著者
野口 聡 田中 雄也
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.45, no.Suppl., pp.45-48, 2021-12-20 (Released:2022-02-02)
参考文献数
8
被引用文献数
1

本研究では,人に教えるために書く活動において,その文章を書く方略を変えた理由や契機を明らかにする.その前提として,初期と19ヶ月後における書くための方略の出現単語の傾向から分析した.その結果,初期と19ヶ月の時点に差が見られた.そのため書くための方略を変えた理由や契機の自由記述をKJ 法で分類し,4つのカテゴリが生成された.「評価の意識」は学習評価に関わるもの,「失敗の予期や経験」「他の参考」は試行錯誤によるもの,「学びの気づき」は取り組むことの気づきに関わるものであり,それらによって書く方略を変化させたことが示唆された.
著者
渡邊 智子 安井 健 田中 敬一 布施 望 鈴木 亜夕帆 佐々木 敏 山下 市二 安本 教傳
出版者
日本食生活学会
雑誌
日本食生活学会誌 (ISSN:13469770)
巻号頁・発行日
vol.21, no.4, pp.314-320, 2011-03-30 (Released:2011-04-27)
参考文献数
10
被引用文献数
3 4

The principal 705 Japanese foods were selected from the Standard Tables of Food Composition in Japan — 2010 — (Standard Tables) because these foods are known to contain available carbohydrates including starch, glucose, fructose, sucrose maltose and/or lactose. Individual available carbohydrate contents were calculated and tabulated based both on the estimated saccharide (carbohydrate minus dietary fiber) content of each selected food in the Standard Tables and the starch and sugar content of the food included in The McCance and Widdowson’s The Composition of Foods, USDA National Nutrient Database for Standard Reference and other sources. Because the compiled tabulated form, the Japanese Starch and Sugars Presumptive Composition Tables (JSSPCT), is harmonized with the Standard Tables, one can utilize the data in the JSSPCT as a reference for research and other purposes until and after the Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology or other national organization publishes the official tables for available carbohydrate composition of foods in Japan.
著者
加藤正宏 西井瑞季 田中美穂 平瀬詩織 牛若菜月 東畑知真 田端優貴
雑誌
サイエンスキャッスル2014
巻号頁・発行日
2014-12-19

バナナの成熟に伴いその皮は斑点状に黒色化する。ドーパミンの重合による黒色化である。この現象に興味を持ち研究を始めた。特に、①なぜ、斑点状に黒色化するのか(生物学的意味)、②斑点状に黒色化する仕組みはどうなっているのか、③なぜ、ドーパミンが存在するのか(生物学的意味)、これらの点に疑問を持ち、その解明を目的とした。今回は、②について知見を得るべく、「バナナの皮の変化の温度依存性(‐8℃~200℃)」を調べた。その結果、20℃および30℃で保存した場合のみ、明確な斑点状の黒色化が観察された。また、細胞レベルでの黒色化を確認するために、表皮の顕微鏡観察も行った。これら以外に、得られた知見を紹介する。
著者
粟島 亨 田中 博 福井 省三 佐藤政生 大附 辰夫
雑誌
情報処理学会研究報告システムLSI設計技術(SLDM)
巻号頁・発行日
vol.1992, no.43(1992-SLDM-062), pp.229-243, 1992-05-27

径路トポロジーの標準形であるラバーバンド表現に基づいた単層2点間ネットに対する逐次配線手法を提案する.本手法はトポロジー的に存在する径路は必ず発見することができる.また,最終段階に行われる幾何学的変換処理によって,径路の押し退け,すなわち,shove asidingが自然に実現できる.本手法を可視グラフを基本探索構造として計算機上に実装し,いくつかの例題に適用することにより,その有効性を実証した.
著者
田中 照佳
出版者
Japan Society of Nutrition and Food Science
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.71-76, 2022 (Released:2022-04-19)
参考文献数
8

腹部大動脈瘤は, 腹部大動脈の進行的な拡張を特徴とする疾患である。腹部大動脈瘤の詳細な発症メカニズムは不明であるため, 有効な治療薬の開発には至っていない。我々は, ヒトおよび腹部大動脈モデルマウスに破骨細胞が存在することを世界で初めて発見し, この破骨細胞が動脈瘤の発症に関与することを明らかにした。また, 高血糖は動脈瘤発症のネガティブリスクファクターであることが知られているが, 本研究ではその詳細な解析を明らかにした。糖尿病モデルマウスに動脈瘤形成を誘導化したところ, 高血糖によりマクロファージ活性化が抑制されたことにより, 動脈瘤形成は有意に抑制され, これらのメカニズムにLiver x receptorが関与することを明らかにした。さらに, 破骨細胞の分化を抑制するクズイソフラボンであるプエラリンを動脈瘤モデルマウスに投与すると動脈瘤形成は有意に抑制された。これらの知見により, 今後は破骨細胞を標的とした腹部大動脈瘤の治療のための臨床研究や食品・栄養成分による予防法の確立が期待される。
著者
藤原 由紀子 町田 治彦 田中 功 福井 利佳 平林 望 白石 くみ子 岸田 弘美 森 恵美子 増川 愛 上野 惠子
出版者
公益財団法人 日本心臓財団
雑誌
心臓 (ISSN:05864488)
巻号頁・発行日
vol.42, no.9, pp.1166-1172, 2010 (Released:2012-04-21)
参考文献数
10

背景および目的: 64列multidetector-row CT(MDCT) 心臓検査は, 非侵襲的に冠動脈の詳細な形態評価が可能であるが, 放射線被曝による発癌リスクの増加が問題視されている. これに対し, 被曝低減技術の活用と画質劣化の回避のため, しばしば, β遮断薬経口投与による心拍数の低減が図られる. 今回, われわれは, 本検査の安全性の評価と合理的なワークフロー確立のため, β遮断薬投与後の心拍数の経時的変化と検査前後の血圧変動について検討した.方法: 対象は, β遮断薬経口投与下に64列MDCT心臓検査前を施行した連続551例. 投与前, 投与後15~90分, 撮影直前の心拍数と投与前と撮影直後の血圧を測定し, 投与前心拍数に応じた最低心拍数到達時間, 心拍数, および血圧低減率, ならびに心拍数40bpm以下の高度徐脈, 急激な血圧低下に伴うショックなどの重篤合併症の出現頻度を検討した.結果: β遮断薬投与後, 心拍数は経時的に低下し, 最低心拍数到達時間は, 投与前心拍数80bpm未満で60分, 80~89bpmで75分, 90bpm以上で90分であり, 心拍数低減率(最低心拍数)は, 投与前心拍数70bpm未満で16.4%(54.9bpm) , 70~79bpmで20.3%(58.2bpm), 80~89bpmで24.4%(62.9bpm), 90bpm以上で27.7%(69.5bpm)であった. 血圧低減率は, 収縮期血圧において, 80bpm未満で4.3%, 80~89bpmで5.0%, 90bpm以上で4.8%, 拡張期血圧においては70bpm未満で0.7%, 70~79bpmで1.5%, 80~89bpmで1.0%, 90bpm以上で2.8%であった. また, 本剤投与による重篤な合併症はなかった.結論: β遮断薬経口投与下MDCT心臓検査は安全に遂行可能であった. また, 投与前心拍数に応じた心拍数の経時的低減効果が判明し, 検査の流れの予測が可能となった. 今後, これらを踏まえ患者の不安の軽減や待機時間の短縮などに生かしていきたい.
著者
田中 司朗 山口 拓洋 大橋 靖雄
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
vol.52, no.1, pp.66-75, 2005 (Released:2014-08-06)
参考文献数
13

目的 看護系教育課程を持つ大学において疫学・生物統計学の授業を担当している教官の背景,講義・実習内容など疫学・生物統計学教育の実態と,教官の感じている問題点を調査し,教官の背景と,講義内容・感じている問題点に関連があるか検討した。対象と方法 看護系教育課程を持つ大学における疫学・生物統計学教育の実態について,国公立大学62校および私立大学27校(計89校)の疫学・生物統計学の授業を担当している教官を対象に自記式調査票を用いて調査を行い,対象校89校のうち回答の得られた50校61通を本研究の対象とした。結果 疫学・生物統計学を専門としている教官は20%と少なく,疫学・生物統計学に関係した学会の所属割合も低かった。また,教官の感じている問題点として,良い教科書・実習用の教材・問題集がなく,とくに看護に関する実例を挙げた教科書が望まれている事,教官やチューターの人数が不足している事,学生の意欲,数学やパソコン・情報処理の能力が足りない事が挙げられた。講義内容については「統計における基本概念」や「統計解析」のうちの基本的な分野に関しては90%前後の,「疫学における基本概念」や「医学・疫学研究デザイン」については70%前後の大学で講義されている事などがわかった。結論 疫学・生物統計学の授業を担当している教官の専門分野や所属学会などの背景,感じている問題点,講義・実習・卒業論文指導の内容などが明らかになった。疫学・生物統計学を専門としている教官が講義している大学は少なく,工学部・薬学部・理学部数学科などの他学部所属の教官に頼っている事や教科書に対する要望が強い事,学生に学ぶ意欲や数学とパソコン・情報処理の能力が足りないと感じている教官が多い事が示唆された。これらは看護教育における疫学・統計学教育のあり方を考える上で貴重な資料になりうると考えられる。
著者
溝上 義則 寺尾 岳 山下 瞳 河野 寿恵 田中 悦弘
出版者
九州精神神経学会
雑誌
九州神経精神医学 (ISSN:00236144)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.77-82, 2013-08-15 (Released:2014-12-26)
参考文献数
16

軽躁状態を呈する中年男性の統合失調症患者に対し,薬物療法や通常の精神療法と並行して,絵画療法を行った。描画の定量的指標として,描画時間,描画面積,毎分描画面積を測定し,精神状態との関連を検討した。精神状態については,Clinical Global Impression-Severityにてカルテ記載をもとに後方視的に評価した。その結果,軽躁状態の改善とともに,作品の描画時間が有意に減少した。絵画療法の時間を測定することで,患者の全体的な理解に役立つ可能性が示唆された。
著者
田中 浩喜
出版者
日本宗教学会
雑誌
宗教研究 (ISSN:03873293)
巻号頁・発行日
vol.95, no.3, pp.1-24, 2021-12-30 (Released:2022-03-30)

本稿では、戦後日本の伊勢神宮を政教関係史の観点から論じる。戦後日本では、政教分離が大きな争点になってきた。特に靖国神社は、政教分離論争の象徴的存在として注目されている。反対に、伊勢神宮が社会の関心を集めることはほとんどなかった。本稿の主張は、伊勢神宮は戦後日本の政教分離の盲点であり続けてきたが、実際には政教分離の観点から議論されうる対象であるうえに、近年では地方レベルでも国政レベルでも政治と一層緊密な関係を結んでいるということである。本稿ではまず、伊勢神宮及び政教分離に関する近年の研究蓄積を紹介し、本研究の研究史上の位置づけを説明する(一章)。そして、政教分離の確立後も伊勢市が伊勢神宮と緊密な関係を維持してきたことを明らかにしたあと(二章)、国政レベルでの伊勢神宮の政治的重要性の高まりを指摘する(三章)。結論部では、近年の伊勢神宮の存在感の相対的向上と、靖国神社の存在感の相対的低下について考察する(四章)。
著者
田中 秀生
出版者
学校法人 天満学園 太成学院大学
雑誌
太成学院大学紀要 (ISSN:13490966)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.105-113, 2011 (Released:2017-05-10)

ルソーの著作には,対象が三分され(多くは時系列が織り込まれた形で),その中間部分(中間状態,中間項,中間期,等)が,その前後の部分それぞれの善きものの保存と悪しきものの廃棄によって価値あるものとしての属性を帯び,多くの場合,理想的なものにまで高められる,というパタンが観察される。人間の教育がテーマとされた作品『エミール』においても,個人の成長過程の中に「美しい幼年期」の「できあがった子ども」という独特の形象が造形されており,このルソー的<中間>と見做しうるものが出現し,自然状態の子どもとも完成された大人とも質的に区別された,一つの完結した理想状態が表現されている。本稿では,この『エミール』における<中間>性について,その内容の概略を呈示し,またその内容の政治思想における意味を敷衍して検討した。
著者
本多 祐 向原 伸彦 村上 博久 田中 裕史 野村 佳克 宮原 俊介 内野 学 藤末 淳 河嶋 基晴 殿城 秀斗
出版者
特定非営利活動法人 日本心臓血管外科学会
雑誌
日本心臓血管外科学会雑誌 (ISSN:02851474)
巻号頁・発行日
vol.51, no.2, pp.67-72, 2022-03-15 (Released:2022-04-06)
参考文献数
22

[目的]フレイルは心臓手術の重要な術前リスク因子として注目されている.フレイルが心臓手術後のリハビリ経過や歩行能力に与える影響を検討した.[方法]2018年8月~2020年10月に当院で待機心臓手術を施行した65歳以上の症例で,術前にフレイル評価を行った213例を対象とした.フレイル有りのF群とフレイル無しのN群の2群に分類し,周術期因子,術後経過,歩行能力について検討を行った.[結果]全症例中70例(33%)がフレイルと診断された.術前因子では,F群で歩行速度と握力が有意に低下し,サルコペニアと低栄養症例が多かった.手術因子では,術式カテゴリーに偏りを認めた以外,両群間に有意差はなかった.術後経過では,挿管時間,ICU滞在期間,術後合併症や在院日数で両群間に有意差はなかったが,F群で転院が多かった.歩行能力に関しては,F群で歩行開始と100 m歩行達成日が有意に遅延し,300 m歩行達成症例が52例(74%)でN群の197例(89%)に比べ有意に減少していた.術後300 m歩行の可否についてロジスティック回帰を行った結果,術前歩行速度,リハビリ開始遅延,術後脳合併症が関連因子として抽出された.ROC曲線で求めた300 m歩行可否の歩行速度のカットオフ値は0.88 m/秒であった.[結語]フレイルが心臓手術後におけるリハビリ経過の遅延と歩行能力の低下に関与し,転院を増加させた.また,術後300 m歩行の可否に関与する因子の1つとして,術前歩行速度が抽出された.心臓手術を要するフレイル症例の改善策として,術前リハビリテーションが期待される.
著者
大西 奈保子 田中 樹
出版者
一般社団法人 日本看護学教育学会
雑誌
日本看護学教育学会誌 (ISSN:09167536)
巻号頁・発行日
vol.31, no.3, pp.23-34, 2022-03-01 (Released:2022-04-01)
参考文献数
19

〔目的〕臨地実習で終末期の患者を受け持った看護学生の成長に関連した体験を明らかにすることを目的とした。〔方法〕成人看護学実習で終末期の患者を受け持った学生10名に終末期の患者・家族にどのようにかかわり、その時の学生の考えや思いを中心に話してもらい、その内容を質的帰納的方法で分析した。〔結果〕終末期の患者を受け持った学生の成長に関連した体験には、心理的にも患者のそばに行こうとする【患者・家族とのかかわり】によって【自己を見つめる】ことにつながるかかわりがある一方で、患者を避けるようなかかわりがある。そして、前者を強め、後者から抜け出せるような【一歩踏み出すきっかけ】が明らかとなった。〔考察〕臨地実習において、終末期の患者を受け持つ学生の不安を軽減し、心理的にも患者・家族のそばに行くかかわりができるようになるための支援が必要である。
著者
上田 三穂 小林 裕 吉森 邦彰 高橋 由布子 近山 達 池田 元美 魚嶋 伸彦 木村 晋也 田中 耕治 和田 勝也 小沢 勝 近藤 元治 河 敬世 井上 雅美
出版者
一般社団法人 日本血液学会
雑誌
臨床血液 (ISSN:04851439)
巻号頁・発行日
vol.38, no.8, pp.657-662, 1997 (Released:2009-04-28)
参考文献数
15

Chronic active Epstein-Barr virus infection(以下CAEBV)の経過中にEBV感染T細胞の腫瘍化を起こした1例を経験した。症例は20歳女性で発熱,陰部潰瘍,口腔内潰瘍などのベーチェット病様症状で来院した。頚部リンパ節腫脹を認め,生検では炎症性変化であった。EBV抗体価よりCAEBVと診断し,PSL, acyclovirの投与をおこなった。一旦症状は改善したが,発症約10カ月後に汎血球減少を呈し,骨髄にて異常細胞を35%認めた。TCR-β遺伝子の再構成を認めT細胞腫瘍と診断した。化学療法にて骨髄は寛解となったが,全身のリンパ節の再腫脹を認め,約3カ月の経過で治療抵抗性のため死亡した。骨髄中の腫瘍細胞でのEBVのterminal probeを用いたSouthern blottingにてsingle bandが検出され,単クローン性が証明されたことより,EBV感染T細胞の腫瘍化と考えられた。本邦の成人例では稀であり,報告した。
著者
田中 求
出版者
林業経済学会
雑誌
林業経済研究 (ISSN:02851598)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.13-24, 2014-07-01 (Released:2017-08-28)
被引用文献数
2

コウゾやミツマタなどの国産和紙原料が激減する中で,それを用いた本来の「和紙」そのものも消えつつある。本稿では和紙原料の主要産地であった山村の動態から,和紙原料生産の現状と問題点を明らかにする。対象地域は高知県いの町柳野地区である。柳野地区の和紙原料生産は,生業と作業形態,買い取り価格が変化する中で衰退していた。ミツマタは焼畑で栽培されてきたが,植林によりほぼ消滅した。コウゾも家屋の周囲などでのみ栽培されているに過ぎない。雇用労働への収入源の転換で栽培者が減る中で,作業は労働交換ではなく雇用労働に変わり,コウゾの収入源としての魅力は薄れていった。さらには,台風による被害で輸入コウゾが増加する一方,高齢化で十分な管理が行えないコウゾが増え,買い取り価格は下がり,イノシシのコウゾ食害は農家の栽培意欲を削いだ。そして,土佐コウゾが売りさばけずに余る,という状況に至っていたのである。柳野での和紙原料生産は消滅の危機にあるといえよう。