著者
遠藤 忠
出版者
公益社団法人 応用物理学会
雑誌
応用物理 (ISSN:03698009)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.712-724, 1990-06-10 (Released:2009-02-05)
参考文献数
48
被引用文献数
7

1990年1月1日を期して,ジョセフソン効果に基づいた電圧標準に加えて,量子ホール効果に基づいた抵抗標準が,世界中で統一して用いられている.これにより,量子現象の持つ普遍性と恒常性という優れた特長に支えられて,世界的に全く統一のとれた電磁気量の実用標準体系が実現した.この結果は,両標準の技術的側面の研究もさることながら,むしろ,地道な努力を重ねて永年行われてきた種々の基礎物理定数の測定のこれまでの総決算により生まれたものといえる.本稿では,基礎物理定数との関わりを中心に,両標準の実現に至った背景について解説する.
著者
清水 嘉子 関水 しのぶ 遠藤 俊子
出版者
一般社団法人 日本助産学会
雑誌
日本助産学会誌 (ISSN:09176357)
巻号頁・発行日
vol.24, no.2, pp.261-270, 2010 (Released:2011-04-07)
参考文献数
13
被引用文献数
7 3

目 的 本研究では,臨床での汎用性を高めるため,清水,関水,遠藤他(2007)が開発した多面的な育児幸福感を捉えるCHS(Child-care Happiness Scale)の短縮版を作成し,その信頼性と妥当性の検討を行った。対象と方法 6歳以下の乳幼児を持つ母親を対象に,CHSの育児の中で感じる幸せな気持ちが生じる様々な場面についての41項目を,5段階で評価を求めた。併せてCHS短縮版の妥当性の確認のため,心理的健康を測定する「主観的幸福感」と「ベック絶望感」の回答も求めた。結 果 有効回答672名であった。短縮版の項目を選定するために,CHSの41項目の回答について因子分析を行い,「育児の喜び」,「子どもとの絆」,「夫への感謝」の3因子からなる13項目を選定した。3つの因子のそれぞれの項目の内的整合性を表すα係数は,0.77~0.86と充分な値が得られた。CHS短縮版と主観的幸福感との間には,有意な正の相関があった。一方,ベック絶望感とは,有意な負の相関があった。また,「育児の喜び」と「子どもの絆」は母親年齢が高くなると低下する傾向が,一方「夫への感謝」は末子年齢が4歳以上よりも1歳以下の母親の方が高く,また1人っ子の母親が最も低くかった。結 論 考察では,CHS短縮版とオリジナルCHSとの違いやその実用性,そして今後の問題ついて議論した。CHS短縮版は心理的健康との関連性が示唆された。CHS短縮版はコンパクトとなったので,個々の母親の育児幸福感の様子を表すプロフィールを母親自身にすぐフィードバックすることができ,母親たちが自分の子育てに対する気持ちを振り返る資料として今後役立てられることが期待できる。
著者
押田 龍夫 遠藤 秀紀 本川 雅治 木村 順平 Son Truong Nguyen Thida Oo Wynn Than
出版者
帯広畜産大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2014-04-01

インドシナ半島に生息するリス科齧歯類等の小型哺乳類において,河川及び海洋による地理的隔離が種分化の要因であることが示唆された.しかしながら,現在のインドシナ半島に存在するメコン川等の地理的障壁では簡単に説明することが出来ない系統地理学的結果も得られたことから,今後さらに詳細な研究が必要であることが示された.また,研究計画の主目的とは逸れるが,新種のコウモリ1種及びリス1種をベトナムにおいて発見し記載・報告することに成功した.
著者
酒井 健一 西山 広徳 小椋 孝介 黒木 悠平 遠藤 健司 土屋 好司 酒井 秀樹 阿部 正彦
出版者
一般社団法人 色材協会
雑誌
色材協会誌 (ISSN:0010180X)
巻号頁・発行日
vol.85, no.8, pp.317-320, 2012-08-20 (Released:2012-11-20)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

モノメリック型(一鎖一親水基型)界面活性剤およびジェミニ型(二鎖二親水基型)界面活性剤の水中における分子集合体形成に及ぼす重合性基の影響を検討した。その結果,非重合性のモノメリック型(UTAB),重合性のモノメリック型(PC11)および非重合性のジェミニ型(11-6-11)の相状態は,低濃度側からミセル溶液(Wm)相-二相共存領域(II)-ヘキサゴナル液晶(H1)相-ラメラゲル(Lβ)相と変化した。一方,重合性のジェミニ型(PC11-6-11)の相状態は,H1相とLβ相との間にラメラ液晶(Lα)相が出現し,低濃度側からWm-II-H1-Lα-Lβ相となった。モノメリック型とジェミニ型界面活性剤のどちらの場合も,それらの疎水基末端に重合性基が存在することによりH1相の形成濃度が上昇した。また,ジェミニ型構造を有する界面活性剤は,モノメリック型の界面活性剤の場合よりもH1相を形成する濃度(物質量で規格化)が低くなった。
著者
亀山 春 遠藤 幸子 Haru KAMEYAMA Sachiko ENDO
雑誌
島根女子短期大学紀要 (ISSN:02889226)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.26-28, 1970-03-28

電子レンジにより熱処理したカボチャ,西洋ニンジンのグルタミン酸脱炭酸酵素の活性を測定し,従来の加熱調理方法と比較検討した。その結果,カボチャ,西洋ニンジンいずれの場合も,蒸調理した場合は大部分の酵素活性が保持されているのに対し,電子レンジにより加熱処理した場合には,その活性がほとんど矢なわれることが認められた。これらのことから電子レンジによる調理方法は,従来の加熱調理に比べ,スピーディーに本酵素を失活せしめ,従って,うま味成分であるグルタミン酸の保持という点から,望ましい調理方法であると考察された。終りに,電子レンジを利用させていたゞきました本学調理学研究室の皆さんに,又実験に協力して下さった本学44年度,栄養学特殊研究生 大村茂子,重住江里子両嬢に謝意を表します。
著者
遠藤 毅 中村 正明
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木学会論文集 (ISSN:02897806)
巻号頁・発行日
vol.2000, no.652, pp.185-194, 2000-06-21 (Released:2010-08-24)
参考文献数
10

我が国産業・経済の中心である東京都区部地域について, 深部地盤の地質層序・地質構造・地層の土質特性等の調査研究を進めるなかで, シルト層の圧密降伏応力, 一軸圧縮強度等の力学的特性の分布が地域別に分類されることを明らかした. 本文は, このシルト層の圧密降伏応力, 一軸圧縮強度等の力学的特性の地域的分布についてさらに検討を加えるとともに, 過圧密比 (OCR) を用い, 過去において現地盤の上位に発達していたと推測される地層の最大層厚を算出し, その層厚および深部地盤構造と土質特性との関係について広域的な検討を行い, シルト層の力学的特性の地域的な差異をもたらした原因を検討したものである.
著者
遠藤 徹
出版者
国立歴史民俗博物館
雑誌
国立歴史民俗博物館研究報告 = Bulletin of the National Museum of Japanese History (ISSN:02867400)
巻号頁・発行日
vol.183, pp.245-261, 2014-03

現代日本の音楽学は欧米の音楽学の輸入の系譜をひく研究が支配的であるため、今日注目する者は必ずしも多くはないが、西洋音楽が導入される以前の近世日本でも旺盛な楽律研究の営みがあった。儒学が官学化し浸透した近世には、儒学者を中心にして、儒教的な意味における「楽」の「律」を探求する学が盛んになり独自の展開を見せるようになっていたのである。それは今日一般に謂う音楽理論の研究と重なる部分もあるが、異なる問題意識の上に展開していたため大分色合いを異にしている。本稿は、近世日本で開花していた楽律研究の営みを掘り起こす手始めとして、京都の儒学者、中村惕斎(1629~1702)の楽律研究に注目し、惕斎が切り拓いた楽律学の要点と意義を試論として提示したものである。筆者の考える惕斎の楽律学の意義は次の六点に要約される。①『律呂新書』に基づき楽律の基準音、度量衡の本源としての「黄鐘」の概念を示した、②『律呂新書』を基本にすることで近世日本の楽律学を貫く、数理的な音律理解の基礎をつくった、③『律呂新書』の説く「候気」の説は受け入れず、楽律の基は人声とする考え方を提示した、④古の楽律を探求するにあたって、実証、実験を重んじた、⑤古の楽律の探求にあたって、日本の優位性を説いた、⑥古の楽の復興を希求した。Study about the tune based on Confucianism was done actively in Japan before the modern era where Western Musicology was not yet introduced. This paper discusses the feature and meaning of the Study about the tune which was done in Edo period(1603-1867), focusing Nakamura Tekisai(1629-1702) , The Confucian scholar of Kyoto. In this paper, I show characteristic points of Nakamura Tekisai's study about the tune can count the following six .① Based on " Ritsu ryo Shin sho" written by Tsai Yuan-ting who was a scholar of the Sung dynasty in China, he showed that the pitch pipe of "Koh shoh" used as the standard of the tune could be also a standard of weights and measurements. ② Based on " Ritsu ryo Shin sho", he built the foundation of the mathematical temperment understanding that can be seen consistently to Study about the tune which was done at the Edo period. ③ He did not accept "kouki(a method of observe Ki)" that was explained in "Ritsu ryo Shin sho" as how to ask for ideal tune, but he presented his view point that basis of the ideal standard tune is a voice. ④When he searched for ideal tune of Chinese ancient times(that era was considered that the ideal tune had been realized), he respected the actual proof remaining in Japan and the experiment. ⑤ In the searching for ancient tuning, he claimed that Japan had predominance conditions. ⑥ He wanted ancient music to be revived someday and studied the ideal tuning as the foundation for it.

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著者
遠藤 一佳 広報委員会 福村 知昭
出版者
東京大学大学院理学系研究科・理学部
雑誌
東京大学理学系研究科・理学部ニュース
巻号頁・発行日
vol.45, no.2, pp.14-15, 2013-07

速水格先生のご逝去を悼んで/東京大学大学院理学系研究科・博士学位取得者一覧/人事異動報告/東京大学理学部オープンキャンパス2013は2日間開催/あとがき
著者
遠藤 匡俊
出版者
公益社団法人 日本地理学会
雑誌
地理学評論 Ser. A (ISSN:00167444)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.287-300, 1987-05-01 (Released:2008-12-25)
参考文献数
11
被引用文献数
2

江戸時代におけるアイヌの移動形態は,ほぼ一定の本拠地からの季節的移動と理解されてきた.これは,集落の位置および集落の構成家が一定していたことを意味する.しかしながら,安政3 (1856) 年から明治2 (1869) 年にかけての三石場所では,集落の位置が変化し,しかも集落の構成家は流動的に変化していた.このような流動的集団が形成されるメカニズムを親族関係から分析した. その結果,集落間居住地移動の行先には,多くの場合,親,子,兄弟姉妹等の親族が各々の家族と共に既に居住していたことが判明した.すなわち,婚姻等によって居住集落を異にしていた親族(親子,兄弟姉妹)が,再び同じ集落に共住するように,各々の新たな家族と共に居住地を移していたのである.集落間居住地移動によって集落の構成家は流動的に変化していたが,集落内の家と家の成員は密接な親族関係で結ぼれていたということになる.
著者
高橋 徹至 遠藤 乙音 古閑 寛
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.100-106, 2020 (Released:2020-03-25)
参考文献数
20

要旨:症例は75 歳,男性.X−1 年11 月,左上肢と両下肢の脱力を呈する脳梗塞で他院入院.退院後も症状再燃を繰り返した.クロピドグレル内服にて経過観察となるも両下肢脱力の進行を認めた.ビタミンB12 欠乏性多発神経炎の診断でビタミンB12 投与されたが症状進行.下肢遠位筋の筋力低下と深部腱反射消失,手袋靴下型の温痛覚障害を認め,女性化乳房,肝脾腫,下肢に色素沈着と浮腫を認めた.POEMS 症候群の疑いにてX 年9 月当院に精査入院.入院数日後に構音障害と左上下肢麻痺出現し,右中大脳動脈領域の梗塞と右中大脳動脈閉塞を認めた.血清VEGF 著明高値,神経伝導検査(以下,NCS)で脱髄および軸索障害の所見を認め,POEMS 症候群と診断した.本症例は当初主幹動脈狭窄を認めなかったが,POEMS 症候群の発症とともに閉塞に至った.POEMS 症候群とビタミンB12 欠乏,脳血管障害との関連を文献的考察含めて報告する.
著者
遠藤 貢
出版者
Japan Association for African Studies
雑誌
アフリカ研究 (ISSN:00654140)
巻号頁・発行日
vol.2007, no.71, pp.107-118, 2007-12-31 (Released:2012-08-13)
参考文献数
31

本稿の目的はアフリカの現代的文脈において国家をめぐって生起している現実とそれに対する認識とが有する意味を読み解く作業を行うことである。敷術すると、国家は現代世界においていかなる条件、いかなる理由のもとで国家でありうるのか(また、ありえないのか)という問いをめぐる問題を検討することである。その作業を行うに当たり、「国家」と「政府」を便宜的に腔分けし、また国家の亜型とでもいう形で出現している「崩壊国家」(collapsedstate)と「事実上の国家」(defactostate)が並存するソマリアを事例にして検討する。ここでは、国内統治と国際関係、言い換えれば「下からの視角」と「上からの視角」、あるいは内と外の論理の交錯するところに生起する問題系としての国家を位置づける視座から取り上げようと試みるものであり、国家の変容が、内なる論理ばかりでなく外の論理の変化を伴う形で生起していることが示される。