著者
稲垣 杏太 小野田 慶一 山口 修平
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
pp.1716oa, (Released:2019-08-27)
参考文献数
43

小脳が運動機能に関連することは広く知られているが,近年の研究は非運動機能にも小脳が関与することを実証してきた.小脳の寄与は運動の場合,無意識的な処理にまで及ぶが,非運動機能の無意識的処理に小脳が関わるかは明らかではない.そこで本研究では,閾下呈示された感情表情に対する処理において小脳が関与するかどうか,機能的MRIを用いた実験によって検証した.右小脳皮質の第Ⅵ小葉は,閾上呈示された怒り表情画像に対して顕著な活動を示したが,閾下呈示された表情画像に対しては特異的な活動を示さなかった.本研究の結果にもとづけば,小脳は無意識的な情動処理に寄与しないことが示唆される.
著者
佐藤 珠江 吉田 茜 長谷川 菜生 浦野 明日香 殿村 由樹 椛澤 里沙 小野田 公
出版者
理学療法科学学会
雑誌
理学療法科学 (ISSN:13411667)
巻号頁・発行日
vol.33, no.5, pp.801-805, 2018 (Released:2018-10-26)
参考文献数
23

〔目的〕本学理学療法学科に在籍する女子学生の月経症状の程度と生活スタイルを明らかにすること,月経困難症,月経前症候群(PMS),月経前不快気分障害(PMDD)の実態とそれぞれの認知度を明らかにすること.〔対象と方法〕本学女子大学生115名(年齢:20.7 ± 1.31歳)を対象とし,PMDD評価尺度と独自に作成した質問紙にて月経症状と生活スタイルを調査した.〔結果〕84%の人が月経前症状を有しており,22.5%が月経周期異常をきたしており,53.2%が月経中に鎮痛薬を服薬することが明らかとなった.月経困難症,PMSおよびPMDDについて,6割以上の学生が「知らない」と回答していた.〔結語〕早期から病態について理解し対処する必要がある.
著者
大野 聖子 佐藤 敬子 片岡 恵子 田中 結美 小原 優子 野田 あゆみ 小島 広美 細見 博子
出版者
日本環境感染学会
雑誌
環境感染 (ISSN:09183337)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.264-268, 2000-08-23
参考文献数
8
被引用文献数
2

1995年と96年の公務災害に申請された針刺し・切創事故をEPINet日本語版を用いて解析を行った.それに基づき携帯型針捨て容器の導入, 病棟で使用する滅菌処置セットに滅菌済みの膿盆を組み込むこと, ゴム栓よりの真空採血用にルアーアダプターを採用などの改善を行った.原因器材としてディスポの注射器針, 翼状針, 留置針, 真空採血針の全体に占める割合は2年平均14件全体の65%から6件30%に減少した.携帯型針捨て容器はコスト的にも100床あたり月5000円程度で一般病院でもまず試みうる対策と考えた.
著者
武村 俊介 松澤 孝紀 野田 朱美 利根川 貴志 浅野 陽一 木村 武志 汐見 勝彦
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
日本地球惑星科学連合2019年大会
巻号頁・発行日
2019-03-14

沈み込みプレート境界浅部で発生するスロー地震は、プレート境界の摩擦状態などの構造的特徴を知る鍵となる(例えば、Saffer and Wallace, 2015 Nature Geo.)。本研究では、室戸岬沖から紀伊半島南東沖にかけての領域で発生した浅部超低周波地震に着目し、浅部超低周波地震の活動の空間変化から発生域の構造的特徴を明らかにすることを目的とする。Asano et al. (2008 EPS)の手法で得られた浅部超低周波地震の検知時刻周辺を解析時間窓として、周期20-50秒の帯域のF-net速度波形に対してTakemura et al. (2018 GRL)のCMT解析を行い、浅部超低周波地震の発震時刻、震央位置、地震モーメントおよび震源時間関数のパルス幅を推定した。CMT解析のためのGreen関数は、Takemura et al. (2019 PAGEOPH)の3次元不均質構造モデルを仮定した地震動シミュレーションにより評価した。2003年6月から2018年5月の期間に検知された浅部超低周波地震に対してCMT解析を行ったところ、室戸岬沖、紀伊水道沖および紀伊半島南東沖のトラフ軸付近に低角逆断層の解が多く推定された。得られたCMTカタログから、それぞれの領域における積算モーメントを評価し、その空間変化を調べた。室戸岬沖、紀伊水道沖および紀伊半島南東沖の領域で積算モーメントが高く、紀伊半島南方沖では小さいことがわかった。浅部超低周波地震の活動域の構造的特徴を明らかにするため、得られた積算モーメントの空間変化と、すべり欠損速度(Noda et al. 2018 JGR)およびS波速度構造(Tonegawa et al. 2017 Nature Comm.)を比較した。浅部超低周波地震の積算モーメントが高い領域は、すべり欠損速度が大きい領域の周囲に位置し、プレート境界直上に顕著な低速度領域が存在することがわかった。低速度領域から流体の存在が示唆され、浅部超低周波地震の発生は流体とすべり欠損速度の両方が鍵をにぎると考えられる。謝辞F-netの広帯域速度波形記録を使用しました.スロー地震学のスロー地震データベースよりカタログをダウンロードしました(Kano et al., 2018 SRL).地震動計算には地球シミュレータを利用しました.
著者
下山 進 野田 裕子
出版者
公益社団法人日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.49, no.12, pp.1015-1021, 2000-12-05
被引用文献数
3 4

セラミックスで密封した粒状のアメリシウム(^<241>Am)を樹脂で環状(厚さ3 mm×外径φ18 mm×内径φ12 mm)に成形した放射線強度1.85 MBqの線源(AET Technology, 重量: 0.5 g, 検出器側船遮蔽材を含め26 g), この線源から放出される放射線を大気中において試料に照射し, 試料から発生する二次X線を線源の中央(環状線源の中央空洞部)から検出する小型電子冷却式シリコン半導体X線検出器(Amptek XR 100 CR, 重量: 142 g), 検出器と接続するプリアンプ(Amptek PX2CR, 重量: 1387 g), そして小型マルチチャンネル波高分析器(Amptek PMCA 8000A, 重量: 240 g)を用いて, 総重量約1800 gの簡易携帯型蛍光X線分析装置を組み立てた. そして, この装置を用いて1682年に奉納された絵馬「羅生門図」の青の彩色に使用された着色料について非破壊分析を行った. その結果, この着色料はCa, Fe, Co, Ni, Asを主成分元素として含む"スマルト"であることが明らかとなった.
著者
小野田 尚佳 伊藤 康弘 岡本 高宏
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.24-27, 2019 (Released:2019-04-24)
参考文献数
13

甲状腺腫瘍診療ガイドライン2018年版では,乳頭癌に対してリスク分類や進行度,予後因子に応じた標準的対処を求めており影響を注視したい。他方,中リスク乳頭癌・低分化癌・未分化癌へ対処,気管合併切除など拡大手術の意義,分子標的薬治療の予後改善効果については,さらなるエビデンス蓄積が待たれる。髄様癌の遺伝子診療,予防的手術には,様々な角度からの議論が欠かせず,RI療法の分類に則した成績の提示も必要である。ガイドライン公開後も英文論文作成,随時の更新が行われ,治療標準化や患者の健康アウトカムについての調査が開始されるが,加えて3年後の次期改訂に向けて新規CQをリストアップし,解決のための研究奨励などを着実に行うよう提案したい。さらに,他学会との連携,汎用性を高める公開法,大規模データベースやAI,SNSの活用,女性委員と患者の参画などの検討が必要と考えられる。
著者
岡本 高宏 小野田 尚佳 伊藤 康弘
出版者
日本内分泌外科学会・日本甲状腺外科学会
雑誌
日本内分泌・甲状腺外科学会雑誌 (ISSN:21869545)
巻号頁・発行日
vol.36, no.1, pp.8-11, 2019 (Released:2019-04-24)
参考文献数
12

甲状腺腫瘍診療ガイドラインを改訂した。甲状腺腫瘍に悩む患者の健康アウトカムを高めるには知識,技術の向上と心の涵養が不可欠である。エビデンスの創出,診療ガイドライン開発法の工夫に終わりはない。専門職による不断の貢献が未来を拓く。
著者
小野田 崇 坂井 美帆 山田 誠二
出版者
日本知能情報ファジィ学会
雑誌
日本知能情報ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講演論文集 第27回ファジィシステムシンポジウム
巻号頁・発行日
pp.55, 2011 (Released:2012-02-15)

簡単で高速なアルゴリズムであるため,k-meansクラスタリング法は,様々な分野で広く伝われている。しかし,k-meansクラスタリング法によるクラスタリング結果は,初期クラスタリング中心の選び方によって大きく異なる。そこで本論文では,独立成分分析による初期クラスタリング中心選定法を提案する。また,様々なベンチマークデータに対し、提案方法と他の初期クラスタリング中心選定法を用いた場合のk-meansクラスタイング法の結果を比較し、その性能を評価する。実験の結果,ODPコーパスに対し,提案方法が有用であることが確認される。
著者
野田 博之
出版者
公益社団法人 日本薬学会
雑誌
ファルマシア (ISSN:00148601)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.111-115, 2019 (Released:2019-02-01)
参考文献数
22

薬剤耐性(AMR)対策の本質は、「耐性菌蔓延の防止」と「抗菌薬開発の促進」に収斂される。抗菌薬開発が耐性菌蔓延に追いつかれないようにするために、利益に至るまでの期間を短くする施策を通して、引き続き、製薬企業が抗菌薬を開発しつづけられるよう支援を進めるとともに、医療関係者及び患者やその家族に対する啓発を進めることで、感染症の適切な診断と抗菌薬の適切な使用を進めていくことが求められている。
著者
野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部
雑誌
富山大学人間発達科学部紀要 = Memoirs of the Faculty of Human Development University of Toyama (ISSN:1881316X)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.61-65, 2017-10-25

2000(平成12)年に社会福祉法が施行され,我が国の社会福祉の目的に地域福祉の推進が明確にされた。その目的を達成するために,市町村が地域福祉計画を策定することが努力義務とされた。一方民間の市町村社会福祉協議会は,2000(平成12)年以前から地域福祉計画(現在では名称を地域福祉活動計画としている)の策定を行ってきた。行政である市町村が立てる計画と,民間の市町村社会福祉協議会が立てる計画の目的は,社会福祉法の目的である地域福祉の推進を進めることである。その内容から考えるに,共通の政策・施策・事業を協働分担することで,社会福祉法で目的とされた地域における福祉の推進が浸透すると考えられる。現在多くの市町村で市町村地域福祉計画と市町村社会福祉協議会の地域福祉活動計画が一体的に作成されている。一方,一体的に策定されず別々に策定が進んでいる地域,行政の努力義務なので未だに市町村地域福祉計画が策定されていない地域(厚生労働省によると2017(平成29)年3月31日時点で市町村地域福祉計画策定済市区町村は69.6%,策定予定市区町村は8.3%,策定未定市区町村は22.2%となっている)も存在する。筆者は市町村地域福祉計画と市町村社会福祉協議会の地域福祉活動計画を一体的に策定する方法でこれまで各地の計画策定にかかわってきた。一方一体的策定をしていない地域の計画策定にもかかわってきた。本論文は,市町村地域福祉計画と市町村社会福祉協議会の地域福祉活動計画との一体的な策定での得られる意義を確認しつつ,地域における福祉の推進に対して,計画を一体的策定する場合の優位性を考察してみたいと考える。
著者
千葉 達朗 林 信太郎 小野田 敏 栗原 和弘 藤田 浩司 星野 実 浅井 健一
出版者
日本地質学会
雑誌
地質學雜誌 (ISSN:00167630)
巻号頁・発行日
vol.103, no.6, pp.XXI-XXII, 1997-06-15
被引用文献数
4 1

5月11日午前8時, 秋田県鹿角市の澄川温泉で, 地すべりと石流が発生, 澄川温泉と赤川温泉の16棟が全壊, 国道341号も寸断された. 5月4日頃から水の濁りや道路の変状等が察知され, 適切な警戒避難が行われたため, この災害による死者・負傷者はなかった. なお, 地すべりの最中に末端付近で水蒸気爆発が発生した. ここでは, 5月12日にアジア航測(株)が撮影した空中写真, その後の現地の他, 秋田航空(株)が撮影した水蒸気爆発の瞬間の写真を紹介する.
著者
酒見 龍裕 野田 常雄 江藤 徹二郎 中村 文彦 巨海 玄道
出版者
一般社団法人 日本物理学会
雑誌
大学の物理教育 (ISSN:1340993X)
巻号頁・発行日
vol.24, no.1, pp.24-28, 2018-03-15 (Released:2018-04-15)
参考文献数
7

1.はじめに現在多くの大学で,新入生の基礎学力の養成のため多彩な試みがなされている.中でもいわゆる全入大学では,十分な学力をもたない学生が入学してくるため,その対策にはどこも頭を痛めてい
著者
加藤 浩徳 家田 仁 小野田 惠一
出版者
Japan Society of Civil Engineers
雑誌
土木計画学研究・論文集 (ISSN:09134034)
巻号頁・発行日
vol.20, pp.523-530, 2003-09-30 (Released:2010-06-04)
参考文献数
15

本論文では, 出発時刻選択モデルを用いて, 通勤者の交通行動を分析し, その結果から, 時間の差に対する意識限界を推定した. 出発時刻選択モデルを構築する上で, 通勤者の選択行動に影響を与える説明変数を検討し, 列車待ち時間・乗車希望列車スケジュール早着・同スケジュール遅延・最終不遅刻列車スケジュール早着の組み合わせが適切であることを示した. そのモデルを用いて, 鉄道利用者の通勤行動を分析した結果, 時間の差に対する意識限界は平均運行時隔にして約4分30秒-4分56秒であることが分かった.
著者
小野田 亮介 鈴木 雅之
出版者
一般社団法人 日本教育心理学会
雑誌
教育心理学研究 (ISSN:00215015)
巻号頁・発行日
vol.65, no.4, pp.433-450, 2017 (Released:2018-02-21)
参考文献数
48
被引用文献数
6

本研究では,アーギュメント構造が意見文評価に与える影響について,影響の論題間差と評価方法による差異に着目して検討した。アーギュメント構造としては,主張への賛成論だけを示す「反論なし文」,賛成論に加えて反論を想定する「反論文」,賛成論と反論想定に加えて再反論を行う「再反論文」の3構造を設定した。また評価方法としては,1つの論題について構造の異なる3つの意見文を相対的に評価する「相対評価法」と,1つの論題について単一の構造の意見文のみを評価する「独立評価法」の2つを設定した。実験1では,大学生41名を対象に相対評価法による説得力評価を求めた。混合効果モデルによる分析を行った結果,論題にかかわらず再反論文は他の構造の文章よりも高く評価され,反論文が他の構造の文章よりも低い評価を受けた。実験2では,大学生123名を対象に独立評価法による説得力評価を求めた。その結果,平均すると,アーギュメント構造による説得力評価の差異はみられなかったが,アーギュメント構造の影響の方向性は論題によって異なっていた。以上より,アーギュメント構造が意見文評価に与える影響は論題や評価方法によって異なることが示唆された。