著者
清水 孝子 西原 カズヨ 澤田 康文 伊賀 立二
出版者
一般社団法人 日本医療薬学会
雑誌
病院薬学 (ISSN:03899098)
巻号頁・発行日
vol.19, no.6, pp.534-541, 1993 (Released:2011-08-11)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

Food ingestion does not affect the bioavailability of the nifedipine capsule, a calcium channel antagonist, but delays its absorption rate in healthy subjects. On the other hand, in two different sustained-release preparations of nifedipine, both the bioavailability and anti-hypertensive efficacy in one of them increases, whereas the other is not so much affected by meals. Furthermore, the food induces a reduction in the bioavailability of nicardipine sustained-release preparation, while those of nisordipine, benidipine and manidipine increase conversely.Such a change in the bioavailability based on food intake may influence the anti-hypertensive efficacy after the initial dosing of the medicine but not so after multiple dosing.In each medicine or dosage form, there are some differences in the change in the blood level and anti-hypertensive efficacy brought on by food ingestion among the drugs. In general, however, in order to improve patient compliance, we recommend that calcium channel antagonists should be taken after meals following the directions given for this medication.
著者
高木 基裕 矢野 諭 柴川 涼平 清水 孝昭 大原 健一 角崎 嘉史 川西 亮太 井上 幹生
出版者
応用生態工学会
雑誌
応用生態工学 (ISSN:13443755)
巻号頁・発行日
vol.14, no.1, pp.35-44, 2011 (Released:2011-10-01)
参考文献数
19
被引用文献数
6 5

マイクロサテライト DNA 多型解析法を用いて,重信川水系におけるオオヨシノボリ個体群の遺伝的集団構造の解析および耳石 Sr/Ca 濃度による回遊履歴の判定を行い,人工構造物による分断の程度を評価した.各サンプルの遺伝的多様度を示すヘテロ接合体率 (期待値) の平均値は 0.843~0.889 と高く,いずれの個体群間でも大きな差は見られなかった.各個体群間の遺伝的分化程度を示す異質性検定では,重信川本流系の個体群間において有意差がみられなかった.一方,石手川ダム上流域の藤野および五明川の個体群は,重信川本流系のほとんどの個体群との間で有意差がみられた.また,重信川本流系の個体群との遺伝的距離は大きかった.耳石の Sr/Ca 解析から,藤野の個体は石手川ダムにより陸封された個体であり,重信川最上流の藤の内の個体は両側回遊型であることが示された.一方,石手川ダム直下域の宿野の個体において両側回遊型および陸封型がそれぞれみられ,遡上した個体とダムから降下した個体が混在していることが確認された.以上の結果から,石手川ダム上流域個体群の陸封化が確認されるとともに,人工構造物による分断の影響を受け,石手川ダム上流域の個体群は他の重信川個体群と遺伝的に分化していることが示された.
著者
坂本 将樹 小田切 久恵 三澤 顕次 有澤 準二 清水 孝一
出版者
一般社団法人 映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会技術報告 (ISSN:03864227)
巻号頁・発行日
vol.20, no.72, pp.29-36, 1996-12-21 (Released:2017-10-13)

ELF電界の生体影響を定量的に評価するため、安全基準の中心となる電界感知閾値について、実際の人体を対象に基礎的検討を行った。まず電界の生体作用の機序を理論的・実験的に調べ、電界の交流・直流の違いによる感知閾値の変化を解析した。その結果、ヒトの電界感知の機序としては、体毛の動きによる体表刺激が支配的であること、また交流電界の方が直流電界に比べ感知閾値が低くなることなどが確かめられた。これらの結果に基づき、電界感知閾値の個人差の原因について詳しい解析を行った。これまで電界感知については、電流刺激の場合とは逆に男性の方が女性より閾値が低いと思われてきた。実験的解析の結果、この個人差は男女差というよりは体毛状態の違いに起因することがわかった。また体毛状態が同じ場合には、女性の閾値の方が低くなる可能性も認められた。次に別の個人差の要因として、被験者の心理状態の影響について検討を行った。その結果、電界感知の経験の有無や電界の体表刺激についての知識・情報の有無によっても、感知閾値が変化することが明らかとなった。ただしこれらの変化の幅は、以前に明らかにした相対湿度変化に伴う感知閾値変化の幅に比べると、はるかに小さいものであった。
著者
吉村 直樹 橘田 岳也 嘉手川 豪心 宮里 実 清水 孝洋
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.155, no.1, pp.4-9, 2020
被引用文献数
4

<p>膀胱と尿道からなる下部尿路は蓄尿と尿排出の二つの相反する機能を司り,その機能は,末梢神経だけでなく中枢神経路を介して複雑にコントロールされている.まず,蓄尿時の調節は,主に脊髄レベルの反射によって制御され,交感神経(下腹神経),体性神経(陰部神経)の興奮によって膀胱の弛緩と尿道の収縮が引き起こされる.そして,尿排出時には,脊髄から脳幹の橋排尿中枢を経由する反射経路が活性化され,副交感神経(骨盤神経)の興奮によって排尿が起こる.そして,これらの末梢神経の働きは,脊髄より上位の中枢神経によって複雑に制御され,随意のコントロールが可能となる.そして中枢での神経伝達物質としてドパミン,セロトニン,ノルエピネフリン,GABA,グルタミン酸などが排尿のコントロールに関与しており,末梢だけでなく,中枢神経路の変性疾患や外傷による障害および薬物投与が,頻尿,尿失禁,尿排出力低下などの下部尿路機能障害を引き起こす.</p>
著者
清水 孝郎 桑島 正道 河野 典夫 垂井 清一郎
出版者
一般社団法人 日本臨床化学会
雑誌
臨床化学 (ISSN:03705633)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.1-8, 1981-03-25 (Released:2012-11-27)
参考文献数
20
被引用文献数
1
著者
清水 孝教
出版者
東京法令出版
雑誌
捜査研究 (ISSN:02868490)
巻号頁・発行日
vol.68, no.5, pp.64-74, 2019-05
著者
清水 孝一 塩田 智美 仲谷 善彰 坂本 匡一 岩瀬 彰彦 青木 茂行 松岡 緑郎 永山 剛久 河端 美則
出版者
The Japanese Respiratory Society
雑誌
日本胸部疾患学会雑誌 (ISSN:03011542)
巻号頁・発行日
vol.35, no.10, pp.1099-1103, 1997-10-25 (Released:2010-02-23)
参考文献数
5
被引用文献数
1

26歳女性が感冒様症状に対して投薬された薬剤を内服後約1日の経過で呼吸困難を呈して来院した. 入院時の胸部レントゲン写真では両側上肺野を中心とした不規則な浸潤影を認め, 胸部CT写真でも汎小葉性の肺野濃度の上昇を認めた. BALより総細胞数の増加, 好酸球分画の著増を認めTBLBで胞隔の肥厚と間質への好酸球の浸潤が見られた. 前医で投与されたバッファリン®に対するリンパ球芽球化反応試験が陽性であったために本剤の投与が関与する薬剤誘起性肺障害と考えた. 薬剤の中止により自覚症状, 血液ガス所見, 胸部レントゲン写真は速やかに改善し, その経過は急性好酸球性肺炎様であった. 治療に際してステロイド剤の投与は不要であった.
著者
佐々木 創 清水 孝太郎
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物資源循環学会研究発表会講演集
巻号頁・発行日
vol.20, pp.63, 2009

わが国の機械情報産業等がアジア諸国へ進出するに伴い、現地の製造プロセスから大量の工程くず・オフスペック品が発生するようになっている。これら工程くず・オフスペック品の多くは、十分な処理・リサイクルをされずに第三国へ輸出されていることが多く、資源流出という点や環境配慮という点から問題になっている。そこで、アジア諸国へ進出するわが国の機械情報産業等を資源戦略の観点から支援し、また新たな環境ビジネスの展開可能性も探るため、技術同友会が提言しているクリティカルメタルの中からタングステンを対象として、アジア諸国におけるレアメタルのリサイクルビジネスのあり方を検討するために、国際資源循環のフローの推計を行った。
著者
神山 英昇 北間 正崇 清水 久恵 山下 政司 横山 徹 小島 洋一郎 清水 孝一
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.55Annual, no.Proc, pp.593-594, 2017-05-03 (Released:2017-09-13)
参考文献数
1

We have proposed a noninvasive technique to observe an arteriovenous fistula using an optical transillumination image of a blood vessel. To improve the accuracy of inner-diameter measurement of the vessel, we examined the effectiveness of the imagesubtraction technique using multi-wavelength light sources. In the experiment, we fabricated a model-phantom to simulate a human forearm. It contained the tube filled with replaceable absorber liquid which simulated the blood in different wavelengths of illuminating light. The transillumination images of the blood column were recorded with the liquid of different absorption coefficients. The imagesubtraction technique was applied and the images were analyzed. With the subtraction, the sharpness of the column image was improved by 55%, and the error in the diameter measurement was reduced from 28% to 4%. This result verified the effectiveness of the image-subtraction to promote the clinical application of the proposed technique for the controlled care of the arteriovenous fistula.
著者
開田 翔一 松村 健太 加藤 祐次 清水 孝一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告 = IEICE technical report : 信学技報 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.114, no.514, pp.29-33, 2015-03-16

手指や手のひらの血管像による個人認証はすでに一般的に行われているが,手首血管の光透視像による個人認証を実現した例は知られていない.手首は,近年出現している腕時計タイプのウェアラブル機器の装着が容易であり,これに認証機能を付加できれば有用と考えられる.そこで我々の開発してきた光透視像技術を応用し,腕時計型デバイスで手首血管透視像による個人認証を行うことを考えた.成人手首部で得られた血管透視像に対して,ウェアラブルデバイスでも実装可能な簡易なアルゴリズムで画像処理を施し,画像相関による個人認証を行った.その結果,腕時計型デバイスでも,有効な個人認証が行える可能性を実証した.
著者
清水 孝一 山本 潮 小野里 好邦
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会研究報告マルチメディア通信と分散処理(DPS) (ISSN:09196072)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.56, pp.59-64, 1999-07-15
参考文献数
2
被引用文献数
2

近年のインターネットの普及により,仮想空間をネットワーク上に展開することによって,人々のコミュニケーションの場として様々なサービスに発展してきている.しかし,参加者の増加に伴いサーバに対する負荷が懸念されており,多くのユーザをサポートするための研究が盛んに行なわれている.そこで,多くのユーザを仮想空間内に投影させる方式の一つとして,サーバを複数用意し,一つのサーバが管理する領域を分割し,多くのユーザをサポートすることが可能な方式が考えられ実装されている.しかし,任意の管理領域にクライアントが集中した場合,この空間分割方式では効果をあげることができない.最悪の場合,一つの空間に全てのクライアントが集中してしまう恐れもある.本稿では,この分割管理されているサーバ管理領域を動的に変化させ,サーバの負荷を分散させるための方式を提案する.また,本方式を用いてプロトタイプを作成したので,従来の方式と比較し考察する.Recently, according to increasing Internet users, various services have been developed. One of such services is providing virtual environments where the users communicate with each other. However, by the number of users increases, much reearch effort has been devoted to support large number of users. One of such methods is that a virtual space is devided into some blocks and each block is managed by each server. However, each server manages each fixed virtual space and take care of users in its managing region, and such approach is not effective, in case that many users concentrate in some part of virtual space. In the worst case, all of the users concentrates in one block of virtual space. In this paper, we propose the multi server-managed virtual space model in which the load of managing virtual space is well-balanced to servers by dynamically changing managed regions. We demonstrate a prototype system, as a result of comparing our prototype system with multiple server system without dynamic change of managed system.
著者
清水 孝
出版者
日本原価計算研究学会
雑誌
原価計算研究 (ISSN:13496530)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.10-18, 2012-03

わが国企業が実施している原価計算実務は,『原価計算基準』の原則的な規定に依拠するものばかりではない。例外的な規定を積極的に使用したり,規定にはない方法を採用することで,変化していく生産環境に対してできるだけ適切な価値移転計算を実施しようと努力している。本稿では,調査に基づき,こうした企業の取り組みについて明らかにする。
著者
清水 孝宏 松山 美智子 豊見山 直樹
出版者
一般社団法人 日本静脈経腸栄養学会
雑誌
日本静脈経腸栄養学会雑誌 (ISSN:21890161)
巻号頁・発行日
vol.30, no.2, pp.679-683, 2015 (Released:2015-04-20)
参考文献数
22

経腸栄養法を行う場合、経腸栄養チューブの先端が目的とする場所に留置されているかを確認しなければならない。その理由として誤って気道内に留置され気胸を発症するリスクがあることや、栄養剤等が気道に注入されることで誤嚥性肺炎を起こす危険性があるからである。挿入された胃管の先端位置を確認する方法は X線撮影による確認、気泡音による確認、呼気二酸化炭素検出による確認などがあるが最も信頼性のある確認方法は X線撮影による確認である。胃内残量については経腸栄養を胃内投与した場合の消化管の耐性を評価する目的で行われている。胃内残量が500mL以上と多い場合には栄養剤注入を中止すべきであると、国内外のガイドラインで記載されているが明確な根拠があるわけではない。経腸栄養は安全性を確保しつ、可能な限り中断せずにステップアップし適切な量を維持することが重要である。そのためのチューブ位置確認や胃内残量管理は注目すべき事柄であろう。
著者
清水 孝一
出版者
公益社団法人 日本生体医工学会
雑誌
生体医工学 (ISSN:1347443X)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.1-2, 2006 (Released:2008-02-27)
被引用文献数
2
著者
工藤 信樹 清水 孝一 松本 伍良
出版者
一般社団法人 日本生体医工学会
雑誌
医用電子と生体工学 (ISSN:00213292)
巻号頁・発行日
vol.23, no.3, pp.194-198, 1985-06-30 (Released:2011-10-14)
参考文献数
12
被引用文献数
3

A new method of biotelemetry is proposed, which realizes nonrestrained acquisition of biological signals using the infrared light diffused out from animal skin. This technique is fundamentally different from conventional telemetry techniques which use radio-frequency electromagnetic waves.An optical transmitter which consists of some LED's is implanted beneath the skin. Biological information such as ECG signal is collected in vivo and the light emitted from the LED's is modulated by the signal. The light transmitted through the skin is strongly diffused and spread out in a wide angle. The light is collected by the remotely located optical receivers and the biological information is obtained by demodulating the signal. Thus, the biological information in vivo is obtained without restraining the object with cables or optical fibers.In order to verify the possibility of the above technique, a system, which obtains an ECG from laboratory animals, has been developed. An infrared light was chosen due to its invisibility and high transmittance through the skin. Considering the stability of the communication link and the power consumption of the implanted transmitter, PFM (Pulse Frequency Modulation) technique was used. Using the system, the transcutaneous ECG telemetry was performed successfully.In the experiment, the indirect light reflected and scattered by the walls, the ceiling and the floor was shown to be useful in the optical telemetry. Light transmission patterns through the skin of a mouse were measured. The results suggest the possibility of telemetry even from the deep part of the body cavity.It is concluded that recent progress of optical and electronic technologies have reached the point, where transcutaneous optical telemetry of biological signals has become practically possible.
著者
野々村 禎昭 高井 義美 清水 孝雄 柴田 宣彦 小林 良二 尾西 裕文
出版者
東京大学
雑誌
特定研究
巻号頁・発行日
1986

血管平滑筋は内皮細胞との関連では病変時特異的増殖, 脱分化を行い, いわゆる動脈硬化性変化をもたらす. この際の形態変化等は詳しく調べられているが, 生化学, とくに収縮蛋白質レベル, 及び分子生物学的レベルの研究は遅れている. 本研究班はその弱点をおぎない, 新らしい展開をはかる為に我国の平滑筋生化学者を結集した.本年は平滑筋のミオシンの構造については尾西が中心になり, 公募班員の岡本と共に一次構造と機能の関連について, ATP結合位等を明らかにさせた. 下等動物平滑筋のCatch機構については八木がミオシン重鎖のリン酸化でかなり明らかになった. 一方細いフィラメント側の調節機序に影響した因子によってラッチ機構が生じるが, この説明に野々村は大動脈からとったゲルゾリンファミリーが働く可能性を示し, その進んだ精製で86K, 84K, 45Kダルトン蛋白質が存在することを明らかにした. 一方, 丸山はこの45Kが84Kの中心分解物である可能性を示し, その精製を行った. 柴田は血管においてカルデスモン様蛋白質の存在を明らかにし, 祖父江はカラデスモンに2種類あり, 非筋細胞, 未分化型のものと筋, 分化型の違いを明らかにした. 小林は平滑筋膜よりカルパクチンをとり, 山本はCa-ATPアーゼをとって膜でのCa調節への足がかりを求めた. 高井は血管培養細胞のC-キナーゼ存在様式が成長因子との関係から異ることを示し, 清水はロイコトリエン連関酵素系の精製とその機能への結びつきを示した. 野島はCM(カルモジュリン)遺伝子クローニングをcDNAクローニングから進め, 高血圧との関係を追究している.本年は班員全ての研究が具体化し, すでに病態との関係へと入ってきた班員もあり, 来年度に向けての一層の具体化が期待される.
著者
小林 進 落合 武徳 堀 誠司 宮内 英聡 清水 孝徳 千葉 聡 鈴木 孝雄 軍司 祥雄 島田 英昭 岡住 慎一 趙 明浩 大塚 恭寛 吉田 英生 大沼 直躬 金澤 正樹 山本 重則 小川 真司 河野 陽一 織田 成人 平澤 博之 一瀬 正治 江原 正明 横須賀 收 松谷 正一 丸山 紀史 税所 宏光 篠塚 典弘 西野 卓 野村 文夫 石倉 浩 宮崎 勝 田中 紘一
出版者
千葉大学
雑誌
千葉医学雑誌 (ISSN:03035476)
巻号頁・発行日
vol.80, no.6, pp.265-276, 2004-12-01

千葉大学医学部附属病院において2000年3月から,2003年8月まで8例の生体部分肝移植手術を施行した。5例が18歳未満(7ヶ月,4歳,12歳,13歳,17歳)の小児例,3側が18歳以上(22歳,55歳,59歳)の成人例であった。2例(7ヶ月,4歳)の小児例は左外側区域グラフトであるが,他の6例はすべて右葉グラフトであった。2側が肝不全,肺炎のため移植後3ヶ月,2ヶ月で死亡となったが他の6例は健存中であり,元気に社会生活を送っている。第1例目は2000年3月6日に実施した13歳男児のウイルソン病性肝不全症例に対する(ドナー;姉22歳,右葉グラフト)生体部分肝移植である。現在,肝移植後4年3ヶ月が経過したが,肝機能,銅代謝は正常化し,神経症状も全く見られていない。第2例目は2000年11月23日に実施した12歳男児の亜急性型劇症肝炎症例である(ドナー;母親42歳,右葉グラフト)。術前,肝性昏睡度Vとなり,痛覚反応も消失するほどの昏睡状態であったが,術後3日でほぼ完全に意識は回復し,神経学的後遺症をまったく残さず退院となった。現在,術後3年7ヶ月年が経過したがプログラフ(タクロリムス)のみで拒絶反応は全く見られず,元気に高校生生活を送っている。第3側目は2001年7月2日に実施した生後7ヶ月男児の先天性胆道閉鎖症術後症例である。母親(30歳)からの左外側区域グラフトを用いた生体部分肝移植であったが,術後,出血,腹膜炎により,2回の開腹術,B3胆管閉塞のためPTCD,さらに急性拒絶反応も併発し,肝機能の改善が見られず,術後管理に難渋したが,術後1ヶ月ごろより,徐々にビリルビンも下降し始め,病態も落ち着いた。術後6ヵ月目に人工肛門閉鎖,腸管空腸吻合を行い,現在,2年11ケ月が経過し,免疫抑制剤なしで拒絶反応は見られず,すっかり元気になり,精神的身体的成長障害も見られていない。第4例目は2001年11月5日に行った22歳男性の先天性胆道閉鎖症術後症例である(ドナー:母親62歳,右葉グラフト)。術後10日目ごろから,38.5度前後の熱発が続き,白血球数は22.700/mm^3と上昇し,さらに腹腔内出血が見られ,開腹手術を行った。しかし,その後敗血症症状が出現し,さらに移植肝の梗塞巣が現れ,徐々に肝不全へと進行し,第85病日死亡となった。第5例目は2002年1月28日に行った4歳女児のオルニチントランスカルバミラーゼ(OTC)欠損症症例である(ドナー;父親35歳,左外側区域グラフト)。肝移植前は高アンモニア血症のため32回の入院を要したが,肝移植後,血中アンモニア値は正常化し,卵,プリンなどの経口摂取が可能となり,QOLの劇的な改善が見られた。現在2年5ヶ月が経過したが,今年(2004年)小学校に入学し元気に通学している。第6例目は2002年7月30日に行った17歳女性の亜急性型劇症肝炎(自己免疫性肝炎)症例である(ドナー:母親44歳,右葉グラフト)。意識は第2病日までにほぼ回復し,第4病日まで順調な経過をたどっていた。しかし,第6病日突然,超音波ドップラー検査で門脈血流の消失が見られた。同日のCTAPにて,グラフトは前区域を中心とした広範囲の門派血流不全域が示された。その後,肝の梗塞巣は前区域の肝表面領域に限局し,肝機能の回復が見られたが,多剤耐性菌による重症肺炎を併発し,第49病日死亡となった。第7例目は2003年3月17日に行った59歳男性の肝癌合併肝硬変症例(HCV陽性)症例である(ドナー:三男26歳,右葉グラフト)。Child-Pugh Cであり,S8に4個,S5に1個,計5個の小肝細胞癌を認めた。ドナー肝右葉は中肝静脈による広い環流域をもっていたため,中肝静脈付きの右葉グラフトとなった。術後は非常に順調な経過をたどり,インターフェロン投与によりC型肝炎ウイルスのコントロールを行い,移植後1年3ヶ月を経過したが,肝癌の再発も見られず順調な経過をとっている。第8例目は2003年8月11日に行った55歳男性の肝癌合併肝硬変症例(HBV陽性)症例である(ドナー;妻50歳,右葉グラフト)。Child-Pugh Cであり,S2に1個,S3に1個,計2個の小肝細胞癌を認めた。グラフト肝は470gであり過小グラフト状態となることが懸念されたため,門脈一下大静脈シヤントを作成した。術後はHBV Immunoglobulin,ラミブジン投与により,B型肝炎ウイルスは陰性化し,順調に肝機能は改善し合併症もなく退院となった。現在移植後10ヶ月が経過したが,肝癌の再発も見られず順調な経過をとっている。ドナー8例全員において,血液及び血液製剤は一切使用せず,術後トラブルもなく,20日以内に退院となっている。また肝切除後の後遺症も見られていない。
著者
山本 克之 浜岡 隆文 川初 清典 工藤 信樹 清水 孝一
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究は,筋組織酸素濃度計測における皮下脂肪層の影響を系統的に解析し,その影響を除去し得る絶対値計測可能な近赤外分光(NIRS)組織酸素モニタを開発して,本装置の最も効果的な適用分野と考えられるスポーツ医学の分野で,その有効性を実証することを目的とした.1.時間分解法を用いたin vivo計測と多層モンテカルロシミュレーションにより,組織の不均一性を考慮して,筋および脂肪層の平均的な光学特性(吸収係数,散乱係数)を決定した.2.光拡散理論を適用し,吸光度変化と吸収係数の非直線的関係をも考慮した組織酸素濃度算出式を理論的に導出し,その具体的な係数を上記光学特性から決定した.3.脂肪層の影響で近赤外分光法の測定感度が大きく減少するので,測定感度を脂肪厚で補正することにより,均質な系を仮定した上記理論式に適用可能な補正式を決定した.また,安静時の筋酸素消費量を磁気共鳴スペクトル法と試作装置で計測・比較し,補正法の妥当性を確認した.4.NIRSの運動能力の評価法として,トップレベルの選手(ノルディック複合ナショナルチーム,13名)を対象に測定を実施し,高地トレーニングにより筋組織酸素濃度回復速度が6日後で11%,11日後で20%程度増加することを見出した.5.NIRSの筋代謝の評価法として,筋収縮・弛緩に伴う血液量変化から局所的血液酸素飽和度を,筋収縮時の酸素濃度低下率から局所的筋酸素消費量を測定する手法を考案し,1収縮ごとに酸素飽和度と酸素消費量を推定できることを検証した.6.当初の計画を進展させ,200チャネルの受光系を有する組織酸素濃度画像化システムを試作し,膝屈曲・伸展運動時の大腿部各筋の酸素化・脱酸素化ヘモグロビン量,血液量の時空間変化をイメージングすることに成功した.