- 著者
-
植野 貴志子
- 出版者
- 社会言語科学会
- 雑誌
- 社会言語科学 (ISSN:13443909)
- 巻号頁・発行日
- vol.21, no.1, pp.64-79, 2018-09-30 (Released:2018-12-26)
- 参考文献数
- 25
本研究では,日本語とアメリカ英語の初対面の教師・学生ペアの会話をデータとして,会話マネージントに関わる発話行動を分析し,そこに反映する教師と学生の関係を文化・社会的観点から考察した.同一のテーマを与えられた日英語会話において,教師と学生が(1)会話開始時,どのように第一話題提供者を決めるか,(2)自身による話題提供後,どのように相手を次の話題提供へと仕向けるか,(3)話題が尽きたとき,どのように次の話題を探索するかを分析した.その結果,英語会話では,教師,学生ともに,相手の話題選択の自由を確保しながら話題提供を促す等,対等な働きかけを介して,二者のステイタスの違いを平均化する傾向が認められた.一方,日本語会話では,教師が一方的に話題を提案しながら学生に話題提供を促す等,非対称の発話行動が見られ,そこには疑似親子的な一体感が醸されていることが指摘された.日本人に特徴的な発話行動の仕組みは,理性と感性の二領域のはたらきを含めた「自己の二領域性」のモデル(清水,2003)を導入することにより,より適切に説明されることを論じた.