- 著者
-
藤田 尚
- 出版者
- 新潟県立看護大学
- 雑誌
- 学長特別研究費研究報告書
- 巻号頁・発行日
- vol.17, pp.40-44, 2006-06
東京大学総合研究博物館所蔵の縄文時代人について,その骨折の病態を調べた.今回はそのなかでも福島県三貫地貝塚出土の古人骨について,骨折の鑑別診断が容易であった3例について論じた.3例は,橈骨遠位端骨折(Colles骨折),距骨変形治癒骨折,鎖骨骨折であるが,いずれも転倒や高所からの転落など,当時の人々の生業に起因したものと推定された.即ち獣を求め狩猟をすることや,果実などの採集のために,彼らは現代人のわれわれより,身体を酷使し危険な状態に身を挺したと考えられた.今回の症例は,全て現代的な治療を受けることが出来なかった時代の骨折であり,骨折は変形治癒している.骨折は,身体の自由度がかなり制限される疾患であることから,骨折の治療中は,家族や集落の仲間などからのさまざまな援助があったと思われる.このようなところに,科学的ではないにせよ,看護や介護の起源が求められると思われる.今後症例を集め,より多角的な見地からの検討することにより,看護や介護の起源を探ることが可能であると推測された.