著者
林 尚孝 森泉 昭治 弓矢 智生 唐橋 需 森本 国夫
出版者
The Japanese Society of Agricultural Machinery and Food Engineers
雑誌
農業機械学会誌 (ISSN:02852543)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.343-348, 1985 (Released:2010-04-30)
参考文献数
18

耕うんの効果を判定するためには, 土壌状態の変化を評価できる試験法が確立されねばならない。そのためには砕土状態や反転状態を定量化して表現する必要がある。砕土状態を表わす土塊分析法にも多くの問題がある。採土法や篩の目開き体系などが標準化されていない上, 篩別された土塊の評価法も確立されているとは言えない。本報告では, レイリー分布によりロータリ耕うん後の土塊分布がきわめて良く近似でき, 近似式のふたつのパラメータから平均重量直径と標準偏差, その他の土塊に関するパラメータが簡単に求められることを明らかにした。砕土状態を数量化することができるので, 土塊分析にとり本方法は有力な手法となろう。
著者
矢島 雅紀 千葉 大紀 米谷 嘉朗 森 達哉
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2021論文集
巻号頁・発行日
pp.365-372, 2021-10-19

DNS アンプ攻撃,DNS キャッシュポイズニング攻撃のように,DNS をターゲットとした攻撃の脅威は衰えることをしらない.また,フィッシングサイトや詐欺メールなど,ドメイン名の真贋性判定の困難性を悪用した攻撃は依然として猛威を奮っている.これらの DNS に関連した脅威に対する有効な対策として,様々な DNS セキュリティ機構が提案され,標準化と実装が進んでいる.しかしながら,これらのセキュリティ機構がインターネットの DNS エコシステムにおいてどの程度普及し,どの程度有効に機能しているかは明らかではない.このような背景をもとに,本研究は主要な DNS セキュリティ機構である DNSSEC,DNS Cookie,CAA,SPF,DMARC,MTA-STS,DANE,TLSRPT を対象とし,それらの普及状況に関する大規模な調査を行う.この結果,全体として多くの DNS セキュリティ機構の普及率は低い状況にあること,そしてより設定難易度が高いセキュリティ機構ほど普及率が低いことが定量的に明らかになった.これらの知見は DNS セキュリティ機構を普及させる上で,導入が簡単な仕組みが重要であることを示唆している.
著者
西村 武 森本 一成
出版者
Japan Ergonomics Society
雑誌
人間工学 (ISSN:05494974)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.203-210, 1986-08-15 (Released:2010-03-11)
参考文献数
32
被引用文献数
10 6

CFFの測定方法と条件をCFFの測定値の変動率の大きさと測定の精度から検討した. CFFの測定方法としては調整法, 極限法および恒常法について, 測定条件としては検査光光源の輝度, 大きさ (視角), 色および単眼・両眼CFFについて比較検討した. その結果, CFFの測定方法としては極限法がいちばん精度が高いこと, 検査光光源の輝度は120cd/m2よりも500cd/m2付近のほうが変動率が大きいこと, 光源の大きさは視角1°のほうが視角2.5°より精度が高く, 視角0.5°より変動率が大きいこと, 光源の色は緑, 赤, 黄のいずれでも, また, 単眼CFFと両眼CFFのどちらでも変動率の大きさや精度に顕著な差はないことなどが明らかとなった.
著者
宮城島 賢二 平光 伸也 木村 央 森 一真 石川 志保 依田 竜二 杉浦 厚司 加藤 靖周 加藤 茂 岩瀬 正嗣 森本 紳一郎 尾崎 行男
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.44, no.2, pp.132-139, 2012 (Released:2013-09-30)
参考文献数
27

背景: 慢性心不全に対するβ1選択性β遮断薬ビソプロロールの有用性は, 複数の無作為化対照比較試験(randomized controlled trial; RCT) によって確立されているが, 国内での臨床使用および臨床成績に関する報告は少ない.目的: 日本人の慢性心不全患者に対するビソプロロールの血行動態ならびに心機能に及ぼす影響について検討する.方法: 左室駆出分画率(left ventricular ejection fraction; LVEF)40%以下の慢性心不全患者25例に対して, 0.625mgより投与開始し, 1~2週間ごとに漸増し, 24週間追跡した. New York Heart Association(NYHA)心機能分類, 血圧, 心拍数, 血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド(brain natriuretic peptide; BNP), 心エコー図検査所見, 胸部X線, 腎機能マーカー, 血中ヘモグロビン(hemoglobin; Hb)濃度の経時的変化を解析した.結果: 全例に対してビソプロロールの導入が可能であった. 経過観察中に3例が本研究から脱落した. 継続投与が可能であった22例では, LVEFをはじめとした心エコー図検査所見ならびにBNP値は, 経時的に改善傾向を示し, NYHA心機能分類も投与前後で改善が認められた. なお, 腎機能マーカーおよび血中Hb濃度は有意な変動を示さなかった.結論: ビソプロロールは, 日本人の収縮機能が低下した慢性心不全患者において, 高い忍容性を示し, 血行動態および心機能を改善することが確認された.
著者
久保 登 森 みどり
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.77, no.779, pp.2940-2952, 2011 (Released:2011-07-25)
参考文献数
22

Drive video recorders (DRs) have been installed on a plenty number of the taxicabs in large cities in Japan. This paper discusses how to carry out a detailed traffic accidents analysis using drive video recorder data obtained in Tokyo. The sequential motions of the cars concerned before and after the crash are illustrated throughout a process in the case studies of two traffic accidents. The causes of the accidents are discussed as well as measures to prevent the accidents and the DR data requirements for effective analysis based on the motion picture and the log data recorded by the commercial DRs. This newly-developed approach makes those possible to carry out the reproduction of the accident process, the estimation of the causes and the background factors, and the consideration of the preventive safety measures. It is more effective to make such analysis by using not only the DR data but also the Internet resources such as a map, an aerial photograph and other information. The requirements of DR hardware and DR data for the proper analysis of the accidents were also examined.
著者
内田 亮 千葉 伸太郎 徳永 雅一 森脇 宏人 森山 寛
出版者
耳鼻咽喉科展望会
雑誌
耳鼻咽喉科展望 (ISSN:03869687)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.473-478, 2002-12-15 (Released:2011-03-18)
参考文献数
7

睡眠時のいびき, 無呼吸を主訴として受診した患者のうち, 精査にて舌扁桃の著明な肥大がその原因と考えられた5症例 (男性4例, 女性1例) に対し, 舌扁桃切除術を施行した。そのうち2症例 (男性) は両口蓋扁桃摘出術も同時に施行して改善し, 残る3症例は自他覚所見とも改善が得られた。全例で睡眠時無呼吸低呼吸指数 : AHI, 及び動脈血酸素飽和度 : SaO2の改善は認められたが, うち1例は睡眠時無呼吸指数 : AI, 睡眠内容や日中過眠の改善には至らなかった。舌扁桃肥大による睡眠呼吸障害はその程度のわりには睡眠障害が強く出現する傾向にあり, 努力性呼吸のパターンになると考えられた。舌扁桃切除術は, あらかじめ気管切開を行う方が安全と思われるが, 超音波メスを用いることで, 出血や術後の腫脹も軽減でき, 気管切開を行わないなど侵襲が少なく, 患者にとって利点が多いと考えられた。
著者
森岡清美著
出版者
吉川弘文館
巻号頁・発行日
2002
著者
冨田 千尋 瀧田 愼 福島 和英 仲野 有登 白石 善明 森井 昌克
雑誌
コンピュータセキュリティシンポジウム2021論文集
巻号頁・発行日
pp.25-32, 2021-10-19

DRAM(Dynamic Random Access Memory)の一つのアドレスにアクセスを繰り返して,その近隣でビット反転を誘発することをRowhammer という.RAMBleed は Rowhammer を利用したサイドチャネル攻撃であり,一般ユーザのアクセス権限がない秘密情報を読み取り可能である.本論文では,OpenSSL により TLS 通信が実装された Apache Web サーバに対して,RAMBleed を用いてサーバの秘密情報の回復できることを明らかにする.まず,OpenSSL および Apache の挙動を解析し,TLS ハンドシェイクを実行する際に,RSA の秘密鍵生成に用いられる 2 つの素数がメモリ上の特定の位置に展開されることがわかった.これらの秘密情報の RAMBleed による読み取り結果には一部に誤りが含まれるが,RSA 暗号の解析手法を用いることで誤りのない秘密情報を回復可能である.我々は,OpenSSL で用いられる RSA 秘密鍵を回復するまでの RAMBleed を含む一連の攻撃を実装し,高い確率で秘密情報を取得できることを示した.
著者
森山 達矢
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.87-99, 2008-03-20 (Released:2011-05-30)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本稿のテーマは、武道の「身体技法」がどのように伝えられるのかということである。武道の身体技法の習得において重要なのは、その外面的「型」だけではなく、「内部感覚」、すなわち「身体感覚」を身につけることである。しかし、この身体感覚は、デジタル情報のように、完全なコピーを指導者から学習者に伝達することは出来ない。本稿では、筆者自身のフィールドワークに基づき、この感覚を伝達する実践の記述をおこなう。筆者は、合気道の稽古を実際におこなっている。本稿では、合気道の技の基礎を成している「呼吸力」に焦点を当てている。この呼吸力は、普段われわれが意識せず使う力とはまったく異なるため、発揮するためにさまざまな稽古が必要である。筆者がフィールドとしている合気道の流派は、この呼吸力の習得に重点を置いている。この流派では、呼吸力は、開祖植芝盛平の精神、すなわち合気道の精神を体現したものとして捉えられている。この呼吸力を発揮するための「身体技法」がいかに伝えられるのか、その独特の感覚をいかに伝えるのかということ。これが本稿の論点である。この問題に関して、伝達実践において使用される言葉に着目し、感覚を「学ぶ」という側面と感覚を「教える」という側面から、感覚伝達の実践を記述する。感覚伝達の実践においては、稽古者が自身の感覚に対して注意を向け、さらに自分の身体感覚についてより微細に感じることが可能となるような稽古体系となっていることを指摘する。そして、技遂行時の感覚が、師範が示している世界観に基づいて意義づけされることによって、指導者から学習者へと伝達されていることを指摘する。
著者
森山 達矢
出版者
日本スポーツ社会学会
雑誌
スポーツ社会学研究 (ISSN:09192751)
巻号頁・発行日
vol.17, no.2, pp.65-75, 2009-09-30 (Released:2016-10-05)
参考文献数
23

本稿は、身体の感性的次元の分析という論点に関わるものである。近年身体研究のなかで、パフォーマンスに着目する研究がなされている。本稿ではそのなかでも特に、研究者が研究対象としているパフォーマンスを実際に習得しながら研究をおこなっているものに注目する。本稿では、そうした研究を「実践的パフォーマンス研究」と呼び、その研究の意義を検討する。こうした研究は、パフォーマンスが遂行されるときの身体感覚やその感覚がどのように獲得されるのかということを問題にしている。本稿で取り上げる論者は、ボクシングを研究したL.D.ヴァカン、カポエラを研究したG.ダウニー、空手を研究したE.バー- オン=コーエンである。本稿では、この3人の研究に表れている身体に関する議論をブルデューの議論と比較しながら、身体の感性的次元に着目する身体論の可能性を検討している。本稿ではブルデューのハビトゥス概念と象徴権力概念を中心として、検討をおこなう。ダウニーとバー- オン=コーエンは、ハビトゥス概念が説明していない実践が生み出される過程を現象学的に記述し、ヴァカンは、象徴権力が身体の感性的次元でいかに作用しているのかということを内在的に記述している。 実践的パフォーマンス研究の意義は、以下の3点にまとめられる。すなわち、この研究の意義とは、感性そのものに着目することで、①ブルデュー理論の死角となっている論点を補完している、②感性による現実の構築を記述している、③パフォーマンスに対する新たな認識のありかたや方法論を提供している、ということである。
著者
橋本 律夫 小森 規代
出版者
日本神経心理学会
雑誌
神経心理学 (ISSN:09111085)
巻号頁・発行日
vol.32, no.4, pp.333-346, 2016-12-25 (Released:2017-01-18)
参考文献数
34

変性疾患による失読,失書は2つのタイプにわけられる.一つは,原発性進行性失語症に伴うものであり,いまひとつは非失語性,すなわち純粋失読と孤立性失書である.このことは失語症を来たす脳領域はもとより,それ以外の脳部位(側頭・後頭後部,角回,上頭頂小葉,運動前野を含む)も読字または書字に関係していることを反映している.神経変性疾患における書字,読字能力の評価は臨床的に重要である.その理由は以下のとおりである.(1)失読,失書症状は神経変性疾患の初発症状となり得る.(2)経時的な書字,読字能力評価により病変の進展形式の推測が可能である.(3)変性疾患患者のコミュニケーション能力は原則として病期の進行とともに徐々に限定されたものとなる.したがって,残存する読字と書字能力の評価は,それらの患者においてコミュニケーションを維持する最も有効な方法は何かを検討するのに必須である.本稿では意味性認知症とALS例を呈示し,我々が行っている失読・失書の評価方法を紹介した.また,彼らに認められた失読,失書の病態について考察した.
著者
森田 鉄二 松本 浩実 馬壁 知之 萩野 浩
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.36, no.4, pp.499-504, 2021 (Released:2021-08-20)
参考文献数
23

〔目的〕地域在住高齢者の立位姿勢と身体機能,複数転倒との関連性を明らかにすることである.〔対象と方法〕対象は地域在住高齢者219名(平均71.6 ± 9.1歳)とした.過去1年間の転倒回数,ロコモティブシンドローム,歩行速度,四肢骨格筋量,握力,骨量を評価した.立位姿勢は,円背指数,体幹傾斜角度,脊柱後弯角度(上位傾斜角度・下位傾斜角度)を評価した.〔結果〕上位傾斜角度,下位傾斜角度,体幹傾斜角度が大きいほど年齢が高く,ロコモティブシンドロームが進み,歩行速度も遅く,骨量も低かった.転倒なし群と転倒単回群と転倒複数回群で比較を行ったところ,複数回群は単回群に比べ,上位傾斜角度が高値であった.〔結語〕上位傾斜角度が大きいと身体機能が低く,複数転倒と関連する可能性がある.
著者
遠藤 智子 横森 大輔 林 誠
出版者
社会言語科学会
雑誌
社会言語科学 (ISSN:13443909)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.100-114, 2017-09-30 (Released:2018-02-07)
参考文献数
26

一般的には疑問代名詞として分類される「なに」には,極性疑問文の中で感動詞的に使われる用法がある.本研究は自然な日常会話におけるそのような「なに」について,認識的スタンスの標識として記述を行い,その相互行為上の働きについて論じる.まず,極性疑問文における「なに」は,会話の相手が明示的には述べていないことに対して話し手が確認を要求する際に用いられる.そのような環境における「なに」は,相手に確認を求める内容が,先行する会話の中で得た手がかり等の不十分な証拠に基づいて推論を行うことで得られたものであり,その正しさについて強い確信を持たないという話し手の認識的スタンスを標識するものである.さらに,「なに」は発話が行われる個々の文脈に応じて,確認内容に対する驚きおよび否定的態度等の情動表出や,からかいまたは話題転換等の行為を行う資源としても働く.