・発行日
vol.65, no.8, pp.859-869, 2011-08

中央政府から牧民レベルにまで踏み込んだ今回のゾド緊急調査の結果を要約すれば次のとおりである。ゾド被害が大きくなった要困は、①家畜頭数が急激に増加していた状況で2009年夏のガンで草地がダメージを受け、飼料が不足していたこと、②12月~2月まで異常な寒さが続き、さらに、これに追い打ちをかけるように4月に大雪が降ったこと、③政府は、ガンの状況をみて、乾草、補助飼料の準備の指令を出したが、政府の予算不足と家畜相場の下落による家畜の販売不振で牧民に資金が無く十分分な準備が出来なかったこと、④ウブルハンガイ県を例に取れば、オトル用地の確保、放牧地の緊急移動の計画は作成したが、ソムから牧民への的確な指令が行き届かなかったこと、⑤新規参入や若い層の牧民が増え、ゾドやガンに備える技量が不足していたことの5点に集約できる。ゾドの被害の主要因は寒冷など異常気象によるところが大きいが、その被害規模は、放牧地の適切な利用・管理による家畜の飼料の確保によってかなりの部分を軽減することができるであろう。現在、こうした自然災害を少しでも軽減し、モンゴル国の牧畜業の持続的発展を図るため、モンゴル国政府一丸となって対策に取り組んでいる。具体的な例としては、2010年5月に国会で承認された「モンゴル家畜国家プログラム」があげられる。これは、牧蓄業の市場経済の中における競争力を改善し、家畜の健康を図り、家畜の質を向上し、気候等のリスクを乗り越えられる牧畜業にすること、資産物の生産から販売の流通の流れを明確にすること等を内容とした畜産政策プログラムである。このプログラムの推進の柱は、①獣医や畜産技術者の行政サーどス能力向上を図ること、②国際市場でも競争力のある畜産物製品の生産・開発をすること、③牧畜業の主要な従事者である牧民を育成し、放牧地マネージメント能力の向上を図ることなどとなっている。
著者
松本 光吉 富永 明彦 斎藤 祐一 若林 始
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.233-236, 1993
被引用文献数
7

1954年, Nelsonらによって開発されたタービンが世に出て, 約40年の歳月が流れたが, 依然として, タービンによる歯質切削時の不快音, 象牙質切削時の麻酔の必要性は完壁には改善されていない.これらの諸問題を前進させるために開発された酸化アルミニウム粉末噴射法について, 噴射時のエナメル質, 象牙質切削面の形態学的変化を検討するために本実験を行った.被験歯として, 人の抜去歯20本を使用した.酸化アルミニウムの粉末粒子の径は約27μmと約50μのものを使用した.また, 噴射装置は, American Dental Laser社のKCP-2000を使用した.噴射速度はSlowが80 psi (5.6) kg/cm<SUB>2</SUB>, Mediumが120 psi (8.4kg/cm<SUB>2</SUB>), Highが160 psi (11.2kg/cm<SUB>2</SUB>) であった.切削法は粒子の大きさと切削速度を組み合わせて, 約1-2mmの距離より粉末を歯質表面に噴射した.なお, チップの直径は約0.34mmで, 噴射時に生じる切削片や粉末は付属のバキューム装置で吸引した.切削而の観察は, 肉眼的, 実体顕微鏡, 走査型電子顕微鏡によって行った.その結果, 酸化アルミニウムの粉末の粒子の大きさ, 切削速度の差によって, 切削面の形態学的差はなく, 滑沢な, 砂丘状を示した.酸化アルミニウムの粉末および切削歯質は噴射時に大方は飛散してバキュームにより吸引されたが, 一部は歯表面に残存していた.特に象死質では, 躯細管内に圧入されていた.歯融象頒の切削時に, 周囲と明らかに区別される物質が観察された.なお, 以上の観察所見には炭化や溶解.嫉凝固などの変化は観察されず歯質の本来の色調を示していた.