著者
楠 房子 稲垣 成哲 徳久 悟 石山 琢子
出版者
多摩美術大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2014-04-01

本研究で開発したスタンプオンシステムは、「スタンプ」デバイスを用いた展示の理解支援システムである。本システムは3つの特色がある(1)展示物の説明を取得するにはiPadなどのモバイル端末を使用する (2)「スタンプ」と呼ばれる有形デバイスをタッチすると、モバイル・デバイス内に含まれる対応する説明を開始する(3)来館者の自発的な探索活動を支援する。本システムの有効性を検証するために、6年生の児童を対象として、科学博物館で実験を行った。実験結果から、子どもたちは、博物館の展示物の観察を本システムを用いて楽しく行うことができた。また本システムは展示物の理解のために、効果的であることが明確になった。
著者
稲垣 成哲 楠 房子
出版者
神戸大学
雑誌
挑戦的萌芽研究
巻号頁・発行日
2009

本研究の目的は,科学系ミュージアムやフィールドでの学習における近未来の学習支援のためのデザイン指針と評価手法を明らかにすることである。近年の科学系ミュージアムやフィールドには,従来のHands-onタイプの展示だけでなく,ユビキタス社会を反映した様々なテクノロジが実験的に導入されており,それらによって可能になった近未来型のインタラクティブな学習支援・展示支援の現場が出現している。最終年度では,(1)文献・資料の収集とデータベース整理,(2)国内外の事例に関する実地調査,(3)デザイン指針の策定とその評価手法の開発及び試行,(4)成果発表を行った。まず(1)については,科学教育関連図書や博物館・フィールド学習関連図書及びこれらの関連領域の学術論文を収集し,科学教育の観点からみた学習支援のためのデザイン指針の理論的枠組及びその評価手法に関する仮説的提案を行った。(2)については,当該テーマにおける先進的な学習支援・展示支援の実例として,国外では,ベルギー自然史博物館,ポンピドーセンター,シュトゥットガルト自然博物館,メルセデス・ベンツ・ミュージアム,ビトラデザインミュージアム,ゼンケンベルク博物館等における新しいタイプの学習支援・展示支援のあり方について実地調査をした。他方,国内では山口情報芸術センター,北九州市立いのちのたび博物館等において調査を行った。(3)については,申請者らが従来から取組んでいる兵庫県六甲山を対象にした「実世界と仮想世界をインタラクティブに統合したフィールド学習」を題材にして,上記(1)における仮説的提案の適用可能性について調査した。最後に,(4)については,日本科学教育学会第34回年会(広島大学)において,テクノロジを利用した新しい学習支援・展示支援研究4件から構成された自主企画課題研究「インタラクション・デザイン・学習II」を組織した。
著者
伊藤 求 鳩野 逸生 稲垣 成哲
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学雑誌 (ISSN:03855236)
巻号頁・発行日
vol.27, pp.113-116, 2004-03-05
被引用文献数
1

本研究では,学習者が簡単に取り扱える定点観測教材ビデオクリップ作成システムの自動化を実現した.Webカメラを観察対象に向け設置するだけで,時間軸を縮めたmpeglビデオクリップを作成し,かつ,それらをパソコンのWebブラウザで閲覧できるようにする.さらに,インターネット経由で公開することもできる.導入コストが低く,かつ安定性のあるOSを用いているので,季節変化などの長期間の観察に対しても利用できる.本システムを導入することにより,学習者自らが興味を持つ観察対象をビデオクリップとして観察することができる.その結果,彼らの意志で主体的に取り組んだビデオクリップ教材を作成および公開することができる.
著者
杉本 雅則 楠 房子 稲垣 成哲 高時 邦宜 吉川 厚
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.85, no.12, pp.1152-1163, 2002-12-01
被引用文献数
8

筆者らはこれまで,RFID技術を用いたセンシングボードを用い,物理世界と仮想世界とを融合することによるface-to-faceでのグループ学習支援システムを構築してきた.このシステムを用いた実践から,コンピュータの使用が苦手な学習者でも容易に学習に参加できる,教科書等を通して得た知識を物理世界で試せる,などの点で有効であることを示せた.しかし,発言の場においてリーダーへの依存が強くなる点や,より本物性の高い設定での学習支援ができないか,などの点も指摘されていた.そこで,本論文で提案するシステムでは,学習者のグループが互いにface-to-faceで話し合えないよう,複数のセンシングボードを別の場所に配置した.そして,各ボード上での操作が互いに影響を及ぼし合うよう,それらをネットワークでつないだ.グループ内の学習者はボードを囲みながらface-to-faceで問題を解決するとともに,別のグループの学習者とは,チャットシステムを介して交渉を行う.小学校の授業の中で,都市設計と環境問題の学習を学習者に行ってもらい,提案システムの有効性を検証した.
著者
川上 昭吾 長沼 健 廣濱 紀子 山中 敦子 稲垣 成哲
出版者
国立大学法人愛知教育大学
雑誌
愛知教育大学教育創造開発機構紀要 The journal of the Organization for the Creation and Development of Education (ISSN:21871531)
巻号頁・発行日
no.3, pp.131-137, 2013-03-31

蒲郡市生命の海科学館では、たくさんのサイエンス・ショーやワークショップを実施している。ワークショップ等に参加する人数は、平成22年度は7,640名、平成23年度は14,910名に上っている。しかしながら、幼児や低学年児童が満足する内容とするためには工夫が必要である。そこで、絵本の読み聞かせを行い、併せて絵本の中の実験を実施することで興味を湧かせたり、学びの深化が可能になるのではないかと考え実践に移したところ、参加者は予想通り絵本に興味を持ち、活動に意欲的に参加した。科学館等での新しいワークショップの在り方となることが明らかになった。
著者
山口 悦司 稲垣 成哲
出版者
一般社団法人日本科学教育学会
雑誌
科学教育研究 (ISSN:03864553)
巻号頁・発行日
vol.22, no.4, pp.204-214, 1998-12-10
被引用文献数
3
著者
竹中 真希子 稲垣 成哲 山口 悦司 大島 純 大島 律子 村山 功 中山 迅
出版者
日本教育工学
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.193-204, 2005
被引用文献数
8

本研究は,CSCLシステムを小学校の理科授業へ導入し,その利用が子どもたちの理科学習をいかに支援できるのかについて実践的に検討したものである.CSCLシステムを利用した授業は,5年生の単元「物の溶け方」で実施された.オンライン上の相互作用に関する分析を通して,CSCLシステムで提供される情報共有環境を利用した情報探索ならびにその探索に基づいた理解深化を概ね実現できるようになったことがわかった.オフライン上の相互作用に関する分析を通して,CSCLシステムを利用した他者のノート閲覧が契機となり学習活動が活性化されていた,つまり,オンライン上の相互作用はオフライン上の相互作用を促進するリソースになり得ていたことがわかった.
著者
野上 智行 小川 正賢 稲垣 成哲 川上 昭吾 中山 迅 小川 義和 竹中 真希子
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
2005

本研究では,『科学技術コミュニケーター』としての能力を備えた理科教師の育成を目指すために,大学・大学院と科学系博物館の連携を前提とした教師教育プログラムの開発と評価に取り組んできた。総括グループでは,科学系博物館との連携をベースとした『科学技術コミュニケーター』としての教師教育プログラムを開発するための基本的な諸要件,すなわち,プログラムの根幹となる目的・目標論,学習論,方法論,内容論,評価論について検討が行われた。5つの地域グループでは,各地域の科学系博物館等と連携して,教師教育プログラムの具体的な開発がなされた。主要な研究成果としては,愛知グループでは,愛知県内の博物館と連携したワークショップの企画・実施,博物館のハンズオン展示の調査,博物館を利用した国語教育と理科教育を結ぶための教師支援の実践的研究等が行われた。宮崎グループでは,宮崎県総合博物館との共同によって,火山灰に関する授業をべースとした中学理科教師のサイエンス・コミュニケータとしての力量を育成するための実践的研究が行われた。広島グループでは,広島市子ども文化科学館や広島市森林公園昆虫館における子ども向けの科学普及教室の分析や小学校と連携した授業開発をベースとした教師教育プログラムの試案が作成された。兵庫グループでは,携帯電話からアクセス可能なバーチャル博物館が構築されるとともに,その有効性が実験的に評価された。高知グループでは,高知県立牧野植物園などを対象にして教師教育プログラム開発のための可能性が検討された。特筆すべきこととして,本研究における一部の業績に対して,日本科学教育学会(JSSE)の論文賞(2007年8月),日本科学教育学会(JSSE)の年会発表賞(2006年8月)の2件が授与されていることを指摘できる。
著者
山口 悦司 稲垣 成哲 舟生 日出男 疋田 直子
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.15-28, 2002-11-15
被引用文献数
23

筆者らは,再構成型コンセプトマップ作成ソフトウェアを開発している。ソフトウェアの特徴的な機能は,次の2点である。(1)再生機能:コンセプトマップの作成過程を自動的に保存し,作成途中でも随時,その作成過程を再生することができる,(2)修正機能:作成過程の任意の時点までアンドゥすることによって遡り,修正できる。本研究の目的は,小学校の理科授業へソフトウェアを導入し,ユーザーインタフェースの有効性や再生機能の内省や対話支援の有効性について実践的に検討することであった。児童39名を対象とした質問紙調査の結果を通して,ソフトウェアの使用感のよさや操作性は高く評価されたことがわかった。また,再生機能の有効性についても,ある程度認められていたことがわかった。教師2名を対象とした面接調査の結果からは,ソフトウェアの再生機能は教師の学習指導や子どもたちの学習を概ね支援できていたと評価されたことがわかった。再生機能利用場面の相互行為分析では,再生機能が子どもたちの学習内容に関わる思考過程の内省や対話を支援していることが授業の文脈に即して例証された。これらの結果を考察することで,本ソフトウェアの実践的な評価や今後の課題が議論された。
著者
竹中 真希子 稲垣 成哲 黒田 秀子 出口 明子 大久保 正彦
出版者
日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.48, no.2, pp.53-62, 2007-11-30
被引用文献数
1

本研究では,筆者らが開発したカメラ付き携帯電話を利用した情報共有システムであるclippicKidsの実践的な評価を行った。評価対象の学習活動は小学校2年生の「大発見プロジェクト」と呼ばれるもので,カメラ付き携帯電話とclippicKidsを使って,1年間の写真日記が作成された。実践的評価は「大発見プロジェクト」の中で撮影された一連の写真から「自然」が撮影されたものを素材として分析し,次の3つの課題について検討した。(1)子どもたちはカメラ付き携帯電話でどのような自然を撮影するのか,(2)その撮影において自然の何に気づくのか,(3)こうしたテクノロジに支援された活動を子どもたちはどのように評価するのか,であった。その結果,子どもたちは自然関連の写真を数多く撮影したこと,校内の樹木・雑草や栽培している野菜・草花といった植物が多いこと,既有知識とともに,対象の事実に即して具体的な観察や比較の視点を撮影の理由として記述できていたこと,子どもたちの主観的評価では,この活動が肯定的に受容されていたことなどが明らかになった。これらの結果に基づいて,カメラ付き携帯電話を利用した本システムは,自然観察の道具としての可能性と有効性を持つことが示唆された。