著者
桑林 賢治
出版者
史学研究会 (京都大学大学院文学研究科内)
雑誌
史林 (ISSN:03869369)
巻号頁・発行日
vol.100, no.3, pp.403-426, 2017-05

In 2005, the Japanese government expanded its list of cultural properties to include cultural landscapes (bunkateki keikan 文化的景観). Medieval manors in particular were evaluated and selected for conservation based on their historical significance. Human geographers have pointed out that evaluations on the basis of heritage are often limited to or exclude specific periods of history. For example, manorial-landscape evaluations tend to focus primarily on the era in which the manor was functional rather than the present, and neglect how the landscape has been transformed over time. Accordingly, spatial-scale evaluation is also necessary to understand how local residents perceive a cultural landscape and participate in its formation and conservation. Inasmuch as residents'perceptions do not necessarily coincide with the official evaluation, conservation would hinge on both largescale assessment and local-scale considerations. Given the perspective described above, the evaluation of manorial cultural landscapes must be executed in connection with historical views as well as spatial issues. Hence, this paper considers the inherent problems in conservation as a result of conflict between historical evaluation and current local understandings of manorial landscapes. The study area, Ōgi 大木 district, Izumisano City, Osaka Prefecture, was home to the medieval manor Hineno-shō 日根荘, owned by the Kujō family, and it was designated a national historic site in 1998. Later, in 2013, Ōgi district was registered as "The Rural Landscape of Hineno-shō Ōgi" (nōson keikan 農村景観). The findings are summarized as follows: First, there is a gap between the historical evaluation and the residents'consciousness regarding the history represented by the landscape of the Ōgi district. The former emphasizes the landscape's connection with the period of the functioning of Hineno-shō and ignores other periods, whereas the latter dismisses the landscape's relation to one particular time period, and focuses on it a more ambiguous unspecified past. Furthermore, efforts to strengthen the historical value of the area by unifying the cultural landscape with the national historic site can be seen in Izumisano's official actions. In contrast, the activities of local residents do not demonstrate the same appreciation for the landscape's history. In other words, the different evaluations applied in accordance with each position are manifest in the disparate claims of the two groups. Under the circumstances, most residents have a positive view of the registration and conservation of the landscape as a cultural property. Such an acceptance, however, is formulated with the understanding that historical evaluations and residents'perceptions are not in accord. There is a possibility that conflict in the Ōgi district over conservation and utilization of the landscape will arise as residents gradually acknowledge the historical significance of Hineno-shō. This study illustrates the difficulty in reaching consensus due to discordant views regarding conservation and utilization of manorial cultural landscapes.
著者
横林 賢一
出版者
一般社団法人 日本プライマリ・ケア連合学会
雑誌
日本プライマリ・ケア連合学会誌 (ISSN:21852928)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.268-272, 2011 (Released:2015-05-30)
参考文献数
6

・わが国における65歳以上の認知症の有病率は約8%と高く, 今後も増加すると推定されている・プライマリケアセッティングにおいて, 通常の病歴聴取と身体診察のみでは50%以上の認知症患者が見逃されていると報告されている・認知症を評価する際には, 中核症状・BPSDの評価に加え, ADL・IADL・AADLやサポート状況等も確認する必要がある・認知症の診断では, 認知症と鑑別すべき病態の除外, 治療可能な認知症の診断と, 認知症を呈する頻度の高い疾患 (アルツハイマー病, 脳血管性認知症, Lewy小体型認知症) の特徴について知っておくことが大切である・治療の際, 薬物療法を開始する前に, 患者の「その人らしさpersonhood」を維持するケアやリハビリテーションの介入を考慮しなければならない・患者のみならず, 家族などの介護者のケア・サポートも並行して行なう必要がある
著者
小池 伸介 葛西 真輔 後藤 優介 山崎 晃司 古林 賢恒
出版者
日本森林学会
雑誌
日本森林学会誌 (ISSN:13498509)
巻号頁・発行日
vol.88, no.4, pp.279-285, 2006-08-01 (Released:2008-01-11)
参考文献数
41
被引用文献数
7 7

ツキノワグマの糞に飛来する食糞性コガネムシ (以下糞虫) を山梨県芦川村および東京都奥多摩町で調査した。18種が確認された。いずれも広域に分布し, 他の動物の糞でも確認されている種であった。種により季節消長は異なり, 5種は春から秋にかけて成虫が出現したが, 13種は特定の季節のみ成虫の出現が確認された。日周消長は, トラップで採集された10種のうち5種は昼間中心に, 4種は夜間中心に飛来する種, 1種は季節的に活動時間帯が変化する種であった。糞虫の活動場所は, 8種はdwellerで, 糞の表面および糞の内部でのみ確認された。10種はtunnellerで, 糞下部の土壌内からも糞とともに確認された。Tunnellerは, 産卵期以外も, 糞とともに土壌内から確認された。ツキノワグマの糞に数多く飛来した, コブマルエンマコガネ, クロマルエンマコガネ, マエカドコエンマコガネはいずれも, 昼間中心に飛来し, tunnellerタイプの糞虫であった。
著者
柴田 雅聡 生形 徹 寺林 賢司 モロ アレサンドロ 梅田 和昇
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.32, no.6, pp.558-565, 2014 (Released:2014-08-15)
参考文献数
24

In this paper, a human detection method that combines information of segmented range image and human detectors based on image local feature is proposed. The method uses a stereo vision system called Subtraction Stereo, which extracts foreground information and range image. Range image is segmented for every object by Mean Shift Clustering. The proposed method reduces processing time and false detection by limiting the search range to the object. Joint HOG feature is used for human detection and reduces undetected human by integration of detection windows in consideration of occulusion. The proposed method is evaluated by experiments comparing with the method using the conventional Joint HOG feature.
著者
松林 賢司
出版者
金沢工業大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2016-04-01

①雪の輸送中の融解挙動の実験による評価:雪の長期輸送中の融解挙動は経済性の試算に必要なデータである為に独自の実験設備を製作してその評価を実施した。結果は良好で赤南半球の想定陸揚港であるシドニー付近まで輸送するのにかかる2週間の融解による損失は5%以内であり経済性の試算が可能な範囲であることが分かった。②雪資源の陸揚港と需要者の技術的、及び経済的な評価とその最適化:積出港の研究手法と同様に陸揚港としての適性が確認された3港に関してフィールド調査を実施した。バンコック港とシドニー港に関しては現地訪問の上、自治体、並びに前年度に予め協力先として選定された研究機関との意見交換を経て最適港候補の技術的、並びに経済的な評価(使用可能期間、雪置場面積、内陸への雪資源輸送利便性、陸揚設備、雪輸出に関する法規制、自治体の協力体制等)を実施した。本件に関しても関係する専門家として商社、船会社、港湾業務委託会社等に手続きと経済的な観点よりヒアリングを実施した。需要者に関しては大規模な雪資源の冷熱利用を前提として地域冷房施設である北海道ガスや新千歳空港も現地補門の上、調査研究した。並びに冷蔵倉庫を想定の上、陸揚港としての適性が高い地区の需要者候補を政府、及び自治体資料により調査の上、リストアップの後、有望先のフィールド調査を現地研究者の協力も得て実施した。
著者
新谷 好正 伊東 雅基 井戸坂 弘之 中林 賢一 卯月 みつる 新谷 知久 早瀬 知 馬渕 正二
出版者
日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.11, pp.889-896, 2014 (Released:2014-11-25)
参考文献数
36
被引用文献数
1

脳動脈瘤の開頭手術において, クリッピングのために瘤の減圧を要する場面に時折遭遇するが, 母血管の一時遮断が困難な例がみられる. そのような例に房室伝導を強力に抑制する作用をもつadenosine triphosphate (ATP) の急速静注による短時間の循環停止 (transient cardiac arrest : TCA) 法が有効である. 経験した全例において短時間の心停止に伴う動脈瘤の著明な減圧が得られ, 安全なクリッピングに大きく寄与した. 合併症はみられなかった. TCA法に習熟した麻酔科医との緊密な連携が不可欠であるが, 本法は母血管の一時遮断に並んで考慮すべききわめて有用な方法である.
著者
鈴木 哲也 熊谷 宏 内田 達郎 吉富 信幸 渡邊 竜登美 石鍋 聡 水口 俊介 関田 俊明 平野 滋三 宮下 健吾 小林 賢一 長尾 正憲
出版者
社団法人 日本補綴歯科学会
雑誌
日本補綴歯科学会雑誌 (ISSN:03895386)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.476-484, 1994-04-01 (Released:2010-08-10)
参考文献数
40
被引用文献数
2 4

The distribution of occlusal support of 366 aged patients of over 70 years was surveyed and analyzed in this study. Their masticatory abilities were also evaluated by the questionnaire on the masticatory aspects of 20 kinds of foods, and their maximum occlusal forces were measured with the pressure sensitive foil. The relations among masticatory ability, maximum occlusal forces and the distribution of occlusal support were analyzed.The results were as follows.1. 52.8% of the upper and lower dentulous patients had less than 5 occlusal tooth contacts.2. Posterior tooth contacts were less than anterior ones, and even in posterior areas, occlusal contacts tended to be less from the second molar to the first premolar.3. 61.2% of the upper and lower dentulous patients had no occlusal support or only unilateral occlusal support. It is evident that occlusal support is extremely ill-conditioned in elderly patients.4. It was found that if the aged have more occlusal tooth contacts and wider occlusal support areas, they would show better masticatory ability and greater maximum occlusal forces.5. In thier initial visits to our clinic they had poor occlusal support with their dentures.6. It is suggested that occlusal tooth contacts and occlusal support areas should be important for maintaining a healthy oral function in elderly people.
著者
内野 博之 長島 史明 小林 賢礼 長倉 知輝 藤田 陽介 荻原 幸彦
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.457-474, 2017-07-15 (Released:2017-08-26)
参考文献数
74
被引用文献数
2

脳保護の主な目的は,術中・術後に脳の機能を保護することである.日々の臨床では,心肺バイパス手術,頚動脈内膜切除術(CEA),くも膜下出血の脳動脈瘤に対するクリッピング,脳卒中,外傷性脳損傷,心停止後症候群(PCAS)等々の管理に対しての注意を要する.われわれの管理が適切でない場合,患者の予後に悪影響を及ぼすことになる.これらの一次的な病態生理の類似性は,一過性の脳虚血を示すことである.神経集中治療の目的は,初期の病態生理に伴う脳損傷の進行を防ぐことである.急性期の脳保護を行うには,①心肺蘇生の後に早急に脳血流を回復することと②脳障害の進行を防ぐことである.心停止から蘇生される患者治療の主な目標は,心停止後症候群(PCAS)の予防である.現在,院外心停止患者や周産期脳虚血に対する低体温療法が神経学的予後を改善するというエビデンスが得られて来ている.本稿では,神経麻酔および神経集中治療における脳保護に焦点を当てて述べるとともに,麻酔薬の神経保護作用および神経毒性作用のメカニズムについても議論したい.
著者
林 賢紀 瀬尾 崇一郎 阪口 哲男
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.26, no.1, pp.11-28, 2016

Web技術によるデータ公開の方法としてLinked Open Data(LOD)が注目されている.しかし,既存のWeb上の情報資源の多くは人が読む利用形態に適したデータ構造のままであるなど,構造化が不十分であることが指摘されている.本研究においては,異なる性質の要素を持つ複合的な情報資源に対し,相互運用性を持ちかつ情報損失を起さずにLODを適用する方法について検討を行った.この結果,対象となる情報資源に記載されている情報を元にして,文書の構造や使用されている語彙などを分析することにより,LODへの再構成を効率的に行うことが可能であることを明らかにした.また,関連付けが可能な他の情報資源を用いて不足している情報を補うことを前提とした構造化により,人が読む利用形態に適したデータ構造に基づいていても適切なLOD の適用を可能とし利活用しやすくするための一手法を示した.
著者
林 賢紀
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
情報の科学と技術 (ISSN:09133801)
巻号頁・発行日
vol.65, no.10, pp.424-429, 2015-10-01

リンクリゾルバのアクセスログを解析することで,よく利用されるサービスを把握でき,利用者の行動把握とサービスの改善に繋げることが可能である。本稿では,リンクリゾルバのログ分析による業務改善に資するため,SFXを例としたログ解析の手法を示した。具体的には,SFXが有する統計出力機能を使用して,利用者がどのような文献データベースから文献の入手を試みているか,また特定の文献データベースの検索結果から入手を試みたがオンラインでは入手できなかった雑誌タイトルの集計などを行った。これにより,電子ジャーナルの利用統計だけでは把握できない情報資源を連携させた利用の様態を明らかにし,業務改善に資することができる。
著者
二木 功治 西尾 和三 會田 信治 岡林 賢 中野 泰 竜崎 崇和 大曽根 康夫 鹿住 祐子
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.100, no.12, pp.3637-3639, 2011 (Released:2013-04-11)
参考文献数
5
被引用文献数
3 7

症例は64歳,女性.咳嗽を主訴に近医受診.胸部CT上,多発小結節影および気管支拡張像が認められ,当院紹介受診した.気管支洗浄液にて抗酸菌陽性となり16S rRNAおよびrpoB遺伝子の相同性からMycobacteruim shinjukuenseと同定された.本菌株はTranscription Reverse-transcription Concerted method(TRC法)で結核菌群偽陽性を示した.クラリスロマイシン,リファンピシン,エタンブトール3剤併用療法を開始し,画像所見および自覚症状の改善が得られた.
著者
小林 賢知
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. US, 超音波
巻号頁・発行日
vol.95, no.478, pp.53-60, 1996-01-25
被引用文献数
3

東京ガスの検針業務は, 検針員が各メータの読み値をハンドヘルドコンピュータに入力している. また, 通信機能のついた, マイコン内蔵ガスメータが開発され,ー部のお客様で電話回線を介して, 自動検針及び付加サービスが行われはじめた. しかし, 既築の集合住宅では, パイプシャフト内に設置されるガスメータから電話回線までの配線工事が困難な例が多く, 対策を検討している. 本論文では, 集合住宅の自動検針及び付加サービスにガス管内音響通信を利用できるかを, 管内の伝搬音の減衰, 管内の騒音レベル, 管内に放出できる音圧から検討した. その結果, 自動検針については15階建て8竪管程度の大規模集合住宅までは, 基地局1力所で1棟の全てのガスメータをカバーできる可能性があることを明らかにした. 即時性の必要な付加サービスについても, 設置場所を工夫すれば利用できる可能性があることを明らかにした.
著者
小林 賢一 大鎌広 藤原 祥隆
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.23, pp.149-154, 2000-03-02
被引用文献数
2

メッセージプーリング方式のPCクラスタを用いた分散処理システム"Clop"における、プログラム開発を支援するためのリアルタイムログシステムについて論じている。PCクラスタにおけるプログラム開発では、全計算サーバのイベント(計算開始、データ送信等)の実時間上の正確な順序を知り、かつそのイベントの種類と時刻の記録(イベントログ)を得ることが必要となる。しかしながら、分散処理している複数計算機は時刻が一致しているとは限らない。よって、イベントログを正確な順序で得ることは困難である。本稿では、ユーザのプログラム実行中に、計算機間の時刻のずれを計測することで、イベントログの発生時刻を補正できることが示されている。This paper presents a real-time logging system to develop programs on "Clop". "Clop" is a distributed computing system of Message-Pooling for a PC cluster. For developing the programs on the PC cluster, it is required of obtaining the exact sequence of events(starting of computation, sending of the data, etc.) and recording event log that includes type and time-stamp of the occurred events. However, each clock of the computers on the PC cluster is not always equivalent to others. Therefore, it is difficult to obtain the event log with the exact sequence. It is shown to adjust the time-stamps in the event logs by the measuring offset of each of the computers during the execution of a user program.