著者
清水 新二
出版者
Japan Society of Family Sociology
雑誌
家族社会学研究 (ISSN:0916328X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.97-104, 2001
被引用文献数
3

家族の私事化, 個別化, 個人化, 脱私事化に関する議論は, それぞれの概念を歴史的文脈に位置づける理解なしには, 混乱と不適切な使用をはびこらせ, 時に的外れな批判をもたらす。本論は日本の家族変化の歴史的流れのなかで家族の私事化の進行がもたらしたパラドキシカルな状況に注目しつつ, これらの概念を再検討し整理するものである。家族の個別化概念は日本家族の具体的な現状分析にとってより威力をもち, 家族の個人化概念はこれからの家族のありようを示し志向する概念としての重要性を増している。これらの概念の使い分けと適切な使用は, 議論の整理と生産的展開を促すことになるだろう。また実態確認的な研究をいっそうあと押しし, わが国における家族の変化を具体的に跡づけるうえで有力な手がかりとなる。
著者
湯川 寛夫 町田 大輔 金成 正浩 永野 篤 藤澤 順 松川 博史 清水 哲 河野 尚美 利野 靖
出版者
一般社団法人日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.39, no.4, pp.476-480, 2006-04-01
被引用文献数
5

胆嚢原発腺内分泌細胞癌はまれな疾患であり予後不良といわれている.本邦では自験例を含め54例の報告をかぞえるのみである.今回,我々は原発巣に対し切除術を施行し予防的放射線化学療法を行った胆嚢腺内分泌細胞癌を経験したので報告する.症例は59歳の男性で,US, CT, MRIにて胆嚢底部に腫瘤影を認め,腹腔鏡下に胆嚢摘出術を施行した.術中迅速診にて未分化癌疑いとの報告を受け,開腹に移行しD2+α郭清,肝床部切除を付加した.病理組織学所見ではHE染色で粘膜面では高分化型腺癌の像を呈するが,腫瘍の大部分ではN/C比の高い腫瘍細胞が充実性増殖し明らかな管腔形成は示さずrossetteを認めた.免疫染色ではNCAMが弱陽性を示し,腺内分泌細胞癌と診断した.術後,肺小細胞癌に準じて肝門部に放射線治療とcisplatin+etoposideの化学療法を2クール施行し,術後24か月無再発生存中である.
著者
清水 亜矢子 長 和彦
出版者
北海道教育大学
雑誌
情緒障害教育研究紀要 (ISSN:0287914X)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.145-152, 2002-02-05

本論は,最近注目を集めている「ひきこもり」について,どういった現象であるかを文献を通して紹介し,また,中学1年時から卒業までの約2年半「ひきこもって」いたA君とのかかわりから,A君の自分の内から外へと変容した経過と,清水のかかわりの変容を検討したものである。A君は出会った当初から「変わろう」という気持ちを持っており,この7カ月半の間に別人のように変わった。しかし,一方で清水は,「何もしなかった」という表現がふさわしいかかわりをしてきた。これは,自然体で向き合ってきたということを意味し,このかかわりがA君にとって丁度良い間合いとなり,清水の「いつでも側にいる」,「いつでも力になる」という態度となって現れ,更に専攻科の人々がA君をあたたかく受け入れてくれたことが加わわったことで,A君は明るく,積極的な対人関係や活動の広がりを見せていった。また,「ひきこもり」者の積極性や努力をサポートする体制の必要性も感じた。
著者
清水 周一
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.39, pp.779-780, 1989-10-16

日本語文書中の誤りを計算機により指摘する、校正支援システムの研究は、これまで多く行なわれてきている。その一手法として、漢字かな混じり文を形態素レベルで解析し、解析用辞書中の単語では接続が不可能となる部分を、未知語として指摘する方法が多くのシステムで採用されている。しかし、日本語ワープロで作成された文書に対しては、英文におけるスペル・チェッカーほどの効果はない。漢字かな混じり文の入力方式として、かな漢字変換方式を用いているため、例えば、「欠裂(決裂)」や「速時(即時)」といったような書き間違いは起こらない。文書の修正時に、削り過ぎや削り残し等のため若干生じる程度である。それどころか、タイプミスした入力にさえ、形態素の接続関係の満たされた結果を出力しようとする。このような、形態素の接続では判定ができない誤りを、高いヒット率で、しかも高速に検出する実用的な校正支援システムを構築するには、ヒューリスティックな誤り検出ルールを数多く備えることが最も現実的であると考えられる。われわれは、実用的な校正支援システムを構築するためのツールとして、PCのOS/2上にFleCS(Flexible rule-based Critiquing System)を開発してきた。FleCSでは、校正ルール(誤り検出ルール)のために、柔軟なパターン記述用言語を提供している。
著者
古川 浩 大崎 邦倫 赤岩 芳彦 清水 裕之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. RCS, 無線通信システム
巻号頁・発行日
vol.93, no.255, pp.71-77, 1993-09-30

コードレス電話や無線LANなどの屋内無線通信システムを構築するにあたっては電波伝搬特性の解明が重要である。本論文では将来屋内無線通信に用いられると思われる準マイクロ波帯において中規模建物内での伝搬損推定とフェージング特性の調査を行なった。伝搬損の推定には次の4つのモードを考えた。(1)見通し内における低損失伝搬路伝搬波、(2)廊下伝搬波、(3)障害物を通り抜けた直接波、(4)建物再侵入波である。これらの伝搬モデルに必要なパラメータを実験から求め伝搬損の推定を行った。その結果平均誤差4.5dB前後で推定することができた。一方、フェージング特性についてはレベル分布とライスパラメータにより解析した。また、空間的に離した2本のアンテナに受信される信号の相関係数を測定した。その結果、見通し内のライスパラメータは約2、見通し外のライスパラメータは約1となることがわかった。ダイバシティ受信を行った場合2本のアンテナの相関が0.5以下となる場所率は80〜95%であることがわかった。
著者
清水 基夫
出版者
一般社団法人国際P2M学会
雑誌
国際プロジェクト・プログラムマネジメント学会誌
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.27-36, 2009-04-18

マネジャーの活動は3種類の複雑なシステムを対象とする。製品やその生産設備など活動の直接的対象である「ターゲット・システム」は「詳細化の複雑性」が基本で、マネジャーの主要な武器はシステムズエンジニアリングである。ターゲット・システム実現のために活動する「組織」はマルチエージェントという意味で「動的複雑性」であり、マネジャーはリーダシップを頼りとして対処する。そしてこれらを包み込み影響を与える「環境」(市場、社会など)という非線形に変化する「動的複雑性」に対し、マネジャーは「戦略」を武器に、ターゲット・システムという「詳細化の複雑性」を用いて対処する。本稿では、複雑性とマネジメント、そして組織の戦略について考察する。
著者
児玉 祐悦 工藤 知宏 清水 敏行
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D, 情報・システム (ISSN:18804535)
巻号頁・発行日
vol.89, no.8, pp.1695-1704, 2006-08-01

ミッションクリティカルな分散コンピューティングでは,パケットロス率が小さく,障害に強い通信が要求される.そのような高信頼通信を実現するために,マルチパスを用いた通信手法が研究されてきた.これは,通信パケットを複製し,それらを異なるパス経由で転送させ,目的ノードでそれらをマージする手法である.マルチパス手法では,あるパスでパケットロスが起きても,他のパスからそのデータがやってくれば,再送を行うことなく,パケットロスを回復することができる.高バンド幅高遅延ネットワーク間でデータ通信を行う場合には,パケットロスによる通信性能の低下が著しいため,このような遅延に影響されない高信頼化通信は有効である.ギガビットクラスのネットワーク上で高信頼通信を実現するために,我々の開発したネットワークテストベッドGtrcNET-1上に,マルチパス手法を実装した.本実装によりパケットロス率の比較的高い高速ネットワークであっても,マルチパス手法を適用することにより高い通信性能を維持できることを確認した.更に,利用しているパスの転送性能などを受信側から送信側にフィードバックする改良手法を適用することにより,途中のパスで転送性能の低下が起きた場合でも高信頼通信を維持できることを確認した.
著者
陳 明石 清水 忠男一 佐藤 公信 一海 有里
出版者
日本建築学会
雑誌
日本建築学会計画系論文集 (ISSN:13404210)
巻号頁・発行日
vol.65, no.528, pp.171-178, 2000
被引用文献数
4 4

This study aims at getting an idea which explains the usage and function of Gi-lou spaces through close examination of identification of the temporary elements and the changes in kind and number of elements involved in these spaces with the change of time. As a result, it was found out that the kind and number of these elements increase remarkably in the afternoon to evening of Saturday and Sunday compared to a weekday in keeping with the increase of the traffic. It seems that the spaces are deeply incorporated into the lifestyle of city people in Taiwan.
著者
鳥羽 剛 清水 正寛 西牟田 敏之 木内 信二 麻生 誠二郎
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.26, no.8, pp.606-611,623-62, 1977

乳児期の急性・慢性下痢症には, 二次性・症候性乳糖不耐症が時に続発することはよく知られている.この事実に基づき, 本邦の小児科医は, この症候性酵素欠損の考えられる乳児下痢症にしばしば乳糖分解酵素製剤(β-D-galactosidase, Galantase[○!R])を投与する.しかし, この製剤は, 分子量約10万の蛋白質であり, 生体を感作して過敏症を起こす可能性を有している.私どもは, 即時型・アナフィラキシー型の Galantase[○!R] アレルギーの2カ月女児を経験し, アレルギー学的見地から観察する機会を得た.10^<-4> 液の皮内注射後15分では, 陽性の発赤・膨疹を呈したが, Galantase[○!R] specific IgE 検出のための RAST(paper disc 法)は陰性であった.一方, 患者血清中の沈降素の存在は, Ouchterlony の二重拡散法で, 抗原希釈系列の128倍希釈まで証明され, IgG 沈降帯上の Galantase[○!R] binding activity も ^<125>I-Galantase[○!R] を用いた radioimmunodiffusion で証明された.以上の結果から, この症例の Galantase[○!R] アレルギーは, この IgG 抗体により惹起されたものと推定された.