著者
森 貴裕 佐野 正弥 杉山 悟 吉原 四方 寺邑恵 里香 門馬 牧子 水上 創 中原 史雄 羽田野 敦子 藤澤 美亜 小池 潤 鈴木 孝良 松嶋 成志 鈴木 秀和
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会 関東支部
雑誌
Progress of Digestive Endoscopy (ISSN:13489844)
巻号頁・発行日
vol.97, no.1, pp.73-75, 2020-12-18 (Released:2021-01-08)
参考文献数
5

A 22-year-old woman who had abdominal pain and diarrhea from 5 days ago got a CT scan in the hospital of origin and had a tumor about 5 cm in the stomach and bleeding. Upper gastrointestinal endoscopy revealed a large gastric submucosal tumor in pylorus. We considered it a malignant gastric submucosal tumor, and performed surgery, it was diagnosed as gastric plexiform fibromyxoma. Gastric plexiform fibromyxoma is a rare gastric mesenchymal tumor first reported by Takahashi et al. in 2007. Gastric plexiform fibromyxoma usually causes nonspecific symptoms of bleeding signs and is often operated on for that reason. However, surprisingly, plexiform fibromyxoma is a benign tumor with no reports of metastasis or recurrence.
著者
森 貴司 桑原 知剛 齊藤 圭司
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
日本物理学会誌 (ISSN:00290181)
巻号頁・発行日
vol.72, no.11, pp.800-804, 2017-11-05 (Released:2018-08-06)
参考文献数
25

レーザー光などの高強度,高周波数の周期外場によって非平衡状態に駆動された系は様々な興味深い性質を示すことが知られている.周期外場による効果を積極的に用いることで平衡状態では実現が困難な新奇物性を探究しようという研究が,近年強相関電子系や冷却原子系の分野で活発に進められている.周期外場に駆動された量子多体系は豊富な物理現象を示すと考えられている一方,周期外場によって系はエネルギーを吸収し続け,ついには完全に無秩序な高温の状態に緩和していくことが予想される.近年の孤立量子系における熱平衡化についての理論的整理を通して,固有状態熱平衡化仮説(ETH)という考え方が熱平衡化を説明する有望な視点の一つを与えるものとして提案され,数値計算によってその妥当性が確かめられてきた.このETHの周期駆動系への自然な拡張(これをフロケETHという)は,熱的に孤立した周期駆動下での量子多体系は最終的に温度無限大の状態に行き着くことを予想する.この予想は,強相関電子系や冷却原子系で議論されている周期外場下での興味深い非平衡状態は実際には真の定常状態ではなく,有限の寿命を持った準定常な非平衡状態であることを示唆する.それでは,完全に無秩序な状態に行き着く前に,このような準定常的な状態が本当に存在するか,存在するとしたら,それを理論的にどう理解できるか,という問題は非平衡統計物理学の基礎論の観点から面白い問題である.また,周期駆動と多体効果によって創発した興味深い物性がどの程度の時間スケールにわたって持続するのか,つまりこのような非平衡状態の安定性を明らかにすることは新奇物性の探究の面でも重要である.我々は,フロケ理論の数学的に厳密な解析によって,これらの問題に答えることに成功した.具体的には,フロケ理論で重要な役割をするフロケハミルトニアンのマグナス展開の漸近級数的な性質を数学的に厳密に証明し,この漸近収束性が,興味深い非平衡準定常状態が長時間にわたって安定に存在することを保証することを明らかにした.さらに,そのマグナス展開の発散の仕方から,非平衡定常状態が持続する時間スケールの下限を評価することができる.これらの研究によって,高強度,高周波数の外場のもとで,量子多体系は準定常状態に緩和した後に真の定常状態に緩和する,二段階緩和過程(Floquet prethermalization)が普遍的に生じることが明らかになった.この準定常状態は,フロケハミルトニアンのマグナス展開を低次で切断することによって得られる,静的な有効ハミルトニアンのGibbs状態(熱平衡状態)によって記述される.したがって,周期外場によって駆動された系の新奇物性を探究するという目的を達成するための基本的戦略は,「対応する有効ハミルトニアンの熱平衡状態が望ましい性質を持つように,物理系と周期外場をうまく選ぶべし」,ということになる.
著者
森 貴史
出版者
関西大学文化財保存修復研究拠点
雑誌
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巻号頁・発行日
vol.4, pp.117-129, 2013-03-04

After Alexander the Great died, his successor Ptolemy I, known as Ptolemy Soter, became the ruler of Egypt and set about making the Mediterranean city, Alexandria, not only the center of politics, but also the center of learning and culture. Soter also founded the Great Library of Alexandria (hereinafter referred to as the Great Library), and the Great Library became most famous for its collection of cultural and intellectual works in the ancient world. All the remains and sites, however, were under water and their historical details are unclear. "Mouseion" had also the Great Library, and many top scholars and intellectuals were brought together to contribute to the development of the academic achievements during the Hellenistic period. It is also said that the Great Library played an important role in the Greek translation of the Old Testament, "The Septuagint," the translation of the seventy interpreters. The policies on religion included the creation of Serapis, an ancient Egyptian religion. Serapis was actually a composite of the Egyptian god and the Greek god, and was created to form a spiritually integrated world of both the Egyptian and Greek people. As the Ptolemy Dynasty in Egypt began to fade, the Great Library as well as Serapis decreased in strength. Nevertheless, the culture of Alexandria, the ancient academic city, and the characteristics of the Great Library are still worth reviewing because their concept is a prototype of criteria for modern universities and libraries.
著者
生田 陽二 伊藤 麻美 森 貴幸 鈴木 洋実 小出 彩香 冨田 直 清水 直樹 三山 佐保子
出版者
一般社団法人 日本小児神経学会
雑誌
脳と発達 (ISSN:00290831)
巻号頁・発行日
vol.49, no.4, pp.283-284, 2017 (Released:2017-07-12)
参考文献数
9

6歳女児. 発熱・頭痛で発症 (第1病日), 第7病日に傾眠傾向とけいれんが出現し入院. 頭部MRI拡散強調画像では大脳皮質に広範囲の拡散制限を, 脳波では高振幅徐波と全般性あるいは多焦点性の棘徐波複合を認めた. 入院時より下肢間代発作や全身強直発作が群発し, 人工呼吸管理とした. 発作は治療抵抗性で, 第9病日にthiopental (TP) 持続投与を開始したところ, 臨床発作は消失した. TP開始後, 心機能悪化が懸念されたため他の抗てんかん薬を併用してTPの減量を試みた. しかし部分発作が再発し, 脳波も数十秒間連続する多棘波が5~10分間隔で出現する非臨床発作と考えられる所見となり, TP離脱は困難であった. 第24病日に24時間の絶食期間を経てケトン指数3 : 1でケトン食療法を開始したところ, 絶食開始24時間後には背景脳波活動の改善がみられ, ケトン食開始後は速やかに発作と脳波上の棘波が減少した. 第35病日以降, 発作は消失し第42病日にTPを終了した. 以上の経過より, 本症例はTPからの離脱にケトン食療法が有効であった難治頻回部分発作重積型急性脳炎 (AERRPS) と診断した. AERRPSでは抗てんかん薬の大量かつ長期間の経静脈投与を必要とし, 心機能を含めた臓器障害が問題となる. 抗てんかん薬経静脈投与からの離脱困難例においてケトン食療法は選択肢の一つであり, 輸液中の糖質制限が発作抑制に有効である可能性が示唆された.
著者
森 貴規 横内 憲久 岡田 智秀
出版者
公益社団法人 日本都市計画学会
雑誌
都市計画論文集 (ISSN:09160647)
巻号頁・発行日
vol.40.3, pp.871-876, 2005-10-25 (Released:2017-07-01)
参考文献数
46

本研究は、通称地名を活用した谷戸の景観保全を促すために、通称地名の対象景観とその特徴を明らかにするものである。そのため、本調査では、横須賀市田浦・長浦地区において、文献調査、地域の歴史に詳しい方々へのヒアリング調査、現地踏査および図面分析を実施した。 その結果、現在でも継承されている 12箇所の対象景観を明らかにし、その構図的特徴と視覚構造を把握した。そして、それらを通じて対象景観の保全策を提示した。
著者
森 貴教
出版者
神奈川大学
雑誌
民具マンスリー (ISSN:09123253)
巻号頁・発行日
vol.50, no.6, pp.12449-12458, 2017-09
著者
有森 貴夫
出版者
日本結晶学会
雑誌
日本結晶学会誌 (ISSN:03694585)
巻号頁・発行日
vol.63, no.2, pp.113-120, 2021-05-31 (Released:2021-06-05)
参考文献数
26

In the protein crystallography, antibodies are frequently used as ‘crystallization chaperones’, where their binding facilitates production of high-quality diffracting crystals of complex macromolecules that are otherwise resistant to crystallization. To develop an ideal antibody fragment, we have designed a novel antibody fragment format, called ‘Fv-clasp’, that is a fusion of an anti-parallel coiled-coil structure derived from the hMst1 SARAH domain to the Fv fragment of an antibody. We have demonstrated that Fv-clasp has superior properties over conventional antibody fragments including Fab and single-chain Fv(scFv)in terms of producibility, stability, and crystallizability.
著者
工藤 雄一郎 米田 穣 大森 貴之
出版者
日本第四紀学会
雑誌
第四紀研究 (ISSN:04182642)
巻号頁・発行日
pp.60.2020, (Released:2021-06-11)
参考文献数
47

本稿では,日本列島で最古段階となる縄文時代草創期の隆起線文土器群の年代的位置づけを検討するため,東京都百人町三丁目西遺跡出土土器内面付着炭化物の分析を行った.土器に付着した炭化物は少量であったが,炭素をセメンタイトに合成する微量分析による放射性炭素年代測定を実施し,12,660±50yrsBP(15,270~14,940calBP)の土器であることが分かった.また,炭素・窒素安定同位体分析により,炭化物の由来が陸上動植物であり,年代測定結果の信頼性が高いことを示した.隆起線文土器の土器付着炭化物の放射性炭素年代測定50点および最古段階の資料である長崎県福井洞窟3c層出土炭化材による隆起線文土器の年代を比較し,隆起線文土器は約16,000年前から2,000年程度続く土器型式であり,百人町三丁目西遺跡の土器はそのなかでも中段階に位置づけられることを示した.
著者
宇治村 信明 大森 貴允 冨岡 真光 滝野 佑介
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.46 Suppl. No.1 (第53回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.H2-3_1, 2019 (Released:2019-08-20)

【はじめに、目的】中殿筋は股関節外転筋として周知されており、基本動作や日常生活動作時の骨盤安定性に重要な役割を果たす。股関節術後患者では中殿筋速筋線維の顕著な萎縮が認められ、中殿筋の質的機能向上の必要性が報告されているが、中殿筋速筋線維に対する治療手段は、限られた手段しか報告がなされていない。よって本研究の目的は、股関節外転運動速度を変化させることで、中殿筋速筋線維に対する質的トレーニングとなり得るかを表面筋電図を用いて検証した。【方法】対象は整形外科学的疾患及び神経学的疾患の既往歴を有さない健常男性30人(年齢29.3±5.9歳、身長171.1±5.2㎝、体重65.1±8.1㎏)とした。方法は、測定肢位は側臥位、股関節屈曲伸展角度中間位、骨盤帯での代償予防のためベルトにて骨盤を固定した。股関節外転運動は0°から20°への運動とし、運動開始のタイミングを把握するためフットスイッチを用いた。なお運動課題遂行前に無負荷にて練習を行った。負荷量は股関節外転最大筋力の10%の負荷量とした。運動課題はメトロノームを使用し1分間に60拍、40拍、20拍のリズムでの3条件とし、各1条件10人の3群にて中殿筋速筋線維の発火頻度量を比較した。解析した波形の中央部より前半を求心性、後半を遠心性とした。発火頻度量はwavelet変換を用いて表面筋電図周波数解析(EMGマスター小沢医科器械)にて測定を行った。統計学的解析は、各群及び求心性、遠心性収縮時における中殿筋速筋線維の発火頻度量を一元配置分散分析を用いて比較した。統計学的有意水準は5%未満とした。【結果】各群での中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は60拍群(173.7±63.9Hz)、40拍群(92.9±52.5Hz)、20拍群(74.9±40.6Hz)であり、運動速度を速めるにつれ有意に高い値を認めた(p<0.05)。求心性収縮時の中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は、いずれも有意差を認めなかった。遠心性収縮時の中殿筋速筋線維の発火頻度量の結果は、60拍群(477.0±191.9Hz)が40拍群(227.5±99.6Hz)、20拍群(179.4±111.3Hz)と比較し、有意に高い値を認めた(p<0.05)。【結論】股関節外転運動速度を速めることは、中殿筋速筋線維の発火頻度量の増大へ寄与することが示唆された。さらに中殿筋速筋線維の発火頻度量は、運動速度が速く、遠心性収縮にて高い値を示した。これは運動速度を速めることで遅筋線維に比べ速筋線維の方が発火頻度に有利であると報告されており、本研究においても運動速度を速くしたことで運動単位の動員と運動ニューロンの発火頻度量増大に繋がったと考える。求心性と遠心性を比較し、遠心性ではエネルギー消費量が少なく、強い力を出すことができる収縮様式と報告されており、本研究においても遅筋線維に比べ速筋線維の方が発火頻度に有利であったと考える。本研究の結果から股関節外転運動における運動速度や収縮様式を変化させることは、中殿筋の質的トレーニングの一助となり得ることが示唆された。【倫理的配慮,説明と同意】本研究は松山リハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て実施した。対象者には口頭にて研究の趣旨を説明し、その内容について十分に理解を得た。
著者
松本 祐樹 森 貴久
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.21, no.2, pp.219-226, 2016 (Released:2017-07-17)
参考文献数
17

1998年から神奈川県において、本来は中国に分布するアカボシゴマダラ名義タイプ亜種Hestina assimilis assimilisが確認されている。アカボシゴマダラ幼虫の食餌植物は在来種であるゴマダラチョウH. persimilis japonicaとオオムラサキSasakia charondaと同じエノキCeltis sinensis Persであるため、在来種との食物資源をめぐる競合が危惧される。山梨県でのアカボシゴマダラの侵入については報告例が少なく、現在の分布状況や個体数密度は不明である。また、越冬して定着しているかについてもわかっていない。本研究は、2012年から2014年に神奈川県から山梨県県央部にかけてのアカボシゴマダラの幼虫の分布と山梨県での越冬の可能性について明らかにした。アカボシゴマダラの山梨県での分布は山梨県県央地域まで確認されたが、生息率は山梨県県央地域と東部地域は神奈川県地域に比べて低く、県境地域ではその中間だった。また、自然下でも実験下でも山梨県内で越冬できることが確認されたが、自然下での生存率は8%と低かった。これらの結果から、アカボシゴマダラは山梨県県央部にまで徐々に分布を拡大していること、および山梨県での越冬は生理的には可能だが、自然下では生理的要因以外の要因で越冬しにくくなっていることが示唆された。今後、山梨県内でのアカボシゴマダラの生息率が上昇すれば、在来種蝶への悪影響が懸念される。
著者
佐伯 史子 萩原 康雄 奈良 貴史 安達 登 米田 穣 鈴木 敏彦 澤田 純明 角田 恒雄 増山 琴香 尾嵜 大真 大森 貴之
出版者
日本人類学会
雑誌
Anthropological Science (Japanese Series) (ISSN:13443992)
巻号頁・発行日
vol.124, no.1, pp.1-17, 2016
被引用文献数
2

岩手県大船渡市野々前貝塚から出土した縄文時代晩期の熟年男性1体(1号),胎児ないし新生児1体(2号),壮年後半から熟年前半の女性1体(3号),熟年女性1体(4号),3歳程度の幼児1体(5号)の計5体について,形態人類学的および理化学的分析を実施した。人骨の年代は放射性炭素年代測定により3150~3000年前(cal BP)と推定された。形態学的検討およびDNA分析の双方から,野々前貝塚人骨が縄文時代人に一般的な形質を有することが明らかとなった。ミトコンドリアDNAのハプログループが判明した3体(1号N9b1,4号N9b*,5号M7a2)に母系の血縁関係は認められなかった。特筆すべき古病理学的所見として,出土成人3体全ての外耳道に明瞭な外耳道骨腫が確認された。これは,野々前貝塚の人々が水中(潜水)ないし水面域での漁撈活動に従事していた可能性を示唆するものである。炭素・窒素同位体比の分析では海産物を多く摂取していた食性が提示されており,外耳道骨腫の多発との関連がうかがわれた。また,出土成人3体全ての頸椎に重度の椎間関節炎が生じており,野々前貝塚の人々が頸椎に強い負荷のかかる生活環境にあったことが想起された。
著者
乾 亮介 福島 隆久 斎藤 弦 森 里美 出井 智子 森 貴大 原田 美友紀 森 清子 中島 敏貴
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement Vol.42 Suppl. No.2 (第50回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.0792, 2015 (Released:2015-04-30)

【はじめに,目的】近年日本では高齢化がすすみ,理学療法の対象患者の中には腰椎後彎変形を呈するものが少なくない。胸腰椎後彎変形は呼吸機能低下や体幹の伸展制限といった機能障害を引き起こし,日常生活能力(ADL)を低下させると報告されている。これら胸腰椎後彎変形の治療において整形外科的な手術による報告はあるが理学療法による報告はみられない。本研究の目的は胸腰椎後彎変形を呈する患者に対して腹部周囲筋である外腹斜筋,内腹斜筋ストレッチを実施し,その効果を検証することである。【方法】急性期病院入院中に理学療法依頼のあった患者で胸腰椎後彎変形によりADLが低下していると考えられた13名(85.5±6.8歳,男性:6名 女性:7名)を対象とした。疾患は誤嚥性肺炎6名,人工膝関節置換術3名,脳梗塞1名,腱板断裂の術後1名,出血性膀胱炎1名,肝性脳症1名であった。Minimal Mental State Examination(MMSE)の平均は17.9±8.0と多くの患者において認知機能の低下を認めた。患者には椅子座位が可能になった時点で,両足足底接地,膝関節,股関節90°になるようにして端座位となり,できる限り体幹を伸展した状態で正面を直視してもらうよう指示した。その後,自在曲線定規を患者の脊柱にあて,患者の脊柱の彎曲変形を定規に形状記憶させた後,彎曲を形状記憶した定規ですぐに紙面上にトレースし,Milneらの方法に従い,円背指数を求めた。計測後以降は各疾患別の標準的な理学療法に加え,週5回の頻度で約10分間Ylinenの方法に従い側臥位にて左右の外腹斜筋,内腹斜筋のストレッチを施行し,約4週後,同様の方法で再度円背指数を求めた。統計処理は介入前後の円背指数に対して対応のあるt検定を用い,Functional Independence Major(FIM)の運動項目についてはWilcoxon符号付順位検定を用いた。有意水準は5%未満とした。【結果】円背指数は介入前の17.4±5.1に対して,介入後15.5±4.7と有意に減少し(p<0.01),ADLではFIMの運動項目において介入前35.3±26.6に対し45.3±28.0と有意な改善を認めた(p<0.01)。【考察】外腹斜筋,内腹斜筋は肋骨から起こり,骨盤に付着し,体幹を屈曲させる作用がある。高齢者は習慣的な姿勢や脊柱起立筋群の低下により,これらの筋群を伸張する機会が少なくなり,結果として脊柱の器質的変化に加えて胸腰椎後彎変形を増悪させていると考える。そのため高齢者への外腹斜筋,内腹斜筋ストレッチは脊柱の器質的な変形等には影響を与えなくても,それらを増悪させる因子である体幹屈曲作用のある筋群の伸長により,骨盤の後傾や体幹の屈曲モーメントを軽減させ,より脊柱起立筋群の筋力発揮をしやすくすることで体幹伸展がしやすくなったと考える。そして各患者に残存している脊柱の可動範囲内で脊柱後彎変形を軽減させたと考える。【理学療法学研究としての意義】外腹斜筋,内腹斜筋を中心とした腹部周囲筋ストレッチにより胸腰椎後彎変形を軽減できる可能性が示唆された。腰椎後彎変形が要因となって下肢の可動性や筋力低下,或は呼吸機能の低下によりADLが低下している高齢患者は多く存在し,これからもさらに増えていくと予想される。従来,高齢患者の腰椎後彎変形の改善は困難であると考えられていたが,症例によっては改善できる可能性があり,胸腰椎後彎変形が原因でADL制限をきたしている患者にはその評価と介入の重要性が示唆された。また,今回の検証において疾患や男女差なく改善を認めたことより,今後検討を重ねることにより,高齢に伴う胸腰椎後彎変形に対する予防法を考案できる可能性があると考えられる。
著者
大森 貴弘
出版者
常葉大学教育学部
雑誌
常葉大学教育学部紀要 = Tokoha University Faculty of Education research review (ISSN:2188434X)
巻号頁・発行日
no.38, pp.409-425, 2017-12

ドイツでは、かつては日本と同じく離婚後単独親権を民法で定めていた。しかし、1982 年に連邦憲法裁判所は、離婚後の例外なき単独親権を定めた民法1671 条4 項1文の規定が、親の権利を定めた基本法6 条2 項1 文の権利を侵害すると判示した。これ以後、ドイツでは離婚後の例外なき単独親権は違憲となり、個別事例での対応が続いていたが、1998 年に親子法改正法(1997 年制定)が施行され、離婚後共同親権(共同配慮権)が法制化された。
著者
桜井 雄太 森 貴久
出版者
帝京科学大学
雑誌
帝京科学大学紀要 = Bulletin of Teikyo University of Science (ISSN:18800580)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.11-15, 2016

We investigated whether Japanese land snails like hydrangea in rain season, which is a typical image for Japanese. Wesurveyed five sites in Uenohara, Yamanashi, central Japan, to collect land snails and record vegetation between May andJuly, 2006. We found more than 400 snails of eight species, most of which were Euhadra peliomphala and Acusta despectasieboldiana. E. pelimphala were found on leaves of hydrangea more frequently than expected from vegetation at the sites,whereas A. despecta sieboldiana were frequently found on other leaves of plants than hydrangea, cherry and Poaceae grass.We also tested whether E. pelimphala prefer hydrangea leaves to cherry or Poacea leaves by experiments in a laboratory, andfound no preference of hydrangea to other species. These findings suggest that the image of land snails on hydrangea duringrain season is a biologically correct image at least for E. pelimphala , but the snail is not necessary prefer hydrangea leavesmuch better to other plants.
著者
森 貴久 伊部 弘 小倉 久美子 佐藤 誉康 大谷 結
出版者
一般社団法人 日本生態学会
雑誌
保全生態学研究 (ISSN:13424327)
巻号頁・発行日
vol.15, no.1, pp.61-70, 2010
参考文献数
17

沖縄島北部のやんばる地域にのみ生息しているヤンバルクイナGallirallus okinawaeの交通事故記録を解析し、事故地点の特徴と月別の事故件数に関連する要因を調べた。ヤンバルクイナの交通事故死は1995年6月〜2007年8月の間に69件報告されており、増加傾向があった。事故地点は県道70号線上と県道2号線上に多く、県道70号線では近年北上している傾向がみられた。事故記録数は、5月(30.4%)、6月(30.4%)、8月(13.0%)に多く、事故個体の成長段階は、性に関係なく、成鳥が最も多かった(78.3%)。成鳥以外では、雛が4月、幼鳥が5月、6月、若鳥が7、8、12、1月に確認された。ヤンバルクイナの目撃数は5月〜7月が多く、観光客数は8月が最も多かった。2006年7月〜2007年10月の期間について、月別事故数と目撃数、事故数と観光客数にはそれぞれ正の偏相関がみられた。2005年〜2007年に事故が起きた36地点については、長い直線あるいは緩やかなカーブで、ガードレールがない場所が多かった。県道70号線の事故現場付近で通過車両の速度を測定したところ、制限速度以下で走行していたのは全体の15%であり、また、23%が制限速度を15km/h以上超過していた。これらのことから、ヤンバルクイナの交通事故がどの時期にどこで発生するかについてのリスクに影響する要因として、(1)ヤンバルクイナの繁殖生態に関連した活動性、(2)やんばる域内での交通量、(3)走行のしやすさやヤンバルクイナの接近のしやすさなどの道路環境、が示唆された。ヤンバルクイナの個体数減少をもたらす交通事故を減らすためには、ヤンバルクイナの生態とやんばる域内での交通量を考慮しながら、ヤンバルクイナの交通事故リスクを減少させるための道路環境の改良を行うことが重要である。これまでの、ヤンバルクイナを認識しやすくする取組みに加えて、ヤンバルクイナが路上に接近しにくくする対策が有効かもしれない。