著者
小林 誠 渡邊 定元
出版者
日本森林学会
雑誌
日本林学会大会発表データベース 第114回 日本林学会大会
巻号頁・発行日
pp.98, 2003 (Released:2003-03-31)
参考文献数
3

ブナは冷温帯の標徴種とされ、その分布の北限は北海道南部黒松内低地帯に存在する。北海道における冷温帯領域と、冷温帯の標徴種であるブナの北限が一致しない事実は、現在に至るまで様々な説が提唱されてきているが、いまだ定説は存在しない。現在ブナ林の最北限は「ツバメの沢ブナ保護林」であり、黒松内低地帯を越え、孤立した標高約600mに成立するブナ純林である。ツバメの沢ブナ林における林分構造の調査(真山ら1988)は、1986年以降行われておらず、本研究では1986年の調査資料を基に、ツバメの沢ブナ林における林分構造、およびその16年間の推移変化を解析することを目的とした。また、ブナ個体群の動態から、急傾斜地における齢構造の連続性、ブナの分布北限域における樹齢の短命化・今後の動向を検討した。 調査地は、ブナ林分布の最北限に位置する、北海道蘭越町ツバメの沢ブナ保護林である。尾根部にはミズナラ林、北西斜面の急傾斜地にはブナ林が成立し、地形に対応した優占樹種の交代がみられる。調査は2002年6月および8月に、1986年に標高600mの等高線上に設定された水平推移帯状区(10m×190m)を使用した毎木調査、また保護林内におけるブナの胸高直径の再測を行った。これらの調査は、北海道上川支庁真山良氏からご提供いただいた1986年当時の調査資料を基に、帯状区の再現およびブナ各個体の識別を行った。また階層構造の解析には、出現した樹木の樹高を、当該群落における最高樹高の相対値であらわし、それを基に群落を5階層に分ける、渡邊(1985)の順位係数を用いたSynusiaの解析を行った。 水平推移帯状区において、北海道における林冠層構成種(M1-Sy構成種(渡邊1985))の階層分布をみると、尾根部に成立するミズナラ林においては、ミズナラ、ダケカンバが林冠層を獲得し、ブナは中間層までしか階層をすすめていなかった。しかし、ブナ林が成立する北西斜面の急傾斜地に向かうほど、ブナが林冠層に出現し、かつ各階層に連続的に存在し、後継木も多数存在していた。 またブナの直径階分布は、小径木が多数存在し、各直径階に連続的に存在するL字型分布を示したのに対し、ミズナラは小径木をほとんど欠き、ある直径階にモードを持つ分布型を示した。このように、急傾斜地においてブナのサイズ構造は連続し、連続して更新していることが示唆された。またブナは個体数が他種に比べ圧倒的に多いが、胸高断面積合計(BA)がミズナラの約40%程だったことからも、ブナの小径木の多さが伺えた。また、直径階分布の16年間の変化として、ブナは26個体が新規進界個体だったのに対し、ミズナラは1個体のみで、ブナ個体群の変化は著しかった。 ツバメの沢ブナ林における16年間のブナ個体群の動態として、直径成長量の頻度分布は、平均5.205cm、モード5.5cm、歪度0.162と、正規分布に似た分布型を示した。本州における同様の調査によると、分布はL字型分布をとることから(村井ら編1991)、直径成長量のモードは分布の北限域において高いほうへとシフトしていることが明らかとなり、相対的に成長の良い個体が多いことが伺えた。また、各直径階における成長量の平均値を表すと、ほとんどが5cm付近にあり、北限域におけるブナの肥大成長は、生育期間を通じてほぼ一定に持続されることが明らかになった。このことから、急傾斜地におけるブナのサイズ構造の連続を、齢構造の連続と置き換えることが可能となり、μ+1σ、μ、μ-1σの3つの成長パターンにおいて、樹齢の推定を試みた。その結果、枯死木のほとんどが胸高直径70から80cmだったことから、樹齢190から250年程度で枯死していくことが推定された。このことから、ブナの最高樹齢は、本州中部の分布の中心に比べ、北限域において低下していることが示唆された。 このようなツバメの沢ブナ林の様態から、更新阻害などブナにとっての生育難は見受けられず、またブナは北西斜面の急傾斜地において、個体群の再生産を持続的に行っていた。連続的な更新に起因する個体群の拡大は、ツバメの沢ブナ林域での分布拡大の可能性を示唆した。
著者
小林 誠 最上 紀美子 岸 博子 佐藤 正史
出版者
山口大学
雑誌
萌芽研究
巻号頁・発行日
2002

脳血管攣縮は、くも膜下出血後の重篤な合併症であり、その原因として、Rhoキナーゼによる血管平滑筋のCa2+非依存性の異常収縮が注目されている。従って、この血管の異常収縮を引き起こすメカニメムとその原因因子を解明する事によって、脳血管攣縮の根本的な予防法や治療法を開発することが、国民衛生上の緊急かつ最重要課題である。本研究では、脳血管において、Ca2+非依存性の異常収縮を制御する細胞内シグナル伝達メカニズムを明らかにし、そのシグナル経路を特異的に阻害する因子を同定する事を目的とする。初年度は、脳血管異常収縮の原因分手として細胞膜スフィンゴ脂質の代謝産物であるスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を同定し、そのシグナル経路は、RhQキナーゼを介するものであるが、従来言われていたG蛋白質やPKCとは独立した新規のシグナル経路である事を見出した。本年度は、下記のような結果を得た。1)脳血管において、エイコサペンタエン酸(EPA)は、SPCによるCa2+非依存性収縮を著明に抑制したが、Ca2+依存性の正常収縮や細胞質Ca2+濃度レベルには全く影響しなかった。2)SPCは、Srcファミリーチロシンキナーゼを活性化させ、さらにRhoキナーゼを活性化させることによって、脳血管に異常収縮を引き起こしていた。3)SPCは、SrcファミリーチロシンキナーゼおよびRhoキナーゼを細胞質から細胞膜へ移動させた。4)EPAは、Srcファミリーチロシンキナーゼの細胞膜への移動を阻止した。これらの成果により、EPAは、Ca2+シグナル系および血管の正常なCa2+依存性収縮には影響を与える事無く、Srcファミリーチロシンキナーゼの機能を阻害する事によって、特異的に脳血管の異常収縮を阻害することがわかった。
著者
小林 誠 岸 博子 川道 穂津美 加治屋 勝子
出版者
山口大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2005

血管病は合計すると我国死因の第二位であり、また、突然死の主要な原因となる難病である。申請者らは、血管病の主因となる血管異常収縮の原因分子としてスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)を発見した。本研究では、SPCによって引き起こされる血管の異常収縮に関わる新規の原因シグナル分子を同定し、その制御機構について明らかにすることを目的とした。その結果、以下の事を明らかにした。1.ヒト血管においては,SPCによる血管異常収縮は,コレステロール依存性であることが判明した。さらに,コレステロールが蓄積する膜ラフトが重要である事がわかった。この研究成果は,Circulation Research誌の編集者から,コレステロールと血管異常収縮の直接の関連性を初めて証明した報告として,Editorial Sectionで特別に紹介され,絶賛された。 2.膜ラフトに局在するFynチロシンキナーゼの重要性について検討した。スキンド血管にFynのリコンビナント蛋白(ワイルド・タイプ、ドミナント・アクティブ体,ドミナント・ネガティブ体)を導入する事により,Fynが,SPCによる血管異常収縮において重要な役割を果たしている事が分かった。3.従来のCa2+による収縮現象のみならず,Rhoキナーゼを介したCa2+によらない収縮現象をin vitro motility assay 系によって証明する事ができた。4.膜ラフトモデル膜として,ハイブリッドリポソームを作成することに成功した。これを応用して,SPC,EPAが,濃度依存性にラフトモデル膜に結合する事を明らかにした。5.ヒト血管から高純度のラフト分画を精製することに成功した。さらに機能的プロテオミクスによりヒト血管の膜ラフトに局在する新規蛋白を複数個同定した。6.以上の異常収縮のシグナル伝達経路を阻止できる新規の候補分子を複数個同定した。
著者
川道 穂津美 岸 博子 加治屋 勝子 高田 雄一 小林 誠
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.133, no.3, pp.124-129, 2009 (Released:2009-03-13)
参考文献数
17
被引用文献数
1

狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患やくも膜下出血後の脳血管攣縮などの疾患は,合計すると我が国の死因の第2位を占める.これらの血管病の原因は2つあり,一つは,長い年月を掛けて発症する動脈硬化であり,もう一つは,急性発症の血管攣縮,すなわち,血管平滑筋の異常収縮である.この血管異常収縮は,血圧維持を担っている細胞質Ca2+濃度依存性の正常収縮とは異なり,Rhoキナーゼを介する血管収縮のCa2+感受性増強(Ca2+-sensitization)によることが知られているが,その上流の分子メカニズムについては不明な点が多い.本稿では,この血管異常収縮の原因分子の1つとして見出されたスフィンゴシルホスホリルコリン(SPC)が引き起こすSPC/Srcファミリーチロシンキナーゼ/Rhoキナーゼ経路について解説する.SPCとRhoキナーゼを仲介する分子として同定されたSrcファミリーチロシンキナーゼに属する分子群の中でも,Fynが血管異常収縮に関与しているという直接的証拠を蓄積してきたので,本稿では,これらの直接的証拠を得た方法と結果について解説する.さらに,Fynを標的にしてその機能を阻害する事によって,Ca2+依存性の血管収縮には影響を与えず,SPCが引き起こす血管異常収縮のみを選択的に抑制する分子標的治療薬として同定されたエイコサペンタエン酸(EPA)の効果について記述する.
著者
林 誠
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.10, no.2, pp.16-28, 2008

時間の流れの中で行為が産出されるとき,進行中の行為は常に「次に何が起こるか」を予示・予告する性質を持っており,そのような性質を「投射」と呼ぶ.投射は複数の人間が互いの行為を調整し,相互行為を協同で構築するための資源を提供する.本稿では相互行為の資源としての投射のメカニズムを文法構造との関連で考察する.本稿の出発点となるのは,発話の統語的軌跡の投射に関して,日本語文法の後置的特性のゆえに,英語と比べて日本語では投射が比較的「遅れた」形で達成されるという先行研究の主張である.この指摘を背景として,本稿では日本語会話でよく見られる,指示詞「あれ」を含んだ発話フォーマットに着目し,そのフォーマットが日本語の「遅れた投射可能性」への対処の手だてとして用いられることを明らかにする.すなわち,文法構造に基づく一般的な「投射の遅れ」の傾向に対処する一つの方策として,日本語話者にも「早期の投射」を実現するターン構築上の戦略的手段が存在することを示す.
著者
錦織 達啓 伊藤 祥子 辻 英樹 保高 徹生 林 誠二
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.63-69, 2015-02-01 (Released:2015-04-07)
参考文献数
32
被引用文献数
4 10

林床からの137Cs流出の起きやすさを知るため,福島県内の林床被覆状況が異なる四つの林分を対象に,斜度37~39°の斜面に3 m2の試験プロットを設け,2013年5月から10月の145日間,表面流出水に含まれる懸濁態および溶存態137Csを観測した。137Csは最大でも土壌蓄積量の1.1%しか移動しなかったが,その移動量はプロット間で最大10倍異なり,ヒノキ林で最も多く,次いで落葉広葉樹林,アカマツ林,スギ林となった。移動した137Csの96%以上が懸濁態であり,土壌侵食量は下層植生や有機物層に乏しいプロットで多かったことから,林床被覆量が137Cs移動量に強く影響したと推察された。表面流出水と近傍の渓流水中の懸濁物質の双方において,137Cs濃度と有機物量の間に正の相関が確認された。これにより,渓流水中の137Csの一部が林床起源であること,その林床起源の137Csは主に有機物層に由来していたことが示唆された。ヒノキ林は林床被覆に乏しい傾向にあるが,福島県には少ないため,最も広く分布する広葉樹林の林床被覆状況が森林からの137Cs流出に大きく影響すると考えられた。
著者
奥津 朋彦 小林 誠 小出 容子 高田 貴虎 滝口 尚 山本 松男
出版者
Showa University Dental Society
雑誌
昭和歯学会雑誌 (ISSN:0285922X)
巻号頁・発行日
vol.27, no.3, pp.165-172, 2007-09-30
被引用文献数
1

近年, 培養歯根膜細胞やそこから分取した組織幹細胞の歯周組織再生への応用は, より確実な歯周組織再生療法を確立するための一つの戦略であると考えられている.しかし, この細胞集団はヘテロであり, 現時点では種々の問葉系細胞の前駆細胞や問葉系幹細胞がどの程度存在するかを直接的に知ることはできない.そこで本研究では, このような細胞療法を確実なものにするための第一段階として, 培養ヒト歯根膜細胞 (HPL cells) の骨, 脂肪, 軟骨への分化能を, コントロールとして使用したヒト骨髄問葉系幹細胞との比較において定性的に評価した.その結果, HPL cells中には骨芽細胞様細胞が豊富に存在しており, また脂肪細胞前駆細胞も存在するもののその数は著しく少ないこと, 一方, 軟骨細胞前駆細胞の存在の可能性は著しく低いことが明らかになった.さらに, 脂肪細胞前駆細胞はHPL cellsから分取したalkaline phosphatase陽性細胞率の低い細胞集団に多く存在していた.
著者
中井 滋 政金 生人 秋葉 隆 井関 邦敏 渡邊 有三 伊丹 儀友 木全 直樹 重松 隆 篠田 俊雄 勝二 達也 庄司 哲雄 鈴木 一之 土田 健司 中元 秀友 濱野 高行 丸林 誠二 守田 治 両角 國男 山縣 邦弘 山下 明泰 若井 建志 和田 篤志 椿原 美治
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.1, pp.1-30, 2007-01-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
12
被引用文献数
7 7

2005年末の統計調査は全国の3,985施設を対象に実施され, 3,940施設 (98.87%) から回答を回収した. 2005年末のわが国の透析人口は257,765人であり, 昨年末に比べて9,599名 (3.87%) の増加であった. 人口百万人あたりの患者数は2,017.6人である. 2004年末から2005年末までの1年間の粗死亡率は9.5%であった. 透析導入症例の平均年齢は66.2歳, 透析人口全体の平均年齢は63.9歳であった. 透析導入症例の原疾患毎のパーセンテージでは, 糖尿病性腎症が42.0%, 慢性糸球体腎炎は27.3%であった.透析患者全体の血清フェリチン濃度の平均 (±S.D.) は191 (±329) ng/mLであった. 血液透析患者の各種降圧薬の使用状況では, カルシウム拮抗薬が50.3%に, アンギオテンシン変換酵素阻害薬が11.5%に, アンギオテンシンII受容体拮抗薬が33.9%に投与されていた. 腹膜透析患者の33.4%が自動腹膜灌流装置を使用していた. また7.3%の患者は日中のみ, 15.0%の患者が夜間のみの治療を行っていた. 腹膜透析患者の37.2%がイコデキストリン液を使用していた. 腹膜透析患者の透析液総使用量の平均は7.43 (±2.52) リットル/日, 除水量の平均は0.81 (±0.60) リットル/日であった. 腹膜平衡試験は67%の患者において実施されており, D/P比の平均は0.65 (±0.13) であった. 腹膜透析患者の年間腹膜炎発症率は19.7%であった. 腹膜透析治療状況に回答のあった126,040人中, 676人 (0.7%) に被嚢性腹膜硬化症の既往があり, 66人 (0.1%) は被嚢性腹膜硬化症を現在治療中であった.2003年の透析人口の平均余命を, 男女の各年齢毎に算定した. その結果, 透析人口の平均余命は, 同性同年齢の一般人口平均余命のおよそ4割から6割であることが示された.
著者
宇仁 茂彦 松林 誠 池田 英一 鈴木 義孝
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
The journal of veterinary medical science (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.s・v, 385-388, 2003-03-25
被引用文献数
3 10

福井,滋賀,岐阜の3県において,捕獲されたニホンツキノワグマの各種内部臓器(肝臓,腎臓,心臓,肺,脾臓,リンパ節,皮膚)の組織学的検索を行った.その結果,18頭すべての肺の全葉の肺胞壁にHepatozoon sp.の未成熟および成熟メロントを見いだした.また,病理学的所見として,メロント,メロゾイトおよび虫体を包含する食細胞結節の周回に炎症性細胞潤滑は見られなかったが,崩壊過程を示す細胞,虫体および結節の周りには炎症性細胞浸潤を見いだした.クマにおけるヘパトゾーン症の最初の報告である.
著者
林 誠 安田 孝美 横井 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. MVE, マルチメディア・仮想環境基礎
巻号頁・発行日
vol.96, no.605, pp.1-8, 1997-03-19
参考文献数
9
被引用文献数
7

本研究では、天文現象の学習をインターネット上でインタラクティブに行うことができる天文教育システムを開発した。具体的事例として、1997年4月に太陽に最も近づくヘール・ボップ彗星に注目し、科学的根拠に基づいたCGシミュレーションを行った。これによって得られるCG画像、数値データをCGIやJava、JavaScriptといった技術を用いることで、インタラクティブにWWW上で利用することを可能とした。このシステムでは、リアルタイムでCG画像、数値データを作成することができるため、利用者の個別の要求に対応することが可能である。またビデオ会議システムとの併用による遠隔教育の実験を行い、その可能性について検討した。
著者
大城 望史 八幡 浩 春田 直樹 丹治 英裕 篠崎 勝則 内田 一徳 杉野 圭三 丸林 誠二 浅原 利正 土肥 雪彦
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.32, no.10, pp.2350-2354, 1999-10-01
参考文献数
16
被引用文献数
7

症例は56歳の男性, 嚥下困難を主訴に前医を受診し, 食道癌と診断され当科に入院した. 入院時白血球数は19,400/mm^3と高値であったが, ほかに炎症所見は認めなかった. 1998年6月9日に食道亜全摘術を施行, 病理組織学的診断はいわゆる癌肉腫であり, mp, n(-), Pl_0, M_0, stage Iであった. 術後白血球数はすみやかに低下し, 血中G-CSF値は術前109pg/mlと高値であったが, 術後は21pg/ml, 11pg/mlと低下し, 抗G-CSF抗体を用いた免疫染色でも陽性であり, G-CSF産生腫瘍と診断した. G-CSF産生食道癌肉腫は本邦2例目と極めてまれである. G-CSF産生腫瘍は予後不良であるが, 自験例は8か月経過した現在も再発の兆候を認めていない.
著者
若林 誠一郎
巻号頁・発行日
2012

科学研究費助成事業(科学研究費補助金)研究成果報告書:基盤研究(C)2008-2011
著者
大森 基司 館林 誠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IT, 情報理論
巻号頁・発行日
vol.94, no.295, pp.25-32, 1994-10-20
被引用文献数
1

ネットワークを用いた通信販売システムにおいてユーザーのプライバシー保護を実現できる1つのモデルを提案する.目的は,「誰が何を買ったか」をわからないようにすることである.本モデルでは販売システム側に3つの部門を設ける.そのうちの任意2部門が結託しても「誰が何を買ったか」わからない.商品や価格に関するユーザとシステムの間のトラブルの解決策も示す.
著者
田中 伸治 白石 智良 小宮 粋史 花房 比佐友 林 誠司 平井 洋 桑原 雅夫
出版者
東京大学生産技術研究所
雑誌
生産研究 (ISSN:0037105X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.259-262, 2012 (Released:2012-04-10)
参考文献数
3
被引用文献数
1

交通シミュレーションを利用してCO2排出量等を推計する際には, 国内外で異なるモデルが使用される可能性が高いため, モデル検証の手続きを国際的に共通化することが重要である.そこで本プロジェクトでは, 交通シミュレーションモデルおよびCO2排出量モデルの検証の枠組みを提案し, 国際ワークショップを通じた合意形成のための議論を行っている.また, この検証に利用可能な実交通データを取得するため現地観測調査を行い, 得られたデータを利用して検証の枠組みの妥当性を確認するための試行検証を実施している.