著者
前田 浩人 林 加織 石毛 崇之 三品 美夏 渡辺 俊文 曽川 一幸
出版者
日本電気泳動学会
雑誌
電気泳動 (ISSN:21892628)
巻号頁・発行日
vol.62, no.2, pp.59-62, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
10

近年ネコ飼育頭数の増加傾向に伴い獣医臨床現場においてネコの下部尿路疾患(Lower urinary tract disease (LUTD))を治療する機会が増えつつある中で,原因の特定に至らず治療方針の決定に時間を要する症例も少なくない.中でも下部尿路疾患の2–10%の症例において細菌感染が認められる.MALDI-BioTyper Systemとrapid BACproを応用し,ネコの尿における直接菌種同定を試み,検査の感度及び時間の短縮について検討を行った.本法は,ネコの尿中における細菌種の同定分析を短時間に可能にする方法である.
著者
チョードリ バズル ラッシド 若林 久嗣
出版者
The Japanese Society of Fish Pathology
雑誌
魚病研究 (ISSN:0388788X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.231-235, 1988-12-15 (Released:2009-10-26)
参考文献数
7
被引用文献数
8 20

蒸留水にNacl 0.03%, KBl 0.01%, CaCl2・2H2O 0.002%, MgCl2・6H2O 0.004%を溶解した調合水におけるF. columarisの生存率は高圧滅菌水道水のそれと同様にきわめて高かった。調合水の各陽イオンの濃度はそれぞれの単独溶解液でのF. columnarisの生存性の最も良かった値であるが, 単独溶解液よりも調合水における生存性の方が明らかに良好であった。これらの実験の結果, 調合水ならびに高圧滅菌水道水は長期間の生存を支持することがわかった。
著者
金 貴煥 佐藤 誠治 小林 祐司 姫野 由香 張 天オウ
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.70, no.588, pp.95-102, 2005
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

The purpose of this research is to show why consumer chose a centrally located urban shopping center or a suburban shopping center in a city, and using quantitative analysis which present factors influenced the customer's choice. The results show that the majority of shoppers under 20 years old chose the central shopping center because of a variety of factors including service, facilities, merchandise, and convenience of public transportation. On the other hand, those shoppers 30 to 50 years old with families chose the suburban shopping center because of the convenience of shopping by car.
著者
氏家 等 村上 孝一 出利葉 浩司 小林 考二 矢島 睿
出版者
北海道開拓記念館
雑誌
一般研究(C)
巻号頁・発行日
1987

積雪地帯における伝統的有形民俗資料の比較研究調査は, カンジキと除雪具を対象に青森県, 岩手県, 福島県, 秋田県, 山形県, 富山県, 石川県, 福井県, 長野県, 北海道を中心に調査を行った.カンジキは, いわゆる竹を曲げた単輪型が本州における共通した形態であった. 中でも新潟県山間部, 北陸地方を中心に分布するスカリとその類似型は最も大型のカンジキであり, スカリの上にさらに小型のカンジキをはくといった重複型は, 豪雪地帯における最も大きな特色であった.これに対し, 北海道では前輪と後輪で構成するいわゆる複輪型のカンジキが主流であった. また, 新潟県山間部から移住した人々の場合も, 単輪型のカンジキよりも複輪型カンジキを使用している. このことは, 両地域における雪質の相異が最も大きな要因と考えられる.北海道アイヌが使用したヒョウタン型カンジキは, 岩手県北部, 青森県南部にも分布していた. しかし, この関連性については, 今回の調査でも解明できなかった. また, 八戸市是川遺跡出土のカンジキは, カンジキであるかどうかが問題であり, これらの問題を解明するてがかりにはならなかった. 本州における除雪具は, 一枚板で製作する雪ベラ, コスキ(木鋤)が主流であった. 柄が2m前後ある長いものは, 岩手県から北陸地方の山間部にみられ, 屋根の雪おろしに使用するものであった. また, 日本海沿岸部, 山間部の雪ベラは, ブナ材を使用することも大きな特色であった.これに対し, 北海道では, 箱型状の雪ベラが主流であった. また, 1枚板のコスキを使用していた人々も移住後は箱状の除雪具を使用している. これらの要因もやはり雪質の相異によるものと考えられる.
著者
林 大介 川崎 繁男
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
日本航空宇宙学会論文集 (ISSN:13446460)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.9-15, 2019 (Released:2019-02-05)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

The re-entry capsule tracking system is proposed as a shared/dual-use technology with commercial products. This system has portability, and is not affected by the condition of installed equipment in the capsule. In this paper, the detection performance is described about the tracking area assumed from Hayabusa's achievement. By the experiment using the prototype radar, this system was confirmed to be able to detect more than 90% of the area.
著者
小林 敏宏 曽根 克彦 小林 富男 小須田 貴史 田端 裕之 鈴木 隆 小野 真康 田代 雅彦
出版者
The Kitakanto Medical Society
雑誌
北関東医学 (ISSN:00231908)
巻号頁・発行日
vol.41, no.2, pp.335-340, 1991-03-01 (Released:2009-10-21)
参考文献数
8
被引用文献数
1 1

橈骨動脈注入による逆行性大動脈造影は, 侵襲の少ない検査であり, 新生児, 乳児期に左心系造影が必要となる大動脈縮窄症, 大動脈弓離断症などの疾患には有用な検査方法である.また, 最近では肺動脈閉鎖を伴う動脈管依存性先天性心疾患の肺動脈造影にも応用されている. 当院では過去8年間に43例に対し橈骨動脈造影による診断を行なった. 疾患は, 大動脈弓の異常を呈する疾患28例 (大動脈弓離断症12例, 大動脈縮窄症9例, 左心低形成症候群4例, 血管輪3例), 肺動脈閉鎖を伴う動脈管依存性先天性心疾患13例 (Fallot四徴症7例, 三尖弁閉鎖症2例, 純型肺動脈弁閉鎖症1例, 単心室1例, 無脾および多脾症候群2例), 動脈管開存症2例であった.方法は, 22Gまたは24Gのangiocathを橈骨動脈へ経皮的に穿刺し, イオヘキソール1~2ml/kgを機械的に約2秒間で注入した.造影は全例診断可能な所見が得られ, 重篤な副作用もみられなかった.
著者
若林 芳樹 久木元 美琴 由井 義通
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
日本地理学会発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.2018, 2018

2012年8月に成立した子ども・子育て関連3法に基づいて,子ども・子育て支援新制度(以下,「新制度」と略す)が2015年4月から本格施行された.これにより,市区町村が保育サービスを利用者へ現物給付するという従来の枠組みから,介護保険をモデルにした利用者と事業者の直接契約を基本とし,市区町村は保育の必要度に基づいて保育所利用の認定や保護者向けの給付金を支払う仕組みへと転換した.また,待機児童の受け皿を増やすために,保育所と幼稚園の機能を兼ねた認定こども園の増加や,小規模保育所や事業所内保育所などの「地域型保育」への公的助成の拡大が促進され,保育サービスのメニューも広がった(前田, 2017).しかしながら,こうした制度変更の影響について地理学的に検討を加えた例はまだみられない.そこで本研究は,新制度導入から3年目を迎えた現時点での保育サービス供給の変化と影響について,若林ほか(2012)がとりあげた沖縄県那覇市を中心に検討した.<br><br> 新制度では,認可保育所などの大規模施設で実施される「施設型保育」に加えて,より小規模な「地域型保育」も公的補助の対象になった.このうち「施設型保育」については,認可保育所以外に認定こども園の拡充が図られている.2006年から幼児教育と保育を一体的に提供する施設として制度化された認定こども園は,制度や開設手続きの複雑さなどが原因となって普及があまり進んでいなかったが,新制度では幼保連携型認定こども園への移行を進める制度改正が行われた.その結果,2019年4月における保育の受け入れ枠の14%を認定こども園が占めるようになった.<br><br> 一方,「地域型保育」には,小規模保育(定員6~19人)・家庭的保育(定員5人以下)・事業所内保育・居宅訪問型保育があり,主に0~2歳の低年齢児を対象としている.これらは,住宅やビルの一部を使って実施されるため,従来の認可保育所に比べて設備投資が小さくて済み,小規模でも公的補助が受けられる.そのため,用地の確保が困難なため認可保育所で低年齢児の定員枠の拡充が難しい大都市では,待機児童の受け皿となることが期待されている.この他にも保育士の配置などで認可基準が緩和され,公的補助のハードルが全体的に低くなっている.その中でも小規模保育は,新制度への移行後の保育枠の増加に大きく寄与している.<br><br> 新制度に対応した那覇市の事業計画では,需要予測に基づいて2017年度末までに約2500人の保育枠を増やすことになっている.そのために,認可外保育所に施設整備や運営費を支援して認可保育所に移行させ,認定こども園や小規模保育施設を新設するとともに,並行して公立保育所の民営化を進めることになっている.工事の遅れや保育士不足などによって,必ずしも計画通りには進んでいないものの,地方都市では例外的に多かった同市の待機児童数は,2018年4月から1年間の減少幅では全国の自治体で最も大きかった.これは,保育所定員を2443人増やした効果とみられるが,依然として200人(2017年4月)の待機児童を抱えている.<br><br> 新制度実施前の那覇市では,認可外保育所が待機児童の大きな受け皿となっていた(若林ほか, 2012).保育の受け入れ枠を拡大するには,それらの施設の活用が考えられるため,認可外保育所の代表者6名にグループインタビューを行ったところ,認可外保育所の対応は3つに分かれることがわかった.比較的大きな施設は,施設を拡充したり保育士を増やすなどして認可保育所への移行を図っているが,規模拡大が困難な施設は小規模保育として認可を受けるところもある.しかし,認可施設に移行すると既存の利用者の多様なニーズに柔軟に応えられなくなる恐れがあり,保育士の増員も困難なため,認可外にとどまる施設も少なくない.<br><br> また,事業所内保育施設については,市が施設整備費補助制度を設けていることもあって増えている.そこで新規に認可を受けた事業所内保育所2施設に対して聞き取りを行った.A保育所は,都心からやや離れた場所にある地元資本のスーパー内の倉庫を改装して使用し,運営は県外の民間業者に委託している.利用者は事業所従業員と一般利用が半数ずつを占める.B保育所は,風営法により認可保育所が立地できない場所にある都心部のオフィスビルに1フロアを改装して新設されている.定員のうち従業者の利用は少なく,大部分は地域枠として募集しているが,入所待ちの児童もあるという.これらの小規模保育施設に共通することとして,2歳児までしか受け入れ枠がないため,3歳児から移行できる連携施設を近隣に確保するのが課題となっている.
著者
牟田 昌平 小林 昭夫
出版者
国立研究開発法人 科学技術振興機構
雑誌
情報管理 (ISSN:00217298)
巻号頁・発行日
vol.45, no.7, pp.477-483, 2002 (Released:2002-10-01)
参考文献数
6
被引用文献数
1

アジア歴史資料センターは,2001年11月30日,独立行政法人国立公文書館の組織として開設された。アジア近隣諸国との相互理解促進のために,政府が所蔵する戦前の公文書から,アジア諸国との関係資料をインターネットで「いつでも」「どこでも」「だれもが」「無料」で検索し画像データとして利用できる本格的なデジタルアーカイブである。閣議決定から開設まで2年間,最新の技術動向を踏まえながらも,できるかぎり既存の確立した技術を応用し,手書き文書も含めた文字情報の内容検索と閲覧,印刷,画像データダウンロードに機能を集中した情報提供システムである。本論では,センターの情報提供システムの特長と言える最新の画像圧縮技術を導入した画像提供システム,歴史用語と英語に対応する専門辞書,検索情報を充実させるための原文情報や英文検索対応の目録システムを中心に紹介する。
著者
綿引 大祐 吉松 慎一 竹内 浩二 大林 隆司 永野 裕
出版者
THE LEPIDOPTEROLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
蝶と蛾 (ISSN:00240974)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.53-60, 2017-08-31 (Released:2017-12-01)
参考文献数
22

属 Acidon Hampson はインドからオーストラリア地域にかけて21種(そのうち2種は雌しか知られていない正体不明種)が知られ,Kononenko and Pinratana(2013)でいうところの“Mecistoptera generic group”に属する一群である.本グループには Acidon 属のほか,Mecistoptera Hampson,Perciana Walker,Hiaspis Walker,Hepatica Staüdinger,Coarica Moore,Ruttenstorferia Lödl,Lophomilia Warren の7属が含まれており,さらにHolloway(2008)は形態学的な研究から Gonoglasa Hampson も本グループに含めるべきとの見解を示している.また,本グループは全世界でおよそ600種を含む大属であるHypena Schrankと近縁であることから,ヤガ上科の中でも特に分類学的問題を抱えたグループに属している.ヤガ上科の高次分類は今なお混沌としており,本種を含む“Mecistoptera generic group”の種は,日本産蛾類標準図鑑2(岸田,2011)に従うとヤガ科アツバ亜科とカギアツバ亜科にまたがって含まれる扱いとなる.ここでは最近の分子遺伝学的な研究であるZahiri et al. (2012) に従いトモエガ科アツバ亜科として扱った.以下に本新種の特徴を示す.Acidon sugii Watabiki & Yoshimatsu sp. nov. シマイスノキアツバ(新称)前翅長:♂12.3-16.0 mm, ♀12.1-15.4 mm. 雄の触角は両櫛歯状で,下唇髭は非常に長く頭部の5倍程度の長さを有する.雌の触角は糸状で,下唇髭は雄より短い.雌雄ともに前後翅の色調は黒褐色から赤褐色で,前翅の内横線と外横線の間および亜外縁線より外側は暗色になる傾向があり,個体によっては薄紫色の鱗粉を散布する.環状紋は通常白色あるいは黒色の点状であるが,大きな白色紋状となる個体もある.前後翅とも裏面には黒褐色線があり,後翅はその内側に黒褐色紋を伴う.本種は日本における本属の初記録種で,交尾器の形態からボルネオ島より記載された Acidon calcicola Holloway が最も近縁な種であると考えられる.両種は外見上よく似ているが,本種の雄は触角が両櫛歯状,下唇髭が頭部の5倍程度の長さを有するのに対し,A. calcicola を含む Acidon 属の他の種は,雄の触角が繊毛状や毛束状であり,下唇髭は頭部の2-4倍程度の長さであることから容易に識別できる.また,雄交尾器からも明瞭に識別できる.分布:小笠原諸島(兄島・父島・母島). 寄主植物: マンサク科シマイスノキ (Distylium lepidotum Nakai)本種の兄島と母島から得られた1雄2雌の標本を用いた分子遺伝学的な検討も行った結果,得られた分岐図と解析データから,兄島と母島間においておよそ1%の塩基置換率が確認された(Fig. 14).また,チョウ目における同属内の種間のミトコンドリアDNA (COI) 領域の平均塩基置換率はおよそ7~8%であるとされるほか (Hebert et al., 2009; Hausmann et al., 2011),ヤガ科ヨトウガ亜科 Tiracola 属における近縁種の塩基置換率がおよそ5.1%程度であったことが示されているが (Watabiki and Yoshimatsu, 2013),今回分子遺伝学的解析を併せて行った Perciana marmorea Walker,ナンキシマアツバ Hepatica nakatanii Sugi, および本新種の平均塩基置換率はおよそ6.2%であり,属以上のレベルで一般的に見られるような大きな遺伝的差異は見られなかった.本種は日本産ヤガ上科の分類学者であった故杉繁郎氏の助言をもとに竹内・大林(2006)においてクルマアツバ亜科の属名・種名の未決定種として初めてリストアップされた種である.そこで本種の学名は杉繁郎氏に献名し,和名は杉氏が竹内と大林に書面上で提示していたもの(杉私信,1996)と同様に,シマイスノキアツバとした.なお,竹内・大林(2006)では“シマイスアツバ”として扱われたが,これは杉氏提案の和名を誤って略してしまったものである.
著者
小林 浩章 香取 嘉彰 藤城 宣 山下 太郎 立岡 宏治 宮代 大輔
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.37-42, 2021 (Released:2020-12-24)
参考文献数
8

ボディ補強が操縦安定性に影響を与えることが知られている.しかし補強の有無の効果を官能評価では把握できるが,実走データで示そうとしても、補強によって生じる車両挙動の違いはわずかで、その差異を抽出することは難しい.そこで本研究では機械学習・深層学習を用いてドライバーが感じる車両挙動の特徴量を抽出する.
著者
楠 俊雄 穂積 香織 小倉 達也 小林 巧 重田 文弥
出版者
日本皮膚科学会西部支部
雑誌
西日本皮膚科 (ISSN:03869784)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.70-78, 2009-02-01 (Released:2009-04-21)
参考文献数
11
被引用文献数
2 2

イトラコナゾール(イトリゾール®カプセル50)は,ベルギー ヤンセン社で合成されたトリアゾール系抗真菌剤である。本邦では2004年2月に爪白癬に対し,本剤400mg/日を1週間服薬した後,3週間休薬するサイクルを3回繰り返す「パルス療法」が承認され,この承認に伴い,爪白癬の治療を受けた患者2000例を対象とした市販後調査を実施し,パルス療法の有効性及び安全性について検討を行った。有効性については,有効性解析対象症例1051例における全般改善度は84.3%であった。また,感染部位,初発・再発,肥厚度,混濁比等,爪白癬の状態や重症度によらず,いずれも80%以上の有効率を示すことが確認された。一方,爪白癬治療の継続状況を検討したところ,治療完結率評価対象症例2394例において,3サイクル分のイトラコナゾール処方が完結した患者の割合は93.0%であった。安全性については,安全性解析対象症例2532例中288例(11.4%)に副作用が認められたが,主な副作用は,既知で軽微な臨床検査値異常であった。以上より,イトリゾール®カプセル50パルス療法は,爪白癬に対して優れた有効性ならびに良好な安全性を有することが確認された。
著者
加藤 雅康 林 克彦 前田 雅人 安藤 健一 菅 啓治 今井 努 白子 隆志
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.22, no.5, pp.229-235, 2011-05-15
参考文献数
15

近年,クマの目撃件数が増加しており,クマが生息する山間部付近の病院ではクマ外傷を診察する機会が増加することが予想される。当院で過去2年間に経験したクマ外傷の4例を報告し,初期治療での注意点について考察する。クマ外傷は頭部顔面領域に多く,顔面軟部組織損傷の治療にあたっては,眼球,鼻涙管,耳下腺管や顔面神経などの損傷を確認し,損傷の部位や程度に応じてそれぞれの専門科と共同で治療を行うことが必要となる。また,細菌感染や破傷風の予防が必要である。当院で経験した4例と文献報告でも,創部の十分な洗浄と抗菌薬治療,破傷風トキソイドと抗破傷風人免疫グロブリンの投与により重篤な感染を生じることはなかった。しかし,頭部顔面の創部と比較して四肢の創部は治癒に時間がかかった。クマ外傷の診療にあたっては,顔面軟部組織損傷と感染症予防に対する知識が重要と考えられた。
著者
中川 優梨花 飯野 由梨 斉藤 真一 小林 万里 玉手 英利
出版者
日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 Supplement
巻号頁・発行日
vol.29, 2013

ゴマフアザラシ (Phoca largha)の配偶システムは,一夫一妻型であるとされている.しかし,配偶ペアがどの程度安定して維持されるのか(pair-bond),ペア外繁殖がどの程度起こるのか (mating fidelity)など,配偶行動と実際の繁殖成功度の関連については,観察・遺伝データ共に十分な知見が得られてはいない.そのため本研究では,長期個体観察が可能である飼育集団を対象とし,主に遺伝学的手法を用いて繁殖履歴の調査を行った.また,副次的な課題として飼育個体・集団の遺伝的多様度を測定し,野生集団との比較も行った. 研究に用いた個体は,鶴岡市立加茂水族館と城崎マリンワールドの飼育個体 (母獣・成熟メス計 5個体,父獣候補 6個体,仔 16個体 )である.比較を行う野生個体は,計 30個体 (礼文,羅臼,納沙布各 10個体 )である.体毛 (産毛を含む )・組織から DNAを抽出し,近縁種由来 microsatelliteマーカー5座位 (Han et al., 2010),種特異的 3座位 (小林,2011)を用いて遺伝子型を決定した.得られた遺伝子型から飼育個体の血縁判定を行い,個体の繁殖成功を推定,mating fidelityの評価を行った.その後,ヘテロ接合度・血縁度・近交係数の算出を行い,遺伝的多様性の評価を行った. その結果,特定の個体が繁殖を独占したこと,配偶ペア間で pair-bondが維持されていた可能性が示された.鰭脚類は,集団間で行動に差異が生じている種も少なくない.また,成熟オスは互いに威嚇しあい,少数が繁殖に有利な機会を得るとされる.そのため,成熟個体が同所飼育された場合には優位劣位の関係が生じ,特定の個体が繁殖に関して有利となった可能性が考えられる.しかし,メスは優位オスを必ずしも配偶相手に選ばない可能性も示唆されている (Flatz et al., 2012).今後,さらなる観察データ等の蓄積が必要と考えている.
著者
林 要一
出版者
土質工学会
雑誌
土質工学会論文報告集
巻号頁・発行日
vol.20, no.4, 1980

札幌市地下鉄南北線, 全長2.4 kmにわたる地下鉄延長工事の施工概要について述べたものである。工事対象地の地盤は, 地表面から深度10 mまでは軟弱な有機質土層, 深度10~18 mまではレンズ状に粘土を挾む細砂層, 深度18~20 mまでは粘土層, 20 m以深は札幌扇状地を形成する砂礫層からなる。細砂層, 砂礫層とも地下水で被圧されている。開削工による掘削断面の大きさは, 幅19 m, 深さ22 m, 土留めは深度32 mまでの地中連続壁によって行っている。連続壁の施工ジョイントと配筋に工夫をして, 地中連続壁を, 一部分, 駅部分の本体構造として利用しているのが特徴である。また, 地中連続壁打設後の地盤掘削に際しては, 深度18~20 mの粘土層底面に作用する1.5 kgf/cm^2の被圧地下水圧による掘削面のボイリングやヒービングを防止するために, 深度22 m以深の礫層にディープウェルを打設した。しかし, このディープウェルによる揚水のために, 周辺に存在する1200本以上の井戸が井戸枯れを生じた。市街地における地下水位低下工法の難しさを示す一例である。
著者
今西 俊介 貝沼 修 鍋谷 圭宏 小林 亮介 知花 朝史 石毛 文隆
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.37, no.1, pp.035-037, 2017-01-31 (Released:2017-04-03)
参考文献数
19

症例は68歳,男性。突然発症した強い腹痛と嘔吐で救急搬送された。前日に餅を食べた食餌歴があり,CTでは腸閉塞像を呈し,小腸のhigh densityを呈する狭窄部より口側に複数のhigh densityな構造物が描出された。餅による食餌性腸閉塞(以下,餅腸閉塞)と診断し,絶食・輸液治療を開始した。症状は軽快し退院となった。食餌性腸閉塞は全腸閉塞の中でもまれな病態ではあるが,餅も原因となることが知られている。餅の主な構成成分であるでんぷんはアミラーゼにより分解されるアミロースが少なく,分解されにくいアミロペクチンが多く含まれる。このため餅は膨化性や付着性が高く,不十分な咀嚼などが原因で,腸閉塞の原因となり得る。また自験例のように餅腸閉塞のCTのhigh densityな所見は特徴的であり,食餌歴の聴取と合わせて診断に有用である。