著者
梶谷 懐
出版者
比較経済体制学会
雑誌
比較経済研究 (ISSN:18805647)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.1_1-1_13, 2012 (Released:2012-03-06)
参考文献数
26

本稿の目的は,「非先進国(発展途上国)」の政治経済モデルとして最も代表的なものである,「開発体制国家」モデルをベンチマークとして,中国経済を「非先進国経済」の一つとして類型化を行うことである.市場経済の下で高成長を遂げる中国は,従来の「開発体制国家」モデルといくつかの前提を共有しながらも,その産業構造や技術進歩のパターン,さらには国家と経済活動との関係など,重要な点で大きな違いを見せている.本稿では,そのような中国経済の「型」を,「分散型の開発体制」と名付け,国家と社会との関係,市場競争の歴史的な特性,グローバル経済における位置づけなど,いくつかの観点から検討を行う.
著者
梶原 健嗣
出版者
一般社団法人 日本治山治水協会
雑誌
水利科学 (ISSN:00394858)
巻号頁・発行日
vol.65, no.5, pp.1-30, 2021-12-01 (Released:2023-08-22)

水道条例の研究では,その制定の経緯から,公衆衛生と市町村経営原則に焦点を当てた研究が多くなされてきた。しかし,そうした研究の視角では,1911年,1913年の水道条例改正あたりまでしかカバーされず,戦後復興期,高度経済成長期と並ぶ「水道の隆盛期」である大正期以降が視野に入らない。この時期は,水道事業の「脱衛生化」が進むとともに,水道が地方利益化していった時代である。その大正期以降,水道条例の改正論が沸き起こる。改正論は上水協議会とその後継団体・水道協会がリードし,戦後の水道条例改正案も水道協会がリードした。 水道条例では明治初期の公衆衛生問題が,水道法ではその直前の閣議決定の重要性が強調されるあまり,その間の四半世紀の動きが軽視されがちである。 本研究は,その四半世紀にも焦点をあて,水道行政の2つの基本法を中心に,近代水道行政の歩みを考察するものである。
著者
吉元 俊輔 青山 一真 梶本 裕之 西川 敦
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.58, no.4-5, pp.147-159, 2020-09-10 (Released:2020-10-30)
参考文献数
46

Studies about electrical current passing through the body such as bioelectricity measurement, electrical excitation, and electrical stimulus have contributed to the field of medical and biological engineering. To evaluate the applicability of the Clinical Trials Act, stimulus conditions are needed to be designed based on the understanding of safety criteria provided by various organizations, as well as the effects of the electricity applied to the human body. Because electrical current causes various effects such as perception, pain, injury, and fibrillation, safety design is essential. This paper summarizes the effects and safety criteria of the electricity applied to the human body based on the available guidelines. Furthermore, effects and criteria of the electricity applied to the head are discussed. Finally, we present an example of the stimulus evaluation to confirm the applicability of the Clinical Trials Act.
著者
高山 隼矢 梶原 智之 荒瀬 由紀
出版者
一般社団法人 言語処理学会
雑誌
自然言語処理 (ISSN:13407619)
巻号頁・発行日
vol.29, no.1, pp.84-111, 2022 (Released:2022-03-15)
参考文献数
45
被引用文献数
1

人間は対話においてしばしば相手の質問や発話に対して間接的な応答をする.例えば,予約サービスにおいてユーザがオペレータに対して「あまり予算がないのですが」と応答した場合,オペレータはその応答には間接的に「もっと安い店を提示してください」という意図が含まれていると解釈できる.大規模な対話コーパスを学習したニューラル対話モデルは流暢な応答を生成する能力を持つが,間接的な応答に焦点を当てたコーパスは存在せず,モデルが人間と同様に間接的な応答を扱うことができるかどうかは明らかではない.本研究では既存の英語対話コーパスである MultiWoZ を拡張し,71,498 件の間接的応答と直接的応答の対からなる対話履歴付きパラレルコーパスを構築した.また,間接的な応答を扱う能力を評価するための 3 つのベンチマークタスクを設計し,最新の事前学習済みモデルの性能を調査した.さらに,ユーザーの間接的な発話を事前に直接的な発話に変換することで対話応答生成の性能が向上することを確認した.
著者
高槻 成紀 梶谷 敏夫
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
pp.1903, (Released:2019-11-10)
参考文献数
30

丹沢山地は 1970年代からシカが増加し、その後シカの強い採食圧によって植生が強い影響を受けて貧弱化し、表土流失も見られる。このような状況にあるシカの食性を 2018年の 2月から 12月まで、東丹沢(塔が岳とその南)と西丹沢(檜洞丸とその南の中川)、西部の切通峠においてそれぞれ高地と中腹(ただし西では高地のみ)において糞を採集し、ポイント枠法で分析し、次のような結果を得た。 1)全体に双子葉植物の葉が少なく、繊維、稈が多かった。 2)季節的には繊維が冬を中心に多いが、場所によっては夏にも多かった。 3)標高比較では高地でイネ科が多かった。 4)場所比較では東丹沢ではササが多い傾向があった。 5)シカが落葉を食べている状況証拠はあるが、糞中には微量しか検出されず、その理由は不明である。これらの結果はほかのシカ生息地と比較して、シカの食物中に葉が少なく、繊維が多く、当地のシカが劣悪な食糧事情にあることを示唆する。このことから、丹沢山地の森林生態系のより良い管理のためには、シカ集団の栄養状態、妊娠率、また植生、とくにササの推移などをモニタリングすることが重要であることを指摘した。
著者
中村 拓人 梶本 裕之
出版者
特定非営利活動法人 日本バーチャルリアリティ学会
雑誌
日本バーチャルリアリティ学会論文誌 (ISSN:1344011X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.1, pp.35-43, 2018-03-31 (Released:2018-03-31)
参考文献数
29

The Hanger Reflex is a phenomenon that a head rotates involuntarily when the head is fastened with a wire hanger. This phenomenon is also observed on the wrist, and is expected to apply for small and simple haptic feedback device. However, the poor responsiveness and large actuators are still left as issues. In the meantime, we discovered a phenomenon that the perceptual force from the hanger reflex is enhanced when the vibration is presented to the wrist. If we can control this simple and strong perceptual illusion, we can cope issues still left and realize the small and simple haptic device. Therefore, in order to apply this phenomenon to the haptic device, this paper reports details about this phenomenon and the effect of the frequencies and amplitudes of the vibration. As results of the experiments, we observed that the low frequency (50-100Hz) vibrations efficiently enhanced the perceptual force. Also, we observed that the participants perceived stronger perceptual force if the vibration of a greater amplitude was presented. These results suggest that the enhancement of the perceptual force is controllable and can apply to the haptic device.
著者
梶田 秀司
出版者
一般社団法人 日本ロボット学会
雑誌
日本ロボット学会誌 (ISSN:02891824)
巻号頁・発行日
vol.27, no.4, pp.392-395, 2009 (Released:2011-11-15)
参考文献数
13
被引用文献数
5 6
著者
梶原 良則
出版者
福岡大学
雑誌
福岡大學人文論叢 (ISSN:02852764)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.1499-1527, 2003-12
著者
梶木 尚美 藤井 聡子 森田 浩司
出版者
大阪教育大学附属高等学校池田校舎
雑誌
研究紀要
巻号頁・発行日
vol.43, pp.1-17, 2010-12-22

新学習指導要領では、地歴科の各科目を他の二科目と関連付けながら教えるようにと指示している。本校地歴科では、日本史・世界史・地理の教員が大黒屋光太夫をテーマに共同研究をすすめ、教材作成と授業実践を行った。またデジタル化の進みにくい歴史の授業でデジタル教材の作成とプロジェクターを用いた授業展開の可能性を探った。
著者
久田 信行 金原 洋治 梶 正義 角田 圭子 青木 路人
出版者
日本不安症学会
雑誌
不安症研究 (ISSN:21887578)
巻号頁・発行日
vol.8, no.1, pp.31-45, 2016-12-31 (Released:2016-12-31)
参考文献数
45
被引用文献数
6

わが国における,場面緘黙(選択性緘黙)の診断,治療,教育における捉え方について概観した。DSM-5から不安症群に移動したことで,場面緘黙の理解と成人例への注目が促進されるものと推察した。場面緘黙を多く診察しているK小児科の実践を基に,初診時の対応など重要な観点を示した。特に,発話以外の行動や動作に関連する諸症状について検討した。場面緘黙の出現率については,議論のあるところであるが,わが国で最近行われた大規模調査を紹介し,あわせて,学校での対応について述べた。その調査では,小学校段階で,男児0.11%,女児0.20%,全体で0.15%の出現率であった。最後に,国際保健機構(WHO)のICFと,そこから派生したWHODAS2.0を紹介し,場面緘黙の場合,生理レベルや個人レベルの問題もさることながら,社会参加のレベルの問題へ,当事者視点の研究も含めて接近していくことの重要性を論議した。
著者
奥野 真吾 橋本 健 清水 里恵 高木 えり奈 梶口 智弘
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.62, no.10, pp.1510-1514, 2021 (Released:2021-11-03)
参考文献数
11

症例は75歳女性。肺腺がん術後再発に対する抗がん剤治療歴と特発性血小板減少性紫斑病(ITP)に対するHelicobacter pylori除菌治療歴がある。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するBNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種の2週間後に貧血を指摘され,血液・腫瘍内科を受診した。直接・間接クームス陽性の正球性正色素性貧血を認め,LDH・間接ビリルビン・網赤血球が高値であり,自己免疫性溶血性貧血(AIHA)と診断した。BNT162b2 mRNA COVID-19ワクチン接種の他には明らかな誘因を認めなかった。Prednisolone療法により速やかに病勢の改善が得られた。COVID-19の感染拡大抑制のためワクチン接種が非常に重要であると考えられているが,ワクチン接種の広がりとともにITPの発症・増悪が報告されている。一方でAIHAの報告は希少である。今後のワクチン接種事業の進展に際しAIHAの発症についても注意すべきと考えられた。
著者
久堀 保 梶 龍兒
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.87, no.4, pp.623-628, 1998-04-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
5

慢性炎症性脱髄性ポリニューロパチーは慢性の経過をとる運動知覚性ニューロパチーの一群で,近位部優位の末梢神経系有髄線維の障害による.診断は,臨床的・病理学的所見や脳脊髄液所見より行われるが,特に電気生理学的所見が重要である.治療は,副腎皮質ステロイドホルモン療法, azathioprine・cyclophosphamideなどの免疫抑制療法,血漿分離療法が一般的であるが,最近免疫グロブリン療法が注目されている.
著者
恒松 雅 坪井 一人 熊谷 祐 良元 和久 梶本 徹也 柏木 秀幸
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.77, no.7, pp.1813-1817, 2016 (Released:2017-01-31)
参考文献数
9
被引用文献数
1

症例は73歳,男性.起床時の急激な腹痛にて近医を受診した.汎発性腹膜炎および急性腎障害の診断で当院へ救急搬送され,緊急手術となった.術前の尿道カテーテル挿入の際に深部尿道での抵抗が強く,挿入は困難であったが,挿入後は多量の尿排出が得られた.開腹所見では大量の腹水と腹膜および腸間膜に瀰漫性の点状出血を認め,腹膜炎の所見であったが原因病変は同定できず,洗浄ドレナージのみを行って手術を終了した.術直後より急性腎障害が速やかに改善されたため,膀胱破裂に伴うpseudo-renal failureを疑い,翌日行った膀胱造影検査にて膀胱破裂の確定診断となった.学童時に会陰部を強打した既往が判明し,膀胱鏡検査で外傷の既往に矛盾しない尿道狭窄を認め,膀胱破裂の原因と考えられた.術後は腹膜炎も速やかに改善された.急性腎不全を呈し消化管に責任病変を認めない腹膜炎においては,同病態を念頭に置いた精査が肝要である.
著者
梶 茂樹
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.8-10, 2001-04-30 (Released:2017-08-31)

Tone is one of the common features of the world's languages. It is found not only in East and Southeast Asian languages, but in many languages of the world: native American, New Guinean, African, etc. If we add to this category pitch-accent languages, an overwhelming number of the world's languages can be seen to exploit this particular phonetic feature in varying degrees. Four languages and language groups are chosen in this issue to exemplify various tone types; namely, Chinese, Korean, Haida (North American) and Bantu (Africa). Although typology is considered in the analysis of these languages, we mainly intend to show different tone and/or pitch-accent languages, no unification being attempted as to the usage of the terms tone and pitch-accent.
著者
西谷 真人 杉野 友啓 門脇 孝徳 﨑川 伸基 西川 和男 梶本 修身
出版者
日本補完代替医療学会
雑誌
日本補完代替医療学会誌 (ISSN:13487922)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.113-116, 2010 (Released:2010-10-15)
参考文献数
4
被引用文献数
2 2

プラズマクラスターイオン®の肌保湿効果および快適性向上作用について検討するため,肌の乾燥を感じやすい健常女性 32 名を対象とした単盲検ランダム化 2 試験区クロスオーバー試験を実施した.対照と比較して,プラズマクラスターイオン濃度 2.5 万個/cm3 では,有意な肌水分量の増加がみられ,イオン濃度 7 千個/cm3 では,有意な快適感の上昇がみられた.プラズマクラスターイオンが肌保湿効果や快適感向上作用を有することが示唆された.