著者
田中 正敏
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.39, no.3, pp.193-202, 1999-03-01 (Released:2017-08-01)
参考文献数
20

諸種のストレス状況によりラットの広汎な脳部位でnoradrenaline(NA)放出が亢進する.これらの研究ではストレスの負荷時間は30分以上である.しかし, わずか1分間という, ごく短時間の拘束ストレス負荷であっても, 視床下部, 青斑核部, 通馬, 大脳皮質や中脳といった脳部位で, ストレスから解放20分後や40分後に, 45分間の連続ストレスを負荷したのと同じくらいのNA放出亢進が生じる.benzodiazepine系の代表的抗不安薬であるdiazepamは, 視床下部, 扁桃核, 青斑核部などでストレスによるNA放出亢進を有意に減弱させるが, このようなdiazepamの作用はdiazepamがストレス負荷直前に投与された時のみに出現し, ストレス負荷10分前や負荷10分後の投与では出現しなし、また脳室内投与したopioidpeptideであるMet-enkephalinも, これらの脳部位でストレスによるNA放出亢進を減弱させるが, これらの減弱作用はMet-enkephalinがストレス負荷直前に投与された時にのみ出現し, ストレス負荷5分後, 10分後に投与された時には出現しない.同様にストレス負荷直前に投与された時にのみMet-enkephalinは脱糞や体重減少などのストレス負荷中のラットの情動反応を有意に減弱させる.これらの知見から, 一度動物がストレスにさらされると, それがたとえ1分間という短時間であっても, 作動してしまうひきがね機構が存在し, その結果1分間の拘束ストレス後20分もしくは40分の回復期の後に, 広汎な脳部位でNA放出が亢進ずるものと考えられる.corticotropin-releaslngfactor(CRF)拮抗薬であるα一helicalCRFのストレス負荷直前投与により, ストレスによる脳内NA放出亢進が有意に減弱されることから, CRFが一部このひきがね機構に関与していることが示唆される.精神神経免疫連関についての最近の知見から, これらの警告機構に免疫系が関与していることも示唆される。
著者
田中 卓
出版者
文芸春秋
雑誌
諸君 (ISSN:09173005)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.201-209, 2006-05
著者
仲座 栄三 田中 聡 本屋敷 涼 宮里 信寿 福森 匡泰 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_79-I_84, 2019
被引用文献数
1

<p> Galvin(1968)は,水理実験によって一様斜面上の砕波形態がspilling,plunging,collapsing,surgingの4つに大別されることを示した.Battjes(1974)は,それらの砕波形態や砕波帯内の諸物理現象がIribarren(1949)の示したパラメータで系統的に整理できることを示し,そのパラメータをsurf similarityと呼んだ.本論は,CADMAS-SURFによる数値計算結果によって,波の砕波形態が進行波の軌道流速と戻り流れとの相対的強弱によって決定されていることを示した上で,新たにresonance mode breakerの存在を位置付けている.また,砕波形態と先行波が派生させる戻り流れとの関連を概説した上で,砕波形態が砕波帯内の波の遡上や反射など諸水理現象に及ぼす影響及び,サーファーが砕ける波をサーフィンできる仕組みを定量的に明らかにしている.</p>
著者
本屋敷 涼 仲座 栄三 宮里 信寿 福森 匡泰 田中 聡 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_769-I_774, 2019
被引用文献数
1

<p> CADMAS-SURFを用いた数値計算によって,高さが1.0m前後の高いステップ高を有する階段式護岸に対する波の遡上及び反射率について明らかにしている.従来型の場合,ステップ高が0.2m~0.3mとなっており,傾斜勾配は1:3程度の場合が多い.この場合の波の遡上高は,滑面斜面に対する場合の1割~2割ほど低めとなることが知られている.しかし,ステップ高がさらに高くなった場合についてはあまり研究が行われていない.本研究は,ステップ高を0.2,0.6,1.0,1.4mと順次高めた場合について,波の遡上及び反射の特性を明らかにしている.波の遡上高及び反射率はsurf similarity parameterによって統一的に整理され,ステップ高を高めることでそれらは総じて低減されること及び緩勾配側で反射率の増加があること,ステップ高を高めることで海岸を占有する面積を小さくすることなどが可能となることが示されている.</p>
著者
福森 匡泰 仲座 栄三 田中 聡 宮里 信寿 本屋敷 涼 Carolyn SCHAAB
出版者
公益社団法人 土木学会
雑誌
土木学会論文集B2(海岸工学) (ISSN:18842399)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.I_751-I_756, 2019
被引用文献数
1

<p> 直立護岸は,波を反射させ効率的に越波量を低減させる効果を有する.しかし,砕波した波による護岸衝突時の水塊の飛び出しや飛沫の発生などの問題を有する.また,海岸線の利用という面では,利便性の低下や圧迫感を与えるなどの問題点を有する場合がある.それらの改善策として,直立護岸前面に消波工を設置し,護岸天端高を低減させる場合がある.本研究では,直立護岸前面に独自に開発した消波ブロックを設置する消波工付直立護岸及び遊歩道としてのテラス部を設置するテラス式護岸の提案を行い,それらの護岸に対する越波特性を水理実験及びCADMAS-SURFを用いた数値計算で検討している.検討結果は,消波護岸やテラス式護岸では波の乗り上げ効果により越波量が増えることを示している.しかしながら,海岸線利用という面からは,適宜選択可能な策となっており,実務設計において有用性を与える.</p>
著者
北村 由羽 寺戸 えみ 田中 大輔
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P25, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
3

金属-有機構造体 (MOFs) の合成においては, 反応条件のわずかな違いにより様々な 反応状態を経由するため, 結晶構造が異なる結晶生多形が多数生じる可能性がある. 特 に, ランタノイド金属 (Ln) を中心に持つ Ln–MOFs は複数の結晶多形が存在する. 合 成におけるパラメーターは無数に存在し, これらの要素は複合的に影響するため, その 影響の評価が困難であり, 結晶多形を選択的に合成するためには試行錯誤に基づく実 験が必要不可欠であった. 本研究では, 機械学習を活用し, Ln–MOFs 合成における支 配的因子を統計的に評価することを目指した. 実際に, 溶液の濃度, 反応温度や時間, 金属の種類など様々な条件を組合せソルボサーマル合成を行い, 実験データの収集を 行い, 実験結果に対して決定木学習を行った. その結果, 合成に影響を及ぼす支配的因 子はランタノイドの試薬会社であることが明らかとなり, 試薬中に含まれるわずかな 不純物の存在が結晶化に影響を及ぼすことが示唆された.
著者
山本 寛人 田中 健一 山下 俊介 浮田 昌一 中野 博史 白沢 楽 冨谷 茂隆 小寺 正明 船津 公人
出版者
公益社団法人 日本化学会・情報化学部会
雑誌
ケモインフォマティクス討論会予稿集 第42回ケモインフォマティクス討論会 東京
巻号頁・発行日
pp.1P19, 2019 (Released:2019-10-22)
参考文献数
4

電子エネルギー損失分光法(EELS)から得られたスペクトルデータの解析手法について報告する。EELSは電子線を試料に照射し、透過した電子線に磁場をかけて分光し、エネルギー損失から試料の状態を推定する分析手法である。提案手法では、EELSスペクトルデータに2種類の前処理を適用し、主成分分析による解析を行った。ドライエッチング時のダメージの状態把握および、GaInN量子井戸におけるインジウム含有量の推定結果について報告する。
著者
田中 敬子
雑誌
人間文化研究 (ISSN:13480308)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.125-138, 2007-06-23

フランク・キャプラは、アメリカ合衆国の善性を謳い上げる監督として知られるが、1941年制作の『毒薬と老嬢』は他愛ないブラック・コメディとして扱われることがほとんどである。しかしこの映画は、同年制作の『群衆』の直後に撮られ、アメリカ社会の理想の行き詰まりを示した『群衆』の後遺症というべきキャプラの幻滅を隠している。ポピュリズム政治と個人の自由、メディアと全体主義の危険な関係は、『群衆』に明らかである。ナチスと戦うべきアメリカ自体に、全体主義、帝国主義化の傾向がある。『我が家の楽園』に見られるようなキャプラの理想的な家族は、『毒薬と老嬢』ではパロディ化されて変質している。キャプラは『毒薬と老嬢』で不安を笑いで紛らわせ、既存体制の秩序をかろうじてつなぎ止め、第2次世界大戦後の『素晴らしき哉、人生!』で、再び理想的家父長を取り戻したように見える。彼はイタリア系移民のアメリカ人として、第2次世界大戦を挟んでアメリカ民主主義の理想を追求した。しかしキャプラは、強力な父権を警戒する一方、平等な市民たちの政治的団結を信じ切れず、ヘテロセクシュアルな家族制度の家族愛に頼らざるを得ない。『毒薬と老嬢』は、彼が抑圧した懐疑をグロテスクなコメディに変えているが、この論文は、キャプラのアメリカ社会ならびに家族観に入った亀裂を、ジェンダーと国民国家の視点から探るものである。
著者
岡部 洋一 円福 敬二 吉田 啓二 高田 進 藤巻 朗 田中 三郎 松田 瑞史 藤井 龍彦
出版者
東京大学
雑誌
特定領域研究(A)
巻号頁・発行日
1998

1.超伝導回路岡部は、BSFQ回路方式に基づくAND、OR、XOR、NOTの各論理ゲートの動作マージンを±30%にまで拡大することに成功した。また、超伝導体と半導体のハイブリッドコンピュータ実現を見据え、インターフェイスデバイスを試作した。高田は、ユニバーサルNANDゲートおよびNORゲートの設計を行い、シミュレーションにより高速動作と低消費電力性を確認した。藤巻は、界面改質型高温超伝導体ジョセフソン接合の試作を行い、臨界電流値のばらつきはピンホールに起因するという結論を得た。2.SQUID応用円福は、高温超伝導SQUIDにより磁気微粒子からの微弱磁界が高精度に測定できることを利用して免疫反応検出システムを開発し、従来の機器よりも10倍〜100倍の感度で検出が可能であることを示した。田中は、高温超伝導SQUID顕微鏡の試作を行い、室温の磁束ガイド針を用いた場合でも100μmよりも高い分解能が得られることを示した。松田は、高温超伝導SQUIDグラジオメータを作製し、フラックスダム構造を用いることにより環境磁場雑音影響を大幅に軽減できることを示した。藤井は、生体磁場測定のための医療用磁気センサにおいて、環境磁場測定用SQUIDを付加することにより磁気シールドを用いずに微小磁場を測定することに成功した。3.高周波応用吉田は、高温超伝導薄膜上でアンテナとフィルタを一体化することにより、特性の向上が図れることをシミュレーションで示した。
著者
田中 幸一 山下 裕一 高地 俊郎 平野 忠 白日 高歩
出版者
Japan Surgical Association
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.61, no.8, pp.2196-2199, 2000-08-25 (Released:2009-02-10)
参考文献数
27
被引用文献数
3 3

自験例は, 60歳,女性. 1996年8月30日左腰背部膨隆を主訴として当院を受診した.左腰背部に大きさ8×7cmの柔らかく圧痛のない腫瘤を認めた.腹部超音波, CTおよびMRI検査により上腰ヘルニアと診断した.手術所見では,直径2.5cmの腹横筋腱膜の断裂がヘルニア門となっており腎周囲の後腹膜脂肪の脱出を認めた.術式は周囲組織が脆弱であったため,ヘルニア門を閉鎖した後Marlex Mesh®を縫着して補強した. 1999年現在まで再発をみとめていない. 上腰ヘルニアを臨床において経験することは稀であり,本邦では自験例を含めて37例の報告がある.その診断は理学的所見から容易であったが,超音波, CT, MRI検査がヘルニアの内容,周囲との関係を知るうえで有用であった.発見された時点で症例に応じた外科的修復を行うことを原則としてよい.
著者
田中 清裕
出版者
日本爬虫両棲類学会
雑誌
爬虫両棲類学雑誌 (ISSN:02853191)
巻号頁・発行日
vol.12, no.2, pp.45-49, 1987-12-15 (Released:2009-03-27)
参考文献数
12
被引用文献数
2

Hynobius takedai was observed in the breeding season at Joyama in the city of Toyama in 1983. Measurements of five dimensions i. e., head width, head length, snout-vent length, tail length, and maximum tail height, were taken and the males were also individually marked. Twenty males and eighteen females appeared at the breeding site, and five of the males succeeded in protecting their territories. The males with territories (MTs) appeared earlier in the water than the males without territories (non-MTs). The males with larger bodies succeeded in protecting their territories and inseminating, since they were dominant in the struggle among fellow males. The snout-vent length of the MTs was more than 50mm, and their heads were wider than those of the non-MTs. The longer the snout-vent length of the MTs was, the larger their head and tail were, compared with those of the non-MTs and the females. The heads of the MTs grew larger and their tails grew longer only during the breeding season.
著者
三浦 於菟 河野 吉成 板倉 英俊 田中 耕一郎 植松 海雲 奈良 和彦 橋口 亮 吉田 和裕 桑名 一央 塚田 心平 土屋 喬 福島 厚 小菅 孝明 斉藤 輝夫
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.61, no.5, pp.740-745, 2010 (Released:2010-10-30)
参考文献数
24
被引用文献数
1

盗汗治療代表的方剤の当帰六黄湯(李東垣『蘭室秘蔵』)の成立過程を構成生薬と各時代の盗汗病態理論より検討した。黄耆の配合は主に陽虚で出現という漢隋代盗汗理論,補血滋陰薬の生地黄・熟地黄・当帰の配合は陰虚という宋代盗汗理論,清熱薬の黄連・黄芩・黄柏の配合は陰虚の熱により津液が押し出されるという宋代盗汗理論に基く。後者は特に劉完素『黄帝素問宣明論方』中の盗汗治療方剤大金花丸の影響が大きい。本剤は各時代の盗汗学説の集大成のために高い有用性を備えたのであろう。医書の諸説より,本剤の適応病態や問題点を検討した。弱い熱証(『丹渓心法』),強い気虚証(『張氏医通』『丹渓心法』),強い陰虚証(『医学心悟』)を呈する盗汗病態には不適当との説。脾胃を損傷しやすい(『医方切用』)との指摘。自汗への応用も可能との説(『医学正伝』『景岳全書』)などがある。これらより本剤の適応は陰虚証と熱証がほぼ同様程度,気虚証はより軽度な病態であり,このような病態では自汗にも使用可能といえる。
著者
田中 一宏 酒多 喜久
出版者
日本膜学会
雑誌
(ISSN:03851036)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.113-121, 2011 (Released:2012-09-14)
参考文献数
48
被引用文献数
2 6

The recent research circumstances of photocatalytic overall splitting of H2O and the membrane separation of H2 and O2 for constructing the hydrogen production system by applying photocatalytic H2O splitting are introduced. Here, the principle of photocatalytic H2O splitting and photocatalysts for the reaction are explained on the historical aspect. Furthermore, the photocatalysts with high photocatalytic ability to the reaction, not only the photocatalysts and photocatalytic systems work under solar irradiation but also those show high efficiency are introduced. Incorporating gas separation membranes into the photocatalytic reactor leads to a safe and energy-efficient hydrogen production process. Since any research of application of gas separation membrane to this purpose has not been found in the literature, our research is introduced. The goal performance that the membrane should achieve to produce safe H2 and O2 streams have been determined by a simple model of a membrane module. Permeability and selectivity of H2 over O2 for silica membranes, carbon membranes, and polyimide membranes have been examined in a temperature range from 35 to 100 °C. Some silica membranes have passed the goal at 100 °C for a wet mixture of H2/O2(2/1).
著者
大貫 貴清 田中 彰 鈴木 伸洋 秋山 信彦
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.56, no.1, pp.57-66, 2008-03-20 (Released:2012-09-04)
参考文献数
30

静岡県におけるスジエビの生殖活動を調べるために2002年12月から2004年10月にかけて,静岡県静岡市三保半島の水路におけるスジエビの雌の生殖周期を調べた。また,この結果を基に本種の成熟と水温および日長時間との関係を飼育実験により検討した。生殖腺の組織学的観察により,卵巣卵の発達過程を6期に分類した。さらに卵巣卵の発達過程や卵巣の内部構造,生鮮時の色調やGSIから,増殖相,卵黄蓄積相,成熟相,排卵相の4相の成熟段階に分類した。静岡県三保半島におけるスジエビの生殖周期は,産卵開始1~2カ月前である11~1月に雌の卵巣卵に卵黄蓄積がおこり,1~6月のおよそ4カ月間に産卵を数回行うことが明らかとなった。さらに小型個体の出現や大型個体の減少から,本種は産卵期の終了後に多くの個体が死亡するが一部は生残することが示唆された。また,本種の雌の生殖腺の成熟には秋分点以降の降温,短日化が関与しており,水温17~20℃,日長時間9~12時間の範囲内に雌の成熟を開始する要因があると考えられた。また,短日条件においても高水温では成熟に至らないことや,長日条件でも低水温で卵黄蓄積が確認されたことから,本種の雌の成熟は日長時間よりも水温に強く依存していることが示唆された。