著者
神谷 泉 黒木 貴一 田中 耕平
出版者
日本情報地質学会
雑誌
情報地質 (ISSN:0388502X)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.11-24, 2000-03-25
参考文献数
40
被引用文献数
23

数値地図50mメッシュ(標高)を用い,地表面の傾斜を濃淡画像で表現した傾斜量図を作成し,これを用いた地形・地質の判読を試みた。傾斜量図は,低地(段丘),山地,火山,地すベり地の地形の判読に有用であった。また,構成地質に関しては,構造線・断層の候補となるリニアメント,ある種の岩石の分布域の境界を判読できる場合があった。判読のための傾斜の計算方法としては,Roberts型よりもPrewitt型あるいはSobel型が優れている。傾斜量図は,他の地表面の表現手法と比べ,いくつかの点で優れている。上記の判読で使用している基本的な判読キーは,「明るさ」,「一様性」,「線間隔」,「鮮明さ」,「方向性」であった。また,山地においては,尾根と谷に対応する明るい線が互いにがっちりかみ合った模様である「脳状模様」が有用な判読キーであった。以上を総合し,傾斜量図は,地形・地質を調査する上で重要な資料となりうる。
著者
田中 耕司 斎藤 佐和
出版者
日本特殊教育学会
雑誌
特殊教育学研究 (ISSN:03873374)
巻号頁・発行日
vol.45, no.3, pp.137-148, 2007-09-30
被引用文献数
1

聴覚障害児の書記表現力の指導の実態に関して現状を把握するため、全国の聾学校小学部・中学部を担当する教員127名を対象にアンケート調査を行った。アンケートは93名から回答があり、そのうち92名を有効回答として分析の対象とした。その結果、以下の5点が明らかになった。1)書記表現力の指導は、教科指導の一環として行われる「国語科」の時間内だけでなく、「自立活動」や「放課後・昼休み」など教科外でも指導の機会が頻繁に設けられていた。2)取り扱う教材に関しても、「日記」や「感想文」など児童生徒の書記表現力の基礎を形成するために効果的と考えられる教材が選択されていた。3)指導内容に関しては、評語による指導が中心となっており、対象者全体として児童生徒が書記表現力について抱える困難に即した指導が行われていた。4)指導に際しても、単に意欲の喚起にかかわる動機づけの側面だけでなく、語彙・文レベルの指導から文章レベルでの指導まで幅広く行われていた。5)評価方法としては、指導と合わせるかたちで評語による評価がおもに行われていた。以上の点から、聾学校においては、児童生徒の書記表現力の向上に向けた実質的な指導が展開されていることが示唆された。
著者
笛木 司 田中 耕一郎 牧野 利明 松岡 尚則 佐藤 忠章 小池 一男 頼 建守 並木 隆雄 千葉 浩輝 別府 正志 須永 隆夫 岡田 研吉 牧⻆ 和宏
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.281-290, 2017 (Released:2017-12-26)
参考文献数
22

「桂」に類する生薬(以下「桂類生薬」)は,古典医書中,多くの薬名で記述されており,それらの薬名と基原の対応は現在も未解決の問題である。我々は『本草経集注』「序録」の「桂」の長さと重さに関する記述に,先に明らかにした同書の度量衡の換算値を適用することにより,当時「桂」として流通していた生薬は,現在のシナモンスティックに相当するCinnamomum cassia の枝皮(カシア枝皮)であったと強く推測した。推測の妥当性を確認するためカシア枝皮に含まれるケイアルデヒドとクマリンを生薬市場で入手した種々の桂類生薬と定量比較したところ,カシア枝皮中の2成分の含有量は,市場で上品とされる日本薬局方適合ベトナム産ケイヒ(C. cassia の幹皮)と近い値を示し,この推測を支持する結果を得た。C. cassia の幹皮の代わりに枝皮を医薬品として応用できる可能性があると考えられた。
著者
岩間 信之 浅川 達人 田中 耕市 駒木 伸比古 駒木 伸比古
出版者
日本フードシステム学会
雑誌
フードシステム研究 (ISSN:13410296)
巻号頁・発行日
vol.22, no.2, pp.55-69, 2015 (Released:2015-12-08)
参考文献数
50
被引用文献数
6 5

In this study, we analyzed the factors that have disrupted the healthy eating behaviors of the elderly, where the study area was a city center in Japan. We estimated that 49% of the elderly residents in the study area had a poor nutritional condition. Many of the subjects were concentrated in the central business district of the city. Our multilevel analysis indicated that weak ties with family and the local community and inadequate access to food had strong effects on a high proportion of the nutritionally depleted elderly subjects in this inner city study area. Thus, we can designate this area as a “food desert.” Food deserts are based on social exclusion. Previously, the issue of food deserts was considered to be mainly a social problem affecting rural areas and local cities where small neighborhood shopping areas have closed, thereby making shopping physically difficult for people without private cars. However, our study shows that reduced intimacy in people's relationships also increases the risk of food deserts.
著者
浅川 達人 岩間 信之 田中 耕市 駒木 伸比古
出版者
Japan Association for Urban Sociology
雑誌
日本都市社会学会年報 (ISSN:13414585)
巻号頁・発行日
vol.2016, no.34, pp.93-105, 2016-09-03 (Released:2017-11-01)
参考文献数
13
被引用文献数
1

The purpose of this study is to analyze the factors that have disrupted the healthy eating behaviors of the elderly. We supposed that there were two main factors, which were inadequate access to food and weak ties with family and the local community. In the local city that was composed of urban and rural area, these two factors were expected to cause the elderly residents a poor nutritional condition. An empirical study was conducted in City A that is located in the northern part of Tokyo metropolitan area. Logistic regression analyses were adopted. The dependent variable was “dietary diversity score”, and independent variables were “sex”, “age”, “income”, “family members living together”, “need of assistance”, “spending daytime alone”, “eating a meal with someone”, “the distance to supermarkets”, and “the frequency of participation in some hobby-related groups”. The results of logistic regression analyses showed that the dietary diversity scores of the elderly who lived in the area far from the supermarket were lower. Although controlling this effect, “the frequency of participation in some hobby-related groups” was statistically significant. These results suggested that inadequate access to food and weak ties with family and the local community have disrupted the healthy eating behaviors of the elderly.
著者
関根 麻理子 牧野 利明 田中 耕一郎 嶋田 沙織 四日 順子 古屋 英治 地野 充時 田原 英一
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.72, no.2, pp.182-203, 2021 (Released:2022-07-29)
参考文献数
25

医療安全委員会では,安全に漢方方剤を使用するための啓発活動を行っており,前回,日本医療機能評価機構の薬局から登録されたヒヤリ・ハット事例を分析した。今回は,同機構の医療機関から登録された医療事故とヒヤリ・ハット事例を分析した。漢方製剤が関係する事例は626件であった。医療事故には,薬剤性肝障害事例があった。 ヒヤリ・ハット事例に関しては,処方時では漢方エキス製剤の1包の内容量の勘違いによる用法用量の誤り,調剤時では製剤番号・外観の類似や漢方処方名の類似による調剤の誤り,投薬時では漢方処方名まで確認せずに,漢字表記やメーカー名だけで判断することによる投薬の誤りがあった。ヒヤリ・ハット事例は当事者本人や同職種者に限らず,他職種者や患者本人から発見される事例も多かったことから,ヒヤリ・ハット事例は同職種者間での共有に留まらず,他職種者とも共有することが,医療安全の推進につながると考えられた。
著者
田中 耕太郎 中桐 俊男 藤井 孝博 本多 武夫
出版者
公益社団法人 化学工学会
雑誌
化学工学論文集 (ISSN:0386216X)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.73-78, 2004 (Released:2004-12-07)
参考文献数
12
被引用文献数
1 2

アルカリ金属熱電変換(AMTEC)のカソード側電極内の物質移動とその経時変化特性は出力性能に大きく影響する要因である. Mo電極の性能は1100 K以上の温度域で急激に劣化することが既に報告されている. しかしより低い温度域では, Mo電極の高い初期性能はより長時間維持される可能性がある. 本研究では温度範囲900-1050 Kにおいて, Na低圧蒸気雰囲気を利用する電極評価セル(SETC)による実験を実施した. 電極の限界電流密度を測定し, Na物質移動特性を自由分子流と仮定した無次元形状係数Gにより評価した. Mo電極部温度904 K, 1007 K, 1056 Kの作動条件において, 約100-150時間でGはそれぞれ20, 78, 122の一定値に収束する結果を得た. 904 Kの測定結果よりAMTEC 出力特性を検討すると, 従来のTiN電極(G = 150)と比較してMo電極は約50%の出力増加が期待できることを明らかにした.
著者
上田 三穂 小林 裕 吉森 邦彰 高橋 由布子 近山 達 池田 元美 魚嶋 伸彦 木村 晋也 田中 耕治 和田 勝也 小沢 勝 近藤 元治 河 敬世 井上 雅美
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.657-662, 1997 (Released:2009-04-28)
参考文献数
15

Chronic active Epstein-Barr virus infection(以下CAEBV)の経過中にEBV感染T細胞の腫瘍化を起こした1例を経験した。症例は20歳女性で発熱,陰部潰瘍,口腔内潰瘍などのベーチェット病様症状で来院した。頚部リンパ節腫脹を認め,生検では炎症性変化であった。EBV抗体価よりCAEBVと診断し,PSL, acyclovirの投与をおこなった。一旦症状は改善したが,発症約10カ月後に汎血球減少を呈し,骨髄にて異常細胞を35%認めた。TCR-β遺伝子の再構成を認めT細胞腫瘍と診断した。化学療法にて骨髄は寛解となったが,全身のリンパ節の再腫脹を認め,約3カ月の経過で治療抵抗性のため死亡した。骨髄中の腫瘍細胞でのEBVのterminal probeを用いたSouthern blottingにてsingle bandが検出され,単クローン性が証明されたことより,EBV感染T細胞の腫瘍化と考えられた。本邦の成人例では稀であり,報告した。
著者
田中 耕三
出版者
日本地理教育学会
雑誌
新地理 (ISSN:05598362)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3-4, pp.142-149, 2000-03-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
14

The contents of this paper consist of the seven subjects indicated below. With the exception of (6), this paper provides a summary of views pertaining to various aspects of geography education from the standpoint of education in the classroom.(1) Detrimental effects were indicated with respect to the contents of textbooks being regulated by school curriculum guidelines, and all textbooks tending to be excessively uniform. This may be considered to be analogous to the current issue of relaxation of regulations.(2) Starting around 1965, the number of regional geographical teaching materials within the contents of elementary school social studies has diminished, and a trend of a lack of spatial understanding was pointed out from a comparison with the enhancement of period history in history teaching materials. It was stated that this dissociation of both fields should be corrected from the standpoint of healthy social studies development.(3) Differences in the manner in which education administration and geographical societies are reflected in geography education were compared between the US and Japan through a comparison of those factors. In other words, in Japan, the intentions of geographical societies are not reflected in education administration, and it was pointed out that classroom education presently is overly dependent on the Ministry of Education resulting in uniform and passive education.(4) Personal opinions were stated regarding the importance of the handling of place names that constitute essential basic knowledge in geography education.(5) A present situation that has wandered off course while looking back over the progress of the past fifty years since the end of World War II is depicted with respect to the two forms of training, an endless topic in the field of education.(6) The paper of Prof. Osamu Nishikawa is discussed, and an introduction is provided to the practicality of geography in both present and future society.(7) With respect to differences between the sexes in learning geography, the question was raised based on personal experiences of the author that, in addition to differences in physiological phenomena of the cerebrum between males and females, significant differences between interests and concerns among females may be one of the causes of an inaptitude for learning geography.
著者
田中 耕一 戸田 芙三夫
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
日本化学会誌(化学と工業化学) (ISSN:03694577)
巻号頁・発行日
vol.1987, no.3, pp.456-459, 1987-03-10 (Released:2011-05-30)
参考文献数
6
被引用文献数
3

シアノヒドリン〔2〕がブルシンと錯体をつくり,一方の光学活性体へ変換されることを見いだした。たとえば,(±)-1-シアノ-2,2-ジメチル-1-フェニル-1-プロパノール〔2a〕をメタノール中ブルシンで処理すると,94%eeの(+)-〔2a〕へ定量的に変換された。同様な方法で,(+)-〔2b〕,(+)-〔2c〕,(-)-〔2d〕,(-)-〔2e〕,(+)-〔2p〕および(-)-〔2u〕も得られた。
著者
中平 伸二 金子 国雄 田中 耕作
出版者
Japan Poultry Science Association
雑誌
日本家禽学会誌 (ISSN:00290254)
巻号頁・発行日
vol.27, no.1, pp.47-51, 1990-01-25 (Released:2008-11-12)
参考文献数
13

鶏の長腓骨筋の死後硬直の過程を連続的に測定する方法を考案した。すなわち,筋肉ストリップ(5×25mm)を注射筒内に糸で吊し,流動パラフィンを注入して嫌気的条件にしたのち,ストレインゲージトランスジューサーに連結して筋肉の張力を測定した。この方法を用い,各種処理がその後の筋肉硬直に及ぼす影響を観察した。なお,特に述べないかぎりは,嫌気的条件で筋肉の動向を観察したものである。1) 本実験装置を用いた方法は,鶏筋肉の死後硬直過程を長時間継続して観察するのに有効であることが認められた。2) 嫌気的条件下で17°Cの温度におくと硬直は約2時間後にピークに達した。一方,好気的条件下では硬直は顕著で長時間継続した。3) 超音波処理を25°C-10分間行うと,硬直の程度は弱くなることが観察された。4) EGTA処理によってカルシウムイオンを除去すると硬直は起こらなかった。5) 下垂体除去約1日後屠殺した場合,死後硬直の程度は,正常鶏の場合とほぼ同様であったが,屠殺前麻酔処理を行うときわあて緩慢な経過で硬直の現象がみられた。6) 嫌気的条件下で筋肉を18.5時間0°Cで保存するとその後温度を17°Cに上げても硬直は起こりにくいという結果が得られた。
著者
溝井 令一 植田 真一郎 田中 耕一郎 千葉 浩輝 奈良 和彦 山元 敏正
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.1-7, 2019 (Released:2019-08-26)
参考文献数
34

神経変性疾患の連続74例について気血水スコアを用い気虚,気鬱,気逆,血虚,瘀血,水滞の有無(証の病態6項目)を評価し,同年代のその他神経疾患の連続149例を比較対照として比較検討した。年齢,性別,重症度も共変量とした多変量解析の結果,神経変性疾患ではその他の神経疾患と比較して血虚,水滞,気鬱の順で関連性が高く,調整済みオッズ比(95%信頼区間)はそれぞれ3.02(1.43-6.48),2.37(1.13-5.11),2.33(1.01-5.44)だった。神経変性疾患と最も関連性が高い証は血虚であった。四物湯類(四物湯加減)の処方を考慮することは,患者の苦痛軽減に寄与できる可能性がある。自覚症状に加え脈候,舌候,腹候など東洋医学的な尺度を用いた治療効果の判定が必要である。
著者
田中 耕市
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
E-journal GEO
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.30-39, 2017
被引用文献数
1

<p>本稿は,2015年に実施された「地域ブランド調査」を利用して,1,000市区町村を対象とした主観的評価に基づく地域の魅力度の構成要素とそのウェイトを明らかにした.はじめに,地域の魅力度に関わると考えられる同調査の75項目から,主成分分析によって13の主成分を導出した.次に,それらの13主成分を説明変数,市区町村の魅力度を被説明変数とする重回帰分析を行った結果,魅力度は11の構成要素から成り立っていた.それらのうち,魅力度におけるウェイトが最も高かったのは観光・レジャーであり,農林水産・食品,生活・買い物の利便性,歴史がそれに続くことが明らかになった.本稿で解明した地域の魅力度の構成要素とそのウェイトをもとに,客観的な地域の魅力度を評価することが可能となる.</p>
著者
香月 有美子 鈴木 重明 高橋 勇人 佐藤 隆司 野川 茂 田中 耕太郎 鈴木 則宏 桑名 正隆
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.102-106, 2006 (Released:2006-04-30)
参考文献数
12
被引用文献数
6 6

Good症候群は胸腺腫に低γグロブリン血症を合併し,多彩な免疫不全状態を呈するまれな疾患である.我々はGood症候群に重症筋無力症(MG)を同時期に合併した症例を経験し,その免疫機能に関して評価した.症例は58才男性.四肢筋力低下,易疲労感のため受診し,抗アセチルコリン受容体(AChR)抗体陽性,胸腺腫からMGと診断.末梢血リンパ球数は正常であったが,著明な低γグロブリン血症(IgG 283 mg/dl, IgA 17 mg/dl, IgM 1 mg/dl)を認めた.拡大胸腺摘出術,副腎皮質ステロイド投与によりMGは寛解を維持しが,免疫グロブリンの定期的な補充にもかかわらず,呼吸器感染症やカンジダ症を繰り返した.経過中,副腎腫瘍,膵頭部癌と肝転移巣が判明し,細菌性肺炎により死亡した.免疫学的検討では,末梢血中のCD19+ B細胞が欠損していたが,各種マイトジェンに対するリンパ球増殖能は保たれていた.リコンビナントAChR蛋白により誘導されるT細胞増殖反応は低い抗原濃度でも観察され,MG患者に特徴的なパターンを示した.B細胞と結合する自己抗体を検出したが,本例では検出されなかった.Good症候群では免疫不全や自己免疫を含む多彩な免疫異常を呈することが示された.