著者
野田 秀孝
出版者
富山大学人間発達科学部発達教育学科発達福祉コース
雑誌
とやま発達福祉学年報 (ISSN:21850801)
巻号頁・発行日
vol.8, pp.27-31, 2017-05-31

2015(平成27)年4月に生活困窮者自立支援法が施行され、これまで制度の狭間であった、生活保護に至るまでにない生活困窮のものに対する支援が始まった。従来の福祉サービスは、高齢者、児童、障害者など特定の分野において、特定の者を選別し、サービスの可否を定めて行ってきたものである。近年の社会情勢から、様々な要因から、経済的困窮に至る要因が複雑に絡み合っていると考えられる。これまでのセーフティネットだけでは、生活困窮に至る状況を食い止めることができない。そのため、第2のセーフティネットとして施行されたのが生活圏窮者自立支援制度である。この制度は、経済的労働的自立支援を中心としているが、その他の制度の狭間で今まで対象にならなかった人々、支援が届かなかった人々を対象に支援を可能にする余地が十分にあると考えられる。さらには住民活動などのインフォーマルサービスから公的扶助などのフォーマルサービスまでを含む重層的なネットワークやワンストップサービスなどの総合的な包括的な相談窓口などの設置の可能性も含むものと考えられ、地域福祉的な視点で考えるに、重要な制度となると思われる。本稿は重層的で幅の広いシステムの構築の可能性を視野に、地域福祉的視点で生活困窮者自立支援法をとらえ課題と展望のための一考察を示すものである。
著者
小野田 一幸 宮本 真二 藤田 裕嗣 米家 泰作 河原 典史 川口 洋
出版者
The Human Geographical Society of Japan
雑誌
人文地理 (ISSN:00187216)
巻号頁・発行日
vol.65, no.1, pp.1-28, 2013 (Released:2018-01-26)
参考文献数
222
被引用文献数
1

本稿では,1980年以降の日本における歴史地理学,地図史,および歴史GISに関する主要な研究成果について展望する。この30年間にわが国では,H. C.プリンスによって定義された現実的世界,イメージの世界,および抽象的世界を対象とした豊かな研究成果が生み出されてきた。現実的世界を対象とした研究では,景観や地域構造の復原が引き続き基礎的課題となっている。とりわけ,過去と現代をつなぐ役割を担う近代期の研究意義が注目されるようになった。最新の研究動向として,環境史と学際的研究の進展があげられる。後者については,地理学,歴史学,考古学の研究分野で史資料と研究方法の共有化が進み,歴史地理学の方法論が隣接分野に受け入れられて学際的研究に発展する動向がみとめられる。イメージの世界については,過去に生きた人々の世界観に関する理解を深めるために,1980年代から古地図・絵図研究が本格化した。抽象的世界に関する研究は,歴史GISを活用することにより,21世紀初頭から新たな段階を迎えた。歴史GISは,歴史地理学を含む人文・社会科学における個別研究の成果を統合する「しくみ」としても有用とみられる。
著者
岡田 佳之 榊 剛史 鳥海 不二夫 篠田 孝祐 風間 一洋 野田 五十樹 沼尾 正行 栗原 聡
出版者
人工知能学会
雑誌
人工知能学会全国大会論文集 (ISSN:13479881)
巻号頁・発行日
vol.27, 2013

本研究では,Twitterにおけるデマ・流言問題に着目し,デマならびにデマの訂正情報の拡散の仕方を4つのクラスに分類する.デマの拡散に対し,病気の感染モデルとして有名なSIRモデルに基づく「デマ拡散SIR拡張モデル」を提案し,東日本大震災における実際のデマ拡散が再現できるかを検証した.その結果,デマならびにデマの訂正情報の拡散がそれぞれ1回のピークを持つ事例において再現可能であることを確認した.
著者
野田 理世
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.25, no.3, pp.199-210, 2010

This study investigates the impact of mood on category-consistent/inconsistent information processing by comparison of data collected immediately after an experiment and a time lapse. In two experiments, no impact of mood was observed in recall rate immediately after the experiment among participants induced into a positive mood, regardless of the consistency of category information. However, a greater recall rate was observed for category-consistent information in the time lapse condition. On the other hand, no substantial impact of mood was found, regardless of time lapse, in the negative mood. The results showed the significant impact of mood on category-information coding styles, depending on the strength of the unit connections of the category-consistent/inconsistent information.
著者
片野田 耕太 十川 佳代 中村 正和
出版者
日本公衆衛生学会
雑誌
日本公衆衛生雑誌 (ISSN:05461766)
巻号頁・発行日
pp.23-076, (Released:2023-12-21)
参考文献数
57

「たばこハームリダクション」は「たばことニコチンの使用を完全に排除することなく,害を最小限に抑え,死亡と疾病を減少させること」と定義される。加熱式たばこが普及している日本において,たばこ産業側の「たばこハームリダクション」を用いたプロモーションが活発化しており,たばこ対策関係者は背景や考え方を共有する必要がある。本稿は,「たばこハームリダクション」を公衆衛生施策として実施するための要件を,①リスク低減,②禁煙の効果,③新たな公衆衛生上の懸念,および④保健当局の規制権限,の4つに集約し,ニコチン入り電子たばこ(以下,電子たばこ),加熱式たばこのそれぞれについて検討することを目的とした。さらに,国際機関(世界保健機関;WHO)および諸外国(米国,英国,オーストラリア,イタリア,および韓国)の保健当局の「たばこハームリダクション」に対する方針についてまとめた。最初の3つの要件について,電子たばこは,リスク低減および禁煙の効果については一定の科学的証拠があるが,若年者における使用の流行と紙巻たばこ使用へのゲートウェイドラッグ(入門薬)になりえるという公衆衛生上の懸念については一致した見解が得られていなかった。加熱式たばこについては最初の3つの要件いずれについても十分な科学的証拠はなかった。WHOはあらゆるたばこ製品について同じ規制をすべきであるという立場をとっていた。保健当局が「たばこハームリダクション」の考え方を制度として導入していたのは英国と米国のみであり,加熱式たばこが比較的普及しているイタリアおよび韓国でもリスク低減については保健当局が否定していた。英国は電子たばこによる禁煙支援を公式に認めていた一方,米国は2009年に制定された連邦法に基づいてmodified risk tobacco product(リスク改変たばこ製品)の制度を設けたが,2023年6月現在,加熱式たばこまたは電子たばこで健康リスクを低減すると認められた製品はなかった。4つ目の要件について,英国,米国ともたばこ産業から独立した保健当局の規制の下に「たばこハームリダクション」が制度化されていた。「たばこハームリダクション」の導入には,たばこ産業から独立した保健当局の規制権限と包括的なたばこ対策の履行が必須だと考えられる。
著者
小野田 亮介
出版者
日本読書学会
雑誌
読書科学 (ISSN:0387284X)
巻号頁・発行日
vol.64, no.2, pp.53-68, 2023-05-30 (Released:2023-07-16)
参考文献数
13

本研究の目的は,日本の成人による図書探索の特徴を明らかにすることである。予備調査では,大学生(n=209)に本の選び方に関する自由記述を求め,図書探索で参照する24の情報源と,図書探索志向性を測定する項目を抽出した。研究1では,大学生を含む成人(n=346)を対象とした調査を実施し,図書探索において外的指標を重視する「レビュー参照志向」と,直感や偶然性を重視する「セレンディピティ志向」の2因子から構成される図書探索志向性尺度を作成した。研究2では,750名の成人を対象として(1)図書探索における情報参照と,(2)図書探索志向性の傾向が読書行動といかに関連しているかについて,読書者と不読書者の対比による検討を行った。分析の結果,成人は本の内容に関する情報源と,本との出会いの偶然性を重視して図書を探索していることが明らかになった。また,図書探索において偶然性を重んじるセレンディピティ志向性が読書行動をとる確率を高める可能性も示された。これらの結果から,偶然性や直感に基づく図書探索を支援することが成人の読書行動を促す可能性が示唆された。
著者
小野田 亮介 河北 拓也 秋田 喜代美
出版者
一般社団法人 日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.41, no.4, pp.403-413, 2018-03-01 (Released:2018-03-16)
参考文献数
21
被引用文献数
2

本研究の目的は,付箋により意見を分類しながら共有すること(付箋分類介入)が議論プロセスに与える影響をシャイネスとの関連に着目して明らかにすることである.大学生32名を対象とし,シャイネス低群と高群のペアを,意見を書きながら共有する対照条件と,付箋を用いて意見を分類しながら共有する実験条件に半数ずつ割り当てた.条件間で発話傾向を比較した結果,対照条件に比べ,実験条件において「主張」や議論の方向性を決める「方針」の発話数が増加し,「つぶやき」の発話数が減少する傾向が認められた.議論プロセスの分析から,実験条件では,付箋を介して思考プロセスを共有していたのに対し,それができない対照条件では,つぶやきによって思考プロセスを共有する傾向にある可能性が示唆された.また,付箋分類介入はシャイネスの高さを補償し,既出意見と異なる新たな意見を提示する「新規アイデア」の発話を促していたことが示された.
著者
舘石 和香葉 小野田 竜一 高橋 伸幸
出版者
日本社会心理学会
雑誌
社会心理学研究 (ISSN:09161503)
巻号頁・発行日
vol.36, no.3, pp.96-103, 2021-03-31 (Released:2021-03-31)
参考文献数
14

Whether engaging in costly punishment can be an adaptive strategy by enhancing the punisher’s reputation is a crucial question in efforts to explain punishment behaviors. However, empirical findings on this question are mixed. Based on Raihani and Bshary’s (2015) argument, the current study empirically examined the possibility that how a punisher’s motives are estimated affects the reputation of the punisher. We employed a vignette experiment which was designed to make it simple for respondents to estimate each punisher’s motives. Each vignette described a defector in a social dilemma and a punisher who punished the defector using one of four types of punishment. Respondents then estimated the punisher’s motives and evaluated their impressions. The results revealed that the estimated motives depended on the type of punishment which the punishers utilized and that evaluations of punishers varied across the four types of punishment. Thus, the context in which punishment is employed may affect a punisher’s reputation, and this in turn might ultimately determine whether engaging in punishment is adaptive.
著者
野田 泰一 西川 輝昭
出版者
日本動物分類学会
雑誌
タクサ:日本動物分類学会誌 (ISSN:13422367)
巻号頁・発行日
vol.34, pp.71-76, 2013-02-28 (Released:2018-03-30)
参考文献数
5

A Japanese version of the amendment of the International Code of Zoological Nomenclature in September 2012 was presented with some comments.
著者
野田 尚宏
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.147-157, 2010 (Released:2010-05-31)
参考文献数
13

遺伝子定量技術は医療、農業、水産業、環境、食品等の幅広い分野で利用されており、社会的にも重要な技術である。筆者等は、グアニン塩基との相互作用により蛍光が消光する現象に着目し、それを利用した正確性・コストパフォーマンスに優れた新しい遺伝子定量技術を開発した。本稿では、既存の遺伝子定量技術に内在する問題を克服するために選択した要素技術とその統合・構成による新規遺伝子定量技術開発に関する研究展開を中心に、企業と取り組みつつある開発技術の実用化に関するシナリオについて論じる。
著者
渡辺 実 野田 伸司 山田 不二造 藤本 進
出版者
一般社団法人 日本感染症学会
雑誌
感染症学雑誌 (ISSN:03875911)
巻号頁・発行日
vol.55, no.5, pp.367-372, 1981-05-20 (Released:2011-09-07)
参考文献数
9
被引用文献数
1

生体試料中のウイルスに対するエタノールの不活化作用について研究を行つた.エタノールの反応に十分な水分が含まれている限り, 液相および固相, いずれの生体試料中においても, エタノールのウイルス不活化作用は, エタノールの濃度に比例して上昇する. 血清原液およびPBS中のポリオウイルスは, いずれも90%エタノールによつて10秒で不活化を受けるが, 70%エタノールによつては, 前者は1分, 後者は10分, 即ち10倍の感作時間を必要とし, 血清による阻害効果が著明であつた: また凝固家兎血液およびHeLa細胞に感染したポリオウイルスは, いずれも90~99.5%エタノールにより速やかに感染価の低下が示されるが, 80%以下の濃度では不活化の進行は緩やかであつた.これに対し乾燥血清中のウイルスには, 高濃度のエタノールによる不活化効果は低く, 99.5%エタノールには殆どウイルス不活化作用は認められなかつた. しかしこの条件下においても70-80%エタノールのウイルス不活化効果は最強ではなく, 乾燥血清中のNDVおよびワクチニアウイルスは40~60%エタノールによつて最も高い不活化効果が示された.最も効果的な消毒が要求される場合には, 被消毒物件の水分およびウイルスの種類に応じたエタノール濃度の選択が必要と思われる.
著者
岡田 忠司 杉下 朋子 村上 太郎 村井 弘道 三枝 貴代 堀野 俊郎 小野田 明彦 梶本 修身 高橋 励 高橋 丈夫
出版者
公益社団法人 日本食品科学工学会
雑誌
日本食品科学工学会誌 (ISSN:1341027X)
巻号頁・発行日
vol.47, no.8, pp.596-603, 2000-08-15 (Released:2009-02-19)
参考文献数
11
被引用文献数
33 194

医薬品として販売されているγ-アミノ酪酸製剤(合成GABA製剤)は,脳代謝促進作用があり,脳梗塞・脳出血後遺症等,脳血管障害の諸症状の改善や血圧上昇抑制効果が認められている.また最近の医学分野の研究では,更年期障害や初老期の自律神経障害にみられる精神的症状の緩和にも効果があると報告されている.本試験では,コメぬかから分別製造した「GABA蓄積脱脂コメ胚芽」を用いて,更年期及び初老期の被験者20名に対する効果をプラセボとの比較にて検討した.その結果,更年期及び初老期に見られる抑うつ,不眠,イライラ,不定愁訴の自律神経障害の改善に,GABA蓄積脱脂コメ胚芽が高い効果を示すことが明らかになった.またこのほかに,高血圧症や肝機能の改善作用も示され,服用に伴う副作用も全く見られなかったことから,毎日摂取できる機能性食品素材として高い利用価値を有していることも明らかになった.
著者
那須 隆 小池 修治 鈴木 豊 伊藤 吏 岡崎 慎一 野田 大介 青柳 優
出版者
耳鼻咽喉科臨床学会
雑誌
耳鼻咽喉科臨床 (ISSN:00326313)
巻号頁・発行日
vol.97, no.9, pp.819-824, 2004-09-01 (Released:2011-10-07)
参考文献数
25
被引用文献数
6 4

A 1-year-and-1-month-old boy presented with a wooden foreign body in a right cervical lesion after falling down. The foreign body was the broken tip of a wooden chopstick which was penetrating into his neck. No foreign bodies were reliably detected by plain film. We then used helical CT for the diagnosis of the foreign body. A wooden foreign body, 2.2cm long and 2mm in diameter, like a rod, was shown embedded in his neck by reconstructing 3D images of helical CT. The wooden foreign body was removed through an incision of the neck under general anesthesia.In this case, helical CT was helpful in the diagnosis of a radiolucent wooden foreign body in a cervical lesion.
著者
小野田 慶一
出版者
日本生理心理学会
雑誌
生理心理学と精神生理学 (ISSN:02892405)
巻号頁・発行日
pp.1510tn, (Released:2016-04-05)
参考文献数
20
被引用文献数
6

脳は複雑なネットワークであり,特性や状態によって変化する動的な存在である。グラフ理論解析により,こうした脳ネットワークを神経生物学的に有意義な,かつ計算の簡単な指標によって特徴づけることが可能である。本稿では,脳の結合データからネットワークを構築する手法に関して議論し,脳機構の機能分離,機能統合,中心性などを定量化するネットワーク指標を説明する。最後に,グラフ理論解析に用いられるツールを紹介する。

6 0 0 0 倫理篇

著者
野田時助著
出版者
中央出版社
巻号頁・発行日
1956