- 著者
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石田 哲也
福島 久典
- 出版者
- 大阪歯科学会
- 雑誌
- 歯科医学 (ISSN:00306150)
- 巻号頁・発行日
- vol.71, no.2, pp.139-146, 2008-06-25 (Released:2017-05-29)
- 参考文献数
- 36
- 被引用文献数
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高野槙68%エタノール抽出液(試料A)の口腔細菌に対する抗菌域や性状を検索するとともに,精製を試みた.試料Aには夾雑物の混入が予測されたので,Sephacryl S-100によるゲル濾過を行った.溶出には0.05M Tris-HCl buffer(pH 7.5)を用いた.その結果,2つのピークが得られた.抗菌活性は両者に認められた.そこで試料A,第1ピーク,第2ピークの抗菌域を検討した.3者とも広い抗菌域(好気性ないし通性嫌気性菌ではStreptococcus oralis, Streptococcus sanguinis, Enterococcus faecalis, Staphylococcus aureus, Actinomyces viscosus, Bacillus subtilis, Rothia mucilaginosa, Pseudomonas aeruginosa, Escherichia coliなど,偏性嫌気性菌ではPorphyromonas gingivalis, Prevotella intermedia, Peptostreptococcus anaerobiusなど)を有し,ほぼ一致した.したがって,以後の実験には第2ピークの凍結乾燥標品(試料B)を供した.試料Bをそれぞれ0〜99.59%濃度のエタノールで溶解し,抗菌活性を測定した.その結果,エタノール濃度60%と70%をピークとする活性(16AU)がみられ,0%濃度でも4AUの活性が得られた.試料B水溶性画分の抗菌作用性は,指示菌(7.0×10^9/mL)と,試料Bをphosphate buffer salineで溶解させた活性画分(16AU)とを等量混ぜ合わせ,経時的に残存生菌数を測定した.生菌数は経時的に減少し,1時間後では5.0×10^2/mLであった.それゆえ試料B水溶性画分の抗菌活性は殺菌的であるといえる.抗菌活性の本体を知る目的で,chloroform-H_2O(1:1)に試料Bを溶解させ,活性を調べたところ,ほとんどの抗菌活性はchloroform層にみられた.ついで乾固させたchloroform層をacetonitrileで溶解してHPLCに供した.その結果,acetonitrileの高濃度画分に明瞭な抗菌活性がみられた.今後さらに解析を進め,抗菌成分を明らかにしたいと考えている.