著者
渡邊 崇 古郡 規雄 下田 和孝 Takashi Watanabe Norio Furukori Kazutaka Shimoda
出版者
獨協医学会
雑誌
Dokkyo Journal of Medical Sciences (ISSN:03855023)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.73-78, 2020-07-25

父娘がともに注意欠如・多動症(attention-deficit/hyperactivity disorder;ADHD)を発症した2症例を経験した.ADHDは児童思春期に診察される場合が多いが,成人後にも症状が残遺することもあり,慢性的な疾患であると考えられる.この症例報告では,家族間であっても,有効な治療薬において差異が認められた.このような家族間での差異を多面発現性と多遺伝子モデルに基づいて考察した.
著者
渡邊 芳樹 谷口 綾子 張 詠皓
出版者
一般社団法人 交通工学研究会
雑誌
交通工学論文集 (ISSN:21872929)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.24-36, 2023-04-01 (Released:2023-04-01)
参考文献数
26

高齢ドライバー向け認知機能検査の結果通知の場面において、メタメッセージの存在が懸念されている。本研究では、メタメッセージを緩和させるべくデザイン・レイアウトを変更した結果通知書の効果計測の為、65歳以上の高齢ドライバー2,000名を対象として、事前アンケート/模擬認知機能検査/結果通知書の提示/事後アンケートから成るWeb調査実験を行った。第一に、メタメッセージの影響を受け易い個人属性について探索的に分析した結果、女性や年齢が高い人ほど、「運転に対する自信」や「運転の自己評価」の点数が増加していた。このことは、調査設計者の意図せぬ副作用と言える。第二に、メタメッセージ緩和策を講じた改訂案結果通知書は、旧版結果通知書と比して検査後の「運転に対する自信」を有意に減少させる効果を有していることが示された。
著者
樋田 小百合 小木曽 加奈子 渡邊 美幸
出版者
日本教育医学会
雑誌
教育医学 (ISSN:02850990)
巻号頁・発行日
vol.65, no.3, pp.202-210, 2020 (Released:2020-03-01)
参考文献数
19

The aim of this study was to elucidate the thoughts of nurses working at hospitals about the therapies for elderly patients who were admitted because were likely to die due to senility. To this end, a questionnaire survey was administered to 97nurses working at three hospitals, who had participated in a workshop, and 49 valid responses were obtained. As a result, the following four categories were extracted: “supporting death with dignity,” “decision support in a non-uniform end-of-life care,” “practice of care according to the intentions of a patient and his/her family,” and “conflict over the selection of a remedy, without performing any therapy.” Nurses wanted to support a death with dignity and a natural death due to senility. However, there were problems that nurses could not control, such as the level of therapy, and the directions for end-of-life care under the conditions of senility were uncertain. Therefore, it was considered necessary to examine end-of-life care strategies for elderly patients.
著者
村田 大樹 花北 順哉 高橋 敏行 北浜 義博 倉石 慶太 渡邊 水樹 上坂 十四夫 福井 伸行 鈴木 洋司
出版者
一般社団法人日本脳神経外科コングレス
雑誌
脳神経外科ジャーナル (ISSN:0917950X)
巻号頁・発行日
vol.21, no.9, pp.731-735, 2012 (Released:2012-10-29)
参考文献数
15

Amyotrophic lateral sclerosis (ALS) の初期症状は多彩であり, その初期診断は困難であることが指摘されている.  今回われわれは, 腰部脊柱管狭窄症と診断し手術加療を行ったが, 病状が進行し最終的にALSと診断された症例を経験した.  症例は68歳男性. 腰痛を伴う歩行障害を主訴に来院. 画像上L4/5の椎間板ヘルニア, および脊柱管狭窄症を認めたため椎弓切除術を施行したが, 症状の改善を認めず, 術後から下肢の筋力低下, 筋萎縮, および呼吸障害が出現し急速に進行した. 最終診断はALSであり, 術後4カ月の経過で死亡された.  今回, 本症例の経過を報告するとともに, 腰痛, 下肢症状を初発症状とするALSについての文献的考察, および手術, 麻酔操作がALSの自然経過に及ぼす影響につき考察を加えた.
著者
渡邊 晶規 小島 聖 細 正博
出版者
名古屋学院大学
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2015-04-01

関節拘縮の治療と予防に対する低出力超音波パルス治療(以下LIPUS)の効果を、実験動物を用いて組織学的側面から検討した。LIPUS照射により、不動化によって生じた後部関節包のコラーゲン線維束間の間隙の狭小化が改善を示し、関節拘縮に治療に有効である可能性を明らかにした。一方、関節拘縮予防を目的とした介入結果においては著明な差を認めず、LIPUSの有用性を明らかにすることは出来なかった。
著者
渡邊 裕文 大沼 俊博 高崎 恭輔 谷埜 予士次 鈴木 俊明
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.561-564, 2014 (Released:2014-09-25)
参考文献数
13
被引用文献数
6 1

〔目的〕座位での腹斜筋の活動を明確にすることである.〔対象〕本研究に対する同意を得られた健常男性7名とした.〔方法〕テレメトリー筋電計MQ-8を用い,左側腹斜筋に複数の電極を配置し,座位にて側方移動距離を変化させ筋電図を測定した.座位での筋電図積分値に対する相対値を求め,移動距離による相対値の変化を検討した.〔結果〕側方移動距離の増大に対し,移動側腹斜筋群では筋電図積分値相対値に変化が認められず,反対側腹斜筋群ではこの値が全電極で増加傾向を示し,内腹斜筋単独部位とその直上の2電極で有意に増加した.〔結語〕座位で側方体重移動をリハビリテーションに用いる時,移動反対側内腹斜筋による骨盤の挙上作用に着目する必要のあることが示唆される.
著者
二宮 仁志 渡邊 法美
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:24366021)
巻号頁・発行日
vol.79, no.3, pp.22-00144, 2023 (Released:2023-03-20)
参考文献数
48

近年,我が国では,建設業従事者・技術者の大量退職,若年層の入職率低迷や離職率の高さなど技術者不足が深刻化している.優秀な人材確保には,労働条件の改善のほか,建設業の魅力・やりがいを感じ高めていく必要がある.働き方改革をはじめ,職場環境や処遇の改善等が推進されてきたが,激甚災害の増加やインフラの大量更新など業務量の増大,感染症拡大に伴い労働環境が急変する中,建設技術者のモチベーションは,必ずしも向上していないとの懸念もある.更なる生産性向上には,その維持・向上は極めて重要な課題といえる.本研究は,ライフストーリー法を用いて建設技術者のワークモチベーションの変遷プロセスについて調査・分析することを目的とする.有機的統合理論を援用して,自律性の程度を評価・プロセスの可視化を試みる.
著者
藤岡 泉 笠井 靖代 寒川 早織 芥川 香奈 有馬 香織 渡邊 理子 宮内 彰人
出版者
一般社団法人 日本周産期・新生児医学会
雑誌
日本周産期・新生児医学会雑誌 (ISSN:1348964X)
巻号頁・発行日
vol.57, no.1, pp.91-97, 2021 (Released:2021-05-10)
参考文献数
15

てんかん合併妊娠の周産期管理の課題を明らかとするため,2014年から5年間に当センターで分娩した15, 344例のうち,てんかん合併妊娠58例(0.38%)を抗てんかん薬の服薬状況に基づき4群に分け,周産期予後を後方視的に解析した. 4群の内訳は,a群(服薬あり怠薬なし)22例,b群(服薬あり怠薬あり)4例,c群(服薬なし妊娠判明後中止)1例,d群(服薬なし妊娠前から)31例であった.分娩週数・出血量・児体重・Apgar score,臍帯血pHに有意な差はなかった.妊娠中の発作は13例(22.4%)で認め,怠薬した症例などにみられた.バルプロ酸が必須の患者では妊娠判明後の薬剤変更が発作原因となる可能性があった.母乳育児は混合を含めると55例(94.8%)が行っていた. 妊娠前から母児の影響を考慮した薬剤の選択と,本人が妊娠中の発作コントロールの重要性を十分に理解することが重要である.
著者
渡邊 正樹
出版者
一般社団法人 日本農村医学会
雑誌
日本農村医学会雑誌 (ISSN:04682513)
巻号頁・発行日
vol.71, no.5, pp.383-390, 2023 (Released:2023-03-05)
参考文献数
24

在宅で生活することを望む高次脳機能障害者および家族が,安心して暮らすことができるように,高次脳機能障害者および家族への支援の実態を明らかにし,保健師としての支援の方向性を考察することを目的に本研究を行なった。医学中央雑誌Web(以下,医中誌)により,1983年から2021年において,「高次脳機能障害」「家族」「地域」「支援」をキーワードにそれぞれ組み合わせて検索を行ない,研究目的および「家族」「支援」に着目し,目的に一致した文献16件を対象に分析を行なった。高次脳機能障害者を支える家族の研究は,社会保障制度の不十分さや,支援する関係機関・関連職種の連携の重要性などに関する研究が多く,看護師による研究は,回復期病棟における援助の検討や看護師の困難感,セルフケアを高めるための取り組み,在宅における家族の介護負担感,主介護者である家族亡き後の支援の構築の必要性などの研究が行なわれていた。今後は,市町村保健師による高次脳機能障害者および家族の支援として,介護者である家族の亡き後への不安をはじめとする日常生活における相談窓口としての役割を担うことや,定期的に家庭訪問を実施することによる心配・不安への早期対応,地域に在職する関係職種と連携・協働などの体制を構築するためのコーディネーターとしての役割を担い,その状況に応じて支援できるように支援の全容を把握し,支援体制を整える必要があると考える。
著者
荒 桃子 家入 里志 西澤 祐吏 本多 昌平 渡邊 祐介
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2022-04-01

鎖肛に対する肛門形成術は様々な術式が開発されているにも関わらず,術後の排便機能は必ずしも十分なものとは言えず,就学や就労といった社会活動に影響を与え,成人に至ってもQOLを損ねる要因となり得る.本研究では,鎖肛術後の排便機能の改善を目指し,患児が自宅で継続できる簡易バイオフィードバック装置の開発を目的としている.肛門内に安全に挿入できる筋電図センサーの作成と,これと連動するスマートフォンアプリケーションの開発を行う.約1年かけてセンサー,アプリケーションの開発を行い,次の2年間で臨床試験を行い,その効果を検証する.この研究により鎖肛術後患児の排便機能改善に貢献するものと考える.
著者
渡邊 康志
出版者
沖縄地理学会
雑誌
沖縄地理 (ISSN:09166084)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.1-16, 2021-07-31 (Released:2021-08-02)

「中城湾海底地形地質調査報告」(海上保安庁水路部 1985)等のGISデータ化と解析より,沖縄島中南部の地形,中城湾の形成プロセスを明らかにした.中城湾海底下,沖積層により埋め立てられた古中城川は,氷期低海水準期に島尻層群が露出する丘陵に発達した河川であった.過去1万年間の沖積層堆積速度から,島尻層群露出丘陵の侵食による中城湾の生成は可能である.古那覇川では,氷期の海水準低下期に下流域に分布していた琉球層群が上流側の島尻層群分布域の下方への侵食を防いだ.古中城川は氷期の低海水準期には,全流域に島尻層群が露出するため,島尻丘陵と古中城丘陵の高度差が発生し,分水界付近に崖・急斜面が生じた.この急斜面が崩壊することで,古那覇川流域が侵食されウィンドギャップが形成された.後氷期の急激な海面上昇による古中城川の水没により,中城湾の誕生と,中城湾周辺の独特の地形が現れることとなった.
著者
渡邊 克巳 廣瀬 通孝
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2017-04-01

近年の多感覚情報提示技術の進歩により、クロスモーダル知覚の研究は新たな局面を迎えつつある。特にクロスモーダル相互作用とその体験によって、感覚や知覚が変化するのみならず、より高次の身体知覚や情動などにも変化が起こり、その結果として行動や意思決定にも変化が現れることが明らかになってきた。本研究では、認知心理学におけるダイナミックな意思決定過程のモデルと行動変容の知見に、五感情報処理技術・VR(ヴァーチャルリアリティ)の分野の先端技術を応用することで、身体・認知能力を変化させるクロスモーダル人間拡張技術につながる知見の蓄積と高度化・体系化を行うことを大きな目的として研究進めている。2019年度(および2020への繰越案件)では、様々なVR環境におけるクロスモーダル知覚の変化を、特に身体感覚の変化、身体所有感の変化、さらにそのような変化にともなう感情の変化などに関する研究をすすめた。また行為主体感に関する研究に関しても、行為主体感が外界の知覚に及ぼす影響を調べる研究を行った。2018年度の研究は既に、査読付き論文として複数公刊したとともに、学会での発表も積極的に行った。
著者
小泉 未希 吉井 唯 湯浅 正洋 澤村 弘美 渡邊 敏明 吉田 絵梨子 鈴木 健吾
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.171-176, 2013-12-30 (Released:2014-01-28)
参考文献数
25
被引用文献数
2

Cedar pollen allergies are one of the severe health problems in Japan. Recently, it was reported that symptoms of pollen allergies are attenuated by the intake of functional foods. Euglena is a unicellular organism classified as algae, which is taking notice as a functional food. In this study, the effect of euglena on experimental pollen allergies in mice was investigated.  5 week-old BALB/c male mice were sensitized using Cry j1 by intraperitoneal injection and intranasal instillation. AIN-93M was fed to the negative control and positive control group, whereas euglena, paramylon, and amorphous paramylon were fed (2% in AIN-93M) to each diet group. We determined the incidence of nasal rubbing, liver weight, spleen weight, white blood cell counts, serum IgE and IFN-γ.  In the euglena diet group, the percentage of positive incidences of nasal rubbing mice decreased. It is suggested that euglena may attenuate symptoms of cedar pollen allergies.
著者
中野 長久 大串 美沙 渡邊 敏明
出版者
公益社団法人 日本ビタミン学会
雑誌
ビタミン (ISSN:0006386X)
巻号頁・発行日
vol.91, no.5.6, pp.323-330, 2017 (Released:2018-06-30)

Food includes complicated and wide-ranging ingredients. In order to support life, we digest and absorb only necessary ingredients (nutrients), which are selectively metabolized for the formation of energy and/ or body components, to utilize the necessary nutrients. However, eating habits under full-feeding in our country seem to be in the process to transform disrupted eating habits leading to health damage, because a gap between health expectancy and life expectancy remains still large due to the development of lifestyle diseases including obesity which are caused by an unbalanced diet and/or disrupted food style. In order to bring health expectancy near to life expectancy by correcting disrupted eating habits as much as possible, we should consider the factor to reduce the gap between health expectancy and life expectancy. One of the ways to reduce the gap is a skillful application of food functions to the improvement of disrupted eating habits and also the combination of the improvement of disrupted eating habits by application of food functions with exercise can be thought to be an important factor to reduce the gap. As an example of the application of food functions to the improvement of disrupted eating habits, we will introduce the application of Euglena (Japanese name, Euglena gracilis) based on its physiological functions as a nutrient to improve disrupted eating habits in this review.
著者
萬谷 直樹 岡 洋志 渡邊 妙子 長崎 直美
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.377-381, 2017 (Released:2018-02-07)
参考文献数
11
被引用文献数
2 3

黄芩含有漢方薬による肝障害の頻度を推定するため,当院の全てのカルテをレトロスペクティブに調査した。黄芩含有方剤を服用した2430例のうち,1547例(63.7%)で肝機能検査が施行されていた。1547例のうち黄芩含有漢方薬による肝障害が否定できない例を19例(1.2%)みとめた。その肝障害の臨床像は過去の報告と大差がなかった。 今回の調査でも黄芩含有方剤による肝障害の頻度は1%前後であると推測され,過去の文献報告と一致していた。
著者
杉山 幸丸 渡邊 邦夫 栗田 博之 中道 正之
出版者
一般社団法人 日本霊長類学会
雑誌
霊長類研究 (ISSN:09124047)
巻号頁・発行日
pp.29.011, (Released:2013-12-19)
参考文献数
120
被引用文献数
3 2

Primatology in Japan after the World War II began in the late 1940s with the observation of shy wild Japanese macaques (Macaca fuscata) from more than 100 m. Depending on artificial feeding students succeeded to observe macaques within a short distance and identified each individual. Individual identification of calm free-ranging macaques within a short distance made it possible to record individual and social behavior of each identified individual in detail; long-lasting kin-recognition between a mother and her offspring, dominance relations among individuals and kin-groups, and then, social organization. Artificial feeding is a form of semi-experimental manipulation introduced into the wild monkey groups. This paper showed how students contributed to the primate studies under such a condition at Koshima, Takasakiyama and Katsuyama. Some behaviors, particularly cultural ones, were found only in the artificially-fed groups. Some other exceptional or uncommon phenomena or behaviors seen in non-artificially-fed groups were recorded, with many episodes sufficient for statistical analysis at artificially-fed groups. As far as we are cautious that artificial feeding is semi-experimental manipulation on the wild monkey groups, we can find out more about the important nature of human and non-human primates and evolutionary relations of them.
著者
石黒 智紀 松井 照明 松本 圭司 渡邊 由香利 濵嶋 浩 池山 貴也 窪田 祥平 北村 勝誠 高里 良宏 杉浦 至郎 伊藤 浩明
出版者
一般社団法人 日本アレルギー学会
雑誌
アレルギー (ISSN:00214884)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.1207-1210, 2021 (Released:2021-11-10)
参考文献数
7

12歳,女児.既往に気管支喘息,アレルギー性鼻炎あり.自宅で作ったたこ焼きを4個摂取直後にアナフィラキシーショック,呼吸不全を認めた.開封後1カ月間室温で保存したたこ焼き粉を使用したこと,ダニ抗原特異的IgEがクラス6と強陽性であったことからパンケーキ症候群を疑った.被疑粉が破棄されていた為,冷蔵保存されていたたこ焼きから虫体数と抗原量の測定を試みた.ワイルドマン・フラスコ法によるダニの洗い出しとELISA法による抗原量測定を実施した.結果は,コナヒョウヒダニ430匹/gを認め診断に至った.ELISAではDer f 1 21.1ng/gを検出したが,これは虫体数に比して少なかった.検出されたダニ抗原量が少なかった原因として,加熱や還元剤による抗原性の減弱,ダニ抗原とグルテンとのジスルフィド結合による不溶化等が考えられた.パンケーキ症候群が疑われるが被疑粉の入手が困難な場合,調理された食品の鏡検を行うことで直接ダニ虫体を確認することを考慮すべきである.