著者
白井 宏明 田村 真治 三浦 晃弘 今中 信人
出版者
Japan Society of Colour Material
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.93, no.7, pp.214-218, 2020-07-20 (Released:2020-07-30)
参考文献数
10
被引用文献数
1

新規な環境調和型の青色無機顔料の開発を目的とし,Ba(TiO)(Cu1-xLix)4(PO4)4(0 ≤ x ≤ 0.15)を合成し,その色彩を評価した。Ba(TiO)Cu4(PO4)4のCuイオンサイトをLiイオンで部分置換し,CuO4ユニットに歪みを生じさせることで,電荷移動およびd-d遷移吸収を制御した。その結果,合成した試料の中でBa(TiO)(Cu0.90Li0.10)4(PO4)4が最も高い青色度(-b*=57.6)を示し,その値は市販顔料であるコバルトブルー(CoAl2O4;-b*=59.5)と同等であり,さらに,その色相角(H°=268.7°)は純粋な青色を示す270°に非常に近い値を示すことが明らかとなった。
著者
富里 周太 矢田 康人 白石 紗衣 和佐野 浩一郎
出版者
一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
雑誌
日本耳鼻咽喉科学会会報 (ISSN:00306622)
巻号頁・発行日
vol.123, no.5, pp.363-370, 2020-05-20 (Released:2020-06-05)
参考文献数
21

吃音症へのアプローチとして認知行動療法 (CBT) が注目を浴びているが, 本邦からその効果を検討した報告は少ない. 今回われわれは吃音に特化した低強度 CBT によって, 一定の介入を終えた成人吃音の症例について報告する. 対象は吃音外来を受診した成人11症例 (22~47歳, うち2名女性) とした. CBT の治療として, 吃音が社交不安に関連することを教育し, 曝露療法などの社交不安への対処を取り扱った. また言う直前に行ってしまう「リハーサル」について取りあげ,「吃音が生じるかどうか」から注意をそらすことを指導した. 5回のカウンセリングの前後において, 日本語版リーボヴィッツ社交不安尺度 (LSAS-J) と日本語版 Overall Assessment of the Speaker's Experience of Stuttering for Adults(OASES-A) の値は統計学的に有意な改善を示し, 吃音に併存する社交不安や抱える困難が軽快したと考えられた. 改訂版エリクソン・コミュニケーション態度尺度 (S-24) と吃音頻度は改善傾向を認めたものの有意差を認めなかった. CBT は, 吃音に併存する社交不安やクライアントが抱える困難の軽快といった効果があることが示唆された.
著者
白石 浩介
出版者
拓殖大学地方政治行政研究所
雑誌
拓殖大学政治行政研究 = The journal of politics and administration (ISSN:24239232)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.35-61, 2018-02-28

本研究では,スーパー系列が互いに異なる4 店舗が販売した食料品関連の4 商品(①しょう油750ml,②乾めん150g 5 パック入り,③牛乳パック1L,④食パン6 切れ)について,2014 年2-6 月における日次価格を調べることにより,2014 年4 月の消費増税における消費税の帰着を検討した。得られた知見は以下の通りである。第1 に,消費税の転嫁においては,過剰転嫁,完全転嫁,過小転嫁のいずれもが発生する。4 商品の転嫁傾向はそれぞれ異なっていた。消費税の転嫁は,これまで全ての商品において完全転嫁が想定され,この想定の下で消費税の逆進性などが評価されてきたが,再考の余地がある。第2 に,消費税の転嫁の操作においては特売価格が用いられることが多い。定価に比べて特売価格は伸縮的に調整されており,これが課税の帰着を左右している。主として定価データを採録している消費者物価指数(CPI)だけでは,消費税の転嫁を判断することは難しく,政策情報の充実が望まれる。第3 に,消費増税により一時的な過剰転嫁が発生する。増税前の駆け込み需要を契機として税抜き価格が下落と上昇を繰り返しており,税制が予定する以上の価格の上昇が増税直後に生じる。新たに施行された消費税転嫁対策特別措置法が,これを助長した可能性がある。第4 に,消費増税により価格の粘着性が変化して,それが消費税の転嫁に影響した可能性がある。価格改定の活発化は税抜き価格を引き下げて過小転嫁を招き,一方,価格改定の不活発化は価格を引き上げて過剰転嫁を招く方向に作用した可能性がある。
著者
丸谷 宣子 白杉(片岡) 直子 岡本 裕子 谷口 智子 服部 美穂 中尾 百合子 津久田 貴子 早崎 華
出版者
公益社団法人 日本栄養・食糧学会
雑誌
日本栄養・食糧学会誌 (ISSN:02873516)
巻号頁・発行日
vol.51, no.6, pp.323-332, 1998-12-10 (Released:2009-12-10)
参考文献数
32
被引用文献数
2 3

抗酸化剤無添加の精製エゴマ油を180℃で10時間加熱し, 経時的に油のAV, POV, CV, p-An. V, Toc量と脂肪酸量の変化を調べた。対照試験としてダイズ油についても同様に測定し, 両者の熱安定性を比較した。また, コットンボールを用いて加熱時のモデル食品成分添加の影響を調べた。1) 180℃, 70分までの短時間加熱では, ダイズ油に比べてエゴマ油の劣化は若干進んでいたが, α-リノレン酸の残存率も90%以上であり, 栄養的にも食品衛生上も支障があるほどではなかった。2) 180℃, 10時間加熱においては, 加熱時間が長くなるにつれ, ダイズ油に比べてエゴマ油の劣化が著しく, CVが50を越えるのがダイズ油が10時間後であるのに対し, エゴマ油は約5時間後であった。エゴマ油は着色も著しく, 10時間後にはAVは0.20と低かったが, CVは131.0, p-An. Vは242.4に達した。3) コットンボールを用いて, エゴマ油とダイズ油の水添加加熱時の熱安定性を比較した結果, 1時間以内では, エゴマ油はダイズ油に比べAV, CV, p-An. V, POVともやや上昇したものの, 食品衛生上問題になるほど酸化は進まなかった。4) エゴマ油の熱酸化は第二塩化鉄により促進された。グルコースや水の添加によっては若干酸化が進んだ。逆に, グリシン添加時はPOV, CV, p-An. Vの値が減少した。これは, アミノ酸自身の抗酸化性と, アミノカルボニル反応によって, 油中に生成されたカルボニル化合物が消費されたこと, さらに生成されたメラノイジンが抗酸化性を示したことなどが考えられた。
著者
佐々木 信博 上野 幸司 白石 武 久野 宗寛 中澤 英子 石井 恵理子 安藤 康宏 草野 英二
出版者
一般社団法人 日本透析医学会
雑誌
日本透析医学会雑誌 (ISSN:13403451)
巻号頁・発行日
vol.40, no.7, pp.581-588, 2007-07-28 (Released:2008-11-07)
参考文献数
17
被引用文献数
3 5 2

生体電気インピーダンス法 (BIA法) は, 生体に微弱な電流を流して, 身体の体水分量 (TBW), 細胞外水分量 (ECW), 細胞内水分量 (ICW), 体脂肪量 (BFM) などを測定することが可能であり, 透析患者のドライウェイト (DW) の指標になり得ると考えられる. 高精度体成分分析装置であるInBody S20は, 多周波数分析, 8点接触型電極, 部位別測定, 仰臥位測定といった特徴を有し, 高い精度と再現性が立証されており, 近年, その臨床報告が相次いでいる.今回われわれは, 本装置を用い各種体液量を測定し, DWの指標となり得るか検討した. 対象は当院で維持透析を施行している41名で, 透析前後でInBody S20による各体液量と一般血液検査, hANPを測定し, 透析後に胸部X線による心胸比 (CTR) と超音波断層法による下大静脈径 (IVC) を測定した. その結果, 1) hANPは, CTR, IVCe (安静呼気時最大径) とそれぞれ有意相関 (p<0.01, p<0.05) を認めた. 2) 各種体水分量 (TBW, ECW, ICW) は, 透析後に有意に低下し, IVCeと有意相関 (p<0.001) を認めた. 3) 体水分量変化率 (%TBW) は, 循環血液量変化率 (%BV) や循環血漿量変化率 (%CPV) と有意相関 (p<0.001) を認めた. 4) 浮腫値 (ECW/TBW) は, 透析後に有意に低下し (p<0.001), hANPと有意相関を認めた (p<0.001). 5) InBodyで測定した透析後DW (BIA-DW ; 浮腫値0.38のBW) と臨床でのDW (cDW) は, 強い正相関を示した (r=0.99, p<0.001).InBody S20は, 簡便性, 非侵襲性, 即時性に優れ, 血液透析患者の体液量・体組成の定量的評価が可能で, 浮腫値や透析後BIA-DWは, 実際のDWの指標として有用と考えられた.
著者
中島 彩 村田 伸 飯田 康平 井内 敏揮 鈴木 景太 中嶋 大喜 中村 葵 白岩 加代子 安彦 鉄平 阿波 邦彦 窓場 勝之 堀江 淳
出版者
日本ヘルスプロモーション理学療法学会
雑誌
ヘルスプロモーション理学療法研究 (ISSN:21863741)
巻号頁・発行日
vol.6, no.3, pp.133-137, 2016-09-30 (Released:2016-10-22)
参考文献数
18
被引用文献数
1

本研究は健常成人女性14名を対象に,ヒールの高さの違いが歩行パラメータと下肢筋活動に及ぼす影響について検討した。ヒールなしおよびヒール高3cm と7cm 靴を着用した歩行中の歩行パラメータと下肢筋活動を計測した結果,歩行速度および歩幅とストライド長はヒールなし歩行に比べて,ヒール高7cm 歩行で有意に低下した。ヒールなし歩行とヒール高3cm 歩行のそれらの歩行パラメータには,有意差は認められなかった。両脚支持時間は,ヒールなし歩行に比べてヒール高3cm と7cm 歩行で有意に短縮したが,遊脚時間は後者が有意に増大した。下肢筋活動においては,測定した4筋すべてにおいて有意差が認められなかった。以上のことから,ヒール高3cm 以上で歩行中の立脚時間や遊脚時間に影響を与えるが,ヒール高3cm までであれば,歩行速度および歩幅やストライド長には影響が少ないことが示唆された。
著者
白水 智
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

江戸時代については、巷間、人と自然が優しく共存した時代であると称揚されることが多い。しかし、実際には自然の過剰利用による資源枯渇が発生するなど、必ずしも人は自然に優しく生きていたわけではない。 「御林書上帳」という史料がある。御林とは、庶民の利用に厳しい規制がかかった幕府・大名の統制林であったが、その日常的管理は、御林守などに任命された地元住民に委ねられていた。彼らは領主の指示により、森林の状況を詳細に調べ上げた報告書を作成し、「御林書上帳」として提出した。そこには、木の種類・太さ・高さ・本数などが列記されている。歴史学研究者にとっては、解読することはできるが、ひたすら退屈な史料である。しかし林学の研究者から見ると、この帳面は、今は見ることのできない何百年も前の森林状況のデータが埋もれた宝の山であり、当時の森林環境が鮮やかに復元できる素材である。長野県林業総合センターの小山泰弘氏に信濃国北部の森林について、これらの史料を利用して復元研究を行ってもらったところ、御林の多くは直径20~30センチほどのアカマツを中心とする疎林にすぎず、豊かな緑に覆われていたわけではないことが明らかとなった。一方で、同じ地域の栄村にあった「仙道御林」は、全く様相が異なっていた。そこはナラとブナが7割を占める13.5㏊の森で、幹周2丈(6m。胸高直径2mに相当)を超える樹木が56本もあった。環境省が「巨木」とする木は幹周3m以上をいうが、それに相当する目通り9尺以上の樹木は1615本もあり、まさに現代なら天然記念物級の「巨木の森」だったのである。わずか200年前の日本にこのような森があったのは驚きであるが、逆に言えば、こうした森を当たり前のように存在させたのが日本の自然だったのであり、それが失われた原因は紛れもなく人為による伐採であった。日本の自然を考えるとき、人間活動の痕跡を大きな要因として加えることの重要性を示す重要な一例といえる。 民有林に相当する林地では、当然ながら過剰な伐採は進行し、有用樹種の枯渇を招く事態となった。北信濃の秋山地区では、スギ・クロベなどの有用な針葉樹は19世紀初頭までに多くを伐り尽くしてしまい、史料には「残るのはブナ・ナラ・トチなど雑木ばかり」と、どうでもいい無用な木ばかりになってしまったかのように記されている。それまで秋山で生産されていたのは、桶・曲物など目の通った針葉樹材を材料にした器物であったからである。しかし人は窮地に陥れば知恵を働かす。今度は材料を豊富に存在する広葉樹に転換し、木鉢・コースキ(木鋤)などの木工品作りに精を出すようになった。「使えない雑木」だったものが主たる素材になったのである。こうして新たな樹種の利用方法を編み出し、窮地を脱することができたが、「人欲は限りなし」と自ら記録に記す伐採状況であったことは間違いない。 また一方、「御林書上帳」を子細に見れば、必ずしも真実を正確に書き上げたものとはいえない部分もある。歳月を経て提出された2冊の書上帳間で、樹木の本数が全く同数に揃えられているのである。森林管理の不備を問われることを恐れて、明らかに数字を調整したと見られる。書き残された古文書は、やはり「人くさい」社会の産物でもあるのである。この「人くさい」社会の営み(政治・経済・制度・心意・習俗)を明らかにするのが、歴史学の真骨頂である。そしてこの「人くささ」を前提とした古文書の内容・文言の吟味、すなわち史料批判を通じて、史料はデータとしての意味をより明確に捉えられるようになる。
著者
鈴木 大地 松葉 剛 稲葉 裕 白石 安男
出版者
順天堂医学会
雑誌
順天堂医学 (ISSN:00226769)
巻号頁・発行日
vol.52, no.3, pp.415-426, 2006-09-30 (Released:2014-11-12)
参考文献数
44

目的: 近年プールを設置する自治体が増えており, 水泳や水中運動を健康づくり事業に取り入れるケースも増えている. 当研究は水泳や水中運動がどのように住民の生活習慣や健康状態に影響しているかを調べることを目的に行った. 方法: 2004年K市において健康関連イベントおよびこれまで水泳. 水中運動事業に参加している257名を対象に質問紙による調査および血圧, 内臓周囲脂肪, 血液生化学データ (血算, 肝機能, 血清脂質, 血糖) の測定を行った. 結果と考察: 対象者を運動習慣により〈水中運動群〉〈水中運動以外の運動群〉〈運動習慣のない群〉の3群に分け, 心理的要因, 食事, 血液生化学検査を含む身体的要因について分布の差について調べた. 心理的要因については, 健康状態や生活満足度, 幸福感をたずねた質問では良好であるとの回答が水中運動群および水中運動以外の運動群に多く統計学的有意差が認められた (p<0.01). また食習慣的要因では水中運動群および水中運動以外の運動群で〈塩辛い食事〉を好まない傾向が認められた (p<0.05). 血液生化学データのうちHDLコレステロールの値について水中運動群と水中運動以外の運動群, および水中運動群と運動習慣のない群の間に有意差を認め, いずれも水中運動群が高値を示した (水中運動群73.2mg/dl, 水中運動以外の運動群63.2mg/dl, 運動習慣のない群63.2mg/dl, いずれもp<0.01). その他, 収縮期血圧において同様に水中運動群と水中運動以外の運動群, および水中運動群と運動習慣のない群の間に有意差を認め, いずれも水中運動群が低値を示した (水中運動群73.3mmHg, 水中運動以外の運動群78.1mmHg, 運動習慣のない群79.4mmHg, いずれもP<0.01). また健康な生活に与える影響について他の生活習慣との関わりを知るために, 因果モデルを作成し共分散構造分析にて分析を行った. その結果, 定期的な運動習慣のなかでも水中運動が, 健康な生活との間により強い関連があることが示された.
著者
白峰 旬
出版者
別府大学会
雑誌
別府大学紀要 = Memoirs of Beppu University (ISSN:02864983)
巻号頁・発行日
no.59, pp.129-135, 2018-02

慶長5年(1600)8月、毛利家麾下の軍政を中心として城攻めがおこなわれた伊勢国津城合戦の際に、吉川家中で手負い(負傷)、討死(戦死)した者の人名リストである「伊勢国津城合戦手負討死注文」(『吉川家文書之一』<大日本古文書>、728号文書)の内容を検討することにより、慶長5年8月の時点における吉川家の軍事力編成について考察する。
著者
新井白石 著
出版者
青山清吉[ほか]
巻号頁・発行日
vol.上, 1894
著者
白木 優馬 五十嵐 祐
出版者
公益社団法人 日本心理学会
雑誌
心理学研究 (ISSN:00215236)
巻号頁・発行日
pp.87.15040, (Released:2016-09-10)
参考文献数
26
被引用文献数
3

We examined two psychological processes of prosocial behavior: feeling gratitude and indebtedness. First, we asked if the value of the behavior for the receiver promotes gratitude; and second if the cost of the behavior for the giver promotes indebtedness. Gratitude and indebtedness were measured as behavioral indices of a quid pro quo (indirect reciprocity and direct reciprocity) to avoid social desirability effects in self-report measures. In Study 1, 119 undergraduates recalled a past experience in which they had been the recipients of prosocial behavior while emphasizing the value, cost, or situation (control) of the event. The level of gratitude was higher, and indirect reciprocity was observed more frequently, in the value condition than in the cost and control conditions. Indebtedness, however, did not differ across the conditions. In Study 2, 59 participants received a gift (the value and cost of which were manipulated) from an imaginary confederate. The value manipulation promoted indirect reciprocity, and both value and cost manipulations encouraged direct reciprocity. Implications for adaptive functions of gratitude in social selection processes are discussed.