著者
戸倉 夏木 金子 弘真 伊藤 正朗 名波 竜規 本田 亮一 渡邊 正志 寺本 龍生
出版者
一般社団法人 日本消化器外科学会
雑誌
日本消化器外科学会雑誌 (ISSN:03869768)
巻号頁・発行日
vol.40, no.4, pp.522-527, 2007 (Released:2011-06-08)
参考文献数
14
被引用文献数
2 1

癌終末期の消化管閉塞による悪心, 嘔吐, 腹部膨満感は患者のquality of lifeを損なう. オクトレオチドは, これらの症状を緩和すると報告されている. 2004年10月にオクトレオチドが保険適応となり一般病棟でも消化管閉塞患者に使用可能となった. 我々は2005年5月から2006年3月までに, 癌終末期消化管閉塞患者7例にオクトレオチドを使用し良好な結果を得た. 平均年齢は67.3±11.2歳, 男性4例, 女性3例で, 胃癌3例, S状結腸癌, 上行結腸癌, 膵臓癌, 原発不明癌が各1例であった. 悪心, 嘔吐, 腹部膨満感はJCOG toxicity scaleでgradeが全例低下し, 5例は経口摂取が可能となった. オクトレオチド投与後, 全例経鼻胃管を挿入することはなく, 輸液も減量することができた. 我々消化器外科医もオクトレオチドを手術適応のない癌終末期消化管閉塞患者の第1選択薬として考えるべきである.
著者
渡邊 勉
出版者
東北社会学会
雑誌
社会学年報 (ISSN:02873133)
巻号頁・発行日
vol.38, pp.17-30, 2009-07-19 (Released:2013-12-27)
参考文献数
37

本稿は,社会学的研究における理論と実証の関係について,景観問題というテーマを通じて,検討することを目的としている.まず景観問題に関する人々の意識を調査データから明らかにした.その上で社会的ジレンマの枠組では,うまく分析できず,権利の問題として捉えるべきであることを示す.そして権利の観点から意識調査の結果を分析し,景観をめぐる課題として,権利の所在が人々の間で共通了解されていないこと,権利の対立に対して人々がどの権利を優先すべきであるかの共通了解がないことが示された. 以上の分析を通じて,社会現象を分析する際,理論は現象を説明するための道具ではなく,現象を理解するための枠組を提供する道具として有効であることが明らかとなった.つまり,理論は単に説明するだけではなく,現象を理解,定義するためにも重要な役割を担っているのである.
著者
石田 祥代 松田 弥花 本所 恵 渡邊 あや 是永 かな子
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.17, pp.37-51, 2021 (Released:2022-07-03)

本稿では、文献調査と聞き取り調査を通して、スウェーデンの義務教育からの移行支援およびインクルーシブ教育の構造を明らかにする。スウェーデンでは、義務教育後の進路の選択肢は、後期中等教育機関としての高校・知的障害高等部・聴覚障害高等部・肢体不自由高等部があり、セーフティネットとしての若年者支援プログラムとリカレント教育としての社会教育機関も受け皿として存在する。移行支援では、キャリアカウンセラーと特別教育家が連携し、最適な学習環境の視点からの進路選択、進学希望先への見学促進、教育的支援の情報伝達を行っている。後期中等教育におけるインクルーシブ教育システムを支えるのは子ども健康チーム、対応プログラム、高校の入門プログラムであった。特徴としては、途切れのない障害児教育システム、前期・後期中等教育間の接続、移民の子どもへの教育的支援、学習を保障する生涯教育システムが挙げられた。
著者
石田 祥代 是永 かな子 本所 恵 渡邊 あや 松田 弥花
出版者
北ヨーロッパ学会
雑誌
北ヨーロッパ研究 (ISSN:18802834)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.39-52, 2020 (Released:2021-07-01)

本稿は、フィンランドの義務教育から後期中等教育への移行とその支援について、インクルーシブ教育の観点から明らかにすることを目的とする。文献調査と聞き取り調査を実施した結果、①義務教育段階の特別な教育的支援として三段階支援のシステムがあること、②同様の支援システムが後期中等教育においても整備されつつあること、③義務教育修了後、特別な教育的ニーズのある生徒は、基礎学校10年生、高校、職業学校、ヴァルマ、テルマから進路選択を行っていること、④基礎学校における移行支援として、キャリアカウンセラーと特別支援教育教員による進路相談、進学先との調整、学校訪問同行などが行われていることが明らかになった。一方、今後の課題として、①高校・職業学校における進学後のフォローアップ体制の不備、②退学問題への対応の強化、③授業での教育内容調整や直接的支援の必要性、などが示唆された。
著者
荻 芳郎 樋口 健 渡辺 和樹 渡邊 秋人
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.6, pp.97-103, 2007 (Released:2007-12-13)
参考文献数
12

The purpose of this paper is to analyze structural statics and dynamics of a rotating shaft with a thin-walled open cross-section having one symmetrical axis. For the shaft, flexural-torsional coupling must be considered because the centroid axis and the shear-center axis do not always coincide. After deriving the governing equations of motion for a uniform shaft rotating at a constant angular velocity, we propose methods to estimate static deflection and dynamic stability. Numerical calculations for cantilever shafts with and without internal damping indicate that the distance between the centroid and the shear-center contributes to the dynamic instability. Moreover, an application of the methods to an elastically supported model indicates that a spin-axis antenna rod for future scientific satellites under consideration is dynamically stable in the operational spin-rate.
著者
角田 博明 仙北谷 由美 渡邊 秋人
出版者
一般社団法人 日本航空宇宙学会
雑誌
宇宙技術 (ISSN:13473832)
巻号頁・発行日
vol.2, pp.9-16, 2003 (Released:2003-05-07)
参考文献数
15
被引用文献数
2 1

宇宙インフレータブル構造の硬化層は,未硬化状態で折り畳みを容易に行えるようにするとともに,軽量化を達成するために,積層せずに1層で構成するのが望ましい.本論文では,三軸織物を硬化層に適用し,1層で硬化層を構成する,軽量で柔軟性を有する硬化型の宇宙インフレータブル構造を提案する.硬化層を1層で構成すると,構造上必要な膜厚を確保するのが難しくなる.そこで,太い繊維を使って低織密度で織った三軸織物プリプレグを作り,これを硬化層に使うことで,1層で0.5~0.6 mmの膜厚の硬化層を実現する.硬化 させるための樹脂に熱硬化型ロングライフ樹脂を適用した長さ2 m・直径150 mmの円筒状のインフレータブル構造を試作し,構造特性測定実験を行うことにより,同様の仕様による二軸織物を使用したインフレータブル構造との構造特性の違いを明らかにする.また,本提案の硬化層を用いて試作した外径2100 mm・管径150 mmの円環状インフレータブル構造を熱風の導入により硬化させ,折り畳みの柔軟性を有するインフレータブル構造に対して硬化方法の妥当性を示す.
著者
渡邊 淳司 板垣 貴裕 野嶋 琢也 稲見 昌彦 舘 すすむ
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.2, no.4, pp.116-122, 2003 (Released:2008-07-30)
参考文献数
12

見える物体は触ることができる.普段我々は,見えているものに何気なく手を伸ばし,触っているが,それはあたりまえの行為なのであろうか.我々にとって,何かがが存在するということは,そこに物質が存在し触覚を感じられることなのか,それとも,見えるということなのであろうか.本作品ではそれぞれの感覚における“存在”がテーマであり,体験者が画面の中で走り回る小人を触ることで,視覚と触覚による存在感の違いを感じることをねらいとした.小人は見える小人と影だけの小人の2 種類の小人が存在し,見える小人は視覚では知覚することはできるが,触覚によっては感じられない.一方,見えない小人は触ることによってその物質性は確認することはできるが,見ることはできない.彼らはそれぞれ,人間の知覚との関係性が一部失われた世界に存在している.

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著者
渡邊 淳司 Maria Adriana Verdaasdonk cell/66b
出版者
芸術科学会
雑誌
芸術科学会論文誌 (ISSN:13472267)
巻号頁・発行日
vol.1, no.4, pp.160-162, 2002 (Released:2008-07-30)
参考文献数
12

cell/66b はモノクロの単純な幾何図形の映像とリズムを作り出すためだけの音をダンスに付与し,ステージを構成してきた。これは表現という行為において観察者のイメージ,価値観を想起させるための最小限かつ本質的な部分を抽出した結果である.舞台に多くの複雑な情報を付与できるようになった現在において,敢えてモノクロの幾何図形の映像及びリズム音のみの音楽を使用することによって,パフォーミングアートにおける身体と映像&bull音楽の関係性を問い直している.
著者
渡邊 亙
出版者
関西法政治学研究会
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.153-180, 2006-12-26 (Released:2018-01-10)

Die Frage uber die Moglichkeit der in Eigentum und Freiheit eingreifenden kommunalen Satzungsgebung stellt ein rechtsdogmatisches Topos dar, in dem sich die Forderung einer sachgerechten Problemlosung in ortlichen Gemeinschaften durch Satzungen und die europaische Verfassungstradition des Grundrechtschutzes durch Gesetze uberschneiden. In diesem Aufsatz wird es diese Frage unter dem rechtsvergleichenden Gesichtspunkt betrachtet. In Deutschland wird der Selbstverwaltungsbegriff nicht nur im kommunalen Bereich, sondern im Sinne einer allgemeinen Verwaltungsform dezentraler Art verwendet. Nach der herrschenden Auffassung bedarf es einer besonderen gesetzlichen Grundlage dort, wo Satzungen in Freiheit und Eigentum eingreifen oder ihrerseits zu Eingriffen ermachtigen sollen. Die Grunde, die das Bundesverfassungsgericht im Facharzt-Beschluss von 9. 5. 1972 fur die berufsstandische Selbstverwaltung hierzu genannt hat, lassen sich jedenfalls im Prinzip auch auf die gemeindliche Selbstverwaltung ubertragen. Die japanische kommunalrechtliche Theorie und Praxis zeigt die Moglichkeit einer den Kommunen entgegenkommenden Auslegung der Selbstverwaltungsgarantie. Diese Auslegung fuhrt zwar nicht zur unbegrenzten Anerkennung der kommunalen Satzungsgebung. Sie birgt jedoch ein hoheres Risiko fur die Grundrechtsverletzung durch die kommunale Satzungsgewalt, Die Grenze der Satzungsgebung muss deswegen zwischen der sachgerechten Problemlosung in ortlichen Gemeinschaften durch Satzungen einerseits und dem in der Verfassung beabsichtigten Grundrechtsschutz durch Gesetze andererseits sorgfaltig austariert werden.
著者
渡邊 亙
出版者
関西法政治学研究会
雑誌
憲法論叢 (ISSN:24330795)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.23-46, 2004-12-20 (Released:2018-01-10)

Anlasslich der Unterzeichnung der "Europaischen Verfassung" im Jahr 2004 beschaftigt der Verfasser sich mit der Frage der Moglichkeit bzw. der Bedingungen, die staatsgemeinschaftliche Integration aus dem Gesichtspunkt der Verfassungsgeschichte zu betrachten. Dabei wahlt er die deutsche Integration zwischen 1815 und 1871 zum Untersuchungsgegenstand. Nach der Erlauterung der staatsrechtlichen Entwicklung vom Deutschen Bund zum Deutschen Reich stellt er fest, dass trotz seiner Qualifizierung als Bundesstaat das Deutsche Reich starke Ahnlichkeiten mit der Europaischen Union in seinem Staatsstruktur aufweist, der aus staatenbundischen and bundesstaatlichen Elementen besteht. Aufgrund dieser Analyse vertritt er die folgende Auffassung : Dem in Deutschland herrschende Verstandnis der Europaischen Union als "Staatenverbund" liegt die staatsrechtliche Unterscheidung von Staatenbund und Bundesstaat zugrunde. Diese Unterscheidung ist aber erst vor dem oben hingewiesenen historischen Hintergrund in Deutschland von Bedeutung. Heute kann man daher ohne Problem auf die strukturelle Paralleitat zwischen dem Deutschen Reich und der Europaischen Union staatsrechtlich hinweisen. In diesem Sinne ist die europaische Integration mit der deutschen vergleichbar und ihre Betrachtung vom Gesichtspunkt der Verfassungsgeschichte aus durchaus moglich.
著者
茗荷 傑 橋本 恵祐 亀井 宏行 渡邊 眞紀子
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Series A (ISSN:18834388)
巻号頁・発行日
vol.90, no.3, pp.257-270, 2017-05-01 (Released:2022-03-02)
参考文献数
22

諏訪之瀬島における今日の農業土地利用を支える土壌の特性を明らかにすることを目的として,農耕地,放牧地,林地および1813年噴出のスコリア層下の埋没土層の土壌分析を行った.対象とした土壌は「火山放出物未熟土」と一部「未熟黒ボク土」に分類された.土壌分析の結果,農業にとって不適な土地ではないことが明らかとなったが,現在も噴火活動による降灰が続くため,諏訪之瀬島の土壌が黒ボク土へと成熟していくことは期待しにくい.露頭の埋没A層の特性は,土つくり実験地,ミカン栽培地,および斜面の崖下にある竹林の土壌特性に類似していた.緑肥の投入など人間による積極的な干渉が強い土壌ほど地力が高いことが示された.埋没A層は1813年の無人島化以前の農業生産活動を支えた土壌であり,諏訪之瀬島の資源であるといえる.今日の農業基盤拡大にあたり,過去の土壌資源を活用することが効果的であると考えられる.