著者
勝倉 りえこ 伊藤 義徳 根建 金男 金築 優
出版者
一般社団法人日本認知・行動療法学会
雑誌
行動療法研究 (ISSN:09106529)
巻号頁・発行日
vol.35, no.1, pp.41-52, 2009-01-31

メタ認知的気づきとは、否定的な感情や思考を自己の実体や世界の直接的な反映としてではなく、過ぎ行く心的な出来事として経験するプロセスであり、反復性うつ病の脆弱性の改善との関連が指摘されている。本研究では、認知プロセスを変容させると考えられるマインドフルネストレーニングの中核的技法である坐禅の訓練が、大学生の抑うつ傾向およびメタ認知的気づきに及ぼす影響について検討する。結果として、坐禅訓練が大学生の抑うつ傾向と反すう的思考スタイルを減弱し、またその効果はメタ認知的気づきの獲得を媒介して発揮されている可能性が示唆された。今後は、本研究で得られた予備的知見を、臨床群においても検証することが望まれる。
著者
堀江 玲子 遠藤 孝一 野中 純 船津丸 弘樹 小金澤 正昭
出版者
日本鳥学会
雑誌
日本鳥学会誌 (ISSN:0913400X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.2, pp.41-47, 2006 (Released:2007-07-06)
参考文献数
17
被引用文献数
1 4

栃木県那須野ヶ原において, 2000年または2001年にオオタカによって使用された営巣木と営巣地 (n =36) について, ランダムプロット (n =50) と比較し, その特徴を調べた. オオタカが営巣木として最もよく選択していたのはアカマツであり (91.7%), 落葉広葉樹を忌避していた. 営巣木の平均胸高直径は34.8±1.2cmで, 営巣木として胸高直径30cm超クラスを選択し, 胸高直径20cm以下クラスを忌避していた. 営巣環境においては, アカマツの優占度が75~100%クラスを選択し, 50%以下クラスを忌避していた. 高木層の平均胸高直径は25.2±0.7cmで, ランダムプロットと比較して有意に太かった. 全立木密度, 高木層と亜高木層の立木密度はともに有意な差が認められなかったが, 林内開空度は営巣地で有意に高かった. 以上のことから, 那須野ヶ原においては, 架巣に適したアカマツの存在と巣への出入りを容易にする林内空間の存在が, オオタカの営巣地選択に影響していることが明らかになった.
著者
金澤 貴之
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.92, pp.7-23, 2013-07-25 (Released:2014-07-28)
参考文献数
12
被引用文献数
2

特別支援教育は,通常教育との本質的同一性を目的・目標としてきたことで,障害への対応としての「支援」を外在化させる状況を生み出してきた。通常教育へのプラスαとしての概念として「特別な支援」を捉える考え方は,今後ますますインクルーシブ教育が加速化していく中,通常教育関係者にとってのわかりやすさを生み出すことになると考えられる。その一方で,重度の知的障害児および知的障害を併せ有する重複障害児においては,「支援」は教育に内在化したものとして,引き続き使用させ続けていくと考えられる。 また,障害当事者の望む「支援」のあり方が,障害のない教員のそれとは必ずしも一致するわけではないこと,そして健常者である教育者から見れば障害当事者はしばしば支援のあり方を決定する成員の外部に位置していることを鑑みるならば,特別なニーズを持った子どもたちの支援のあり方について検討する際,その支援の方法を誰が決定するのかということにも十分留意しておかなければならない。
著者
金井 豊
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター
雑誌
地質調査研究報告 (ISSN:13464272)
巻号頁・発行日
vol.65, no.11-12, pp.145-155, 2014-12-26 (Released:2015-02-07)
参考文献数
20

物質循環のトレーサーとしての地球科学的知見を得ると同時に,福島第一原子力発電所事故後の地域住民の不安感の払拭にも貢献するため,産業技術総合研究所地質調査総合センター(GSJ)においてエアロゾル中の放射性核種の観測を2013年も継続して行った.前報告(本誌,vol.63(3/4) p.107-118,及びvol.64(5/6), p.139-150)に引き続き2013年1月から2013年12月までの観測データを報告する.放射性Cs同位体のエアロゾル濃度は,2013年は3月頃に幾分高まったが,4月以降は幾分低下傾向を示した.2012年も同様に4月頃より低下しており,北よりの風から南よりの風に変わり降雨の日が多くなった気象条件の変化が変動因子の一つと考えられた.2012年以降は原発からの影響よりも観測点周辺に沈積した粒子の再飛散と移動による影響因子が相対的に重要と考えられ,Cs-137濃度とCs-137/Pb-210比との関係が再飛散を示唆する有効なパラメータの一つとなる可能性があると考えられた.
著者
金山 彰宏 小曽根 恵子
出版者
日本ペストロジー学会
雑誌
ペストロジー学会誌 (ISSN:09167382)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.9-13, 1997-09-25
被引用文献数
9

Observations of the nocturnal behavior of the German cockroach, Blattella germanica, were carried out using single or mixed populations of males, gravid females, ungravid females and nymphs. In captivity adult males were very active, did not concentrate on the feeding site, and spread widely in the walking area. Gravid females, in contrast, were quite different in their moving pattern from males. The majority of them never came out to the walking area, and only a few individuals gathered around the feeding place. The behavior of the roaches was also observed in the mixed populations. In a separate field study of capturing cockroaches by setting adhesive traps on the open space in a restaurant, the proportion of adult males, ungravid females and gravid females was 64%, 32%, 4%, respectively. The result was same as the above mentioned experiments.
著者
金子 勇
出版者
北海道大学
雑誌
北海道大学文学研究科紀要 (ISSN:13460277)
巻号頁・発行日
vol.125, pp.85-134, 2008-06-20
著者
磯野 春雄 安田 稔 竹森 大祐 金山 秀行 山田 千彦 千葉 和夫
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
テレビジョン学会誌 (ISSN:03866831)
巻号頁・発行日
vol.48, no.10, pp.1267-1275, 1994-10-20
被引用文献数
27 1

特別なメガネをかけなくても立体画像を見ることができるレンチキュラー方式による液晶投写型の50インチ8眼式3次元テレビジョン装置について述べる.さらに, 8眼式立体テレビカメラ, レンチキュラースクリーンおよび立体視領域などについても述べる.本装置は, 8台で構成された立体テレビカメラからの映像信号を電子的に画素単位で合成してストライプ状の画像とし, 2台のハイビジョン液晶ビデオプロジェクタを用いてレンチキュラースクリーンに背面投写するものである.この結果, 明るく鮮明な8眼式立体画像をメガネなしで見ることができるようになり, 従来よりも立体画像の観察視域が前後, 左右方向ともに拡がり, 立体画像の見やすさと自然さが大きく向上した.
著者
徳永 幹雄 金崎 良三 多々納 秀雄 橋本 公雄 梅田 靖次郎
出版者
九州大学
雑誌
健康科学 (ISSN:03877175)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.105-114, 1991-02-08

昭和61年度西日本年齢別水泳大会に出場し, 決勝に進出した選手を対象にして, 決勝レース直前の不安とそれに影響する要因を調査した。同時に, ベスト記録にどれくらい近いかを示す実力発揮度を算出した。そして, 試合前の状態不安と実力発揮度の関係, および状態不安および実力発揮度に影響する要因を分析した。その結果を次のように要約することができる。1) 決勝レースの実力発揮度はベスト記録に対して98.44%で, 男女差はみられなかった。実力発揮度の高いのは, 年齢別では小学生, 大会日別では第2目目, 競泳距離別では短距離, 泳法別では個人メドレー, 決勝順位別では上位入賞者であった。その他, 実力発揮度に影響する要因として, スポーツ観, 本大会の状況認知, 体調, 決勝レースの状況認知, 大きな大会の経験, 家庭環境などがあった。2) 決勝レース前の状態不安は36.5点(20〜80点)で, 男女差は認められなかった。状態不安が高いのは, 年齢別では中学生, 大会日別では第1日日, 競泳距離別では中距離, 泳法別では平泳ぎ, 決勝順位別では下位入賞者であった。その他, 状態不安に影響する要因として技能の評価, 性格, 大きな大会への経験, 本大会の状況認知, 決勝レースの状況認知, スポーツ観, 家庭環境などがあった。3) 状態不安と実力発揮度には顕著な関係がみられた。すなわち, 実力発揮度が低いのは, 不安得点が高い者と低い者であり, 実力発揮度の高いのは, 不安得点が中位のすこし不安がある者であった。また, 男女差, 年代差によって実力発揮のための不安の適性レベルは異なるのではないかと推測された。4) 状態不安と競技パフォーマンスの関係を実証した。そして, 状態不安や競技パフォーマンスに影響する要因を分析し, 競技不安モデルを再検討し, その有効性を推察した。
著者
星 健太郎 加納 貞彦 高橋 敬隆 金田 茂 品川 準輝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. IN, 情報ネットワーク (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.42, pp.91-96, 2006-05-11

携帯通信ネットワークでは,固定通信とは発想を異にしたユーザ誘導型トラフィック制御が注目を浴びている.ネットワークの輻輳(例えば花火大会の)時に,ユーザ端末に輻輳であることを表示するとともに,ユーザに通信しやすい場所を推奨する空間分散型制御・時間をずらして通信を促す時間分散型制御・音声からメールに代替メディアを提示するトラフィック縮退型制御が提案されている.しかしながら,ユーザの視点からこれらの制御を評価した検討は殆ど行なわれていない.本稿では,AHP(解析的階層過程)を用いてアンケート調査結果を分析することにより,ユーザ誘導型トラフィック制御に対するオピニオン評価手法を確立している.まずインターネットを介してユーザが容易に回答可能なwebサイトを構築している.次に,AHPの常套手段である一対比較行列計算ならびにその行列に対する固有値問題を解くことにより,ユーザ個々が抱く制御に対する不満度を定量化している.更に,回答結果の無為矛盾性を表すCI(整合度)値を閾値として使い,矛盾ある結果を出したアンケート回答者を除外することを提案する.アンケート回答者全体の意思を表す言わば集団一対比較行列の各成分は閾値をクリアしたユーザに対する一対比較行列該当成分の幾何平均を採ることにより作成している.このようにして得られた集団一対比較行列の最大固有値に対する固有ベクトルを求めることにより,集団意見としての不満度を定量化することに成功している.最後に,どのユーザ誘導型トラフィック制御に対するユーザ不満度が最大化するかが具体的・定量的に明らかになる.
著者
逸村 裕 小川 治之 緑川 信之 金子 昌嗣 斎藤 憲一郎
出版者
社団法人情報科学技術協会
雑誌
ドクメンテーション研究 (ISSN:00125180)
巻号頁・発行日
vol.33, no.6, pp.273-279, 1983-06-01

理工学34分分野の雑誌を対象に,引用数,自誌引用率,被引用数,impact factor,decay index,immediacy indexの各引用尺度について調べ,分野ごとに平均を計算した。その結果,以下の点が明らかにされた。 (1)一般に,引用数の多い分野ほど,被引用数も多く,impactfactorの値も高い。応用・複合科学分分野は,被引用数,impact factorがともに低い。(2)decay indexの値は分野による差があまり大きくない。ただし,伝統的な分野よりも,最近発達してきた分野の方が,比較的値が大きい。(3)immediacy indexは,分野による差が大きい。応用・複合科学,および数学,力学などの伝統的な分野で値が低い。
著者
金子 元久
出版者
日本教育社会学会
雑誌
教育社会学研究 (ISSN:03873145)
巻号頁・発行日
vol.47, pp.21-36, 1990-10-05

This paper examines the development of the sociology of education in Japan as a policy science. The first section focuses upon the origin of the sociology of education as a discipline in education, and examines how the idea of policy science emerged as a core of its identity. In the second section, the focus is turned to the 1960s when prominent researchers in the discipline started participating in government commissions related to educational policy and planning. Developments in the 1970s are traced, in the third section, in relation to the advance of the welfare state and its decline due to the looming fiscal stringency. In the last section, the economic and ideological changes in the 1980s are examined in light of educational policies. It is argued then that the need for policy sciences of education is rising and the sociology of education, with its past accomplishments in the field, should provide the principal basis of their development.
著者
金子 良事
出版者
社会政策学会
雑誌
社会政策 (ISSN:18831850)
巻号頁・発行日
vol.2, no.2, pp.48-58, 2010-12-20

本稿では社会政策を「社会秩序の維持,ないし醸成を目的とした政策」と定義した。近年,日本ではヨーロッパのsocial policyの訳語に社会政策が使用されているが,研究史を踏まえるならば,これは社会福祉政策と訳すべきである。日本では歴史的に社会政策の英訳はsocial reformであった。本稿ではこの点をさらに掘り下げ,実際に明治以降に行われてきた政策の背後には社会改良主義だけではなく,社会秩序の維持ないし醸成という動機があったこと,そして,そのような施策はドイツの古いポリツァイ思想と通底していることを指摘した。また,日本における戦後の社会福祉政策においては社会権が基盤にされており,究極的には個人が中心になる。社会秩序という考え方によれば,社会政策は個人の社会権だけでなく,社会そのものに注目し,社会福祉政策を包含する概念として捉えるべきであることが示唆されている。
著者
伊藤 昭 金渕 満
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-I, 情報・システム, I-情報処理 (ISSN:09151915)
巻号頁・発行日
vol.84, no.3, pp.285-293, 2001-03-01
被引用文献数
24

強化学習は, 実世界においてエージェントに協調することを学習させるための有望な手法である.しかしながら, 実際的な問題に使おうとすると, 状態数の増加に伴う学習速度の遅さがボトルネックとなる.我々は, 学習の初期の段階では知覚情報を粗視化することで実効的な状態数を削減し, その後に完全知覚に戻すことで長期的にも良い性能を得ることを試みた.しかしながら, 単純に知覚精度を切り換えるだけでは, 初期の「誤った知識」を後から修正することは難しい.そこで, 初期においても, 完全知覚条件と知覚制限条件の二つの学習器を並行して学習させ, 適当なタイミングで切り換えることで, 知覚制限による高速の初期学習, 完全知覚による良好な長期性能を達成する手法を開発した.