著者
遠藤 辰雄
出版者
The Japanese Group Dynamics Association
雑誌
教育・社会心理学研究 (ISSN:0387852X)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.103-116, 1968 (Released:2010-03-15)
参考文献数
6

(1) 犯罪者と大学生との両群を構成因子法によって比較したところでは, 社会的要因すなわち年令に相応した社会生活の技術の身につけ方, 友人のタイプ, グループの一員あるいはリーダーとしての経験などの面, および教育・訓練の要因すなわち学校および家庭における「しつけ」の面に大きな差のあるものが多く, とくに自己洞察すなわち非行に対する自分自身の態度, 自分で自分の行為の責任をひきうける計画性と能力の面に著るしい差のあることが見出された。(2) 自己洞察は, 犯罪経歴が長いほど, すなわち非行が幼時に始められていればいるほど, 劣っている。従って, 安倍淳吉氏の指摘する非行深度と関係していると推測できる。(3) 自己洞察は, 犯罪の真の心理的動機とも平行していると考えられる。(4) 自己洞察は, 年少者では困難であるが, 洞察が可能な年令群に属し, 0以上ならば非指示的療法, 責任療法が可能であり, 年少者であり, -1以下では行動療法が可能であると考えられるが, なお今後の研究をまたねばならない。(5) また, この構成因子法は, 矯正的教育・治療のメドをつけるために, 可能な限度の資料を得るために, とくに心理学的検査が不可能な場合に, もっとも適切な方法であると考えられるが, 構成因子相互間のダイナミックスとくに自己洞察との関連における犯罪性の矯正の見通しの予測の問題についても, 多くの疑問が残されているので, 後日改めて論及することとしたい。
著者
中尾 雄太 大西 英雄 遠藤 優有美 城本 修 村中 博幸
出版者
The Japan Society of Logopedics and Phoniatrics
雑誌
音声言語医学 (ISSN:00302813)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.146-154, 2014

われわれは,音刺激への注意喚起における脳賦活領域を同定するために,fMRI(functional magnetic resonance imaging)を用いて,「聴く」と「聞く」における脳賦活領域を定量的に比較検討した.さらに,自作したソフトウェアを用いてMR画像の賦活領域の体積を算出し,各領域における賦活程度を比較した.聴覚障害を認めない健常成人12名(男性5名,女性7名)に対して,男性話者と女性話者の単音節聴取課題,雑音下聴取課題を行った.その結果,音刺激へ注意を喚起すると,前頭前野,縁上野,帯状回が賦活することが示唆された.また,同性話者より異性話者の声に注意を喚起したほうの脳活動が活発になると示唆された.
著者
遠藤 次郎 中村 輝子
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.3, pp.435-444, 2005-05-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
19
被引用文献数
2 1

初代曲直瀬道三 (1507-1594) 原著, 二代目曲直瀬道三 (曲直瀬玄朔, 1549-1631) 増補と言われている江戸時代のベストセラー,『衆方規矩』を検討し, 以下の結果を得た。(1)『衆方規矩』は, 曲直瀬玄朔の弟子, 岡本玄冶 (1587-1645) が口述し, 岡本玄冶の弟子が編纂したと推測される。(2)『衆方規矩』に収載されている処方の70%は〓廷賢の医方書からの引用である。彼の著作の中でも, 殊に『万病回春』からの引用が多く,『衆方規矩』の処方の約60%は『万病回春』からの引用である。(3)『衆方規矩』は「基本処方とその加減方」という医学体系を基本にしている。本書が『万病回春』を採用した理由として,『万病回春』が加減方を数多く記していることが挙げられる。(4)『衆方規矩』には非常に多くの版本があるが, それらは3つの系統に大別される。
著者
野村 幸弘 佐藤 慎一 森 秀晴 遠藤 剛
出版者
合成樹脂工業協会
雑誌
ネットワークポリマー (ISSN:13420577)
巻号頁・発行日
vol.29, no.2, pp.106-116, 2008-06-10 (Released:2012-08-20)
参考文献数
24

イソシアナート末端ポリウレタンと2級アミノ基を有するアルコキシシラン化合物 (シリル化剤) から, 新規なアルコキシシラン末端ポリウレタン (シリル化ポリウレタン) を合成した。シリル化剤は, 3-アミノプロピルトリアルコキシシランとアクリル酸エステルとの共役付加反応で合成した。得られたシリル化ポリウレタンの粘度は, アクリル酸エステルと反応させていない3-アミノプロピルトリアルコキシシランから誘導したシリル化ポリウレタンに対して低くなった。得られたシリル化ポリウレタンの硬化速度及び接着強さを比較したところ, シリル化剤のエステル部位のアルキル基が短いほど, 硬化が速いことが分かった。また, 引張せん断接着強さ及び接着性がシリル化率の影響を受け, シリル化率60%以上の条件では, シリル化率が低いほど接着性が高くなる傾向にあった。さらに, シリル化ポリウレタンの硬化触媒として, 三フッ化ホウ素-モノエチルアミン錯体 (BF3-MEA) とジブチルスズジメトキシド (DBTDM) の性能比較を行った。その結果, DBTDMに比較して, BF3-MEAは触媒活性が高いこと及びシリル化ポリウレタン硬化物の熱安定性を低下させないことが分かった。以上のことから, シリル化ポリウレタンは湿気硬化型接着剤のベースポリマーとして, またBF3-MEAはシリル化ポリウレタンの効果的な硬化触媒として利用できることが分かった。
著者
森本 晃司 桜井 進一 内藤 慶 青柳 壮志 奥井 友香 加藤 大悟 遠藤 康裕 中澤 理恵 坂本 雅昭
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2009, pp.C3O1119-C3O1119, 2010

【目的】<BR>ラグビーやアメリカンフットボールなどのコンタクトスポーツにおいて,脳震盪などの頭・頚部の外傷は時として重大な事故を引き起こすことから,安全対策上重要な問題として取り扱われる.国際ラグビー評議会の定款では,未成年のラグビープレイヤーは脳震盪を生じた場合,3週間の練習・試合を禁止するとされており,頭・頚部の外傷は頚部筋力を向上させることで予防可能との報告もある.本研究の目的は,高校生ラグビープレイヤーにおける頚部筋力と周径の関連,脳震盪と頚部筋力の関連について検討し,脳震盪予防の一助とすることである.<BR>【方法】 <BR>対象は全国大会レベルの群馬県N高校の高校生ラグビープレイヤー69名(1年生30名,2年生18名,3年生21名)とした.評価項目は経験年数,過去8カ月間の脳震盪の有無(1年生を除く),頚部周径,頚部筋力とした.頚部周径はメジャーを使用し直立位にて第7頸椎棘突起と,喉頭隆起直下を通るように測定した.頚部筋力の測定にはアニマ社製ハンドヘルドダイナモメーターμTasMF-01を使用した.測定肢位は臥位とし,両肩と大腿部を固定した.センサーはベッドに固定用ベルトを装着した状態で額,後頭部,側頭部の各部分に当て,頚部屈曲,伸展,左右側屈の等尺性筋力を3秒間測定した.各方向3回ずつ測定し,最大値を採用した.<BR>統計学的処理にはSPSS ver.13を用い,頚部筋力と周径,経験年数の関係にはspearmanの順位相関係数を用い,各学年間の頚部筋力,周径との関係には一元配値の分散分析後,Tukeyの多重比較検定を行った.また脳震盪経験の有無と頚部筋力・周径の関係には対応のないt-検定を用い有意水準は5%とした.<BR>【説明と同意】<BR>チーム指導者並びに対象者に対し本研究の主旨及び個人情報保護についての説明を十分に行い,署名による同意を得て実施した.<BR>【結果】<BR>2,3年生計39名のうち,脳震盪経験者は28名であり非経験者は11名であった.脳震盪経験の有無で頚部筋力を比較した結果,頚部筋力,周径ともに有意差は認められなかった.<BR>頚部筋力と周径では有意な相関関係が認められた(P<0.05,R=0.52~0.65)が,経験年数と頚部筋力及び周径との間には相関関係は認められなかった.<BR>学年間の頚部筋力の比較では全項目において有意差が認められ,また,学年間の周径においても有意な差が認められた(P<0.05).多重比較検定では,頚部筋力では1年生に対して2,3年生の筋力が有意に高く(P<0.05),2年生と3年生との間に有意な差は認められなかった.頚部周径では1年生と3年生にのみ差が認められ、3年生の周径が有意に大きかった(P<0.05).<BR> 【考察】<BR>本研究における脳震盪の有無と頚部筋力の検討では,両群で有意差は認められなかった.タックル動作において,脳震盪となる場面ではタックル時に頭部が下がる,飛び込むなどのスキル的な要素や,瞬間的に頚部を安定させる筋収縮の反応などの要素も関連していると考えられる.今回の研究ではそれらの要素は検討できていないため,両群で差が見られなかったものと考える.<BR>また,各学年と頚部筋力の検討では1年生と他学年との間に有意な差が認められたが,経験年数と頚部筋力との間に相関関係は認められなかった.群馬県では中学校の部活動としてラグビー部はなく,経験者も週1回程度のクラブチームの練習に参加する程度である.このため,1年生では経験者であっても十分な頚部筋力トレーニングが行えていない可能性が考えられる.また,頚部筋力と周径ではすべての項目で相関関係が認められたことから,選手のコンディショニング管理の一つとして,筋力測定器などがない場合には,頚部周径を確認しておくことの意義が示唆された.頚部筋力は脳震盪予防のための重要な一要因であるが,今回は頚部筋力と脳震盪経験の有無とに関連は見られなかった.今後はタックル動作のスキルや,筋の反応時間なども検討することが課題である.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>本研究の結果から,高校1年生と2・3年生の頚部筋力の違いが明らかとなり,新入生に対する早期からの筋力評価とトレーニングの重要性が示唆され,スポーツ障害予防のための基礎的資料となる.<BR>
著者
遠藤 秀紀
出版者
Japanese Society of Zoo and Wildlife Medicine
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine = 日本野生動物医学会誌 (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.29-32, 2013-03-01
被引用文献数
3

コモドオオトカゲの保全の問題点をコモド村で検討した。観光業は1990年代以降,村の経済構造を変化させているが,新たな施策は村民の豊かさには結びついていない。コモドオオトカゲと住民の関係は,人間と家畜に一定の被害を出しながらも,伝統的に良好に築かれてきた。危険なコモドオオトカゲはこれまでも人々の安全な日常を阻害し,いまも害しているが,高床式住居のような建築方式や漁撈のような伝統的生活様式によって,村民とオオトカゲの調和した関係が維持されている。新しい保全理念や観光化の推進は,部分的に住民を漁撈から土産物販売へと移行させが,村民と地域社会は経済的に豊かになったわけではない。コモドオオトカゲにまつわる過度の観光化を注視する必要がある。
著者
根橋 邦明 遠藤 光宣 松嶋 晃憲
雑誌
全国大会講演論文集
巻号頁・発行日
vol.37, pp.202-203, 1988-09-12

ソフトウェア開発において,言語翻訳リストやダンプリストのプリンタ出力量は多大なものであり,出力リストの管理方法に対する問題が叫ばれている.そこで, - 保管スペースが少なくて済み,且つ - 効率良く資料を参照できるもの の必要性が増している. 具体的方法として,プリンタ装置の出力リストをコピー機等を介し,縮小した資料を保存することが考えられるが,用紙代等のコスト面に対する問題が発生する.現在,プリンタ装置の出力結果をそのまま保存資料にできるカット紙出力のプリンタ装置が普及しつつある.しかし,センタープリンタ装置としては,依然として連帳用紙出力の高速プリンタ装置に対する需要があり,多量の印刷出力を求められている.そこで我々は, - 実現の即座性 - 低コスト(ユーザーが負担するコスト)を考慮し,連帳用紙出力のプリンタ装置の出力リストをそのまま保存資料にでき,同時に出力リストの減量を図れる機能をソフトウェアで実現することを考えた.本稿ではJEF(Japanese processing Extended Feature)システムを利用して,連帳用紙出力のプリンタ装置による出力リストの縮小印刷を可能とした一方式について説明する.
著者
遠藤 毅 青木 滋
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.75, no.2, pp.102-103, 1969-02-25
著者
今井 公太郎 遠藤 克彦 大井 鉄也
出版者
一般社団法人日本建築学会
雑誌
学術講演梗概集 (ISSN:18839363)
巻号頁・発行日
vol.2013, pp.88-89, 2013-08-30

日本は経済成長期を経て、少子高齢化、省資源化が進んだ成熟社会に向かっている。これに呼応して都市は、スクラップ・アンド・ビルトの時代から、すでに築かれた大量の建物をどのように利用するかを考えねばならない時代に移行している。これからの時代の建築家は、古いモノを活かす文化を社会に根付かせ、<時間>をコンテクストとした建築設計の方法論を育てていく努力が必要である。本プロジェクトでは自然かつ新しい増改築の表現方法を試みている。増築を伴った改修の方法として、「古いものと新しいものの対比を際立たせ、古い部分を尊重しながら、新旧ふたつの空間をバランスさせる手法」が多くの事例でみられる。しかし、新しいものは、いずれ必ず古くなる。新旧の対比という方法には一時的な効果しか期待できない。そこで、本プロジェクトでは、最初から新しいものを古いもののようにつくり、すでにある古いものに馴染ませて空間の質をひとつにまとめる方法を試行している。
著者
増田 剛 坪井 秀行 古山 通久 遠藤 明 久保 百司 Del Carpio Carlos A. 宮本 明
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. SDM, シリコン材料・デバイス
巻号頁・発行日
vol.105, no.318, pp.31-32, 2005-09-30

低エネルギーイオン注入法による極浅p^+/n接合面の形成は、半導体デバイス製造プロセスに欠かせないものとなっている。本研究では、低エネルギーイオン注入法による極浅p^+/n接合形成プロセスにおける原子ダイナミクスを解明するために、当研究室独自に開発した数千原子からなる大規模系の計算を可能とするハイブリッド量子分子動力学計算プログラムを用いて、プリアモルファス化したシリコン基板へのドーパント注入シミュレーションを行った。
著者
深谷 笑子 武井 玲子 難波 めぐみ 佐藤 典子 遠藤 恵
出版者
日本家庭科教育学会
雑誌
日本家庭科教育学会大会・例会・セミナー研究発表要旨集
巻号頁・発行日
vol.56, 2013

目的:家庭科の最も重要な特徴は、生活に密着していることである。また、生活という概念は、住むこと、生きること、暮らすことと大きくかかわっていることであり、それは、家や家族に人間が護り護られてこそ成り立つことでもある。そこで、家の役割と家族の意義について,東日本大震災に関する調査から家庭科「家族・家庭」の学習内容を検討することを目的とする。方法:1.2012年7月本学生311名を対象にアンケート調査を実施、2.学生の震災体験記録 3.2012年8月にKGCサマーリフレッシュプログラム(教員免許状更新講習)の教員を対象にしたアンケート調査 4.県内の高等学校家庭科教員対象アンケート調査の実施 結果及び考察:1.本学生を対象にしたアンケート結果から1)震災時、どのようなことを考えたか、の自由記述で一番多かったのは、「家族・友人の安否」「自宅の心配」と、自分自身のことではなく他人、身内などの安否を心配していたことがわかった。2)震災前後の意識の変化では、家族を思う気持ちが強くなった、が7割以上であった。このことから普段家族は空気のようなものだが、困難な時ほど家族の存在が大きいことがわかった。2.本学生の震災体験記録から1)大変なときこそ家族といることが安心だと実感した。2)家族と連絡が取れなかったが、家族は家があることで、遅くなっても帰ってきた。家は家族が帰ってくるところ、家があることのありがたさに気づかされた。3)家があるとことは、家族がひとつになれることでもある。4)家に家族がいたから安心だった。5)家に一人でいたので怖かった。6)家族間に政治の話題が多くなった、など家族を守る器として、また住むということは、どこに出かけてもまた戻ってくる所で根を張っている住まいと家の役割があげられていることがわかる。3.サマーフレッシュから(児童・生徒の変化)1)小学校教諭からは、家族を大切に思う子が増えた。2)中学校教諭からは、日々の生活に感謝。防災意識が出た。3)高等学校教諭からは、子供の生活に変化が見られなかったのは、母親がずーとそばにいることができたおかげと思う。4)特別支援学校教諭からは、何かあれば家の人を思い出し、助けてくれる頼りになる人は家の人、など生徒は、日頃考えないことが、この時を境に家族や防災意識そして正常の生活に感謝する気持ちがわいたことがわかった。4.家庭科教員対象アンケート調査結果から1)緊急時は夫婦それぞれ実家を優先に行動した。2)家や家族の大切さを改めて感じた。3)家族を大切にするようになった。4)より団結力が強くなった。5)連絡が密になったなど、教員自身も実家の親を心配したリ家族を意識したり家族の存在の大きさを実感したことがわかった。体験記録(2名)から1)津波の予測で避難所へ、その後まもなく原発で避難場所を次々移動、現在も落ち着いた生活ではなく、5人がばらばらに生活している。2)地震当時頭をよぎったのは、家族、友達、生徒のこと。生活の基盤は家族。離れ離れになった家族がたくさんいることは胸が痛い。家族と共に普通の生活を送ることがいかに幸せなことなのかを感じることができた。いずれも、福島県が他と異なる東日本大震災の特徴である、地震・津波・福島原子力発電事故によって、家族がバラバラに過ごさざるを得ない不安定な状況が述べられている。 今後の課題: 高校『家庭基礎』の内容を見ると、家や家族の意義についての記載が乏しい。そこで、家や家族の存在について、住むことの本質と上記のような非日常的なときこそ強さを持つ家族についての説明、そして体験記録の掲載を期待する。