著者
町野 ひろみ 野村 理 和田 簡一郎 熊谷 玄太郎 田中 直 浅利 亨 石橋 恭之 花田 裕之
出版者
弘前大学大学院医学研究科・弘前医学会
雑誌
弘前医学 (ISSN:04391721)
巻号頁・発行日
vol.71, no.2-4, pp.108-112, 2021 (Released:2021-03-15)
参考文献数
9

目的 : 津軽地方での外傷診療において,我々はりんご農作業に関連した頚髄損傷をしばしば経験するが,その受傷機転や臨床像には不明な点がある. 本調査の目的は,りんご農作業により生じた頚髄損傷の受傷機転と臨床経過を明らかにすることである. 対象と方法 : 2015年1 月から2019年8 月までに弘前大学医学部附属病院高度救命救急センターに搬送された,りんご農作業に関連した頚髄損傷症例を対象とした.診療録より患者の属性,発生月,受傷機転,神経学的重症度および予後についての情報を抽出した. 結果 : 同定された10例のうち9 例が男性であり, 5 月と6 月に多発した( 7 例).受傷機転は2 つに分類され,乗用草刈 機運転に関連するもの( 5 例)と梯子などからの墜落( 5 例)であった.退院時のAmerican Spinal Injury Association Impairment Scale( AIS) は,Aが1例,Bが2 例,Cが2例,Dが3例,Eが2例だった. 結語:りんご農作業に関連する頚髄損傷は5 から6 月に好発し,乗用草刈機運転,梯子上の作業中に発生していた.重 症例も観察され,予防策の構築が急務である.
著者
田中 優子 犬塚 美輪 藤本 和則
出版者
日本認知科学会
雑誌
認知科学 (ISSN:13417924)
巻号頁・発行日
pp.2022.003, (Released:2022-06-15)
参考文献数
123

Pervasive misinformation is a primary social issue in the digital age. A common method for resolving this issue is making corrections to mitigate false beliefs due to misinformation. However, the influence of misinformation is often predominant, thereby resulting in correction having a limited effect on alleviating people's false memory and reasoning. This psychological phenomenon is known as the continued influence effect of misinformation. Rapidly evolving research has accumulated into a sizable literature explaining the psychological processes that cause this effect. This article seeks to clarify the psychological processes for exploring ways to harness the negative impact of misinformation on our minds. Specifically, we review cognitive models and factors related to the continued influence effect, as well as a potential side effect of correction. Moreover, we summarize practical recommendations for interventions based on psychological characteristics. Finally, we discuss future directions in psychology and how emerging interdisciplinary research contributes to controlling the harmful impact of misinformation on our society.
著者
田中 長三郎
出版者
九州大学
巻号頁・発行日
1954

博士論文
著者
相澤 章仁 田中 愛子 辻野 昌広
出版者
公益社団法人 日本造園学会
雑誌
ランドスケープ研究 (ISSN:13408984)
巻号頁・発行日
vol.80, no.5, pp.731-734, 2017-03-31 (Released:2017-09-13)
参考文献数
19
被引用文献数
1

In this paper, we propose a vegetation monitoring with the collaboration of citizens and expert at the riverbank of the Tone canal, Chiba, Japan as advanced case study of the biodiversity monitoring. The monitor ing had started since that a citizens’ group cared about the changing method of the vegetation management of the Tone canal riverbank by Edogawa River Office. The leader of the group asked experts advice for vegetation monitoring. The expert held workshop to examining monitoring method, advised in fieldwork, and summarized results. The experts particularly supported technical aspect of each phase to deepen citizen’s understanding. The results of the monitoring were useful and easy to understand. This case study is a role model of the collaborative monitoring, because citizens and experts have collaborated consistently from examining the monitoring design with introducing citizens’ attentive observations for local nature. The deep-rooted collaboration with River Office are needed to develop this case study to ideal adaptive ecosystem management. To enhance and to spread collaborative monitoring, linking the network of the citizens and experts are needed.
著者
田中 俊徳
出版者
日本環境学会
雑誌
人間と環境 (ISSN:0286438X)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.3-13, 2009

1972年のユネスコ本会議において採択された世界遺産条約は,2008年10月現在,185の条約加盟国と878ヵ所の世界遺産地域を有し,その規模と知名度,人気から成功している条約と目されることも多い。しかし,1993年に発表されたイコモスの調査報告において,世界遺産は文化遺産に大きく偏り,地域別に見ても,ヨーロッパ・北米に著しく偏っていることが指摘された。また,遺産の内容も,とりわけキリスト教に関する宗教遺跡や世界的に有名な「エリート」遺産に偏っているとされた。このような世界遺産の偏りを是正するために,1994年の世界遺産委員会において「グローバル・ストラテジー(Global Strategy for a Balanced, Representative, and Credible World Heritage List)」の採用が決定した。これは,「バランスがとれ,代表的かつ信頼できる世界遺産リスト」を達成するために,地域間の世界遺産数のバランスや文化遺産と自然遺産のバランスを考慮し,世界遺産概念の多様化を狙ったものである。以降,世界遺産委員会と世界遺産条約事務局であるユネスコ本部世界遺産センターでは,このグローバル・ストラテジーを基本方針として,条約運営を実施することになった。グローバル・ストラテジーの採用から15年,この基本方針の運用はどのようになされたのか,文献調査と筆者の実務経験から検証した。結果として世界遺産概念の多様化は達成されたが,地域間における格差は拡大傾向であることが分かった。また,文化遺産と自然遺産の格差も拡大傾向であった。その理由として,世界遺産新規推薦件数の増加による審査の厳格化が挙げられる。審査の厳格化は,世界遺産登録に関してノウハウや研究蓄積があり,そのための予算も多いヨーロッパなどの先進国に有利な傾向となり,途上国には一層困難なものとなりつつある。このような矛盾を抱えつつも,世界遺産委員会や世界遺産センターではグローバル・ストラテジーに則した政策運営の努力がなされている。
著者
田中 滋子
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会誌 (ISSN:03862666)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.51-57, 1971-03-01 (Released:2017-11-29)

It is generally said that some difficulty is experienced in removing the shells from hard boiled hen eggs, when the eggs are fresh. Investigations were conducted as to the removability of the shells to know how such shelling differs depending upon conditions such as place of storage, time of storage, size of eggs, and cooling time. As for the eggs used in these experiments, 273 eggs produced on the same day by white leghorns raised in the same environment were collected and about half of them were then stored in the room and the rest in the refrigerator. Experiments were conducted with 5 eggs respectively of large, medium and small size, all having been assorted by weight. The eggs were placed in the saucepan containing a fixed quantity of cold water, which was then heated up to the boiling point, or simmering temperature, of 97℃., and the eggs were thus boiled for 10 minutes. The eggs were then immediately cooled by being kept in contact with a continuous fresh supply of water at 20℃. for five different period of times, i.e., few seconds, 5, 10, 15 and 20 minutes respectively. It was found that the shells were removed most satisfactorily when the eggs had been stored in the room for 4 days or more and in the refrigerator for 8 days or more; and the small eggs better than the large ones; and though there was little difference, if any, resulting from the cooling, the eggs cooled for 15 minutes in running water showed the best result of all.
著者
渡辺 一彦 飯倉 洋治 田中 和子
出版者
昭和大学学士会
雑誌
昭和医学会雑誌 (ISSN:00374342)
巻号頁・発行日
vol.61, no.3, pp.368-376, 2001-06-28 (Released:2010-09-09)
参考文献数
20

1982年から97年の間に魚アレルギーを70例経験した.魚アレルギーは近年増加しているが, その内訳は非即時型アレルギーの増加であった.魚アレルギーの患児には広範な食物ないし吸入抗原のアレルギーが合併していた.発症の好発時期は生後半年から1歳台である.起因魚種は4種類以内が多いが, 非即時型の例には殆どの魚に反応すると考えられる症例もあった.起因主要魚種は即時型, 非即時型でもタラ, サケ, ホッケ, サンマ, カレイ, イワシだった.誘発症状は即時型ではじんましんや口腔アレルギーが主であるが, 一部に喉頭浮腫, 喘鳴を呈する例もあった.非即時型の誘発症状は紅斑や丘疹の出現であり, その症状はアトピー性皮膚炎の患児に出現し, その中には母乳を介した例もあった.そこで魚アレルギーはアトピー性皮膚炎の病因にもつながると推察された.
著者
田中 克 中坊 徹次 山下 洋 中山 耕至 益田 玲爾 上田 拓史
出版者
京都大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2003

有明海筑後川河口域を中心に有明海産スズキの生態を種々の側面より調べるとともに,養殖場から逸散したタイリクスズキの成長,成熟,仔稚魚の分布などを宇和島海域を中心に調べた.得られた主な成果は以下のとおりである.筑後川河口域におけるかいあし類分布は,塩分1〜3psuにピークを持つ低塩分汽水性特産種Sinocalanus sinensisを優占種とする群と,塩分15〜20psu以上の下流域におけるAcartia omorii, Oithona davisae, Paracalanus parvusなどの沿岸性種より構成される群に分かれた.前者の分布は高濁度水と一致した.S. sinensisの消化管内容物からはフェオ色素が多く出現したが,A. omoriiなどの消化管よりはクロロフィルaが多く出現した.前者はデトリタス食物連鎖であることが推定された.低塩分汽水域にはスズキをはじめ,エツ・アリアケヒメシラウオ・ハゼクチ・ヤマノカミなどの有明海特産種の稚魚や当歳魚が集合し,S.sinensisを専食した.一方,塩分15〜20psu以上の河口下流域に出現するカタクチイワシやメバルなどは優占する多様なかいあし類を摂食した.実験的に確認したスズキ当歳魚のδ^<13>Cの濃縮係数や半減期をもとに,スズキの胃内容物と筋肉のδ^<13>Cを調べた結果,多くの個体は4月には淡水・低塩分域まで遡上し,5〜7月には中塩分域に,8月には高塩分域に移動することが確認された.一方,タイリクスズキの採集場所より,養殖が行われている近くに分布することが明らかとなり,成長は日本産のスズキを上回り,雌雄の生殖腺より11〜12月に生殖可能なことが予想された.しかし,卵や仔稚魚は採集されなかった.有明海で採集されたスズキの遺伝子を分析した結果,個体変異は大きかったもののいずれの個体もスズキとタイリクスズキの遺伝子を有していた.また,中国大陸沿岸域には南北で異なる地方個体群の存在が示唆された.本研究を通じて有明海湾奥部筑後川河口域上流部に,高濁度汽水-特産種かいあし類・アミ類-特産種稚魚・当歳魚間の強いつながりが確認され,この「大陸沿岸遺存生態系」の起原を求めて韓国西岸で調査することが必須と考えられた.
著者
田中 亜美 星 友二 長谷川 隆 坂田 秀勝 古居 保美 後藤 直子 平 力造 松林 圭二 佐竹 正博
出版者
一般社団法人 日本輸血・細胞治療学会
雑誌
日本輸血細胞治療学会誌 (ISSN:18813011)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.531-537, 2020-06-25 (Released:2020-07-17)
参考文献数
23
被引用文献数
2 5

E型肝炎ウイルス(HEV)の輸血感染対策を検討するため,輸血後E型肝炎感染患者として,既報(Transfusion 2017)の19例も含め,2018年までに判明した34症例について解析した.原因献血者は全国に分布し,関東甲信越での献血者が半数以上を占めた.原因血液の88.2%(30例)がHEV RNA陽性かつHEV抗体陰性で,多くはHEV感染初期と考えられた.分子系統解析の結果,原因HEV株の遺伝子型は3型が29例(90.6%),4型が3例(9.4%)で,それぞれ異なるクラスターに存在し,多様性に富むことが示された.一方,輸血後感染34症例中少なくとも16例(47.1%)は免疫抑制状態にあった.多くは一過性急性肝炎であったが,確認できた半数(8例)でウイルス血症が6カ月以上持続した.臨床経過中の最大ALT値の中央値は631IU/lで,輸血による最少感染成立HEV RNA量は2.51log IUと推定された.輸血されたウイルス量や遺伝子型と,最大ALT値に相関は認められなかった.HEV RNAスクリーニングの全国導入はHEV輸血感染対策として有効と考えられる.
著者
大澤 絵都子 北河 徳彦 新開 真人 望月 響子 町田 治郎 小林 眞司 馬場 直子 相田 典子 田中 祐吉 田中 水緒
出版者
特定非営利活動法人 日本小児外科学会
雑誌
日本小児外科学会雑誌 (ISSN:0288609X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.906-913, 2020-10-20 (Released:2020-10-20)
参考文献数
21

【目的】Lipoblastomaの適切な診療方針について検討する.【方法】1981年4月から2019年3月の期間に当院で外科的切除を行い,病理組織学的にlipoblastomaと診断された51症例を対象とし,発生部位,症状,手術所見(被膜・癒着・浸潤・全摘の有無),再発の有無,術後合併症,再発腫瘍の病理所見について後方視的に検討した.【結果】発生部位は四肢と体幹に多く,無痛性の増大する腫瘍として気づかれるものがほとんどであった.体腔内に発生した症例は4例でうち3例は咳嗽や嘔吐など周囲臓器の圧排症状を呈した.2例に術後2か月と5年で再発がみられ,いずれも被膜不明瞭もしくは周囲に癒着がみられたが全摘された症例であった.不完全切除となった4例に再発はなかった.周囲の正常組織も含めて腫瘍を全摘した症例の中には術後瘢痕による機能障害を残した症例もあった.再発腫瘍の病理組織はいずれも初回手術時より分化が進んでいた.【結論】Lipoblastomaは局所再発のリスクがあるが,良性腫瘍であり,また経過とともに消失したり組織が分化する可能性もあるため,癒着や浸潤傾向の強い症例では,全摘に執着せず,術後機能障害を起こさない程度の切除に留めることも考慮してよいと考える.また,全摘の有無に関わらず術後長期間経過してから再発することもあるため,術後は最低5年以上の慎重な経過観察が必要である.
著者
田中 宏幸 三井 唯夫 上木 賢太 山野 誠 飯塚 毅 渡辺 寛子 榎本 三四郎
出版者
東京大学
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2015-06-29

第一に、地球ニュートリノ流量モデリング法を地球科学的アプローチから見直すことにより、地震波トモグラフィのデータが得られればほぼ自動的にニュートリノフラックスを計算する方法が開発され、今後、世界的に爆発的な蓄積量増加が期待される地球ニュートリノ観測データに対応できる方法論を確立した。第二に、地球ニュートリノデータの安定取得方法論を確立した。第三に、到来方向検知型検出器の原理検証を模擬粒子を用いて行い、将来の地球ニュートリノイメージングに向けた技術基盤とした。