著者
片山 直樹
出版者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
雑誌
若手研究(B)
巻号頁・発行日
2017-04-01

全国各地の野鳥の会から公表されている支部報を用いて、探鳥会記録の電子データ化を進めた。観察された種のリストおよび調査努力量としての観察人数のデータを可能な限り記録した。入力作業は、8割ほど完成したものの、いまだ継続中である。来年度には解析に着手したい。一方、モニタリングサイトサイト1000の鳥類データを用いた解析は、着実に進行した。森林草原サイトと里地サイトの両方のデータをもとに、調査手法が統一されている2009-2020年の個体数データを用いて、個体数トレンドを推定した。推定にはTRIM(Trends and Indice for Monitoring data)を用いて、合計300個体以上が観察された47種を対象として、トレンドを推定した。そして、推定された種ごとの年変化率を目的変数し、各種の生活史形質を説明変数としたPGLS(phylogenetic generalized least squares)を行うことで、種ごとの増減の違いを説明する要因を調べた、その結果、種ごとの年変化率を最もよく説明したのは「生息地グループ」であった。具体的には、森林性グループ(21種)では個体数トレンドが安定していた一方で、里山性グループ(19種)と開放地性グループ(7種)では、平均して年1%以上のペースで個体数が減少していることが示唆された。さらに、調査地選択のバイアスが与える影響も調べた。特に里地サイトでは、何らかの里山保全活動が行われているサイトが多い。そこで保全活動を行っているサイト・行っていないサイトで里山性グループの個体数トレンドを比較した。その結果、保全活動を行うサイトでは個体数トレンドが安定している一方、行っていないサイトでは平均して年2%以上のペースで個体数が減少していることが示唆された。現在、論文執筆中である。
著者
李 佳穎 片山 直也 Katayama Naoya
出版者
関西大学経済学会
雑誌
Working Paper Series
巻号頁・発行日
vol.J-56, pp.1-33, 2021-05-15

コンビニレジの混雑の問題解決のため、2019年11月と2020年12月の2回にわたり、ファミリーマート関大店(以下FMKと略)でレジの決済の観察調査を行った。これら2回の調査期間をまたぎ、コロナ禍・レジ袋有料化・電子決済の普及による影響を受けた。グラフと記述統計の分析より、消費者のレジの決済時の特徴とレジの決済時間の関係にも変化が観察され、次がわかった。1. 消費者のできる混雑緩和(レジの決済時間の短縮)には、レジ袋を辞退する、事前に決済の準備をする、ポイントと決済はスマホで行い、レシートを受け取らないのが有効と推察される(2020年12月の調査時点、3.3節、4.1節、4.11節)。これら行動を全てとった場合、平均約4割程度のレジの決済時間の短縮につながることが分かった。またこれら行動は、プラスチックごみの削減や、新型コロナウイルスの感染防止策としても有効であろう。2. レジの決済時間の分布から、2019年調査と比較して、2020年の調査は、非常に長時間、レジの決済をする層が減り、短時間ですます層が増えた(3.1節)。しかしながら、レジ決済時間の平均は、2019年と2020年では、さほど大きな差は見られなかった(3.1節)。3. 電子決済の普及による影響は、2019年と2020年の比較をして、明らかな比率の変化が見られなかった(3.2節)。しかしながら、コロナ禍の影響も考えられるが、消費者は電子決済と現金決済、いずれか一方のみを選択する傾向が顕著となった(3.3節)。また、電子決済がレジの決済時間の短縮につながることが示された(4.1節、4.11節)。4. コロナ禍による影響と思われる現象として、品数を一度に多く買う客層の比率の増加、決済の準備をする消費者の比率の増加、おつり・レシートの辞退率の増加が観察された(3.2節)。5. レジ袋有料化の影響として、レジ袋辞退率が有料化前と比べて、22%から76%と大きく変化した。これはファミリーマートのプレスリリースや環境省の調査より、FMKではより有料化の効果が表れたことを示している(3.2節)。また、2020年調査より、レジ袋辞退は、レジの決済時間の時短にもつながる傾向があることが分かった(3.3節、4.1節、4.11節)。
著者
片山 直美
出版者
日本沙漠学会
雑誌
沙漠研究 (ISSN:09176985)
巻号頁・発行日
vol.32, no.1, pp.25-29, 2022-06-30 (Released:2022-06-30)
参考文献数
10

長期間の宇宙滞在を可能にするためには宇宙における様々な生命維持に関する研究が必要である.特に食糧生産に関する研究は重要で,そのために様々な植物性ならびに動物性の栄養素が摂取できるような食材料の取捨選択,栽培ならびに飼育方法の確立が求められている.食材料を確保するうえで,宇宙空間に循環型社会(ミニ地球)を構築し,無駄のない食糧利用を考える必要がある.そのためには昆虫の食糧としての利用は不可欠である.現在地球上の食糧危機回避に関する昆虫食の果たす可能性と役割について,FAOならびにWHOから提唱された内容は,宇宙空間においても同様に役立つ内容である.そこで宇宙空間での昆虫食の可能性について概説する.
著者
片山 直美
出版者
一般社団法人 日本めまい平衡医学会
雑誌
Equilibrium Research (ISSN:03855716)
巻号頁・発行日
vol.75, no.4, pp.163-170, 2016

<p> The cause of vertigo/dizziness varies. We may reduce vertigo/dizziness with a nutritional approach involving the circadian rhythm and chrononutrition. We can avoid hypoglycemia-mediated vertigo/dizziness by modulating the glucose intake. We can prevent anemia-mediated vertigo/dizziness through dietary supplementation with iron, copper, and vitamin C. Supplementary calcium and zinc are effective for the prevention of psychogenic vertigo/dizziness. In addition, it is effective to enforce a low salt diet at breakfast and lunch. The effective intake-time of calcium is about 1.5 hours before sleep. It is necessary to regulate one's lifestyle, and to prevent diabetes, high blood pressure, dyslipidemia and obesity. We can reduce vertigo/dizziness by preventing edema. A genetic investigation in conjunction with obesity is also necessary. A nutritional approach based on the results of a genetic analysis can be effective for prevention of obesity. Controlled eating habits through nutrition/dietetics can help in the prevention of vertigo/dizziness.</p>
著者
片山 直美 足土 由里佳 一野 晃代 長坂 恵樹子 加藤 江理 伊藤 えり 太田 陽子 梶川 典子 蟹谷 未香 下林 真知子 恒川 小百合 早川 ちひろ 楪葉 真由 藤本 保志
出版者
耳鼻と臨床会
雑誌
耳鼻と臨床 (ISSN:04477227)
巻号頁・発行日
vol.56, no.Suppl.2, pp.S125-S132, 2010 (Released:2011-12-01)
参考文献数
6

日本人の食の満足に及ぼす影響が大きい主食である「飯」に注目し、おいしく簡単に炊き上げるための工夫として、一般家庭で用いる炊飯器によって炊飯した飯の 3 種類の水(純水、ミネラル水、水道水)による違いを検討した。さらに選択した水を用いて、嚥下食・介護食に用いることが可能な離水しにくい粥を作製するために 5 種類の増粘剤(トロミパーフェクト、ソフティア、つるりんこ、とろみ名人、スルーキング)を用いて違いを検討した。方法として被験者である健康成人女性 92 名により各飯の「味」、「香り」、「見た目」、「総合」における官能試験を 5 点満点で評価し、物性を硬さ・粘り計(サタケ製)にて「弾力性」、「硬さ」、「粘り」、「バランス」について評価した。結果、無洗米の炊飯の際に用いる水は純水が最も高い評価であり、熱湯で炊飯することで、加水する時間なしで十分に評価の高い飯が炊き上がることが分かった。また離水しにくい粥も同様に熱湯を用いて加水する時間なしで炊き上げ可能であった。増粘剤を用いることで時間が経っても離水せず、軟らかい粥ができるため、嚥下食・介護食に適していることが分かった。
著者
長島 正明 江西 一成 近藤 亮 松家 直子 片山 直紀 永房 鉄之 美津島 隆
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2013, 2014

【目的】皮膚筋炎・多発性筋炎は骨格筋を病変の主座として,亜急性に進行する近位筋優位の筋力低下や筋痛を認める全身性炎症性疾患で,発症は40歳代から60歳代の女性に多いとされている。早期診断・適切な治療により日常生活が自立する例も多いものの,好発年齢の関係から,自宅退院後の生活や仕事,余暇活動において高い身体機能が望まれる。今回我々は,急性期病院退院時にADLが自立していた皮膚筋炎・多発性筋炎患者を対象に体力測定を行い,同年健常者と比較することで筋炎患者の身体能力の実態を調査した。【方法】対象は当院入院し今回初めて皮膚筋炎もしくは多発性筋炎と診断され,退院時にADLが自立していた8名であった。測定は退院前1週間前後に実施した。比較対象群として,運動習慣のない同年健常者ボランティア9名を設定した。呼気ガス分析装置および自転車エルゴメータを用い,5もしくは10wattランプ負荷とし,嫌気性作業閾値および最高酸素摂取量を測定した。嫌気性作業閾値はV-slope法にて決定した。最高酸素摂取量はペダル50回転を維持困難,最大心拍数の90%,ボルグスケール19,危険な不整脈や胸痛の出現,被験者からの中止要請のいずれかに該当した時の酸素摂取量とした。6MWTは30mの折り返し歩行とし,最大歩行距離を測定した。筋力は筋機能評価運動装置BIODEXを用い,利き足の等尺性膝伸展最大筋力を膝屈曲90°位で測定した。統計学的解析はSPSSを用いてMann-Whitney U検定にて群間比較を行った。有意水準は危険率5%未満とした。【説明と同意】対象者には本研究の趣旨,情報管理および結果の公表に関して,口頭で説明し文書にて同意を得た。本研究は浜松医科大学倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】対象は全例女性であった。年齢(歳)は筋炎群46±9,健常者群44±8であった。身長(cm)は筋炎群156±5,健常者群157±4,体重(kg)は筋炎群44±7,健常者群50±5,BMI(kg/m<sup>2</sup>)は筋炎群18.1±2.9,健常者群20.1±1.7であった。いずれも群間に有意差はなかった。筋炎群の退院時血清クレアチンキナーゼは196±230(15-655)IU/Lであった。退院時の内科的治療は1例がステロイド内服25mg/日,5例がステロイド内服30mg/日,1例がステロイド内服30mg/日+ネオーラル100mg/日,1例がステロイド内服30mg/日+メソトレキサート12mg/週であった。在院日数は65±19日であった。ADLはBarthel Indexで全例100点であった。全例筋痛は認めなかった。嫌気性作業閾値(ml/kg/min)は筋炎群10.3±3.1,健常者群14.7±4.9であった。最高酸素摂取量(ml/kg/min)は筋炎群18.6±6.6,健常者群27.2±7.3であった。6MWT(m)は筋炎群511±110,健常者群641±49であった。Peak load(watt)は筋炎群68±27,健常者群115±30であった。いずれも筋炎群で有意に低値であった。安静時心拍数(beats/min)は筋炎群75±11,健常者群64±9であり,筋炎群は有意に高値であった。最大心拍数(beats/min)は筋炎群151±21,健常者群157±9で群間に有意差はなかった。筋力(Nm/体重)は筋炎群1.35±0.40,健常者群2.52±0.28であり,筋炎群は有意に低値であった。【考察】皮膚筋炎・多発性筋炎患者はI線維の割合が有意に少ない(Dastmalchi 2007)ことが報告されている。一方,副腎皮質ステロイドの大量投与もしくは長期投与はIIb線維の特異的な萎縮を来す(Pereira RM 2011)ことが知られており,筋炎患者は病態上も治療上も特異的な筋病態を呈していることが推察される。また,下肢最大筋力が大きいほど歩行速度は速い(淵本1999)など一般的に筋力は運動パフォーマンスと関係すると言われている。身体能力の低下は骨格筋量の減少を背景として,6MWTではIIb線維の萎縮に伴う最大筋出力低下が起因し,有酸素能力ではI線維割合の低下に伴う末梢での酸素利用能低下が起因するものと考えられる。安静時心拍数は筋炎患者において有意に高かった。疾患それ自体が自律神経系に与える影響が大きいこと,また入院による運動不足に伴う交感神経活動の亢進が要因かもしれない。本研究により筋炎患者の有酸素能力,筋力,歩行能力が低下していることが明らかとなったが,自宅退院後および社会復帰後に,どの程度の制限を受けるかは定かではない。今後は生活に応じた実態調査が必要である。【理学療法学研究としての意義】皮膚筋炎・多発性筋炎患者において,ADLが自立していても有酸素能力,筋力,歩行能力は低下していることが判明した。筋疾患の場合,運動自体が筋線維を壊してしまう場合があるが,血清クレアチンキナーゼ,筋痛や筋力低下などの症状に配慮しながら運動療法を実施する必要性が示唆された。
著者
和田 英夫 南川 光三 大岩 道明 兼児 敏浩 森 美貴 玉木 茂久 高木 幹郎 影山 慎一 片山 直之 南 信行 出口 克巳 白川 茂
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.32, no.7, pp.773-776, 1991 (Released:2009-03-12)
参考文献数
7

特発性血小板減少性紫斑病(ITP), SLE, 慢性関節リュウマチ,再生不良性貧血患者の血中Interleukin-6 (IL-6)値を測定し,ITP例やSLE例では血中IL-6値の増加が認められた。またITPの治療にともない血中IL-6値は減少し,ITP発症時に血中IL-6値と血小板数は弱い負の相関を示した。この血中IL-6値の増加は,ITPの発症に免疫系の活性化が関与していることを示唆すると考えられた。
著者
村上 幸生 香村 亜希子 岡田 知之 川田 朗史 松村 正晃 丸山 直美 大井 優一 田村 靖子 町野 守 片山 直
出版者
日本口腔診断学会
雑誌
日本口腔診断学会雑誌 (ISSN:09149694)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.28-31, 2017-02-20 (Released:2017-05-23)
参考文献数
26

Oral lichen planus is an intractable chronic inflammatory lesion with dyskeratosis, appearing more commonly on the buccal mucosa. Here we describe a case of oral lichen planus starting on the bilateral buccal mucosa in a 70-year-old female patient that showed great improvement. The patient's condition gradually improved after treatment with cepharanthin, an alkaloid agent extracted from Stephania cepharantha Hayata. A review of some additional literature pertaining to probable mechanisms of action is included.
著者
小松 泰喜 石川 知志 片山 直樹 武藤 芳照
出版者
日本肩関節学会
雑誌
肩関節 = Shoulder joint (ISSN:09104461)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.333-336, 2002-01-01
参考文献数
9
被引用文献数
1

Swimming is generally accepted as a sport with minimal physical injuries. However, swimmers frequently complain of shoulder pain, termed &rdquo;swimmer's shoulder&rdquo;, which is thought to be a form of overused disorder. We investigated the factors related to shoulder pain in a cohort of elite swimmers in an attempt to isolate causes of this disorder. The subjects include 123 swimmers selected to participate in the Japan swimming championships between 1996 and 2000. Each participant had undergone complete medical examinations at the time of their competition. A study questionnaire was employed which asked the subject to grade the severity of their shoulder pain asked whether they trained with paddles and flippers, practiced any weight training, tubing and swim bench, did any stretching, and asked them to describe the type of swimming events in which they participated. The McNemar test and chi-square test were used in the statistical analysis. The incidence of shoulder pain was higher in swimmers who used paddles and flippers (p<0.01) and pain occurred more frequently during the weight training (p<0.01). Swimmers who stretched experienced a lower incidence of shoulder pain (p<0.01). There were no significant relationships between the shoulder pain and the type of swimming events or the practice of tubing and swim bench. : The use of the paddles and flippers as a training method needs to be investigated further as this appears statistically related to the development of &rdquo;swimmer's shoulder&rdquo;, a frequently cited overuse disorder among the swimming population. Furthermore, the practice of performing stretching exercises appears to prevent shoulder pain in this population and should be included, as part of the warm-up routine.
著者
寺西 正明 片山 直美 内田 育恵 戸田 潤二 中島 務 喜多村 健
出版者
Japan Otological Society
雑誌
Otology Japan (ISSN:09172025)
巻号頁・発行日
vol.17, no.5, pp.621-626, 2007-12-25 (Released:2011-06-17)
参考文献数
12
被引用文献数
1

In the present study, we investigated the distribution of patients with sudden deafness in Japan using the data obtained by the fourth nationwide epidemiological survey on sudden deafness conducted by the Research Committee of the Ministry of Health Labour and Welfare in 2001. We investigated the distribution of patients by dividing the whole country into 9 districts and 47 prefectures. The annual number of patients with sudden deafness per 100, 000 was from 17 (Shikoku) to 42 (Chugoku) and from 3 (Yamanashi, Nagasaki) to 48 (Osaka), respectively. More patients tend to be reported in densely-populated areas judging from the data concerning the distribution of patients per 100, 000 in each prefecture.
著者
片山 直美 蜂谷 奈都美
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術研究会誌 (ISSN:13481282)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.11, pp.7-13, 2008

梅の原産地は中国と考えられており, 長江 (揚子江) 沿岸の温暖な地域で, 野生原木として生息していたと推測されている。今から7000年前の新石器時代初期の遺跡の中で, すでに炭化した梅の核 (種) が見つかっており, すでにこの頃から中国では梅の実が食べられていたとされている。このような歴史深い梅干は日本の家庭に深く根づいた伝統食であり, 梅の実自体には多くのビタミンやミネラルは含んでいないが, 梅干しになると食欲を増進させるクエン酸やコハク酸, リンゴ酸, 酒石酸などの有機酸を多く含み, ミネラルも豊かぐある。中でもクエン酸はカルシウムの吸収を良くし疲れの元になるといわれる乳酸の過剰生産を抑え活力増進につながるので, 骨の老化や骨粗しょう病予防のカルシウム摂取にも役立つ。またクエン酸の持つ殺菌効果が腐敗防止に役立っており, 梅干を食べることによって唾液が分泌され, 人間の唾液の中にも食中毒菌を殺菌する効果もあるので, 2重の殺菌効果が期待される。老化の原因は活性酸素の一つである過酸化水素にあるが, 梅干しを食べた時, 見た時に出る唾液にはアミラーゼやカタラーゼなどの酵素が含まれているが, カタラーゼには, 過酸化水素を水と分子状酸素に分解して毒性を消す作用があるため, 老化防止に良いといわれている。疲労回復について, 梅はクエン酸の多く含まれている健康食品である。このクエン酸が乳酸の大量生産を抑制し, 炭酸ガスと水に分解して体外に排出する働きを行うことにより, 疲労が蓄積されにくくなるのである。昔から夏バテに梅が効くと言われるのは梅のクエン酸の働きによるものである。このような有用な梅干は取りすぎると塩分の摂りすぎにつながる危険がある。そこで本研究は市販されている80種類の梅干しについて, 梅の実をつぶし, 塩分計 (タニタ社製) を用いて, 梅一個当りの塩分を測定し, 比較検討した。さらに市販の梅のみ80種類を健康成人10名 (年齢20.43±0.97, 女性) にて官能評価した。評価項目は「味」「見た目」「香り」「色合い」「塩味」「甘味」「酸味」「舌触り」「付属物の味」「総合」の10項目であり, 各項目について10点満点で評価した。結果今回は「南高梅うす塩白」や「南高梅あっさり110g」が各項目において最も高い評価を得た。やはり現在は「塩分の摂りすぎ」に対しての認識が高まっていることが大きく影響していると考えられる。甘みの強い梅干し (蜂蜜など) と, 酸味の強い梅干などは評価に個人差が現れることがわかった。梅干は伝統食品であり, 今後も食卓には欠かせない食品であるが, 塩分には十分に気をつけて摂取する必要がある。薄味の梅干は腐りやすい欠点を補うために様々な防腐剤が混入している可能性があるため, 表示には十分に気をつけて購入する必要がある。今後も, おいしく食べて健康になるために適量の梅干しを摂取することを推奨する。
著者
片山 直美
出版者
美味技術学会
雑誌
美味技術研究会誌 (ISSN:13481282)
巻号頁・発行日
vol.2008, no.11, pp.47-51, 2008-01-31 (Released:2010-06-28)
参考文献数
8

ギャバ (GABA: γ-アミノブチリル酸) は古くから哺乳類動物の脳や脊髄に多く含まれ手いることが知られており, 1950年には抽出もされ, 多くの研究がなされてきた。特に中枢神経における制御系の神経伝達物質であることがわかっている。生体内において主に, 脳内の血流を活発にし, 酸素供給量を増やし, 脳細胞の代謝を高めることがわかっているため, イライラや体調不良を防ぐ働きを持っことになる。ギャバは睡眠中の特に深い眠りのときに生成されるため, 睡眠不足の人ではギャバ不足になる可能性がある。睡眠障害や自律神経の失調, 鬱, 更年期障害や老年期の不眠といった症状の改善にも効果が期待できる。さらに血圧を下げる効果, これは腎臓の働きを活発にし, 利尿作用を促すことで血圧を下げるため, 高血圧の予防となる。またアルコール代謝を高めることも肝機能の働きを促す効果があるため期待できる。内臓の働きが活発になるため, 消費エネルギー量を高め, 血中のコレステロールや中性脂肪をコントロールして脂質代謝を促すこともわかってきた。今後糖尿病や肥満の予防に役立つ可能性がある。このように生体に有用であるギャバは, 日本茶や米類について一定の条件を決めて保存することで含量を増加させることができる。また, 大麦, カボチャ, 発酵食品 (チーズ, 味噌, 醤油など), 漬物 (しば漬け, すぐき, キムチ, ぬか漬け), ヨーグルト, 納豆, 粥, スピルリナなどの食品でのギャバ含量を増加させる様々な製造法の研究が進められている。そこで本研究はより多くのギャバを日常生活で取り入れる応用研究を行うために, ギャバを自然富化した米をもちいて, その食味について官能試験を行い, 日常的にギャバ添加米を用いることができるかどうかを検討することにした。無洗白米を基準に, ギャバを富化した無洗白米, ギャバを富化した無洗玄米, 無洗混合ギャバ米 (玄米1対白米2) において(味) (香り) (見た目)の官能試験を10点満点で行った結果, 白米 (8.2, 8.0, 8.3), 白米ギャバ (7.5, 8.7, 7.5), 玄米ギャバ (5.0, 3.5, 6.7), 混合ギャバ (6.8, 4.3, 6.3) となり, 白米ギャバの場合においては, ほぼ白米と同じ評価を得ることができた。今後日常的に取り巻く外的ストレス環境に打ち勝って, 精神的安定を保ち短時間であっても十分な睡眠と体の回復を行うために, ギャバを自然富化した米を日常生活に取り入れることは有用であると考える。
著者
片山 直美 山口 貴代 大島 加奈子 小野田 さつき 古山 直美 冨永 美知穂 田中 理恵 瀬古 友美 住田 実穂
出版者
Japanese Society of Taste Technology
雑誌
美味技術研究会誌 (ISSN:13481282)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.9, pp.39-47, 2007

2015年には団塊の世代がすべて65歳を超えて4人に1人が高齢者という, 文字通りの超高齢社会を迎えるわが国において, 加齢に伴う身体機能の低下のため, 栄養不足や誤嚥性肺炎などの原因となる嚥下機能低下による摂食障害は大きな問題として取り上げられることが推測される。そこで本研究は現在市販されている嚥下食品に対して, 「見た目」や「香り」などの主観的な要素と「飲み込みやすさ」などの客観的な要素を取り入れて評価を行うことで, より良い嚥下食の開発に役立てることを目的とした。被験者として健康成人16名(20.4±0.51才, 女性:名古屋女子大学家政学部食物栄養学科学生)を用いて, 嚥下食品(全176品目)に対して評価した。方法は, 被験者に「見た目」「味」「香り」「のど越し」「舌触り」に対してそれぞれの食品を食べた後, 10段階評価を行なわせた。結果, 冷たくてのど越しの良い「ゼリー類」に高い評価が下された。また「煮こごり」「カレー」「シチュー」など香辛料を用いたさまざまな食品が選ばれ, 香りや見た目に違和感のない食品に対する評価が高かった。今後, 作成される嚥下食において「香り」と「見た目」の一致は重要で, さらに「香辛料」を用いて食欲をそそる調理方法が必要である。また盛り付けに対する配慮が必要である。