著者
小林 茂雄 津田 智史
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.73, no.623, pp.93-99, 2008-01-30
被引用文献数
2

The purpose of this research is to identify environmental factors related to the ease of borrowing a cigarette lighter from a stranger in a smoking area. An experiment was carried out in which subjects actually talked to ordinary smokers and borrowed lighters at smoking areas in Yokohama city. As a result, it was found that the ease of talking to a stranger corresponds almost exactly to the ease of entering the smoking area. The distance between the smoking area and the surrounding traffic, and the numbers of surrounding pedestrians were connected with the ease of borrowing behavior. The width of the entrance to the smoking area and the arrangement of benches, etc. were also related to the evaluation. The characteristics of suitable smoking areas for borrowing behavior were summarized into three main factors, that is, people can approach the place without feeling too conspicuous, smokers in the place seem not to have monopolized spaces, and the smoking area has a casual atmosphere which promotes interaction between people.
著者
大林 隆司
出版者
首都大学東京
雑誌
小笠原研究年報 (ISSN:03879844)
巻号頁・発行日
vol.29, pp.23-35, 2006-03-31

小笠原諸島では現在、さまざまな外来種に対する対策がとられつつあるが、その中で最近よく話題にのぼる"ニューギニアヤリガタリクウズムシ"について、発見から国外・国内の分布拡大までの経緯、小笠原諸島への侵入の経緯、生物的防除の素材としての認識から"侵略的外来種"としての認識への変化を述べるとともに、小笠原諸島における侵入確認後の研究を概説した。また、本種に関する最近の話題(外来生物法、広東住血線虫との関係、小笠原でとられつつある対策)についても述べた。
著者
北野 雅子 小林 正佳 今西 義宜 坂井田 寛 間島 雄一
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.112, no.3, pp.110-115, 2009 (Released:2010-06-03)
参考文献数
14
被引用文献数
1 1

本研究では当科嗅覚味覚専門外来を受診した嗅覚障害を合併する味覚障害患者を, 自覚的味覚異常症状を訴えるが味覚検査上異常を認められない「自覚的味覚障害 (風味障害)」と, 自覚的味覚異常とともに味覚検査上も異常を呈する「検査的味覚障害 (味覚障害)」に分類して, これらの相違点につき検討した.風味障害群は, 味覚障害群と比べて自覚的味覚低下度が有意に軽度であった. 嗅覚障害の原因として, 感冒の割合が風味障害群で味覚障害群よりも有意に多かった. 治療開始前の基準嗅力検査の平均認知域値は両群間で有意差を認めなかった. 風味障害例に対しては嗅覚障害に対する治療を重点的に施行し, 風味障害でない味覚障害例に対しては亜鉛製薬やビタミンB12 製薬投与や口腔内清潔保持を中心とした治療を施行した. 治療後は両群ともに味覚障害が有意に改善した.今回の結果から, 風味障害例に対しては, 嗅覚障害に起因する障害であることを認識して嗅覚障害に対する治療を重点的に施行すれば味覚障害の改善が得られるものと考えられる. その一方で, 嗅覚障害を合併する検査的味覚障害例に対しては, 適切に味覚検査を施行して風味障害と鑑別し, 嗅覚障害に対する治療と同時に味覚障害に対する治療を原因に応じて適切に施行することが重要と考えられる.
著者
小林 寿朗
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木史研究 (ISSN:09167293)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.353-368, 1992-06-05 (Released:2010-06-15)
参考文献数
30
著者
中村 光宏 林 恭守 澤田 秀之
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告. MUS,[音楽情報科学] (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.66, pp.135-140, 2006-08-07
参考文献数
7

発話機構を全て機械系によって構成することにより、人間のような発話動作に基づいた音声の生成が可能となる。主に肺、声帯、声道部、鼻腔、聴覚部から構成される本発話ロボットは、声のピッチを変化させながら発話を生成することが可能である。ピッチ制御には複雑な声帯振動の解析が必要であるが、ここではシリコーンゴムを皮膚程度の柔度で成形した二枚の振動体の張力と、空気の流量を、モータにより操作することによって実現した。一方、調音のための共鳴管をシリコーンゴムで成形し、これを外側から棒で押し引きして声道断面積を変化させることにより、共鳴特性を変化させて母音や子音音声を生成することが可能である。本稿では、まず発話ロボットの構成について紹介し、次にニューラルネットワークを用いた聴覚フィードバック学習に基づく音声、音階の獲得と、楽譜作成インタフェースを用いた歌声生成について述べる。
著者
藤本 修平 小林 資英 小向 佳奈子 杉田 翔
出版者
日本理学療法士学会
雑誌
理学療法学 (ISSN:02893770)
巻号頁・発行日
vol.46, no.3, pp.196-200, 2019 (Released:2019-06-20)
参考文献数
28

【目的】リハビリがかかわる医療機関Web サイトにおける医療広告ガイドラインの遵守実態を検証することとした。【方法】リハビリがかかわる医療機関のWeb サイトを抽出するため,国土数値情報(国土交通省)から東京都23 区内の医療機関を抽出し,医療機関名と住所を組み合わせWeb サイトの検索を行った(database: Google)。Web サイトの質を評価するために,医療広告ガイドラインを参考に6 項目評価した。【結果】診療科目で本来使用すべき「リハビリテーション科」という標榜以外の記載をしているWeb サイトは993 件中461 件(46.4%)であった。医療機関の名称の語尾に“センター”と標榜するもののうち,名称として認められていないものは47 件中38 件(80.9%)であった。【結論】本来医療機関の名称として認められていない標榜を採用している医療機関が多く,情報提供者は,医療機関に関する情報をより正確に説明する必要がある。
著者
重森 雅嘉 齋藤 友恵 館林 美月 水谷 文 増田 貴之 芳賀 繁
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第7回大会
巻号頁・発行日
pp.134, 2009 (Released:2009-12-18)

作業時に対象を指差し確認内容を呼称すると、ヒューマンエラーが低減できる。これは指差呼称がいくつかのエラー防止機能を持つためといわれている。本研究では、指差の反応遅延による焦燥反応防止機能、呼称による記憶保持機能、指差による注意の焦点化機能を、ストループ様の数値比較課題(指差あり、なし、反応保留条件)、n-back課題(呼称あり、なし、構音抑制条件)、数値探索課題(指差あり、なし条件)を用いて検証した。その結果、数値とフォントの大小が拮抗するストループ様課題では、指差なし条件のエラー率が他より高く焦燥防止機能が確かめられた。n-back課題では、n=1とn=2において呼称あり条件のエラー率が他より低く記憶保持機能が確認されたが、n=3において呼称ありとなし条件のエラー率が逆転し、課題の難易度による効果の違いが示唆された。数値探索課題の条件によるエラー率の差は明確ではなく検討の余地を残した。
著者
景山 一郎 栗谷川 幸代 小林 ゆき
出版者
公益社団法人 自動車技術会
雑誌
自動車技術会論文集 (ISSN:02878321)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.385-391, 2020 (Released:2020-02-13)
参考文献数
8

二輪車は極低速走行時に直立安定性が大きな問題となり、安全性の観点から重要な1課題となる。しかし、この領域の二輪車の運動を表現する方程式は必ずしも整備されているとは言えない。本研究では、この極低速度領域の二輪車の運動方程式の構築と、その安定性に関する検討結果を示す。
著者
後藤 優育 建内 宏重 福元 喜啓 高木 優衣 大塚 直輝 小林 政史 市橋 則明
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Ca0219, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 変形性膝関節症(以下、膝OA)は、高齢者において高い有病率を示し、膝OA患者において、疼痛、筋力低下およびROM制限をはじめとする機能低下がみられ、さまざまな日常生活動作が障害される。膝OAの発症・進行は、歩行などの動作時に膝関節内で圧縮ストレスが引き起こされることが原因と考えられている。この圧縮ストレスを反映する指標とされるものには、外的膝屈曲モーメント(以下:KFM)や外的膝内反モーメント(以下:KAM)があり、特に先行研究では、歩行時のKAMについて検討しているものが多い。しかし、実際には膝OA患者は立ち上がり動作や階段昇降で症状を訴えることが多いにも関わらず、これらの各種動作でどの程度のモーメントが膝関節に加わっているのかは不明である。そこで、本研究は膝OA患者の歩行、立ち上がり動作、階段昇降動作に着目し,KFMとKAMの動作による違いを検討することを目的とした。【方法】 対象は地域在住の女性膝OA患者6名(年齢:55.3±4.33歳)とした。対象者の包含基準として、膝OAと診断され、独歩可能な者とした。測定課題は、歩行、椅子からの立ち上がり動作、昇段動作および降段動作とし、全て自由な速度で行った。反射マーカーをPlug in gaitモデルに準じて全身に貼付し、三次元動作解析装置VICON NEXUS(VICON社製,サンプリング周波数200Hz)および床反力計(Kistler社製,サンプリング周波数1000Hz)を使用して解析した。測定下肢はOA側としたが、両側性の膝OAの場合には、より症状の強い方をOA側と定義し測定した。立ち上がり動作時の椅子の高さは下腿(外果~膝関節裂隙)の長さとし、上肢は胸の前で組んで行った。昇段動作および降段動作には17cmの台を1段用い、OA側下肢からの昇段および非OA側下肢からの降段を行った。上肢は胸の前で組み、目線は前方を見るように指示した。各動作は十分な練習を行った後、3回測定した。データの解析区間は、歩行ではOA側の立脚相、立ち上がり動作では殿部が座面から離れてから立位までの間、昇段動作ではOA側下肢が台上についてから非OA側が台上につくまでの間、降段動作では非OA側下肢が台上から離れ、OA側下肢が台上から離れるまでの間とした。各動作時のKFMとKAMのピーク値を体重と身長で除した値(Nm/kg・m)を求め,3回の平均値を解析に使用した。統計検定には一元配置分散分析およびBonferroni法による多重比較を行い、KFMおよびKAMを動作間で比較した。有意水準は5%とした。【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は本学倫理委員会の承認を得て行われた。対象者には研究の内容を紙面上にて説明した上、同意書に署名を得た。【結果】 各動作におけるKFM(Nm/kg・m)は、歩行では0.32±0.09、立ち上がり動作では0.35±0.16、昇段動作では0.43±0.14、降段動作では0.52±0.18であった。統計処理の結果、降段動作のKFMは歩行、立ち上がり動作より有意に大きかった(p<0.05,p<0.01)。KAM(Nm/kg・m)は、歩行では 0.43±0.10、立ち上がり動作では0.16±0.13、昇段動作では0.50±0.14、降段動作では0.47±0.13であった。統計処理の結果、立ち上がり動作のKAMは歩行、昇段動作、降段動作より有意に小さかった(p<0.05)。また、歩行、昇段動作、降段動作の間には有意差は認めなかった。【考察】 本研究の結果より、KFMは降段動作が歩行や立ち上がり動作よりも大きいということ、また、KAMは、立ち上がり動作では小さく、歩行と階段昇降動作とでは差がないことが明らかとなった。降段動作においてKFMが歩行や立ち上がり動作よりも有意に大きかったことより、歩行や立ち上がり動作よりも降段動作で症状を訴える膝OA患者は、KFMの増大が症状を誘発している可能性が高いと考えらえる。また、KAMについては、一般的に歩行時のKAMが膝OAの進行と関連があると報告されているが、昇段動作および降段動作においても歩行時と同等のKAMが生じており、歩行のみならず階段昇降動作においても着目することの重要性が示唆された。【理学療法学研究としての意義】 本研究で行ったこれらの動作は、膝OA患者のリハビリプログラムや日常生活指導で広く行われる動作である。本研究は、これらの動作間でのKFMおよびKAMを比較しており、患者の訴えに合わせた訓練動作の選択や、動作指導の際に必要な知見になると考えられる。
著者
関 克己 小林 潔司 湧川 勝己
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集F5(土木技術者実践) (ISSN:21856613)
巻号頁・発行日
vol.72, no.1, pp.1-19, 2016 (Released:2016-02-20)
参考文献数
17

災害応急対策にあたっての意思決定とこれを支援した災害対策現地本部の記録が残されている2000年有珠山噴火を対象に,災害危機管理ともいえる住民等の生命に直結する住民避難等を対象とした災害応急対策の意思決定の構造を明らかにする.その際,意思決定にあたって重要な役割を担う災害のリスク評価及び災害応急対策検討とそれぞれを担う専門家の役割を明らかにする.その上で,災害時の住民避難等に関する公的な意思決定に必要な条件,判断基準や意思決定の正統性について検討する.さらに,これまで議論されることの少なかった災害応急対策の意思決定に関する研究を通じ,防災・減災の強化に向けた災害応急体制のあり方に関して提案する.
著者
小林 朋子 鳥居 春己 川渕 貴子 辻 正義 谷山 弘行 遠藤 大二 板垣 匡 浅川 満彦
出版者
奈良教育大学自然環境教育センター
雑誌
奈良教育大学自然環境教育センター紀要 (ISSN:21887187)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.1-8, 2011-03-01

2005年と2006年に奈良公園およびその周辺地域に生息する天然記念物ニホンジカ(Cervus nippn,以後,シカとする)における,人獣共通寄生虫の感染状況,感染個体の栄養状態に関する調査を実施した.奈良公園内のシカ15頭の第四胃から結腸までの消化管内寄生蠕虫検査では,日本の他地域に生息するシカから得られた寄生虫と同属種が検出された.また,奈良公園内において40頭のシカの排泄直後に採取した糞における吸虫卵調査では,87.5%の個体から肝蛭卵が検出された.また,14頭のシカの剖検において肝蛭の虫体が見つかった8頭の病理学的検査と寄生状況の調査では,肝臓表面に赤紫の小斑点あるいは蛇行状の病巣などが観察され,割面では胆管の拡張,壁の肥厚がみられた.得られた肝蛭のNADH脱水素酵素サブユニット遺伝子(ND1)およびチトクロームcオキシダーゼサブユニットI遺伝子(COⅠ)の配列はFasciola hepaticaと97%(ND1)と99%(COⅠ)一致し,F.giganticaと95%(ND1)と100%(COⅠ)一致した.1976年の調査でも奈良公園の肝蛭による汚染が指摘されていたが,シカ個体数が約300頭増加した今日も大幅な寄生率の変化はなく高度な汚染が維持されていることが明らかとなった.シカから排泄された肝蛭虫卵はメタセルカリアとなり,ヒトや家畜への感染源になり得ることをふまえて,早急に充分な対策を講じる必要があろう.
著者
小林 憲弘 小坂 浩司 浅見 真理 中川 慎也 木下 輝昭 高木 総吉 中島 孝江 古川 浩司 中村 弘揮 工藤 清惣 粕谷 智浩 土屋 かおり 寺中 郁夫 若月 紀代子 加登 優樹 小関 栄一郎 井上 智 村上 真一 金田 智 関 桂子 北本 靖子 堀池 秀樹 米久保 淳 清水 尚登 髙原 玲華 齊藤 香織 五十嵐 良明
出版者
公益社団法人 日本水環境学会
雑誌
水環境学会誌 (ISSN:09168958)
巻号頁・発行日
vol.40, no.6, pp.223-233, 2017 (Released:2017-11-10)
参考文献数
23
被引用文献数
2 1

水道水中の臭素酸イオン (BrO3-) を既存の告示法よりも高精度かつ迅速・簡便に分析するために, LC/MS/MSによる測定方法を検討し, 臭素酸イオンを高感度に検出でき, さらに水道水中に含まれる他の陰イオンを良好に分離可能な測定条件を確立した。さらに, 本研究で確立した測定条件が全国の水道水に適用できるかどうかを検証するために, 水道事業体等の23機関において水道水に臭素酸イオンを基準値 (0.01 mg L-1) およびその1/10 (0.001 mg L-1) となるように添加した試料を調製し, 各機関で最適化した様々な測定条件で試験を行った。その結果, いずれの機関においても厚生労働省が示している「水道水質検査方法の妥当性評価ガイドライン」の真度, 併行精度および室内精度の目標を満たしたことから, 本分析法は水道水中の臭素酸イオンを基準値の1/10 (0.001 mg L-1) まで高精度に分析可能であると評価した。
著者
東 華岳 安達 泰弘 林 春樹 久保 金弥
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.37, no.4, pp.245-253, 2015-12-01 (Released:2015-12-13)
参考文献数
52
被引用文献数
14 37

骨粗鬆症は骨量の減少と骨質の劣化が特徴で,骨折しやすくなるもっとも一般的な代謝性骨疾患である.超高齢社会の到来を受け,骨粗鬆症は大きな社会問題になっている.一方,生体はつねにさまざまなストレスにさらされ,その生理機能に影響を及ぼしている.最近の研究によれば,慢性の精神的ストレスがさまざまなシグナル経路を介し骨粗鬆症の危険因子である.本総説では,慢性の精神的ストレスと骨粗鬆症との関連性について,最近の進展状況を概説する.中枢神経系,特に視床下部による骨代謝調節機構の存在が明らかにされてきた.ヒトおよび動物研究によると慢性の精神的ストレスが視床下部-下垂体-副腎皮質系,交感神経系,および内分泌・免疫系への影響を介して骨量を低下させ,骨質を悪化させる.噛む動作にはストレス緩和作用があることが証明されている.噛む動作は,ストレス誘発神経内分泌反応を弱め,ストレス性骨量減少を改善する.したがって,噛む動作は,慢性の精神的ストレスに関連する骨粗鬆症の予防・治療において,有用なアプローチになりうる.また,慢性の精神的ストレス,噛む動作と骨粗鬆症との相互関係についてのメカニズムも考察した.慢性の精神的ストレスは視床下部-下垂体-副腎皮質系と交感神経系を活性化させ,性ホルモンと成長ホルモンを抑制し,炎症性サイトカインを増加させ,骨形成の抑制と骨吸収の促進により最終的に骨量減少を引き起こす.
著者
太湯 好子 小林 春男 永瀬 仁美 生長 豊健
雑誌
川崎医療福祉学会誌 (ISSN:09174605)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.353-361, 2008

本研究では認知症高齢者に対するイヌによる動物介在療法の効果を社会性,活動性,精神性の3側面から検討しコントロール群と比較した.動物介在療法の6ヶ月後までの評価は認知症日常生活自立度判定基準,認知症高齢者用QOL尺度,認知症高齢者用うつスケール短縮版を用いた.また,施行時の評価については前60分・中30分・後60分の行動観察と同時に,アクティグラフによる活動量の測定と唾液アミラーゼによる精神ストレスについて調査した.結果,日常生活自立度とQOL尺度得点は6ヶ月で大きな変動はなかったが,うつ状態は明らかに改善した.また,施行の前後では,唾液アミラーゼ活性値の下降群が,動物介在療法を施行した群に有意に多くみられ,一方,コントロール群では上昇群が多かった.そして,アクティグラフによる活動量は施行中に明らかに多くなった.加えて,行動観察でも活動量,笑顔,発言,周囲の人やイヌへの関心が増加した.このことから,認知症高齢者に動物介在療法を施行することは,社会性としての周囲の人やイヌへの関心を高め,生活への潤いを増加させる.また,活動性としてはイヌにつられて行動を起こすことにより,活動量が増し,日常生活の自立度やQOL改善につながる.精神性ではストレスの緩和やうつ状態の改善につながる.