著者
矢吹 淳哉 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.80, no.11, pp.1868-1876, 1997-11-25
被引用文献数
36

Filtered-x LMS法を用いてANCシステムを動作させる場合, ステップゲインと呼ばれる定数を決定しなくてはならない. ところが, これは小さ過ぎるとフィルタ係数の収束が遅くなり, それを速くするために大きくし過ぎるとシステムが安定に動作しなくなる. そこで, システムの安定性を満たし, かつ収束が速い値を選ぶために, 安定に動作する上限値を知る必要があるが, 従来はその値が不明であったため, ステップゲインは試行錯誤して決定されていた. またFiltered-x LMS法には, ANCシステムにおける2次音源スピーカと誤差検出マイクロホンの間の経路(Error Path) Cを同定したフィルタC^^^が必要であり, 当然これにはモデル化誤差が含まれている. 本論文では, このような場合に, 許容されるCとC^^^の位相誤差から安定に動作するステップゲイン値の上限を求める理論式を導出する. また, 同理論式を実際のシステム稼慟時に入手可能な情報で表現することを試みる. 更に, 理論式によって得られたステップゲイン値を使用した場合とその他の値を使用した場合における収束特性の比較を行い, 提案する理論式の有効性を示す.
著者
森 敬 梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.2, pp.101-110, 2003-02-01
被引用文献数
15

本論文では,摂動の大きさを自動制御する新たな周波数領域同時摂動法(FDSP法)を用いたアクティブノイズコントロール(ANC)システムを提案する.提案法は摂動の大きさを自動制御させることにより,従来の摂動の大きさを固定した場合より収束速度を大幅に改善できる.具体的には,誤差信号が大きいときは摂動の大きさを大きくし,誤差信号が小さくなるに従い摂動の大きさを小さくするという制御を行うことで達成される.その結果,本システムはブロック処理に起因する不安定性の問題を解決するとともにステップサイズを大きな値に設定できる.本制御は摂動の大きさを小さく設定する必要がある場合に効果的であり,特に摂動の大きさを0.08としたときには収束速度は50倍以上高速化される.また本制御は,摂勘付加に起因して発生する雑音の抑制にも有効である.
著者
梶川 裕矢
出版者
情報知識学会
雑誌
情報知識学会誌 (ISSN:09171436)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.177-180, 2008-05-23 (Released:2008-09-08)
参考文献数
8

本研究では,学術論文からの因果関係抽出におけるオントロジー利用の効果を検討する.まず,既存の概念モデルを統合した人工物オントロジーを提案し,妥当性の検証を行なった.結果,技術文書中の技術用語の90%以上が記述可能であった.次に,得られたオントロジーを用いて,学術論文からの因果関係抽出実験を行なった.抽出に用語間の共起関係のみを用いた場合に比べ,オントロジーを用いた場合,精度は有意に改善した.
著者
梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SIS, スマートインフォメディアシステム (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.104, no.511, pp.21-25, 2004-12-09

本稿では,ヘッドフォン感覚で装着し,常に耳元での消音を実現する新しいマルチチャネルアクティブノイズコントロールシステムを提案する.本システムでは,騒音制御フィルタの更新アルゴリズムに摂動法を用いているため,二次経路の変動に追従して騒音制御フィルタの更新を行えるという利点を有する.つまり,環境変化に対して安定な制御が可能となる.そこで,quiet zone(消音領域)が耳元にくるように誤差マイクロホンを固定し,これをヘッドフォンのように頭部に装着することで,ユーザが移動しても常に消音が可能となる.本稿では,このヘッドフォン型誤差マイクロホンを用いたマルチチャネルアクティブノイズコントロールシステムの有効性を実システムにより検証する.
著者
梶川 祥世
出版者
玉川大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は、乳幼児期の言語知覚認知が音声が主の処理から意味を伴う処理へと発達的に変化するなかで、周囲からの情報が言語獲得を促進するしくみについて、音声と意味をつなぐ学習方略という観点から検討することであった。特に音声獲得と意味学習の関係について、言語音声認知における助詞および擬音語の特性を明らかにし、言語以外の音声の影響も示した。また、子の発達に応じた母親の発話の変化と子の意味推測を促す効果を明らかにした。
著者
小川 信明 菊地 良栄 後藤 博 梶川 正弘 尾関 徹
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.503-511, 1998-08-05
被引用文献数
11 9

日本は海に囲まれており, 降水中には海塩起源と考えられるイオンが多量に含まれる. そこで, 降水中でも海水中のイオン組成比が保持されると仮定し, N^+又はCl^-イオン濃度を基準に, 降水中の汚染物質を海塩起源(ss)と非海塩起源(nss)に区分することが一般的になされてきた. しかし, 汚染物質を含んだ雨雲や乾性浮遊物が移動する途中にガス状酸性物質とイオン交換する可能性などがあり, 必ずしもss/nssという区分は正しくないという意見もあった. そこで, 1993年4月から1995年8月までの期間, 秋田市と湯沢市で1日ごとの降水を採取し, そのイオン組成を化学分析し, それらのデータに, 著者らが開発した制限斜交回転因子分析法を適用し, 降水中の汚染起源を抽出し解析した. その結果, 海水中の塩組成に非常に近い海塩由来の汚染起源が抽出された. しかし, Na^+及びCl^-イオンを含む海塩成分の一部が降水を酸性にする硫酸酸性の汚染起源の中にも含まれていることが分かった. この因子は, 冬季と冬季以外, 又海に近い秋田と内陸の湯沢で組成の違いを示した. このことは, 海塩由来の汚染物質が採水地点に到達するまでに, 組成の変質を受けていることを強く示している.
著者
小元 敬男 文字 信貴 平田 尚美 梶川 正弘 竹内 利雄 吉野 正敏
出版者
大阪府立大学
雑誌
自然災害特別研究
巻号頁・発行日
1985

本年度は、降ひょうと突風の実態の把握及び基礎研究に必要なデータを得る目的で、分担者のほゞ全員が群馬県で観測を行った。6月前半には、レーダー観測、突風観測、ひょう粒の分析の実験を実施、7月15日〜8月15日の期間には上記の他に高層気象観測、気圧分布観測、短期間ではあるがドプラーソーダによる観測を行った。更ル、5月15日〜8月15日の期間、記録計による100地点での降ひょう観測を行うなど、北関東夏季の積乱雲対象としてかつてない充実した研究観測を実施したのであるが、昨夏は群馬県における雷雨は異常に少なく予期したほどのデータは得られなかった。しかし、この観測期間中に観測本部のある群馬県農業総合試験場にひょうが降り、また地元の協力者から分析用の大きなひょう粒が提供されるなど、ひょうの基礎研究に役立つ資料が得られた。更に同地域における下層大気の昇温が積乱雲発達に及ぼす影響の研究に必要なデータも得られた。例年より少なかったが、上記期間中に発生したひょう害及び突風(災)害の現地調査も行った。その他の分担研究課題の成果として、ひょう害の変遷に関する研究では、関東甲信地域のひょう害は1950年頃までは5月下旬を中心とするピークが一つあっただけであるが、その後7月下旬を中心とするピークが現れ顕著になりつつあることなど幾つかの新らたな気候学的事実が明らかにされた。また、防ひょうネットの研究では、千葉県の実験地に激しい降ひょうがあり、実際の場合について、種々の網目のネットの被害防止効果を測定できた。無被害地の実験データと併せて、防ひょうネットの最適網目は10mmであることが確められた。激しい雷雨の常習地域で長期にわたって連続観測を行ったにも拘ず、異常年に当ってしまい、充分データを得ることができなかった。この種の研究は根気よく続ける必要がある。
著者
後藤 博 梶川 正弘 菊地 勝弘 猿渡 琢
出版者
The Japanese Society of Snow and Ice
雑誌
雪氷 (ISSN:03731006)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.191-198, 2006-05-15 (Released:2009-08-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1

乾き新積雪(新雪)からこしまり雪に変態する過程で,圧縮粘性率と密度の関係が結晶形と雪温にどのように依存するかを調べる目的で室内実験を行った.その結果,雪温と圧力が低いほど,こしまり雪への変態に長時間を要した.また,圧縮粘性率と密度の関係は,結晶形と雪温により大きく異なることを確認した.さらに,圧縮粘性率の雪温依存の度合いは,新雪段階では卓越結晶形により異なることがわかった.
著者
横山 幸嗣 大西 晃 廣澤 春任 梶川 正毅 深蔵 英司
出版者
宇宙航空研究開発機構
雑誌
宇宙科学研究所報告 (ISSN:02852853)
巻号頁・発行日
vol.104, pp.1-13, 1999-03

1983年より,M-3SII 型ロケット搭載のために,続けてはM-V型ロケット搭載用に,ロケット用テレビジョン(TV)システムを開発してきた。目的はロケットの分離や制御に関わる運動を高速度で撮像することである。搭載部分は CCD カメラ,ビデオスイッチ,マイクロフォン,送信機,送信アンテナから,地上部分は受信アンテナ,受信機,データ処理系からなる。1984年1月,ロケット ST-735-1号機において最初の性能確認を行った。M-3SII 型ロケットでは初号機から7号機までに搭載,その間,2画面合成や映像のカラー化,通信距離の拡大など,機能の向上を図った。M-V 大型ロケットでは1および3号機に搭載,新開発の大型ロケットの飛翔を映像により情報伝達するという大きな役目を果たした。
著者
井上 悟 田川 英生 永松 公明 梶川 和武
出版者
日本水産工学会
雑誌
水産工学 (ISSN:09167617)
巻号頁・発行日
vol.41, no.1, pp.39-46, 2004-06-07

前の3報に続いて,海中に設置した電極に微弱電流を流すことにより,海洋生物の付着を防止する試みを行った。水産大学校桟橋下と近くの海面に測定板を沈め,測定板への生物付着状況を調べた。2000年5月30日から10月2日までの4ケ月間(第1期)と,同年10月11日から翌年1月12日までの3ケ月間(第2期)に分けて実験を行った。電極には白金メッキされたチタン細線を使用した。あらかじめ,電極間隔および電極長と電流との関係を調べ,電極間隔50cm・電極長3mmの粂件のもとで,8V・数十mAの電流を常時印加した。海中に設置された電極に流れる電流は,電極間隔にはほとんど依存せず,電極長に大きく依存することが確認できた。8V・数十mAの電流を常時印加することにより,第1期と第2期を通じて,付着性の動物,特にフジツボに対しての周年の付着防止効果が確認された。ただ,第2期では,海藻類に対しての付着防止効果は認められなかった。しかし,海藻以外の付着生物(特に動物)は明らかに対照区に多く,8V・数十mAの電流による付着防止効果が認められた。
著者
梶川 嘉延 野村 康雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.11, pp.1808-1816, 1996-11-25
参考文献数
18
被引用文献数
51

本論文では線形ひずみおよび非線形ひずみを同時に除去する非線形逆システムの適応Volterraフィルタを用いた時間領域でのオフライン設計法を提案する.従来の線形フィルタによる線形ひずみの除去法では,線形ひずみの除去は行えるが,それに伴い非線形ひずみが増大するという欠点を有していた.本論文では,まず線形ひずみの除去によって非線形ひずみが増大するメカニズムをVolterra理論を用いて理論的に明らかにする.また,非線形システムの縦列接続によって生じる信号成分をVolterra理論を用いて導出することにより,非線形ひずみを除去する非線形逆システムの設計法を与える.提案法では非線形ひずみを最大70dB低減でき,更に設計時間の短縮化も実現している.
著者
梶川 正弘 卜蔵 建治
出版者
日本自然災害学会
雑誌
自然災害科学 (ISSN:02866021)
巻号頁・発行日
vol.8, no.2, pp.46-56, 1989-09-30

A severe disaster was caused by gusts and hailfalls in Aomori and Miyagi Prefectures on September 7,1986. This report outlines meteorological conditions and damages in relation to the hailstorms. The followings are the main results. 1) The gusts accompanied by hailfalls were brought about by a group of cumulonimbi related mainly to the unstable stratification by advection of upper cold air. 2) The damage due to gust in Aomori Prefecture was the drop of apple fruits and the lodging of apple trees by a tornado. 3) Most of the damages in Miyagi Prefecture were the injury of heads of rice plants by hailfalls.
著者
梶川 伸一
出版者
金沢大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2007

1922年初頭からはじまるロシア正教会への弾圧はまず、飢餓民に必要な食糧を外国で購入するための貴金属没収の口実ではじまった。このキャンペーンの開始時には、中央委員の多くは必ずしも反教会の強攻策を支持しなかったが、3月半ばのシュヤ事件に対する党中央委員への秘密書簡は党指導部内のこれまでの待機的気分を一掃し、軍事力を動員しての教会と聖職者への容赦のない弾圧と迫害がはじまった。このようにして、宗教弾圧の実施過程でゲー・ペー・ウーにより民衆の抵抗を圧殺するシステムが動き出したのである。
著者
佐藤 久美子 梶川 祥世 庭野 賀津子 皆川 泰代
出版者
玉川大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2009

第1に、英語の絵本の読解力に優れた子どもは、英単語の音のみならず、読み手の声の調子、絵、背景的知識、推測力など様々な学習方略を使い、内容を統合的に理解する過程が明らかになった。一方、読解力が弱い子どもは、絵にのみ集中する傾向があり、他の読解方略を有効に使うことができない、という特徴を明らかにした。第2に、母親と子どもの対話を分析し、発話力の高い子どもの母親は応答タイミングが早く、発話時間が短く、話しかける時はゆっくりと話すという特徴を見出した。こうした読み方が、子どもの理解力を促進することが解明された。
著者
佐用 敦 梶川 嘉延 棟安 実治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. ICD, 集積回路 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.110, no.216, pp.7-12, 2010-09-28

本稿では発話に伴う口唇変化を利用した生体認証システムにおける識別器生成手法について述べる.口唇変化を利用した生体認証は口唇形状(身体的特徴)と発話に伴う口唇変化(行動的特徴)を用いて個人認証を行い,また他の生体認証のように特殊な機器を必要とせず,口唇領域を抽出するカメラのみで構築が可能である.これまで,口唇領域の小領域(セル)内から抽出した特徴量を用いて生成される識別器を用いた認証システムを提案してきた.従来システムにおける識別器は微小な口唇変化に対して頑健である.しかし,従来の識別器生成手法では認証に用いる複数の特徴量が一律に取り扱われているため,認証に有効でない特徴量が認証に悪影響を及ぼす可能性があると考えられる.そこで本稿では,AdaBoost学習から得られた信頼度によって各特徴量に重み付けを行う識別器生成手法を提案する.各特徴量に対して重み付けを行うことにより,認証に有効な特徴量ほど認証に影響を与えることができると考えられる.そして認証実験を通して,提案手法の有効性を示す.
著者
菊池 勝弘 早坂 忠裕 梶川 正弘 桜井 兼市 遊馬 芳雄 上田 博 バジルド C.E. ベロツェルコフスキイ A スチュアート R.E. ムーア G.W.K. 佐藤 昇 バジルド C.
出版者
北海道大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

北極圏の水循環・エアロゾル等の物質循環,低温下での雪結晶の形成メカニズムの解明のために,スカンジナビア北極圏のスウェーデン・キルナのスウェーデン国立宇宙物理学研究所において,Xバンド鉛直ドップラーレーダー,レーザー・シ-ロメーター,マイクロ波放射計,全天日射・長波放射計,メソネット気象観測,エアロゾルサンプリング,それに,雪結晶の地上観測を1997年12月14日から1998年1月20日まで行った.観測期間を通して暖冬であったが,さまざまなタイプの降水現象を観測することができた.12月中は快晴時が多く,あまり降雪現象は観測されなかったが,1月に入ると休むことなく降雪が続き,強度は弱いが10分程度の強弱を持っ山岳性の降雪現象や,ノルウェー海を進行する低気圧に伴う背の高い降水エコーを持つ降雪現象を観測することができ,観測時間は600時間を超えた.これらのデータは現在解析中である.一方,マイクロ波放射計による水蒸気量および雲水量の観測から,以下のことが明らかになった.1)水蒸気量の鉛直積分値は,快晴時の0.4cmから降雪時の0.7cm,濃密雲粒付雪結晶や霰の降る時には,1.0cmに達し,幅広い変動を示した.2)雲水量(鉛直積分値)は,雲粒付雪結晶の時は0.01cm以上となり,霰の時には0.04cm程度まで増加した.また,降雪をもたらす擾乱のタイプにより大きく変動することが分かった.雪結晶の観測では偏光顕微鏡により35m/mフィルム95本,レプリカは500枚作成することができた.各種の低温型雪結晶の他,針状結晶から霰まで,ほとんどの結晶形を記録することができた.