著者
平野 康次郎 洲崎 勲夫 徳留 卓俊 新井 佐和 藤居 直和 嶋根 俊和 小林 一女
出版者
日本鼻科学会
雑誌
日本鼻科学会会誌 (ISSN:09109153)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4, pp.666-672, 2019 (Released:2019-12-20)
参考文献数
26

歯性副鼻腔炎は歯性感染が上顎洞および副鼻腔に波及した疾患である。不十分な根管治療後の根尖病巣や歯根嚢胞が原因となることが多い。歯根嚢胞による歯性副鼻腔炎では原因歯の治療が必要であり根管治療や歯根端切除術などが試みられるが,開口状態で行う根管治療の限界や,歯根形態や根管形態により完全な根管治療を行うことは困難であり抜歯となるケースが多い。今回我々は,歯根嚢胞による歯性副鼻腔炎の患者に対しEndoscopic Modified Medial Maxillectomy(EMMM)によって経上顎洞的に歯根嚢胞を切除し,歯根端切除術を行うことにより歯牙を温存し良好な経過を得た症例を経験したので報告する。EMMMで上顎洞にアプローチし,ナビゲーションで歯根嚢胞の位置を同定し歯根嚢胞を切除した。その後に経上顎洞的にダイヤモンドバーで歯根端切除術を行った。術後経過は良好であり術後1年6か月の時点で歯牙は温存され歯根嚢胞の再発は認めていない。EMMMは鼻腔形態を保ちつつ上顎洞への広い視野と操作性が確保できる手術方法であり,上顎洞底部の病変である歯根嚢胞に対して有用であった。また,経上顎洞的にアプローチすることにより歯根尖切除も可能であった。今後長期の経過観察とさらなる症例の蓄積が必要であるが,歯牙温存希望の歯性副鼻腔炎の患者において選択肢の一つとなり得る術式と考えられる。
著者
中村 裕子 橋本 研 小此木 雄 牛込 瑛子 橋島 弓子 高橋 哲哉 小林 健二 小谷 依子 鈴木 玲爾 坂上 宏 申 基哲
出版者
特定非営利活動法人 日本歯科保存学会
雑誌
日本歯科保存学雑誌 (ISSN:03872343)
巻号頁・発行日
vol.54, no.5, pp.331-340, 2011-10-31 (Released:2018-03-23)
参考文献数
27

本研究の目的は,次亜塩素酸電解機能水(Hypochlorous-acid Electrolyzed Water: HEW)による宿主細胞への傷害性と,アルカリホスファターゼ(ALP)活性に与える影響を検討することである.HEWは,炭酸と塩化ナトリウム(NaCl)溶液を電気分解することによって生成される中性(pH7.2)で有効塩素濃度650ppmを有する電解水である.その殺菌効果は,陰イオンの活性酸素とHClOによるものと考えられている.HEWとNaOCl溶液のヒト歯髄線維芽細胞(HPC),ヒト歯根膜線維芽細胞(HPDL),ヒト末梢血好中球(PMN)およびヒト皮膚線維芽細胞三次元培養モデルに対する傷害性について,MTT assayを用いて検討した.HPC, HPDLおよびPMNを細胞培養用シャーレにて培養し,各濃度に調整したHEW, NaOCl溶液で処理した.HEWとNaOCl溶液は,濃度と作用時間に依存して細胞傷害性を示した.HEWの細胞傷害性はNaOCl溶液よりも低かった.次にHEWおよびNaOCl溶液のHPCのALP活性へ与える影響を,ALP assay kitを用いて検討した.HEWおよびNaOCl処理は,いずれも,HPC細胞のALP活性を低下したが,HEWのほうがはるかに軽微であった.三次元培養モデルにおいては,HEWの細胞傷害性はほとんど観察されず,NaOCl溶液のみが傷害性を示した.本研究は,HEWによる細胞傷害性は,NaOClよりも低く,根管洗浄剤として使用できる可能性を示唆する.
著者
若林 三千男 大場 秀章
出版者
Japanese Society for Plant Systematics
雑誌
植物分類,地理 (ISSN:00016799)
巻号頁・発行日
vol.46, no.1, pp.1-27, 1995-07-28 (Released:2017-09-25)
参考文献数
16

ホクリクネコノメの仲間(ホクリクネコノメ群)のホクリクネコノメとボタンネコノメソウは深山の渓流沿いなどの湿った場所に生え, 春先に花を咲かせる多年性草本で, 主として本州の日本海側寄りに分布している。ボタンネコノメソウはホクリクネコノメの分布域よりやや南側に生育し, 大井次三郎博士によって1933年, 種として記載されたが, 現在ホクリクネコノメの変種として扱われている。両者は主に, 花柱と雄しべが萼片より超出するか, またはそれより短いかで識別されるが, それらの変異についてはまだ詳しい解析はなされておらず, 変種関係とする理由も明らかにされていない。また両者の分布についても, 原(1957)および原と金井(1959)によって当時点での概略が示されているが, その後の詳しい研究はなされていない。最近, 岐阜県高山市在住の長瀬秀雄氏は, 飛騨地方一帯に変わったボタンネコノメソウがあることを発見された。私達はその実態を把握するため, 氏の案内で現地調査をする機会を得た。その結果, 花柱や雄しべが萼片より超出しない点はボタンネコノメソウに似ているが, 花はそれよりかなり大きく, 葯は赤色で萼が黄色を帝びるなとボタンネコノメソウとはかなり異なる特徴を示すことが確認された。さらにこの植物の分類学的位置づけを明確にするため, ホクリクネコノメ群全般にわたり, 花, 〓果, 種子表面の形態, 及び核型の変異を解析するとともに, 詳細な分布調査を行った。その結果, 上記の植物は, ホクリクネコノメとボタンネコノメソウと同様に2倍体(2n=22)で倍数性の変化はみられなかったが, 核型では一対の次端部動原体型染色体に付随体がある点でそれらと異なっていた(Fig.7)。また形態的には雌しべの形状や長さ, 雄しべの長さや葯と花糸の長さの比率など(Figs.1-3)でホクリクネコノメやボタンネコノメソウと明確なギャップがあり, 新分類群と認められた。特に〓果の形態では, 宿存する花糸は萼片と同長かわずかに短い点(Fig.4)で乾燥標本でも容易に識別できる。私達はこれにヒダボタンという和名をつけた。ヒダボタンのこれらの特徴はこれまで見過ごされてきたもので, ボタンネコノメソウと混同されていたと考えられる。また, ホクリクネコノメとボタンネコノメソウの間には上記の特徴では著しい差異があり, それぞれを変種関係とする形態学的証拠は見当たらなかった。さらに両者は異所的な分布圏をもち, まれにそれらが接する所では同所的に生育していることが分かった。これは生殖的隔離の存在を示唆するもので, 形態的ギャップと考え合わせると両者は既に種レベルまで十分分化したものと考えられる。ボタンネコノメソウは種として扱うべきだろう。これに伴い, ヒダボタンも種として扱うのが自然である。ヒダボタンも, ボタンネコノメソウとまれに混在して生育している所があり, まれに雑種と思われるものがあってもその花粉稔性は低い。ホクリクネコノメと同所的に生育している所でもそれぞれの種の特徴ははっきり維持されている。生殖的隔離が存在していると考えられる。最初に発見した長瀬氏の名にちなみ, ヒダボタンを新種Chrysosplenium nagaseiと命名・記載した。ヒダボタンは地域によって変異がみられるが, 種としては岐阜県中部を中心にした地域及び伊吹・鈴鹿山地に沿って南は三重県の野登山まで生育しており, 中国地方の山地にも散在的に分布する(Fig.8b)。岐阜県の西北部や滋賀県東北部(伊吹山地の西麓)には, 葯が黄色で萼も黄色または黄緑色で, 外観はボタンネコノメソウの品種キンシベボタンネコノメソウに似ているが, はっきりとしたヒダボタンの仲間が分布する。ヒダボタンより花がやや小さく, 分布的にもまとまっているのでこれを新変種ヒメヒダボタンvar.luteoflorumとした。また, 岐阜県西部の伊吹山地東麓, 養老山地, および霊山から野登山までの鈴鹿山地に分布しているものは, 外観は典型的なボタンネコノメソウとよく似るが, これもはっきりとしたヒダボタンの仲間である。ヒダボタンとは萼が赤褐色で花はそれよりずっと小さい点で異なっており, 新変種アカヒダボタンvar.porphyranthesと命名・記載した。中国地方に散在的に分布しているヒダボタンは, 現時点では標本によってのみ検討されたものなので, その実態については今後の調査を待ちたい。ヒダボタンの花や〓果は, ボタンネコノメソウとホクリクネコノメのものとの中間的な形態である。また, ヒダボタンは, ボタンネコノメソウとホクリクネコノメの分布域の間に位置するような分布をしている。これは, ヒダボタンがボタンネコノメソウとホクリクネコノメの間の雑種起源であるという可能性を示唆するものであるが, このことについてはさらに詳細な遺伝的解析が必要である。今回の研究でボタンネコノメソウとホクリクネコノメについても従来より詳細な分布状況を把握することができた。ボタンネコノメ
著者
赤池 祐次 影山 優 川勝 望 小林 正和
出版者
公益社団法人 日本工学教育協会
雑誌
工学教育 (ISSN:13412167)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.2_44-2_50, 2019 (Released:2019-03-27)
参考文献数
10

In this paper, we compare Attainment Test for Mathematics and Engineering Mathematics Test (EMaT) carried out by National Institute of Technology, Kure College from 2015 to 2017. We found significant positive correlations between them, implying that academic development of mathematics in Kure College successfully connects to engineering mathematics in university. However, we also found that approximately half of the students do not reach sufficiently high learning level for the engineering mathematics in university. Moreover, differences of scores among four departments are found to be significant. Considering these results, we suggest some educational plans to improve the learning level for the engineering mathematics in university.
著者
小松﨑 敏光 江川 峻哉 池田 賢一郎 櫛橋 幸民 池谷 洋一 浜崎 泰佑 古川 傑 水吉 朋美 浅野 雅世 小林 一女 嶋根 俊和
出版者
特定非営利活動法人 日本頭頸部外科学会
雑誌
頭頸部外科 (ISSN:1349581X)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.247-251, 2016-10-30 (Released:2016-11-17)
参考文献数
21
被引用文献数
1 1

今回われわれは,原発性肺癌疑いの精査でCT検査を行ったところ甲状腺に腫瘍を認め,穿刺吸引細胞診の結果悪性腫瘍と診断し,摘出術を行った。病理組織学的結果は,肺癌からの転移性甲状腺癌と診断した症例を経験した。転移性甲状腺癌は進行すると,呼吸や摂食に関係し,その後患者のQOLを著しく低下させるため,原発腫瘍の治療状況,全身状態,PS,腫瘍を摘出してその症例のQOLが向上するかどうかを総合的に判断して治療にあたるべきと考えられた。本症例のように急激な増大を認める症例もあり摘出時期を逸しないことも重要と考えられた。
著者
若林 一郎
出版者
Osaka Urban Living and Health Association
雑誌
生活衛生 (ISSN:05824176)
巻号頁・発行日
vol.55, no.1, pp.34-45, 2011-03-10 (Released:2011-03-18)
参考文献数
52

Light-to-moderate alcohol drinking reduces the risk of atherosclerotic diseases such as coronary heart disease, ischemic-type stroke, and peripheral artery disease through the anti-atherosclerotic and anti-thrombotic effects of alcohol. These beneficial effects of alcohol are explained mainly by its blood lipid-improving actions, such as HDL cholesterol-increasing and LDL cholesterol-decreasing actions, and by its blood coagulation-suppressing actions, such as platelet aggregation-inhibiting, blood fibrinogen-decreasing, and plasminogen activator-increasing actions. These biological actions of alcohol are thought to be independent of the type of beverage and to be due to ethanol itself. On the other hand, excessive drinking and binge drinking increase the risk of hypertension, hemorrhagic-type stroke, arrhythmia, and cardiomyopathy. The guidelines of the international and Japanese societies of hypertension recommend that alcohol intake should be restricted to less than two drinks (24 g ethanol) per day in men and one drink (12 g ethanol) per day in women. Alcohol drinking should never be recommended for promotion of health in those who are currently nondrinkers since there is no way of predicting the future likelihood of excessive drinking and addiction. Moreover, individual background factors such as age, gender, body weight, history of smoking, history of hypertension therapy, and polymorphism of alcohol-metabolizing enzymes should be taken into account when considering alcohol intake volume suitable for each individual. The etiology of alcohol-induced hypertension and cardiomyopathy remains to be clarified. Future studies are also needed to determine whether light-to-moderate alcohol drinking is permissible in persons with atherosclerotic disease and in persons with risk factors for atherosclerosis.
著者
高志 修 富永 浩之 林 敏浩 山崎 敏範
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ET, 教育工学 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.703, pp.37-42, 2005-02-26
参考文献数
7
被引用文献数
2

近年, 教室のネットワーク環境の整備により, チャットなどを用いた授業支援システムが使われ始めている. 我々は, 対話的なe-Learningの典型例として, 一問一答式クイズAQuAsを開発した. このシステムでは, 授業で用いる様々な試問や質疑を, 一問一答式クイズの多様な実施形態として捉える. AQuAsによる学習支援の方法として, 学習者の解答行為を時系列で分析し, 学習者の理解度や学習態度を把握して, 適切なアドバイスや個人に適応した出題を行う機能を提案する. 一問一答式クイズの解答行為を記録するPDA上のシステムTinyAQuAsを試作し, 予備実験の結果から, 学習者の解答傾向を推定する類型化ルールを検討する. また, ファジィ理論を用いて, より柔軟なルールの記述と推論の方法について議論する.
著者
西川 武志 小林 菜津美 岡安 多香子 山田 玲子 磯貝 恵美子 磯貝 浩 山下 利春
出版者
公益財団法人 日本ビフィズス菌センター
雑誌
腸内細菌学雑誌 (ISSN:13430882)
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, pp.321-327, 2006 (Released:2006-11-28)
参考文献数
9
被引用文献数
2

カテキンの抗菌活性については多くの報告がみられている.一方,最近ペットボトル等のお茶を飲む人が多くなっている.そこで,市販のカテキン含有飲料の病原性大腸菌感染症に対する予防効果を検討することを目的として,腸管出血性大腸菌O157(EDL931およびHK)および非病原性大腸菌MV1184に対するカテキン含有飲料の増殖抑制作用について検討した.また,併せて毒素産生抑制作用についても検討した.紅茶,緑茶1,緑茶2および番茶は大腸菌に対して強い増殖抑制作用を示した.この中でもカテキン含有量の最も多い緑茶2が,すべての大腸菌に対し極めて強い増殖抑制作用を示した.また,供試したE. coli O157はベロ毒素1型(VT1)産生株であり,紅茶,緑茶1,緑茶2,および番茶によって毒素の産生は抑制あるいは阻止された.これらの結果から,茶を飲用することは,O157をはじめとする病原性大腸菌感染症を予防するのに有効であると考えられた.
著者
稲井 卓真 久保 雅義 江玉 睦明 高林 知也 小熊 雄二郎
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.43, no.5, pp.404-411, 2016 (Released:2016-10-20)
参考文献数
56

【目的】本研究の目的は,3 次元上の股関節の動きが大腰筋の伸張率に及ぼす影響を明らかにすることである。【方法】先行研究によって報告されたパラメータから,筋骨格モデルを作成した。数理モデルを用いて,股関節の角度を変化させたときの大腰筋の伸張率を検討した。解剖学的肢位での大腰筋の筋線維長を100% とした。【結果】大腰筋の伸張率は,股関節の伸展20 度のみ(104.8%)より,股関節の伸展20 度に外転20 度・内旋30 度を加えることでより高くなった(106.5%)。【結論】股関節の伸展のみと比較して,股関節の伸展に外転と内旋を加えたとき,大腰筋はより伸張される可能性がある。
著者
林 京子 林 利光 李 貞範
出版者
富山大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2004

3年間の研究期間中に、300種類を超える合成化合物、植物及び藻類に由来する天然物質を対象にして、抗ヒトコロナウイルス(HCoV)活性試験を実施した。その結果、藻類由来酸性多糖体の中に、きわめて高い阻害活性を示す物質を見い出した。また、幾つかの低分子物質についても高い活性を示すものが存在した。これらの物質について抗HCoV作用標的を解明するため、種々の条件下で検定を行い、以下の結果を得た。1)吸着阻害効果:ウイルスの感染・増殖の初期段階である宿主細胞レセプターとウイルスとの吸着に対する阻害効果を評価した。高い抗HCoV活性を示したラムナン硫酸、デキストラン硫酸、ジギトキシン、ジゴキシン、ブファリンなどはいずれも、ウイルス増殖阻害効果を示す濃度範囲では、HCoVと宿主細胞との吸着を阻害しなかった。2)侵入阻害効果:宿主細胞に吸着したウイルスは、短時間のうちに細胞内へ侵入する。この段階に対する阻害効果を検討したところ、上記1)に挙げた物質はいずれも、侵入阻害作用を示した。ラムナン硫酸は最も強力な抗HCoV活性を示したが、その主たる作用標的が侵入段階であることを特定できた。3)殺ウイルス活性:直接的にウイルスを不活化させる効果(=殺ウイルス活性)は、HCoVの増殖の場である呼吸器において、外部から入る病原体の感染力を消失させうると期待できる。そこで、この活性を検討したところ、phenoxazinesの一種に強力な殺HCoV作用を確認できた。現在、そのメカニズムを検討中である。4)ウイルス蛋白合成阻害効果:HCoVのモノクローナル抗体を利用して、イムノブロット法によってウイルス特異的蛋白を検出した。これまでに、ラムナン硫酸が、ウイルス感染時に存在すれば、濃度依存的にHCoV蛋白合成を阻害することが明らかになっている。
著者
家永 遵嗣 水野 圭士 林 哲民 タトヤン ディミトリ 小口 康仁 野里 顕士郎 熊谷 すずみ 安達 悠奈
雑誌
人文 (ISSN:18817920)
巻号頁・発行日
no.17, pp.157-189, 2019-03

標題の史料を翻刻・提示し、主な問題点三点について解説した。 第一に、清原良賢が足利将軍家に奉仕するようになる契機が、持明院統の皇位継承争いのなかで、義満が良賢を後円融上皇・後小松天皇の支持者として固定しようとしたことにあったこと。第二に、標題の史料から、永徳元年に義満が編成した家政機関の政所別当一五名・侍所別当一〇名を特定でき、弁官系諸家を糾合することで崇光上皇の院政を阻止する布石であったとみられること。第三に、成立期の「室町殿」に「障子上」「侍所」が設けられていたことから、室町殿における公卿の家礼と殿上人の家司との意思疎通と連繫が窺い知れること。以上、標題の史料の重要性について解説した。|These three documents are related to Ashikaga Yoshimitsu's "Ninnkai Daikyou," a celebration banquet for taking up the third ministe "NaiDaijinn," in Eitoku 1(A.D. 1381). From these three documents, we can know about Ashikaga Yoshimitsu's "Kugeka," becoming a ruler over the royal court. In those days, the "Hokucho" royal court was struggling for the royal throne. One was a descendant from Gokougonn Tennou, the other was Sukou Jyoukou, the elder brother of Gokougonn Tennou, and his son Yoshihito. Ashikaga Yoshimitsu was a nephew of Gokougonn Tennou. Therefore, Ashikaga Yoshimitsu supported Goennyuu Tennou, the son of Gokougonn Tennou, in cooperation with Nijyou Yoshimoto, a man of power in the "Hokucho" royal court. In preparing the "Ninnkai Daikyou" banquet, Yoshimitsu took talented court nobles as his manservants, such as Kiyohara Yoshikata, the original author of "Shoninndaikyouki". Therefore, Sukou Jyoukou lost his power in the royal court. Then Gokomatsu Tennou, son of Goennyuu Tennou, was able to take the throne in Eitoku 2(A.D. 1382). These three documents reveal 25 people who bacame Yoshimitsu's manservants. A transcriptor commented on each person's kinship and the relationship between each person and his masters. And these three Documents reveal the location of the "Shoujinoue" and "Samuraidokoro," the offices of the manservants, in "Muromachidono," the palace of Ashikaga Yoshimitsu. They suggest the way in which Yoshimitsu came to understandings with his retainers.
著者
林 隆嗣
出版者
こども教育宝仙大学
雑誌
こども教育宝仙大学紀要 = Bulletin of Hosen College of Childhood Education
巻号頁・発行日
vol.11, pp.21-30, 2020-03-04

The purpose of meditation is to obtain a cessation of suffering along with the alteration of consciousness. While the ideal developments of mind and the positive outcomes of meditation are exclusively discussed in the Buddhist texts, the Visuddhimagga and Pāli commentaries notice the actual problems such as ten kinds of ・ impediment (palibodha) which the meditator need to sever before starting meditation and the eighteen kinds of unfavorable monasteries, which are called fault (dosa). A noisy environment created by worshipers and others hinders the meditator from concentrating his mind. External stimulation does not only break up the meditation, but sometimes provokes rather unpleasant reactions. Improper conditions, both physical and mental, during the meditation also have a mischievous influence on the meditator’s mind. Imbalance of five faculties also induces mental disorders. When unpleasant reactions appears in a meditator’s mind, one of the effective method of selfcare solution is considered to be scolding, talking to, convincing himself and pulling him back to the ordinary perception. In this paper, we consider the methods of handling such troubles during the meditation in Theravāda Buddhism.
著者
幸島 匡宏 松林 達史 澤田 宏
出版者
一般社団法人 人工知能学会
雑誌
人工知能学会論文誌 (ISSN:13460714)
巻号頁・発行日
vol.30, no.6, pp.745-754, 2015-11-01 (Released:2015-10-27)
参考文献数
18
被引用文献数
4

In this paper, we propose a new Non-negative Matrix Factorization (NMF) method for consumer behavior pattern extraction. NMF is one of the pattern extraction method and is formulated to factorize a non-negative matrix into the product of two factor matrices. Since various types of datasets are represented by non-negative matrices, NMF could be applied in wide range of research fields including marketing science, natural language processing and brain signal processing. However, more effective extension method is required in a purchase log analysis in marketing operation since marketer needs to extract interpretable patterns from sparse matrix in which most of the elements are zero. Therefore, we propose Non-negative Micro Macro Mixed Matrix Factorization (NM4F) which uses attribution information of both users and items to improve interpretability and capability to deal with sparsity. NM4F is formulated as a method which could simultaneously factorize multiple matrices using shared factor matrices and linear constraint between factor matrices. This formulation enables to increase an amount of available information and to extract consistent patterns with several different aspect. We derive the parameter estimation algorithm by multiplicative update rules. We confirmed the effectiveness of the proposed method in terms of both quality and quantity by using real consumer panel dataset. In addition, we discuss a relation between extracted patterns by the visualization results using graph drawing.