著者
田篭 慶一 中川 法一 生友 尚志 三浦 なみ香 住谷 精洋 都留 貴志 西川 明子 阪本 良太 堀江 淳 増原 建作
出版者
日本理学療法士協会(現 一般社団法人日本理学療法学会連合)
雑誌
理学療法学Supplement Vol.39 Suppl. No.2 (第47回日本理学療法学術大会 抄録集)
巻号頁・発行日
pp.Cb1131, 2012 (Released:2012-08-10)

【はじめに、目的】 変形性股関節症患者の多くはDuchenne跛行のような前額面上での体幹の姿勢異常を呈する.この原因については,外転筋力や可動性の低下など股関節機能の問題によるものと考えられてきた.しかし,長期にわたり同じ跛行を繰り返すことにより,股関節のみならず体幹にも問題が生じている可能性がある.本研究では,末期股関節症患者における体幹機能障害を明らかにするため,端坐位での側方傾斜刺激に対する体幹の姿勢制御反応がどのように生じるか,側屈角度の計測により検討したので報告する.【方法】 対象は,末期股関節症患者25名とした(平均年齢59.0±9.5歳).患側と健側を比較するためすべて片側症例とし,健側股関節は正常または臼蓋形成不全で疼痛や運動機能制限のない者とした.また,Cobb角10°以上の側弯がある者,神経疾患等の合併症がある者,測定中に疼痛を訴えた者は対象から除外した. 方法は,まず側方に最大15°傾斜する測定ボード上に端坐位をとり,測定ボードを他動的に約1秒で最大傾斜させた時の体幹側屈角度を計測した.次に水平座面上に端坐位をとり,反対側臀部を高く引き上げて骨盤を側方傾斜させる運動を行い保持した際の体幹側屈角度を計測した.測定は閉眼で行い,足部は接地せず,骨盤は前後傾中間位となるようにした.運動は,まずどのような運動か確認させた後各1回ずつ実施した. 体幹側屈角度を計測するために第7頸椎(C7),第12胸椎(Th12),第5腰椎(L5)の棘突起および左右上後腸骨棘,肩峰にマーカーを貼付し,測定時に被験者の後方より動画撮影した.得られた動画から安静時および動作完了時のフレームを抽出し,画像解析ソフト(ImageJ1.39u,NIH)にて側屈角度を計測した.なお,側屈角度はマーカーC7,Th12,L5がなす角を胸部側屈角度とし,左右上後腸骨棘を結んだ線分に対するTh12とL5を結んだ線分のなす角を腰部側屈角度とした.さらに,左右上後腸骨棘を結んだ線分の傾きを骨盤傾斜角度,左右の肩峰を結んだ線分の傾きを肩峰傾斜角度とした.体幹側屈の方向については運動方向への側屈を+,反対側への側屈を-と定義し,それぞれ安静時からの変化量で表した. 統計処理は,各運動における胸部および腰部の側屈角度,骨盤および肩峰の傾斜角度の平均値を患側と健側で比較した.また胸部と腰部の側屈角度についても比較した.差の検定には対応のあるt検定を用い,有意水準は5%とした.【倫理的配慮、説明と同意】 本研究は当院倫理規定に則り実施した.対象一人ひとりに対し,本研究の趣旨および内容を書面にて十分に説明し,署名をもって同意を得た.【結果】 測定ボードで側方傾斜させた際の体幹側屈角度は,患側が胸部-10.3±5.7°,腰部-6.6±3.3°となり骨盤傾斜は12.4±4.3°,肩峰傾斜は-3.8±6.5°となった.健側では胸部-9.6±4.5°,腰部-7.2±4.1°となり骨盤傾斜は13.6±4.1°,肩峰傾斜は-2.0±5.7°となった.各項目において患側と健側で有意差はみられなかった.また,患側では腰部より胸部の側屈角度が有意に大きく(p<0.05),健側では有意差はみられなかった. 反対側臀部挙上による体幹側屈角度は,患側が胸部-8.4±6.5°,腰部5.1±5.0°となり骨盤傾斜は19.8±5.3°,肩峰傾斜は14.7±7.8°となった.健側は胸部-12.3±5.6°,腰部1.4±4.9°となり骨盤傾斜は23.0±4.9°,肩峰傾斜は12.0±8.3°となった.胸部および腰部の側屈角度,骨盤傾斜角度において患側と健側の間に有意差がみられた(p<0.05).また患側,健側ともに胸部と腰部で差がみられた(p<0.01).【考察】 今回,測定ボードにて他動的に座面を側方に傾斜させた場合の反応として,患側は胸部の側屈が腰部に比べ大きくなった.これは,腰部での立ち直りの不十分さを胸部の側屈で補う様式となっていることを示していると考えられる.この原因としては腰部の可動性低下や筋群の協調性低下などが考えられるが,腰部の側屈角度は健側と差がなかったことから,両側性に腰部側屈可動域制限が生じており,それが今回の結果に影響していると思われた.一方,自動運動として反対側臀部挙上を行った場合の反応については,患側は健側に比べ骨盤傾斜が少なく,腰部の同側への側屈が大きくなった.これは,患側では健側と比べ十分なcounter activityが生じていないことを示していると考えられる.すなわち,可動性のみならず体幹筋群の協調性にも問題がある可能性が示唆された.今回の結果から,片側股関節症患者においては体幹の姿勢制御に関する運動戦略の変容を来していることが明らかとなった.【理学療法学研究としての意義】 変形性股関節症患者の姿勢異常には様々な要因があると考えられるが,股関節機能のみでなく総合的アプローチが必要であり,体幹機能について評価・研究することは重要である.
著者
上城 憲司 井上 忠俊 村田 伸 小浦 誠吾 納戸 美佐子 中村 貴志
出版者
三輪書店
巻号頁・発行日
pp.376-381, 2018-04-15

Abstract:本研究では地域在住高齢者を対象に,認知課題ゲーム(以下,Pゲーム)の実施方法の違いと認知機能別の特徴について検討した.Pゲームは25マスの図案の上に数字をランダムに記し,1〜25の番号が書かれたペットボトルのキャップをできるだけ早く,対応する図案の番号の上に置いたり取り出したりするゲームである.Pゲームの実施方法の違いについて比較した結果,「取り出す」パターンは,「置く」パターンよりも遂行時間が有意に短かった.また,Trail Making Test(TMT),Pゲームを認知機能別に比較した結果,「置く」パターンはすべての群間に有意差が認められた.一方,「取り出す」パターンは,TMTが健常群と認知機能低下群,認知症疑い群,Pゲームが健常群と認知症疑い群との間に有意差が認められ,認知機能低下に伴い遂行時間が長くなる傾向が示された.本研究の結果から,Pゲームは心理的ストレスが低く,簡易に認知機能の程度を判定する評価ツールとして有用性が高いと推察する.
著者
山田 貴志 渡辺 富夫
出版者
一般社団法人 日本機械学会
雑誌
日本機械学会論文集C編 (ISSN:18848354)
巻号頁・発行日
vol.79, no.807, pp.4340-4344, 2013 (Released:2013-11-25)
参考文献数
5
被引用文献数
1

In this study, we analyzed facial expressions during muscle strain using a head mounted display (HMD)-based virtual arm wrestling system designed for facial electromyography measurement. We found that facial expressions during muscle strain are characterized by tension of the corrugator supercilii and zygomaticus major muscles. In addition, facial expressions of laughter, anger, and fear, and those during muscle strain can be distinguished based on the active pattern of the corrugator supercilii and zygomaticus major muscles. These findings are useful in the evaluation of emotions based on facial expressions during muscle strain using the HMD-based virtual reality system.
著者
坂本 祐太 甘利 貴志 寄持 貴代 山田 徹 小野 美奈
出版者
日本ヘルスサポート学会
雑誌
日本ヘルスサポート学会年報 (ISSN:21882924)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.25-32, 2019 (Released:2020-01-11)
参考文献数
25

目的:地域在住高齢者の5 回立ち上がりテスト(Sit to Stand-5、以下、SS-5)におけるQuality Of Life (以下、QOL)低下のカットオフ値を算出する。方法:一次介護予防事業に参加した65 歳以上の参加者155 名を対象に、SS-5 とEuro QOL 5 dimension の項目で主観的にQOL を評価した。Euro QOL 5 dimension は項目を正常と低下の2 群とした。カットオフ値はReceiver Operating Characteristic曲線のAria under curve (以下、AUC)により算出した。結果:SS-5 のカットオフ値は、それぞれ「移動の程度」で10.0 秒(AUC=0.72)、「普段の活動」で10.0 秒(AUC=0.77)、「痛み/不快感」で8.3秒(AUC=0.77)であった。結論:この研究ではSS-5 のカットオフ値を検証した。SS-5 におけるQOL 低下のカットオフ値は下肢とQOL の関連を示し、運動の動機づけするための具体的な目標値となる可能性が有る。
著者
島崎 貴志 金井 秀明
雑誌
研究報告グループウェアとネットワークサービス(GN) (ISSN:21888744)
巻号頁・発行日
vol.2015-GN-95, no.11, pp.1-8, 2015-05-07

世界各国,様々なスポーツがあり,競技大会が開かれるものが多い.競技大会では,選手たちが腕を競う一方,声援を送り,選手をサポートするファンも会場には存在する.声援は試合会場など近接にいるものからもらうが,その場にいないファン,つまり,遠隔地からの声援は効果がないのか疑問に思う.本研究では,その可能性を明らかにするために,室内ジョギングを対象とした遠隔音声および機械音声による声援の効果を明らかにする.検証は 「近接と遠隔」,「遠隔音声のみと録音」,「人と機械音声」 をそれぞれ比較することにより行った.
著者
古田 貴志
出版者
鹿児島大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2013-04-01

エスシタロプラム(商品名 : レクサプロ錠)は, 2011年7月に薬価基準収載され, うつ病に対して用いられる選択的セロトニン再取り込み阻害剤である. 添付文書の「用法・用量に関連する使用上の注意」として, 「肝機能障害患者, 高齢者, 遺伝的にCYP2C19の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)では, 本剤の血中濃度が上昇し, QT延長等の副作用が発現しやすいおそれがあるため, 10mgを上限とすることが望ましい」との記載があるが, CYP2C19活性欠損患者が日本人で約20%と多く, 2012年6月に禁忌事項として, 「QT延長のある患者」が追記されたにも関わらず, 日本人においてCYP2C19活性欠損を含む因子と副作用のリスクについて考慮されていない. そこで, 本研究では, 日本人におけるエスシタロプラムのQT延長のリスクについて解析を行った.2013年度に鹿児島大学病院でレクサプロ錠を服用された患者は96名(入院25名, 外来71名)だった. そのうち, レクサプロ錠を10mg以上服用し, 肝機能などを元に減量の必要性を考慮すべき患者は28%(96名中27名)だった. また, そのうち心電図が検査されていたのは, 22%(27名中6名)だった. 一方, 心電図が検査されていた患者34名(入院20名, 外来14名)では, 82%(34名中28名)がレクサプロ錠の減量を考慮し10mg以下で服用されていた. 以上のことから, レクサプロ錠を減量する必要のある患者は多く, レクサプロ錠のQT延長のリスクが考慮されていないために, 心電図を検査されていないものと推測された.また心電図が検査されていた患者では, QTc間隔の平均は(Fridericia補正法, Bazett補正法で評価)は, 424/416msであり, 450以上が4名, 480以上が2名だった. QTc間隔が480以上の2名は, レクサプロ錠10mgで服用されており, QT延長のリスクとして, 女性・うっ血性心不全・高齢者(60歳以上)では一致したが, 低カリウム血症や添付文書で減量を考慮するように記載ある肝機能障害(Child-Pugh分類A)はみられず, 投与前の心電図を検査している1名は, レクサプロ錠追加後のQTc間隔増加はみられなかった. これらの症例は肝機能障害がなくレクサプロ錠の影響は少なかったものと思われるが, 今後は肝機能障害のある患者において, CYP2C19活性欠損の有無とエスシタロプラムの血中濃度を測定し, QT延長等の副作用のリスクを評価していく.
著者
嶋田 貴志 岡森 万理子 深田 一剛 林 篤志 榎本 雅夫 伊藤 紀美子
出版者
日本食品科学工学会
巻号頁・発行日
vol.58, no.12, pp.604-607, 2011 (Released:2012-12-03)

5週齢のBALB/c系雌マウスにスギ花粉アレルゲンを5回感作した後、腹腔内にアレルゲンを投与して好酸球を集積させるI型アレルギーの遅発相モデルを作製した.このモデルに対して、モリンガ(Moringa oleifera)の葉を3種の混合比(0.3%、1.0%および3.0%)で混じた粉末飼料を自由摂取させ、好酸球の集積および血清中の総IgE量に対する影響を調べた.通常の飼料を与えた対照群と比較してモリンガ葉を0.3%および3.0%与えた群は、総白血球数および好酸球数で有意な低値を示した.血清中総IgE量では対照群と比較して3.0%のモリンガ葉を与えた群が有意な低値を示した.以上の結果より、モリンガ葉は経口的に摂取することでI型アレルギーに対して抑制作用を有する可能性が示された.
著者
猪股 貴志 谷口 憲彦
出版者
バイオメカニズム学会
雑誌
バイオメカニズム学会誌 (ISSN:02850885)
巻号頁・発行日
vol.44, no.1, pp.22-27, 2020 (Released:2021-02-02)
参考文献数
14

陸上競技における近年の日本人短距離選手の活躍は目覚ましく,本年に開幕が迫ったオリンピック・パラリンピックの 舞台でのその活躍が大いに期待されている.彼らが着用する短距離用陸上スパイクや義足用のスパイクソールでは,アスリー トの力を如何にロスなく路面へ伝達することができるかが大きなポイントとなる.本稿では,CFRPを用いた短距離用スパイ クソール,現在開発中の新しいスプリントシューズの設計事例に加え,義足アスリートの動作解析に基づくスポーツ義足用ス パイクソールの設計事例について紹介する.
著者
玉田 敦子 安藤 隆穂 石井 洋二郎 深貝 保則 坂本 貴志 隠岐 さや香 畠山 達 三枝 大修 井関 麻帆 飯田 賢穂
出版者
中部大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2019-04-01

18世紀ヨーロッパにおいては各国の覇権争いが苛烈になる中で古典古代の表象が積極的に利用された。 本研究では研究課題の核心をなす学術的「問い」として(I)「近代とは何か?」、(II)「近代国家の形成、特にその文化的アイデンティティの形成において、古典古代の表象は如何なる役割を果たしたのか?」という2点を設定し、代表者、分担者のこれまでの文献研究を発展させる形で展開していく。
著者
藤井 貴志
出版者
日本近代文学会
雑誌
日本近代文学 (ISSN:05493749)
巻号頁・発行日
vol.95, pp.49-64, 2016

<p>花田清輝は昭和二十四年に発表した「ドン・ファン論」において、「近代の超克」を果たす為には〈人間中心主義〉から〈鉱物中心主義〉へのパラダイムシフトが不可欠であると記している。疎外された〈人間〉の主体性の回復に躍起になる同時代の〈主体性論争〉を挑発するかのように、花田はむしろ「おのれ自身を、客体として、オブジエとして、物体として」(「わが物体主義」)捉える必要性を強調し、自動人形や動く石像、あるいは〈物〉に化していくプロレタリアートといったモティーフを〈鉱物中心主義〉のもとに変奏していく。本論は、〈物〉になる〈人間〉という一見疎外論的なイメージを逆手に取り、謂わば〈人形〉のような非-主体を立ち上げることによって画策された花田の〈革命〉のヴィジョンを横断的に追跡し、その可能性を再検討する試みである。</p>
著者
菅原 貴志 高里 良男 正岡 博幸 太田 禎久 早川 隆宣 八ツ繁 寛 今江 省吾 山本 崇裕 武川 麻紀
出版者
一般社団法人 日本脳卒中の外科学会
雑誌
脳卒中の外科 (ISSN:09145508)
巻号頁・発行日
vol.34, no.4, pp.294-298, 2006 (Released:2008-08-08)
参考文献数
7

Generally vitreous hemorrhage (VH) is detected in 2.2% to 13% of subarachnoid hemorrhage (SAH) patients. VH with SAH (Terson's syndrome) is known to occur frequently in patients with severe SAH or re-ruptured aneurysms. We retrospectively analyzed 20 patients diagnosed with Terson's syndrome out of a total of 881 patients treated for SAH in our department from July 1995 to October 2004. Our study group comprised 15 male and 5 female patients ranging in age from 38 to 77 years (mean 51.2 years). Each patient was classified in Hunt & Kosnik (H&K) grades on admission. One patient was classified in Grade 2, 3 patients in Grade 3, 7 patients in Grade 4 and 9 patients in Grade 5. Each patient was further classified in a Fisher group: 1 patient was in Group 2, 9 patients in Group 3, and 10 patients in Group 4. Regarding the aneurysmal location, 4 cases had ICA aneurysms, 6 had AcomA aneurysms, 4 had MCA aneurysms, 4 had VA or BA aneurysms, and 2 had ACA aneurysms. Re-rupture of aneurysm occurred in 4 cases. Two patients underwent external ventricular drainage because of acute hydrocephalus immediately after CT on admission. Seventeen aneurysms were treated by surgical neck clipping, and 3 aneurysms were treated by intra-aneurysmal coil embolization as the final treatment. Seven patients underwent external decompression because of severe brain swelling, and 6 patients underwent V-P shunt for chronic hydrocephalus. Symptomatic vasospasm occurred in 1 case. Glasgow Outcome Scale (GOS) at discharge showed that 8 patients were GR, 10 were MD, and 2 were SD. VH occurred in only 1 patient on the contralateral side to the ruptured aneurysm among those who had obvious hemilateral VH. Vitrectomy was performed for the 17 VH of 10 patients, and the duration from VH onset to treatment was 8-24 weeks (mean 16.4 weeks). Conservative therapy was done for 15 VH of 10 patients, and the follow-up duration was 12-102 weeks (mean 27.0 weeks). Comparing these 20 VH patients with 311 favorable-outcome (GR or MD) patients who were not considered to have VH, H&K grade or Fisher group scales were significantly higher in VH patients. No significant difference existed between the groups with regard to the number of ruptures or the location of the ruptured aneurysms.
著者
清水 郷美 望月 雅裕 梅下 和彦 岡本 裕智 北澤 隆宏 後藤 玄 枝元 洋 鎌田 貴志 西原 義人 畠山 和久
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本トキシコロジー学会学術年会 第34回日本トキシコロジー学会学術年会
巻号頁・発行日
pp.5102, 2007 (Released:2007-06-23)

【目的】SD系〔Crl:CD (SD)〕SPFラットにフェノバルビタール(PB)を2週間反復経口投与することにより、血液凝固時間が延長した。そこで我々は、PB投与による血液凝固時間への経時的変化について検討するとともに、ビタミンK2を併用投与する群を設け、PB投与による血液凝固時間の延長に対するビタミンK2(Vt.K2)の影響について検討した。 【方法】PBの投与量は2週間反復投与により肝逸脱酵素の上昇が認められなかった100 mg/kg/日とし、投与1、2、3及び7日の翌日にPT、APTT、血漿中フィブリノーゲン、トロンボテスト(TT)及びAntithrombin III(AT-III)濃度を測定した。同時に肝臓について総Cytochrome P450(P450)含量の測定とウエスタンブロット法でCYP2Bの発現を確認した。更に、VtK2(30 mg/kg)を7日間併用投与する群とPB投与7日目に単回併用投与する群を設け、上記項目について測定した。なお、投与14日目の成績はPBの2週間反復投与による結果を使用した。 【結果及び考察】PB投与により、P450含量は投与回数に伴って増加傾向を示した。凝固系パラメータでは投与1日よりAPTTの延長、投与2日よりAT-III濃度の増加、投与7日よりTTの延長がみられた。Vt.K2の単回及び反復併用投与群では凝固時間の延長は認められなかった。したがって、PB投与によるAPTTの延長はVtKの付加により改善された。なお、PB投与初期にはTTの延長は認められず、PB投与によるAPTTの延長はVt.Kの関与する凝固因子の減少に加えてAT-III濃度の増加が関与している可能性が示唆された。
著者
香川 貴志 古賀 慎二 根田 克彦
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.64, no.6, pp.497-520, 2012 (Released:2018-01-24)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

Already more than 30 years have passed since the IGC was held in Tokyo. In that time, Japan’s cities have gone through major transformations, but that is in large part due to having experienced the appreciation of land values during the bubble economy of the late 1980s. In urban cores during the bubble, land rushes drove prices to appreciate, and that spilled over into the suburbs as well. The supply of residences in suburbs grew, and this facilitated the expansion of business and commercial functions into the suburbs. However, the drop in and stabilisation of land prices following the collapse of the bubble prompted the supply of tower-type condominiums in the surrounding areas of CBDs and also had a tremendous impact on the expansion of business function and retail sites. This paper tackles what urban geography involves and what it explains about environmental changes in urban areas of Japan. After the collapse of the bubble, people were impacted on a global scale by synchronised terrorist attacks, the Lehman Shock and other events. The various activities of people living and working in cities often became the focus of urban geographical studies, and that continues to this day. This paper sheds light on that trend in Japan’s geography circles.
著者
牧野 和久 高畑 貴志 藤重 悟
雑誌
情報処理学会研究報告アルゴリズム(AL)
巻号頁・発行日
vol.2001, no.115(2001-AL-081), pp.27-34, 2001-11-27

本論文では,△-正則2 部グラフに対する完全マッチング問題を考察する.ただし,グラフG は,n 節点,m 枝,すなわち,1/2 n △=m とする.我々は,まず,Gabow の方法に基づく新しい単純なO(m log n )アルゴリズムを与える.次に,Cole とHopcroft が提案した正則2 部グラフに対する辺疎化手法を取り入れることにより,そのアルゴリズムをO(m +n log n log △)に改善する.我々のアルゴリズムは,動的木やスプレイ木などの高度なデータ構造を必要としない.
著者
西山 保弘 工藤 義弘 矢守 とも子 中園 貴志
出版者
公益社団法人 日本理学療法士協会
雑誌
理学療法学Supplement
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.F3O1206, 2010

【目的】<BR> 本研究では温浴と冷浴の異なる温度の落差が自律神経活動や体温に与える影響を検討したので報告する。<BR>【方法】<BR> 文書同意を得た健常男性5名(平均年齢23.8±4.91歳)に温浴41&deg;Cと冷浴15&deg;Cならびにその両方を交互に行う交代浴(15&deg;C交代浴)、温浴41&deg;Cと冷浴10&deg;Cの交代浴(10&deg;C交代浴)の4つの異なる部分浴を実施した。交代浴の方法は水関らの温浴4分,冷浴1分を4回繰り返し最後は温浴4分で終わる方法に準じた。温浴のみは計20分、冷浴のみは計10分浸漬した。安静馴化時から部分浴終了後120分間の自律神経機能、舌下温度、血圧、心拍数、動脈血酸素飽和度、手足の表面皮膚温を検出した。測定間隔は安静馴化後、施行直後、以下15分毎に120分までの計7回測定した。表面皮膚温度は、日本サーモロジー学会の測定基準に準じサーモグラフィTH3100(NEC三栄株式会社製)を使用した。自律神経機能検査は、心電計機能を有するActivetracer (GMS社製 AC301)を用いて被検者の心拍変動よりスペクトル解析(MemCalc法)を行いLF成分、HF成分を5分毎に平均値で計測した。統計処理は分散分析(one way ANOVA testと多重比較法)を用いた。<BR>【説明と同意】<BR>対象には、口頭で研究の目的と内容を説明し、十分な理解を得た上で承諾を文書で得た。<BR>【結果】<BR> 副交感神経活動指標であるHF成分は、両交代浴終了90分後に有意差をみとめた(P<0.05)。両交代浴の相違は15&deg;C交代浴に著明にHF成分の低下を認めた(P<0.01)。温浴は80分後に有意差を認めた(P<0.05)。冷浴は終了後60分で変化が一定した(N.S.)。交感神経活動指標とされる各部分浴のLF/HF比は、冷浴と10&deg;C交代浴に開始時と終了以後に有意差を認めた(P<0.01)。15&deg;C交代浴は終了後60分から低下をみたが有意差は認めなかった。舌下温度は、両交代浴と温浴(P<0.01)、両交代浴と冷浴(P<0.01)、温浴と冷浴(N.S.)と両交代浴間(N.S.)となり交代浴に体温上昇を有意に認めた。表面皮膚温にこの同様の傾向をみた。最高血圧は、両交代浴と温浴(P<0.01)、両交代浴と冷浴(P<0.01)、温浴と冷浴(P<0.01)で相互に有意差を認め交代浴が高値を示した。<BR>【考察】<BR> 両交代浴と温浴ならびに冷浴の相異はイオンチャンネル(温度受容体)である。温浴は43&deg;C以下で反応するTRPA4、冷浴は18&deg;C以下で反応するTRPA1と8&deg;C以下から28&deg;Cで反応するTRPM8、両交代浴はこのすべてに活動電位が起こる。もう一つは温熱感覚と寒冷感覚の刺激の質の相違である。温水41&deg;Cの温水はHF成分を抑制して、冷水15&deg;Cと10&deg;Cは、LF/HF比を抑制させていた。温度差の相違は15&deg;C交代浴で26&deg;C、10&deg;C交代浴で31&deg;Cである。温度幅より温浴刺激はHF成分を促進し、冷刺激はLF/HF比を抑制したことが結果より示唆された。さらに両交代浴の相異は寒冷刺激の温度差と侵害性有無の違いがあり結果にも影響していた。それは、効果発現に寄与するイオンチャンネル数の相異と刺激の質により変化すると考えられる。舌下体温の上昇については、一定温の温浴や冷浴より刺激性に優れる理由であり、温度落差が自律神経を刺激しHF、LF成分に変調変化を引き起こす根本理由となる。体温上昇からは、温度落差がある両交代浴が内因性発熱物質インターロイキン1を有意に発現させたことになり免疫応答含め影響を及ぼした結果と考えられる。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>異なる温度落差が自律神経活動に及ぼす影響は、温浴はHF成分を刺激し、冷浴はLF/HF比を刺激することが示唆された。水温落差はその量と質の関係をもって生体に影響する。<BR>